
東京2025世界陸上競技世界選手権大会の日本代表選手は、7月4~6日に開催された第109回日本陸上競技選手権大会で、新たに6名の選手が条件を満たして代表に決定。現時点でトラック&フィールド種目の代表は全9選手となっています。日本陸連は7月7日、日本代表選手を招いての記者会見を東京都内で行いました。
この日の記者会見は、東京世界選手権が行われる国立競技場に近いホールで開催され、TBSの石井大裕アナウンサーが司会進行を務めて、13時からスタートした。まず冒頭で発表されたのは、同日付けで、新たに「陸上日本代表オフィシャルパートナー」となった、株式会社ACNホールディングスとの契約締結のニュースです。株式会社ACNホールディングスは、オフィスソリューションコンサルティングで実績を拡大している企業で、スポーツ界においては、野球やゴルフをはじめとして、さまざまな分野で選手や大会への支援・協賛等に取り組んでおり、スポーツ振興に大きく貢献していることで知られています。今後は、東京世界選手権をはじめとして、国際舞台に挑む陸上日本代表チームウェアの胸元を飾り、選手たちの活躍を後押ししていくことになっています。
続いて、記者会見に出席する選手が、1人ずつ紹介されて登場しました。舞台に姿を現したのは、日本選手権前の段階で代表入りを決めていた女子やり投の北口榛花選手(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)、男子110mハードルの村竹ラシッド選手(JAL)のほか、昨日までの日本選手権において条件を満たして、即時内定した鵜澤飛羽選手(JAL、男子200m)、田中希実選手(New Balance、女子1500m・5000m)、泉谷駿介選手(住友電工、男子110mハードル)、井之上駿太選手(富士通、男子400mハードル)の6名です。会場には、メディアや関係者が集まったほか、観覧に当選したRIKUJOファンクラブ( https://fan.pia.jp/rikujo-fc/ )会員の17名も来場。RIKUJOファンクラブの皆さんは、最前列で会見の模様を見守りました。
記者会見:代表に選ばれての思いと、大会に向けての意気込み
横一列に並ぶ形でハイスツールに腰かけた選手たちは、まず石井アナから投げかけられた「東京世界陸上の日本代表に選ばれた感想と、大会への意気込みを」という代表質問に答えたうえで、その後、来場したメディア関係者からの質問に答えました。主なコメントは、以下の通りです。【記者会見:日本代表選手コメント(要旨)】
◎北口榛花(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生) 女子やり投代表

出場は、(前回の金メダル獲得により)2年前に決まったわけだが、今、そのブダペストで頑張った自分に感謝している(笑)。自国開催の世界陸上は、競技人生を通して、最初で最後だと思っている。世界陸上で1番を取る喜びだったり、その良さだったりは、一番自分がわかっているので、また東京で、皆さんの前で、金メダルを取れるように、しっかり準備して臨みたい。
(オストラヴァの大会で違和が出た)右肘の痛みに関しては、帰国してからすぐにメディカルチェックを受けて、治療ができたおかげで、痛み自体はなくなってきているが、9月(の世界選手権)が本番だということで、日本選手権を含めて、予定していた7月の試合はキャンセルした。9月に向けて徐々にリスタートしていければと思っている。
日本選手権期間中は、「自分は、こんなに陸上が好きだったんだな」と思うくらい、テレビやYouTubeから離れられなかったし、すごく楽しめた。特に2日目に関しては、感動するポイントが自分のなかに多々あって、すごく良い刺激になったし、自分も腐らず頑張りたいと思った。
今後については、右肘の状態をみながら…ということにはなるが、8月20日に行われるローザンヌ(のダイヤモンドリーグ)で復帰できるように頑張りたいという意思はチームで共有している。ローザンヌの結果次第では、(ダイヤモンドリーグ)ファイナルに進出する可能性もあるので、その2試合に出られる状態となることを願っている。本音としては、「世界陸上の前に試合はしておきたい」という気持ちがある。そこでの復帰を目指して、再開しているトレーニングを充実させていきたい。また、試合のあとは、おそらくチェコのチームメイトたちと一緒に合宿して、東京に戻ってくることになると思う。
◎村竹ラシッド(JAL) 男子110mハードル代表

