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EVENT REPORT

イベントレポートRIKUJO JAPANフラッグシップイベント「SPEED STAR 30m Dash Challenge」第2回大会
大阪大会レポート&コメント

秋の深まりが感じられるようになった11月8~9日、大阪・梅田で30mダッシュのタイムトライアルイベント『SPEED STAR 30m Dash Challenge presented by クルマ買取りハッピーカーズ®︎』が開催されました。

このイベントは、「陸上でスポーツ界、ニッポンを変えていく」を掲げる『RIKUJO JAPAN』プロジェクトを推進する日本陸連が、『RIKUJO JAPAN』の取り組みを、より大きなムーブメントへと育てるべく、今年度からフラッグシップイベントとして始動させたもの。誰にも経験のある「かけっこ」を想起させる「30mダッシュ」のタイムを競うことで、年齢や、取り組んでいるスポーツジャンルを問わず気軽に挑戦でき、みんなで一緒に「陸上」を楽しめる場と機会を増やしていこうとしています。

今回は、5月11日に東京駅前の行幸通り(東京・丸の内)で行われ、大いに盛り上がった第1回大会に続いての開催。舞台を大阪へ移して、JR大阪駅前のうめきた広場で、のべ561人が「SPEED STAR(スピードスター)」へのチャレンジを楽しみました。

◆◆◆

第1回大会から約半年のスパンで実施された第2回大会の会場となったのは、西日本最大級のターミナルとして知られるJR大阪駅の中央北口正面に位置する「うめきた広場」です。ここは、複合商業施設グランフロント大阪の一角となる約1700㎡の広さを持つ楕円形のパブリックスペースで、多くの人々が日常的に行き交うほか、年間を通じてさまざまなイベントが開催されることで知られています。

当日は、楕円の最長距離を利用する形で、全天候型ウレタン走路を敷いたメインレーンが設営されました。1人ずつタイムを測定した第1回大会とは異なり、今回は、中1レーンを空けて2名の出場者が競走しながらタイム計測ができる仕様が採用されたことが特徴です。そして、メインレーンの奥に青色の人工芝走路(サブレーン)が配置され、「ハッピーカーズレーン」の名称で、事前申し込みなしで、誰でもタイムトライアルを体験できるレーンとして使われました。

また、今回は、土・日曜日を使って2日間での開催に。「スポーツの力で地域を元気にするという理念に共感した」として、中古車買取り専門のサービス事業を全国140拠点で展開している株式会社ハッピーカーズが、メインスポンサーとして参画くださったのを筆頭に、全8社から支援をいただいたことで実現が可能となりました。加えて、スペシャルゲストとして第1回大会を盛り上げた北京オリンピック男子4×100mリレー銀メダリストの朝原宣治さん(大阪ガス、日本陸連理事)が、企画段階から全面バックアップ。初日には、自身がプロデュースする「ストリートこども陸上」とのコラボレーション企画として、かけっこ教室やトップアスリートとのドリームマッチなど、小学生を対象としたコンテンツも多数盛り込まれ、両日ともに注目のプログラムが続くタイムテーブルとなりました。

【第1日:11月8日(土)】
「ストリートこども陸上」コラボ企画
小学生が豪華アスリートと「かけっこ」を楽しむ

ここからは、イベントの模様を1日目から、ご報告していきましょう。初日の11月8日は、朝から快晴に恵まれました。午後になると、やや雲が広がってきたものの、気温が下がることもなく、スポーツには最高の天候となりました。この日は、朝原さんプロデュースの「ストリートこども陸上」とのコラボ企画と、「SPEED STAR 30m Dash Challenge presented by クルマ買取りハッピーカーズ®︎ 」コンテンツの1つである「SPEED STAR 30mダッシュチャレンジ個人戦」がメインとなるプログラム。朝原さんとリポーターとして活躍する池田愛恵里さんによる司会進行で、午前11時からスタートしました。

