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2022.02.18(金)

【記録と数字で楽しむ第105回日本選手権20km競歩・女子】世界選手権選考会!岡田の7度目の優勝なるか!?競歩の「速さ」をおさらいしましょう



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<2月15日に、藤井菜々子(エディオン)の欠場が発表された。以下は、欠場発表前に執筆したものではあるが、今回の「日本選手権女子20km競歩」を楽しむおともにしていただければ幸いである>

・文中敬称略。
・所属は当時のもの。


岡田久美子vs藤井菜々子のガチンコ勝負に注目!!

2月20日に神戸市・六甲アイランドで行われる「日本選手権20km競歩」の女子は、2014年度(第98回)から19年度(第103回)まで6連勝していた岡田久美子(ビックカメラ。現在は「東京陸協」の所属名)に前回は藤井菜々子(エディオン)が「ストップ」をかけ初優勝を果たした。なお、20km競歩の日本選手権は、年が明けた2月に行われるため、実際にレースが行われる西暦年よりも1年前の「年度」の大会として行われている。よって、今回は「2021年度」の「第105回大会」ということになる。

また、7月にアメリカ・オレゴン州ユージンで行われる世界選手権の代表選手選考会も兼ねている。世界選手権の参加資格記録は、「1時間31分00秒」。日本陸連が設けている派遣設定記録は「1時間30分00秒」だ。

午前8時50分からの男子のレースが終了したあと、10時40分にスタートとなる。
今回のレースでは、他の選手から実力的に抜け出ている藤井が連覇を果たすか、岡田がリベンジで7回目のタイトルを獲得するかが見どころになりそうだ。
なお、87年度(第71回)から97年度(第81回)まで10kmWで行われていた時代を含め、最多優勝回数は6回。
三森由佳(山梨学院大→綜合警備保障/91・93・95~99年度)、川崎真裕美(海老澤製作所→富士通/03~05・07・09年度)、そして岡田の3人だ。今回、岡田が優勝すれば7回で単独トップとなる。

岡田と藤井のこれまでの対戦成績は、5000mWと10000mWを含めて以下の通り。

年月日場所競技会・種目岡田久美子勝敗藤井菜々子タイム差
2016.10.10北上国体5000mW1)21.24.94○●2)22.14.520.49.58
2016.12.11諫早長崎競歩10000mW1)44.09.84○●2)47.46.973.37.13
2018.02.18神戸日本選手権20kmW1)1.32.22.○●17)1.43.28.11.06.
2018.09.22長居全日本実業団10000mW1)43.55.22○●2)44.13.370.18.15
2018.10.08福井国体5000mW1)21.08.97○●2)21.24.400.15.43
2019.02.17神戸日本選手権20kmW1)1.28.26.○●2)1.29.55.1.29.
2019.06.08ラコルーニャIAAFチャレンジ20kmW6)1.27.41.○●12)1.28.58.1.17.
2019.09.29ドーハ世界選手権20kmW6)1.34.36.○●7)1.34.50.0.14.
2021.02.21神戸日本選手権20kmW2)1.31.51.●○1)1.30.45.1.06.
2021.08.06札幌五輪20kmW15)1.31.57.●○13)1.31.55.0.02.
2021.09.25長居全日本実業団5000mW1)21.24.95○●2)21.45.380.20.43

すべての種目では岡田の9勝2敗。20kmWに限ると4勝2敗だが、21年以降は藤井が2連勝中。
20kmWの過去6回の両者のタイム差は、岡田が勝っていた時は、11分06秒、1分29秒、1分17秒、14秒と次第にその差を藤井が縮めてきた。そして、前回の日本選手権では藤井が15kmからのペースアップで突き放し1分06秒差で初勝利した。五輪では18kmで岡田に9秒差をつけていた藤井が2秒差で逃げ切って連勝した。
今回も序盤から2人が抜け出してのマッチレースとなり、後半あるいは終盤のペースアップでどちらが抜け出るか? というレースになりそうだ。当日の気象状況にもよるが、両者の競り合いで「日本新記録」が誕生する可能性もある。

なお、藤井は3月4日にオマーンのマスカットで行われる世界競歩チーム選手権の代表ともなっているので、日本選手権と2週間での連戦となる。ただし、日本代表は藤井1人のため「チーム戦」にはならない。

2人に続きそうなのは、東京五輪代表の河添香織(自衛隊体育学校/五輪は40位)、前回3位で前日本記録保持者(1.28.03./2009.1.25)でもあった35歳のベテラン渕瀬真寿美(建装工業)あたりか? 前回4位の熊谷菜美(関彰商事)以下の選手も3位争いに食らいつきたいところだろう。