自国開催の世界陸上に出場できるということで、非常に嬉しく思っているし、2カ月先のことにはなるが、とても楽しみ。本番に向けて、まだまだ時間があるので、万全の状態でパフォーマンスが発揮できるように、しっかり準備していきたい。
今週の金曜日…7月11日には、モナコのダイヤモンドリーグに出場する予定で、今、練習を進めている。その後は、1カ月ほど、しっかり練習する期間を設けようとコーチと話し合っている。その練習期間を大事にして、世界陸上に臨みたいと思っている。練習期間を終えたあと、どういうローテーションで試合に出ていくかはまだわからないが、まずは今週の試合でしっかり課題を確認して、万全の状態で本番に臨めるようにしていきたい。
◎泉谷駿介(住友電工) 男子110mハードル代表

ハードルで代表内定できて、ホッとしている。先日の日本選手権のような感じで、日本選手権よりも盛り上げる世界陸上を想像したら、本当に今から楽しみな気持ちでいっぱいである。今まで良かったことも悪かったことも、「すべてこの東京の世界陸上のための過程だった」と言えるように頑張りたい。
日本選手権は、走幅跳にも出場するつもりでいたが、110mハードル決勝の(ウォーミング)アップで脚(右ふくらはぎ)を痛めてしまい、(最終日の)走幅跳は欠場した。ハードルの決勝が終わった直後は、歩くのも痛みを感じていたが、数日経って、状態は良くなってきている。周りの方の協力のおかげで、順調に治ってきてはいる。まだメディカルチェックなどは行っていないので、これから実施する予定である。
僕は、ここから(世界選手権に向けて)は、国内でレースを組んでいこうと思っている。国内でレースを組ながら、自分の課題であるハードルのインターバルの刻みなど、今まで以上の動きができるように確認しながら練習を積んでいこうと考えている。
◎田中希実(New Balance) 女子1500m・5000m代表

以前から2種目で世界陸上に出たいと言っていたので、改めて2種目で(出場を)決めることができたことに安堵感があるというのが正直な気持ち。嬉しいという気持ちもあるが、やっと世界陸上に向かっていけるなという気持ちがあるし、世界陸上に向けて、その2種目でしっかり勝負できるように頑張りたいと思う。
今後は、高地トレーニングを中心に海外でじっくりとトレーニングをしつつ、ダイヤモンドリーグ等にも出場していく予定。現状で、ロンドンダイヤモンドリーグの5000mに出場が決まっているので、そういったレースに出たりしながら、実戦と合宿の両面で地力の底上げをしていきたい。今回の日本選手権は、地力の確認ができた1つの大会だったと考えているが、今シーズンに入って、やっとそういうふうに思うことができたという側面もある。ここから「本腰を入れて、トレーニング」という気持ちで臨んでいこうと思っている。
◎ 井之上駿太(富士通) 男子400mハードル代表

代表の内定をいただいて、嬉しさよりは安堵感のほうが勝っているというのが、今の率直な気持ちである。また、「世界を相手に戦える」ということに、すごく今はワクワクしている。本大会では、日本記録(47秒89、為末大、2001年)の更新と決勝進出を目標に、頑張りたいなと思っている。
まずは9月まで2カ月間、しっかりと練習を積むというところを軸に考えているが、「日本選手権で3位以内を取らないといけない」という(選考の)ルール上、ここにしっかり合わせることをやってきたために、圧倒的にレース数が足りていないということが、(日本選手権を終えて)課題としてあったので、練習を積みながら、ある程度、実戦形式のような形で、国内で2~3試合ほど転戦できればと考えている。
◎鵜澤飛羽(JAL)男子200m代表