トップ選手のデモンストレーション&ワンポイントアドバイス

小学1~6年生を対象とする「こどもストリート陸上」は、計128人が参加して行われました。まず、1日目のゲストが紹介され、女子100mハードルの中島ひとみ選手(長谷川体育施設、2025年東京世界選手権代表)、男子400mハードルの豊田将樹選手(富士通、2019年ドーハ世界選手権代表)、そして男子100mの坂井隆一郎選手(大阪ガス、2022年オレゴン・2023年ブダペスト世界選手権、2024年パリオリンピック代表)という豪華な顔ぶれが登壇。朝原さんの進行で、この3選手が「その場でできるオススメのウォーミングアップ」を一つずつ紹介して、みんなで身体を動かしました。

次に、池田さんが各選手にショートインタビューを行い、中島選手は初代表として出場した東京世界選手権の感想を、豊田選手は400mハードルという種目の特徴をそれぞれ話し、朝原さんが命名したという「カミソリスタート」を武器とする坂井選手は、30mダッシュに生かせるスタートのコツを紹介。そして、中島選手、豊田選手、坂井選手の順に、これから子どもたちが挑戦することになる「30mダッシュ」のデモンストレーション。トップ選手のスピードに、子どもたちはもちろん観覧エリアからも「うわあ」という声が上がりました。ちなみに、ハードラーの中島選手と豊田選手は、午後のプログラムの合間にはハードル走のデモンストレーションも披露。池田さんの「ハードルって、近くで見ると、すごく高いよね」の声に大きく頷いていた子どもたちが、そのハードルを2選手が切れのある美しいフォームでクリアしていく様子を、驚きの表情で見入っていたことが印象的でした。

小学生が30mダッシュに挑戦!

その後は、低学年(1~3年生)と、高学年(4~6年生)の2つに分かれて、いよいよ1年生から順に30mダッシュのタイムトライアルに臨んでいくことに。レース後、男女それぞれのベストタイムが発表され、各学年1位となった子どもは、その後に予定されている朝原さんと坂井選手によるランニングレッスンへの参加と、トップアスリートに挑戦できる2日目のエキシビションレースに出場でき、さらに1~6年生を通してトップタイムをマークした男女各1名が、この日の最後に行われるドリームレースに臨むことができます。

低学年の部、また高学年の部が始まる前には、3選手から「速く走るためのコツ」のワンポイント解説が行われたうえで、子どもたちは、2人ずつ順番に、スターターを務める大阪陸上競技協会の審判員の英語でのコールに従い、電子音の号砲でスタート。観客エリアから大きな声援や拍手が贈られるなか、全力でフィニッシュラインを駆け抜けました。

そして、各学年で男女のベストタイムが発表。4年生男子に同タイムが出たため、全13人が各学年1位に名を連ねる結果となりました。

全学年を通じての最高記録を出し、「ドリームレース」出走権を手にしたのは、男子が6年生の三宅開登さんで、女子は5年生の青木翼さんでした。三宅さんは4秒93、青木さんは4秒99をマーク。それぞれに「子ども陸上男子部門」「子ども陸上女子部門」を制しました。

朝原&坂井の豪華ランニングレッスン

続いて行われたのはランニングレッスンです。前述の通り、小学1~6年生男女でトップタイムをマークした全13名が直接指導を受け、ほかの参加者たちは観覧席で見学する形で行われました。参加者の陸上経験などを聞いたうえで、朝原さんが、「じゃあ、今日は、坂井選手のような高速ピッチを生み出すための練習をしてみましょうか」とテーマを決めて、朝原さんが坂井選手に質問を重ねていくなかで、坂井選手がピッチを速くするために有効なトレーニングを紹介していく展開に。ここに中島選手や豊田選手も加わって一緒に動きを見せていく、実に豪華な内容となりました。

高速ピッチを生み出すためのポイントになるとして「もも上げ」動作を挙げ、最初はゆっくりと正確な動きで実施したのちに、「膝を高く上げることと自分ができるすごいスピードでやるのがポイント」として“超高速”でのもも上げ動作を披露。さらに、速いピッチでのもも上げでゆっくりと前進していく、速いピッチでのもも上げからダッシュへとつなげていくといったように、もも上げから走りにつなげていくドリルを紹介しました。