残念ながらテレビ中継はないが、ネットによるライブ中継があるのでそちらでお楽しみ頂きたい。
ただし、TVでのマラソンや駅伝の中継と違って中継車による正面などからの映像ではなく、スタート&フィニッシュ地点付近と折り返し地点に設置された3台のカメラでの配信になる予定。ただ、片道500mのコースを往復するので、レースの様子はしっかりと観られるはずだ。
なお、会場では競歩の日本トップクラスの選手であった谷内雄亮さんが実況&解説アナウンスをされる予定だ。その音声もライブ中継で流れてくるなずなので、画面に映っていない箇所があっても、レースの模様はかなり把握できることだろう。

ここでは、その「観戦のお供」にいくつかの視点からのデータなどを紹介する。

なお、男女の「日本選手権20kmW」が終わったあと、午後からは「第33回U20選抜競歩」が行われる。
男子10kmWが12時45分、女子5kmWが13時50分のスタートだ。

何年かあとに日本の競歩界を引っ張っていくことになるであろう選手たちである。
こちらもライブ中継されるので、引き続きどうぞお楽しみいただきたい。


五輪&世界選手権の入賞者

<五輪>

入賞者はまだいない。
最高成績は、
2012年 9位 1.28.41. 渕瀬真寿美(大塚製薬)
五輪での日本人最高記録もその時のものだ。

当初は「11位」でのフィニッシュだったが、2位と6位の選手がのちにドーピング違反で失格して順位がふたつ繰り上がった。最終的には繰り上がりで8位になった選手との差は「27秒」で入賞まで距離にして100mほど及ばなかった。

<世界選手権>

2009年6位1.31.15.渕瀬真寿美(大塚製薬)
2019年6位1.34.36.岡田久美子(ビックカメラ)
 〃7位1.34.50.藤井菜々子(エディオン)
世界選手権日本人最高記録は、上記の渕瀬の「1時間31分15秒」だ。

岡田は世界大会には5大会連続出場で、
15年世選・25位
16年五輪・16位
17年世選・18位
19年世選・6位入賞
21年五輪・15位
の成績を残してきた。

藤井は、
19年世選・7位入賞
21年五輪・13位

渕瀬は、
07年世選・27位
09年世選・6位入賞
11年世選・途中棄権
12年五輪・9位
13年世選・26位
19年世選・11位=50kmW


日本記録と大会記録

日本記録は、1時間27分41秒 岡田久美子(ビックカメラ)2019年6月8日 IAAF競歩チャレンジ(ラコルーニャ/スペイン)。
大会記録は、1時間28分03秒 渕瀬真寿美(龍谷大)2009年。

【日本記録と大会記録の5km毎】

距離日本記録 大会記録 
5km22.06.22.06.22.16.22.16.
10km44.11.22.05.44.34.22.18.
15km1.06.00.21.49.1.06.32.21.58.
20km1.27.41.21.41.1.28.03.21.31.
前後半44.11.+43.30. 44.34.+43.29. 
前後半差△0.41. △1.05. 

渕瀬の大会記録は、岡田が更新するまで日本記録として10年間残っていた。また、日本人選手が国内でマークした最高記録でもある。


日本記録vs平均的女子中学生20人の勝負は?

男子のところでも同様のことを書いたが、文部科学省のデータによると、2020年の12歳(中学1年生)から19歳(大学2年生)の各年齢の女子1000m持久走の平均タイムが最も速かったのは、13歳(中学2年生)の「5分02秒54」。1000m平均的な中学2年生の女子がこのタイムで1kmずつ20人でリレーして20kmを走ると「1時間40分50秒8」。
日本記録には13分10秒、大会記録にも12分48秒も離される計算だ。距離にして、約2.5kmもの差をつけられることになる。

中学2年生の1000m走の平均値と標準偏差(36秒28)から算出した20kmW日本記録の1kmの平均タイム(4分23秒05)の偏差値は「60.9」になる。
「偏差値60.9」ということは、全体の上位から13.8%の位置。100人中の上位14番目だ。

1990年頃まで(?)の小中学校での通信簿の5段階相対評価は、「5=7%。偏差値65以上」「4=24%。偏差値55~65」「3=38%。偏差値45~55」「2=24%。偏差値35~45」「1=7%。偏差値35以下」が基準となっていた。これからすると「偏差値60.9」は、「4」ということで、女子のみの40人のクラスでは5~6番目あたりの位置になる。

元気な女子中学2年生で、しかも100人中14番目くらいの1000mの走力がある子が20人でリレーして、何とか岡田の日本記録といい勝負ができるのである。

ついでに20kmWの世界記録は、1時間23分49秒(楊家玉/中国/2021年3月20日。非公認ではロシア選手の1時間23分39秒がある)。1kmあたりの平均は4分11秒45になり、上述の中学2年生の平均値と標準偏差から計算すると「偏差値64.1」。上位から7.9%の位置である。こちらは、100人中8番目(40人クラスなら3番目)に位置する中学2年生が20人で1kmずつリレーして、いい勝負というスピードになる。