内定したことに、ひと安心している。これから世界と戦っていくうえで、まだ自分の走りとしては納得できるものがまだ少ないと思っている。世界陸上では決勝の場で戦いたいと思っているので、あと2カ月ちょっとの期間、しっかり練習して、それが達成できるようにしていきたい。
今後については、当初の計画では海外に行って、連戦に臨む予定だったのだが、まだ実力が足りなくて、(出場を目指していた大会に)出場することができない状況にある。このため、現在、コーチとは、「7月と8月に1回ずつ予定している合宿で、しっかり練習を積めればな」と話している。また、不安がある面の治療なども行い、世界陸上ではそういう面がなくなったすっきりした状態で、臨めるような2カ月にしたいと考えている。
RIKUJOファンクラブ会員からの質問に答えて
報道関係者との質疑応答のあとには、観覧に訪れていたRIKUJOファンクラブ会員からの質問に答える時間が設けられました。「陸上が大好きで、日本選手権も3日間通った」という女性からは、各選手に「世界陸上で、自分の種目以外で注目している種目や選手がいたら教えてほしい」というリクエストが。これに対して、「一観客として楽しみにしているのは男子棒高跳のデュプランティス選手(フランス)」と述べたのは井之上選手。「どれだけの高さを跳ばれるのかと思うと…」と答えると、質問者が思わず「私も楽しみにしているんです」と答えて、会話が始まってしまう場面も。井之上選手は、「僕もすごく楽しみにしているので、ぜひ、一緒に応援できたら」と答えて会場を和ませました。泉谷選手は、「僕は、走幅跳をとても楽しみにしている」と回答しましたが、石井アナが「誰か注目選手は?」と重ねて問うと、戸惑いがちに「すみません、あんまり詳しくないんで…」と答えたことで会場は大爆笑。「ライバルですからねえ」という石井アナの“助け船”に同意しつつ、「いろいろと全員に注目したい」と答えました。
北口選手が挙げたのは、女子走高跳です。「選手一人一人の跳ぶ前後の行動が、それぞれに個性が強くて面白く、見ていてとても楽しい。競技だけでなく、そういうところも楽しめるんじゃないかと思う」と、試技の間もスタジアム内で過ごしているフィールド種目ならではの観点で、見どころを紹介しました。
村竹選手は、男子400mハードルを挙げ、「ブラジルのドスサントス選手、ノルウェーのワーホルム選手、アメリカのベンジャミン選手が、“3強”と呼ばれている。その争いも楽しみだし、そこに割って入る選手も出てくるかもしれないので、すごく注目したい」とコメント。その言葉に、石井アナウンサーが、すかさず「井之上選手」と話を振ると、マイクを取った井之上選手は、笑顔で「頑張ります!」と答えて会場を笑わせました。
開口一番、「言おうと思っていたのを、2つも言われてしまった…」をつぶやいた鵜澤選手は、「じゃあ、マイル?」と男子4×400mリレーをピックアップ。「自分も“どの国が勝つのかな”と予想しているが、正直全然分からない。どの国が勝ってもおかしくないと思うし、意外と100(m)とかに出ている選手がマイルを走っていたりすることもあり、そういう選手が長い距離を走るという見たことのない走りを見られるのもマイルの面白いところ」と、こちらはショートスプリントをメインとする選手ならではの目のつけどころをみせました。
田中選手は、女子400mハードル、400m、4×400mリレーで活躍するシドニー・マクラフリン・レヴロン選手(アメリカ)とフェムケ・ボル選手(オランダ)をピックアップ。「あの2人のライバル関係が面白い。それぞれに個性があって、かつ王者の走りを見せるので、“どちらが勝つんだろう”と毎回気になっている」と言います。さらに、直接対決するレースがあまり多くない点を指摘して、「それだけに世界陸上で衝突するとしたら、心臓がバクバクするんじゃないかと思う」と期待を寄せました。このほか、6月中旬に出場したダイヤモンドリーグ・ストックホルム大会で「元気をもらった」というあるエピソードを披露しつつ、女子走幅跳で活躍するタラ・デイビス・ウッドホール選手(アメリカ)の名前も挙げました。
続いて、マイクを持った男性からは、北口選手に向けて「大舞台で結果を残すための秘訣があったら教えていただきたい」との質問が挙がりました。これに対して、北口選手は、「特別なことは何もしていなくて、本当に“いつも通り”。どれだけ大きな試合でも、どれだけ目指しているものが高くても、とにかく“普段通りの自分”で試合に臨むことが一番イレギュラーなく過ごせる」とコメント。続いて「起こり得ることを全部想定したなかで、試合を進めることによって、何が来ても焦ることなく、自分のやることだけに集中するのが秘訣というか、自分のやっていること」と、陸上競技の場面以外にも役立ちそうな考え方を披露しました。
七夕にちなみ短冊に書き込んだ願いは?