続いて、朝原さんの「オススメのスプリント練習は?」という投げかけに、「私は、スキップをけっこう取り入れている」と答えた中島選手が、「上に弾むというより走りに近いイメージで、前へ速く進んでいくスキップ」を紹介。最後に、「スタートの構えから最初の1~2歩をどうすればスムーズに出られるかを伝授してほしい」と朝原さんが坂井選手にリクエスト。「30mダッシュ」の最速を狙ううえでも鍵となる重要な局面です。これに対して、「ヨーイの姿勢をとったときに、“ああ、やばい、もうコケる”ってくらいのところで体勢を維持すること。これをやるだけで、最初の1~2歩が本当にスムーズに出られるはず」と坂井選手。中島選手や豊田選手も加わって、深く前傾した状態からのスタートに取り組みました。

ドリームレースで、小学生男女1位が坂井・中島と対決!

「ストリートこども陸上」最後のコンテンツとして実施されたのは、30mダッシュタイムトライアルで男女トップタイムをマークした、いわば“小学生代表”が、トップ選手と対決する「ドリームレース」。女子1位の青木さんが中島選手と、男子1位の三宅さんは坂井選手と対戦することが発表されました。

まずは女子から。朝原さんの判断で、6mのハンデが設定されてのレースとなりました。スタート前は「緊張しています」とコメントした青木さんでしたが、抜群のスタートを見せると、ぐんぐん迫ってくる中島選手から逃げきり、1本目で記録した4秒99を更新する4秒43をマークして中島選手に0秒13差で先着。朝原さんを「勝負強いなあ」と感心させ、中島選手も「速いなあ。将来が楽しみだなと思いながら走っていました」と称賛しました。

続いて行われた男子では、朝原さんが「AIでは6mと出たけど、7mで」と厳しいハンデを設定。これに対して「わー、マジか。頑張ります!」と苦笑いしながらスタートについた坂井選手ですが、得意のスタートをばっちり決めると、7mの差をあっという間に縮めて逆転し、前回の東京大会で樹立された最速タイム4秒15をあっさりと塗り替える4秒03でフィニッシュ。現役トップスプリンターのすごさを見せつけました。レース後、「追いかけられて怖かったです」と振り返った三宅選手に、「そりゃ、怖いよなあ」と朝原さんも笑いながら同意する場面も。しかし、その三宅選手も、実は4秒28という大人も驚く好タイムをマーク。1レース目(4秒93)の記録を大幅に塗り替える快走でした。見ごたえのあるバトルで、「ストリートこども陸上」を締めくくる結果となりました。

SPEEDSTAR 30mダッシュチャレンジ個人戦
年代や性別、国籍を問わず、さまざまな人々が参加

1日目のメインレーンで実施されたもう一つのプログラムは、「SPEED STAR 30m Dash Challenge presented by クルマ買取りハッピーカーズ®︎ 」の個人戦です。事前応募の参加者に加えて、決められたタイムテーブル内で出走できる当日参加枠も設定したことで、実に118名がチャレンジすることになりました。午後から夕方にかけての時間帯も影響してか、人通りもぐんと増え、メインレーン横の観覧エリアには何重もの人垣ができたほか、JR大阪駅から広場へと続く大階段に座って大型映像を見る人々や、大阪駅とグランフロントをつなぐ2階の連絡デッキから立ち止まって見守る人々も見られるようになりました。

個人戦は、事前応募枠・当日参加枠の順で行われ、幼稚園児から60代までの幅広い年齢層の人々が次々と出場しました。走る前には名前が紹介され、その際に、ひと言コメントしてスタートし、レース後、タイムが読み上げられるという流れで進行していきます。はにかみながら「がんばります」と話してスタートに立った女の子もいれば、姉妹や親子、夫婦で参戦して、「お姉ちゃんに勝ちます」「妹には負けません」「夫に勝ちます!」「妻に負けないように頑張ります」といったバチバチの対決コメントが飛び出す場面も。このほか、「仕事帰りです」「音楽会帰りです」、さらには「受験帰りです」という“帰宅途中”の参戦組もいれば、翌日のチーム対抗戦やスポーツ別対抗戦にエントリーしている人が、“前日の刺激”あるいは“予行演習”とばかりに走る姿も見られました。また、日本人だけでなく、さまざまな国の人々も多数参加していて、「ニッポン、ダイスキデス!」「ベトナムから来ました!」など、それぞれにアピールし、楽しそうに走る姿も。まさに『RIKUJO JAPAN』が目指す、「誰でも、気軽に、楽しく、陸上に親しむ」が光景を感じさせるひと時となりました。
この個人戦で男女それぞれのトップタイムをマークして、「SPEED STAR」の称号を得たのは、久本翔己さん(4秒28)と柴田友香さん(4秒69)。表彰式で、朝原さんからSPEED STAR 30m Dashの文字がデザインされた「フラッグ」が贈られました。