このように、「歩く」といっても、とてつもなく速いのは、男子と同様だ。

五輪や世界選手権で実施される種目ではないが、トラック3000mWの世界最高は11分35秒34(室内の記録。1000m平均3分51秒78)、5000mWは20分01秒80(1000m平均4分00秒36)だ。もっと長いロード50kmWの世界記録は、3時間50分42秒(1km平均4分36秒48)。さらに100kmWの世界最高は10時間04分50秒(1km平均6分02秒9)である。

50kmWの世界記録3時間50分42秒から比例計算で42.195kmの通過タイムを推定すると「3時間14分42秒」。
市民ランナー向けの月刊誌「ランナーズ(アールビーズ発行)」の集計によると、コロナ以前の16~18年度に日本国内でエリート選手から市民ランナーを含めて年間8万人弱の女性がフルマラソンを完走していた。そのうち、50kmW世界記録の42.195kmの推定通過タイムより早い記録で走れたのは、全体の1.2%ほど(千人弱)。それくらいのタイムで、50kmWの世界記録保持者はフルマラソンの距離を通過し、あと8kmあまりを歩いてしまうのだ。
市民ランナーにとっては、よりレベルの高い憧れの「サブスリー(3時間切り)」は0.4%ほど(3百数十人)だった。世界歴代1・2位の選手がリレーすれば、2時間57分台くらいで42.195kmを歩ける計算になる。日本歴代1・2位の岡田(1.27.41.)と渕瀬(1.28.03.)のリレーならば3時間05分台くらいになる。

競歩選手の速さを実感していただけただろうか?


20kmW1時間30分切りの選手の走力は?

男子の記事でも同様のことを紹介したが女子の記録も調べてみた。
日本人で「1時間30分00秒切り」をマークした歴代で6人が「走ったタイム」のデータである。

【女子20kmW日本歴代上位選手の走力】
・所属は競歩の記録を出した時のもの。
20kmWの記録 氏名(所属)年月日800m1500m3000m5000m

1)1.27.41. 
岡田久美子(ビックカメラ)

2019.06.082.16.75=中34.38.88=中39.47.64=高117.10.41=高1
2)1.28.03. 
渕瀬真寿美(龍谷大)
2009.01.25----9.39.4=高316.43.10=大1
3)1.28.49. 
川﨑真裕美(富士通)
2009.01.25--------
4)1.28.58. 
藤井菜々子(エディオン)
2019.06.082.17.64=中34.39.90=中39.33.51=高216.25.39=高2
5)1.29.11. 
大利久美(富士通)
2011.02.20--------
6)1.29.39. 
小西祥子(大阪陸協)
2009.01.25------17.40.5=高3

岡田は、上尾東中学校(埼玉)2年生(05年)の時に800mで、3年生では800m・1500mで全日本中学に出場している。
熊谷女子高校2年生(08年)の全国高校駅伝では3区(3km)を10分01秒で走って区間18位。高校3年の埼玉県高校駅伝では1区(6km)を20分47秒で区間2位の成績を残している。

渕瀬は、全国高校駅伝で「入賞常連校」の須磨学園(兵庫)にいたため都大路を走ることはなかったが、高校3年生(04年)の時の3000m9分39秒4(チーム内14位)は、全国高校リストの140位だった。全国高校駅伝で入賞レベルの高校でなければ「エース級」の走力を有していた。
龍谷大1年生(05年)の全日本大学女子駅伝では最長区間の4区(10km)を34分15秒で走って区間9位。同年度(06年2月)の全日本大学選抜女子駅伝では関西学連選抜チームの1区(5km)で16分39秒で区間9位。2年生(06年)の全日本大学女子駅伝では3区(9.1km)を32分36秒で区間20位。3年生(07年12月)の全日本大学女子駅伝でも関西学連選抜チームの1区(5km)で17分04秒(区間18位)の成績を残している。

藤井は、那珂川北中学校(福岡)1年生(12年)の時に100m14秒38(+0.3)、800m2分32秒89。2年生からは800m・1500m・3000mを中心に取り組んだ。北九州市立高校2年生(16年)の福岡県高校駅伝では1区(6km)を20分24秒で区間3位。次の九州高校駅伝では5区(5km)を走って17分01秒で区間2位。3年の福岡県高校駅伝4区(3km)では9分49秒で区間2位だった。2年時の3000m9分33秒51は、その年の高校144位。5000m16分25秒39は同43位だった。

大学生の時も駅伝で活躍していた渕瀬以外は、いずれも「走る種目」は高校生までだったが、岡田と藤井も全国大会出場レベルの走力を有していたのである。



「競歩のルール」については、男子の最後に詳しく解説しているので、そちらを参照いただきたい。
【記録と数字で楽しむ第105回日本選手権20km競歩】男子



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)



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■第105回日本陸上競技選手権大会・20km競歩 ライブ配信
https://youtu.be/xpKmlPsqOXA


■第105回日本陸上競技選手権大会・20km競歩 大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1600/

■第105回日本陸上競技選手権大会・20km競歩 スタートリスト
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1600-5.pdf

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