陸上に取り組んでいる久本さんは、「小学生のときに参加したイベントで朝原さんの走りを見て、“ものすごいスピードだな”と思ったのが陸上を始めたきっかけ」だったそう。「大阪には足の速い人がまだまだいるので、もしかしたら来年には3秒台とか、バンバン出る大会になっているかもしれません。今のうちにということで…(笑)」と1位になった喜びを語りました。また、「マスターズ陸上をやっている」という柴田さんは、「30mという距離を走ったことがないので、“このタイムはどうなんだろう”と、そわそわしていたのですが、1位がとれて嬉しいです」とにっこり。「見ている方がすぐ近くで応援してくださるので、すごく楽しめました」と、メインレーンを走っての感想を話してくれました。

【第2日:11月9日(日)】
雨天の影響で、20mダッシュに変更するも
各部門で熱いチャレンジが展開

2日目は、前日からの予報通り、朝から雨が降る空模様に。気温が大きく下がることなく、風もほとんどなかったために、“冷たい雨”にはならずにすんだものの、雨は弱まったり強まったりを繰り返しながら降り続き、傘が手放せない1日となりました。

中止は避けられる状況だったため、安全面を最優先させたなかの開催を決定。人工芝の走路は濡れると滑るので、当日受付で参加できるハッピーカーズレーン(サブレーン)は運用を中止しました。また、メインレーンも、フィニッシュして走り抜けた際にコンクリートの路面で滑る恐れがあるという判断から、トライアルの距離を30mから20mに変更し、「20mダッシュ」のタイムを競う変則ルールで実施することになりました。

プログラムは、当初の予定通り、午前11時からスタート。2日目は、スポーツDJとして数多くのスポーツイベントを手がけるDJケチャップさんと、東京オリンピック聖火リレーのMCをはじめスポーツ各種競技のスタジアムMCとしても活躍するMC GONZAさんが、タッグを組んでのMCを務めることに。オープニングで登場した2人は、悪天候を吹き飛ばすような勢いのあるトークで会場のテンションを高めていきます。また、2人の紹介で登壇したのは朝原さん。1日目に続いて、2日目はスペシャルゲストとして、各種レースの解説に加えて、アスリートトークショーにも参加することが紹介されました。

チーム対抗レース

最初に行われたのは、チーム対抗レースです。このレースでは、1チーム4人でエントリーした全16チームが、2チームごとに1人ずつ対戦していく形でタイムを測定。チーム内上位3名の合計タイムで最速チームを決めるとともに、全出走者のなかからトップタイムをマークした男女1名が個人表彰されます。今回は、全16チームがエントリー。8組に分かれて勝負が行われました。

3秒26をマークして、男子の個人1位を占めたのは、「SUPER SPORTS XEBIO」の梶川颯太さん。女子は、前日の個人戦優勝者で、この日は「ミサオ組」の一員として出場した柴田友香さんが3秒53でトップに立ち、“2冠”を達成。2人には、それぞれ「SPEED STAR」フラッグが贈られました。
チーム優勝を果たしたのは、スポーツ用品ショップの同僚で組んだ「SUPER SPORTS XEBIO」。個人1位の梶川さんを筆頭に各選手が好記録をマークして、合計タイム10秒05で快勝。4人には、クリスタル製のトロフィーが贈呈されました。

エキシビションレース

チーム対抗レースのあとには、エキシビションレースが行われました。1日目のレースで1位となった小学生男女の各学年トップ、つまり“小学生代表”と現役陸上トップアスリートとの対決です。解説に、1日目の全体MCも務めた朝原さんが加わって、子どもたちの前日の走りにも触れつつ、また、各トップ選手たちのプロフィールも紹介しながら、各レースを紹介していきました。

エキシビションレースに先立ち、陸上界のレジェンドと現役トップ選手によるデモンストレーションダッシュが行われました。レジェンドとして登場したのは男子400mで一時代を築いた金丸祐三さん。世界選手権は2005年ヘルシンキ大会から2017年ロンドン大会まで7大会連続、また、オリンピックは2008年北京、2012年ロンドン、2016リオ大会に3大会連続出場。日本選手権では大阪高校3年の2005年に初優勝を果たしてから実に11連覇の偉業も達成している名スプリンターです。対する現役トップとして登場したのは、跳躍の伊藤陸選手(スズキ)。三段跳17m00、走幅跳8m11の自己記録を誇り、東京世界選手権には走幅跳での出場を果たしている気鋭のジャンパーです。
結果は、伊藤選手が3秒43、金丸さんは3秒54で、現役アスリートの勝利。「やっぱりスタートは苦手。現役選手は速いので、その差が出たと思います」と金丸さん。伊藤選手は「跳躍では隣に人がいる状態で走ることがないので、ちょっと緊張しました」と振り返りました。

続いて行われたエキシビションレースには、その伊藤選手も出場。さらに前日もゲストとして活躍していた坂井選手のほか、吉津拓歩選手(ミキハウス、東京世界選手権混合4×400mリレー入賞)、宮城辰郎選手(日星電気、100m10秒14)、鈴木涼太選手(スズキ、2022年世界選手権リレー代表)、壹岐いちこ選手(ユティック、2019年世界リレー代表)、壹岐あいこ選手(大阪ガス、東京オリンピックリレー代表補欠)、青山華依選手(ミキハウス、東京オリンピックリレー代表)、山中日菜美選手(滋賀陸協、100m11秒51)という豪華な顔ぶれとなりました。10名の小学生が参加して行われたレースは、対戦する子どもの年齢に合わせて5~7mのハンデをつけての実施に。20mという短い距離のなかでのハンデや雨足が強まる時間帯に重なったことも影響して、アスリートは大苦戦。どのレースもフィニッシュまで目を離せない白熱の展開となり、会場は大いに盛り上がりました。

アスリートトークショー

続いて、プログラムは、アスリートトークショーの時間に。雨の影響もあり、スポーツ別タイムトライアルに出場する選手の屋内待機エリアを利用。レースにエントリーしている各界の面々が、ずらりと顔をそろえたなかで開催されました。

登壇したのは、スペシャルゲストの朝原さんに加えて、サッカーの近藤岳登さん、プロ野球の井川慶さん、そして陸上界からは男子100mの栁田大輝選手(東洋大学、ダイヤモンドアスリート修了生)の4名です。近藤さんはJリーガーとして活躍したのち、現在は吉本興業の所属で2019年R-1グランプリセミファイナリストにもなっています。投手だった井川さんは阪神タイガースで2度のリーグ優勝に貢献する実績を残したほか、ニューヨーク・ヤンキースでも活躍した人物。栁田選手は、ご存じの通り、高校時代から日本代表に名前を連ね、東京世界選手権男子4×100mリレーでは2走を務めて6位に入賞。100mは今季10秒00まで記録を伸ばしてきた若手のエースです。
ここでは進行役を務めたDJケチャップさんが、近藤さんや井川さんからサッカー、野球における「走り」について話を聞いたほか、栁田選手には「30mで一番大事なのは?」と質問。これに対して「どれだけ音に素早く反応してスタートできるか」と答えた栁田選手に、「そのコツを、みんなに教えて」とリクエストし、栁田選手がジェスチャーを交えてポイントを紹介しました。

スポーツ別タイムトライアル

いよいよメインイベントともいえるスポーツ別タイムトライアルが始まりました。陸上だけでなく、さまざまなジャンルのスポーツ界から現役・元トップアスリートたちがチームを組んで、“俊足”を競おうというもの。幸いにも雨が弱まり、ほとんど気にならなくなってきましたが、安全面への配慮から、午前中のチーム対抗レース同様に走距離は20mのままで実施することになりました。

このトライアルでは、1チーム4人でエントリーして、2チームごとでメンバーが順に1人ずつ対戦していく形でタイムトライアルを行い、チーム内の上位3名の合計タイムが最も速いチームを優勝チームとするところまでは、チーム対抗レースと同じですが、全出場者の個人タイムにおいて、男女それぞれで上位6名に入ったアスリートは、「アスリートSPEED STAR決定タイムトライアル」に進出。2回レースをして最も良い記録が生かされる形で、最高記録をマークした男女各1名に、第2回「SPEED STAR」の称号が授与される形がとられました。

今回、参加したのは、15競技における単独・混合での22チーム。陸上のほか、カヌー、ゴルフ、サッカー、スキー、スポーツクライミング、3×3バスケットボール、ダンス、チアリーダーズ、テコンドー、バドミントン、ハンドボール、ラグビー、水泳、野球と、多岐にわたるジャンルが揃いました。出場者には、トークショーに登壇した近藤さんや井川さんのほか、プロチームや社会人チームで活躍する、あるいは活躍したアスリート、そのアスリートを応援するグループ、日本代表経験者などが並んだほか、武庫川女子大学からはカヌー部、水泳部、スキー部の3チームがエントリーしました。もちろん、第1回大会で4秒15のトップタイムをマークして初代「SPEED STAR」の称号を得た藤野柊斗選手も、“連覇”を狙っての参戦です。

陸上界からは、陸上男子、陸上女子、陸上マスターズ日本代表の3チームが出場。陸上マスターズ日本代表チームは、陸上マスターズ界において世界レベルで長く活躍している寺下健治さん、水口政人さん、赤堀弘晃さんに、鋭いスタートダッシュを武器に長年トップスプリンターとして活躍した九鬼巧さん(2012年ロンドンオリンピック4×100mリレー代表)が加わる強力布陣。また、陸上男子・女子は、エキシビションレースに出場したトップスプリンターたちで混合チームを結成。男子は宮城・鈴木・吉津・坂井、女子は壹岐いちこ・壹岐あいこ・青山・山中の各4選手という豪華メンバーで、他競技チームを迎え撃つことに。全22チームによる11組の対戦が行われ、各チームともに、それぞれのユニフォーム姿で登場すると、競技の特性を感じさせるフォームで疾走したり、思いがけない競技の選手が韋駄天ぶりを発揮したり、チームの一員としてマスコットキャラクターが出走したりと、このイベントならではの勝負が繰り広げられました。

最終的に、スポーツ別タイムトライアルを制したのは、陸上男子チーム。上位3名合計タイム9秒56で快勝しました。クリスタル製のトロフィーを受け取った4選手は、「雨のなか来てくださった方々の前で、陸上を本業とする僕らの走りを見てもらうことができてよかったです」(宮城)、「前回の東京大会で陸上が負けたと聞いていたので、今回しっかりトップを取り戻すことができてよかったです」(坂井)、「普段は20倍の距離を走っているので、100mが本業の方たちに“おんぶにだっこ”で優勝させてもらいましたが、本当に楽しかったです。種目に400mがあったら僕も優勝します(笑)」(吉津)、「20mという普段はやらない種目でしたが、とても楽しく走ることができました。また参加したいです」(鈴木)と、それぞれ笑顔で挨拶しました。

アスリートSPEED STAR決定タイムトライアル

そして、イベントは最後のトライアルに突入。スポーツ別タイムトライアルにおける男女上位者による第2レースとして、アスリートSPEED STAR決定タイムトライアルが行われました。男子は上位6名、女子は6位が同タイム2名となったため7名が進出しての勝負となりました。前述の通り、2レースの最も良いタイムが順位決定の対象となり、個人ナンバーワンが決定する仕組みです。

決定タイムトライアルへの進出を果たしたのは、男女それぞれ以下の選手たち。

<男子>
1位:3秒09 寺下健治(陸上マスターズ日本代表)
1位:3秒09 坂井隆一郎(陸上男子)
3位:3秒14 藤野柊斗(スポーツクライミング)
4位:3秒18 宮城辰郎(陸上男子)
5位:3秒20 江畑秀範(テコンドー男子)
6位:3秒24 九鬼 巧(陸上マスターズ日本代表)

<女子>
1位:3秒46 三橋未羽(大阪ラヴィッツ、ハンドボール)
1位:3秒46 壱岐あいこ(陸上女子)
3位:3秒47 青山華依(陸上女子)
4位:3秒48 山中日菜美(陸上女子)
5位:3秒54 壱岐いちこ(陸上女子)
6位:3秒60 桑原 藍(INAC神戸レオネッサ、サッカー)
6位:3秒60 田垣朔來羽(阪神タイガースWomen、野球)

男女ともに、1本目のトップタイムを2選手がマークしている状態。男子では、陸上マスターズのトップスプリンター寺下選手と、現役トップスプリンターの坂井選手が同タイムで首位を占めました。また、第1回SPEED STARの藤野選手が3番手で続いているほか、第1レースでその藤野選手と対戦し、長身を生かしたダイナミックな走りを見せたテコンドー男子の江畑秀範選手も5番手に位置しています。また、女子では、1レース目から同じレースで対決することになったハンドボールの三橋選手と壱岐あいこ選手が3秒46の同タイムでトップに立ちましたが、陸上女子の青山選手と山中選手が僅差で続き、あいこ選手の姉・いちこ選手も0.08秒差で5番手に。一発逆転が十分にあり得る状況です。こうして、「過去の自分(1レース目)を超えられるか?」「ライバルとの対決を制することができるか?」という陸上ならではの注目を集めたなか、アスリートSPEED STAR決定タイムトライアルがスタートしました。

トライアルは、女子・男子の順で行われましたが、会場では雨が上がる同時に風が出てきて肌寒さを感じるコンディションに。その影響か、どの選手も1本目のタイムに惜しいところで届かない状況が続き、なかなか順位を変動させることができません。女子は、1本目とぴたり同じ4秒48をマークした山中選手が2レース目のトップタイムを記録したものの首位逆転には至らず、1本目で3秒46をマークした三橋選手と壱岐あいこ選手の同記録優勝が決定。また、男子も宮城選手のみが2レース目で記録を上げた(3秒18→3秒15)ものの、3番手にいた藤野選手には0.01秒届かず逆転はかなわず。同タイム1位同士の寺下選手と坂井選手が直接対決する最終レースを迎えました。ここでは“カミソリスタート”の異名を持つ坂井選手が鋭いダッシュで序盤からリードを奪って、全パフォーマンス3位記録となる3秒11で先着。寺下選手(3秒41)を圧倒しましたが、1レース目の3秒09は上回れなかったため、男子も坂井選手と寺下選手が同記録で優勝。奇しくも男女ともに優勝者が2名という結果になりました。

表彰式では、女子・男子の順に、朝原さんから「SPEED STAR」フラッグが贈呈。各優勝者は、それぞれに、次のように挨拶しました。

「20mという短い距離だったので、どれくらいのタイムが出るのかと思っていましたが、とても楽しく走ることができました。また、他競技の方々と交流できて、とても嬉しかったです。これを機に、ハンドボールをもっともっと知っていただけたら嬉しいです」(三橋選手)

「20mという短い距離で他競技の選手と走るというのは、陸上が本業の自分にはすごく緊張することでしたが、楽しく走ることができました。私は100m・200mが専門種目なので、来シーズン、しっかり記録が出せるように頑張ります」(壱岐あいこ選手)

「かけっこって、楽しいですね。今回、観戦してくださった皆さんも、次の大会があったら、ぜひ参加してください。本当に楽しかったです」(寺下選手)

「僕は、2日間参加したのですが、いろいろな人が楽しそうな顔をしていて、“陸上って楽しいんだな”ということを再確認することができ、それをたくさんの人と共有することができた、本当にいいイベントだったと思います。ありがとうございました」(坂井選手)

こうして『SPEED STAR 30m Dash Challenge』の第2回大会は、無事に閉幕。特に2日目は、悪天候の影響で、当初の計画を変更して実施する場面もありましたが、参加した人々が柔軟かつ意欲的に対応し、誰もがとても楽しそうに臨んでいたこと、また、天候にかかわらず熱心に観戦・応援する人々が多数来場していたことが印象に残る2日間となりました。

日本陸連では、かけっこの楽しさをより多くの人々に伝えるべく、さまざまな場や機会をつくって、全国に広げていくことを目指しており、次回は、さらにブラッシュアップした形での開催を計画中。今後の「SPEED STAR 30m Dash Challenge」に関する情報は、日本陸連公式サイト内の「RIKUJO JAPAN」特設ページにて、随時ご案内していく予定です。どうぞ、お楽しみに!

参加者コメント

朝原宣治(大阪ガス、日本陸連理事)

私自身は、大阪でもともと「ストリートこども陸上」というイベントを独自にやっていたのですが、今回は、RIKUJO JAPANのなかでコラボ企画として共催することになりました。なので、1日目は「ストリートこども陸上」を主催する立場で、また、2日目は日本陸連の「SPEED STARアンバサダー」といった立ち位置で動く形となりました。企画の段階から運営の会議にも入らせていただき、「うめきた広場で実施するなら、どういう配置にするのがいいのかとか」「より盛り上げるには、どうすればいいのか」なども、皆さんと一緒に考えてきました。「1人ごとにタイム測定するよりは、競い合ったほうが面白くなるのではないか」ということで、今回のメインレーンでは、2人が競走できるようにしましたが、こうしたことで、タイムだけでなく勝負の面白さも引き出せたと感じています。

本当に充実した2日間になりましたね。1日目は、子どもたちが全力で競走する姿がとてもよかったですし、また、そのあとに行われた「個人戦」に、多くの方々が参加していたことも印象的でした。小さなお子さんもいれば、かなりお年を召した方もいましたし、あまり走ることが得意ではなさそうな人もいましたが、そういういろいろな人が挑戦しているところがよかったな、と。このイベントが目指している「誰でも気軽にかけっこを楽しもう」という理念そのものの景色が見ることができました。

また、今日(2日目)は今日で、あいにくの雨となったなか、アスリートたちの熱い戦いを見ることができました。走りの特徴やユニフォームなども含めて、そのスポーツならではの“競技色”が出ていて、とても面白かったです。

5月の東京大会、そして今回の大阪大会と来ましたが、現在、興味を持ってくださっている別の自治体さんも出てきています。こういう試みをもっと増やしていったら、「30mダッシュ」というコンテンツは広がっていくのではないかと期待しています。


坂井隆一郎(大阪ガス)

梅田で走るなんて、経験したことはなかったので、大阪の真ん中で走れて本当に楽しかったです。1日目)は、たくさんの子どもたちと走れたことが楽しかったです。レッスンでは講師役も務めましたが、「この子たちが、ずっと陸上を続けてくれて、“あのとき、坂井選手がこういうことを言っていたな”と少しでも思い出してくれたらいいな」と思いながらアドバイスしました。

1日目のドリームレースは、本当に大人げなかったのですが(笑)、スタートラインに立ってみると、7mのハンデは結構距離があったので、もう全力で行きました(笑)。自分としては盛り上がるんじゃないかと考えていたのに、逆に引かれてしまったので、それがちょっとショックで(笑)。でも、今シーズンはあまり試合に出られなかったので、元気に走っている姿をお見せすることができてよかったなと思っています。

雨のなかでの開催となった2日目も、小学生と一緒に走れたほか、いろいろな競技の方と一緒に走ることができて、すごく良い時間を過ごすことができました。2日目は、20mでのレースとなりましたが、20mって本当に短くて、あまりに短すぎて、正直、負けるのではないかと思いました。スポーツ別タイムトライアルは同記録ではあったものの、優勝することができたのでホッとしています。

昨日の30mでの4秒09、今日の20mは3秒09と、どちらも過去最高タイムということで、会場では「世界記録」という言葉もいただきました。公認でなくても、「世界記録」と言ってもらえるのは嬉しいですね。今後も、この大会を開いていただけるのであれば、出場して、どんどん記録更新をしていきたいなと思います。

このイベントを通して感じたのは、陸上の楽しさです。僕も少し忘れかけていたところもあったので、これからは大切にしたいですし、子どもたちも、そこを一番に大事にしてもらえたらなと思いますね。


文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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