この日は、7月7日ということで、七夕にちなんだ準備も用意されました。会場には日本選手権期間中にファンやアンバサダー、大会メダリストたちが短冊に願いを書いて吊るした笹を飾られていましたが、登壇した6選手も会場到着後に、自信の願いを記入していました。選手たちは、願いをしたためた短冊を手に、それぞれの「願い事」とその理由を1人ずつ披露していきました。
『早く自分が戻ってきますように』と記した田中選手は、「今季は、“自分らしさはなんだろう”と変に考えすぎて、自分がわからなくなることが多かった。“自分”というのが流動的で全然定まらない状態なので、早く戻ってきたらいいなと思っている」と明かしました。
『JALの先輩方に追いつけますように』と書いたのは社会人1年目の鵜澤選手。「去年のパリオリンピックで、ラシッドさんは(決勝への入場の際に)“ジョジョ立ち”したのがすごくうらやましかった(笑)し、北口さんが表彰式で国歌が流れたときに目をウルウルさせているのを見て、自分もウルウル来て(笑)、“ああいうふうに活躍したい”と思った。自分にとって一番身近で、一番偉大な先輩方。2人に追いつけるようにしたい」と話しました。
「(田中・鵜澤の)お二人がすごくいいメッセージを言ってくれたあとに、本当に申し訳ないのだが…」と前置きしたうえで、村竹選手が見せたのは『これ以上体重が増えませんように』という現実的な願いです。「トレーニングを重ねていると体重が増えるが、毎年シーズン中は勝手に減っていくのに、今年はなぜか増えている。競技に響かないようにしたいと思って願った」と打ち明けてくれました。
北口選手の願いは、『やりがまっすぐとびますように』です。「こんなのを願ったら、やり投選手になったらダメだと思うのだが…」と苦笑いしつつ、「そう願いたいくらい本当にまっすぐ飛ばなくて悩んでいる」と述べ、「やりがまっすぐとんでくれたら、必ず記録も出ると信じている」とコメント。「その日を待っていたらできないと思うので(笑)、実現させられるように頑張りたい」と言葉に力を込めました。
イラストつきで『足健康』と書いたのは泉谷選手。「僕もすごい初歩的だが、足の健康を祈って、(右足を痛めた)今回みたいなことにならないよう、世界陸上は健康であることを祈って頑張りたい。結局、一番大事かなと思っている」と述べました。
最後となった井之上選手が見せた短冊には、『世界陸上のスタートラインに笑顔で立てますように』と記されていました。「自国開催なので、想像しきれないようなプレッシャーや不安に襲われると思うが、このジャパンのユニフォームに身を包んだ瞬間に、“自分ならできる”という自信を持って、笑顔でスタートラインを立てるよう、最大限の準備ができればいいなという願いを込めた」ときっぱり。
それぞれの心からの願い事が記された短冊を、笹に吊るして、記者会見はお開きとなりました。
※記者会見時における各選手のコメントは、司会者との質疑応答部分および記者からの質問に応じた各選手の発言を抜粋し、まとめています。
取材・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
■参考情報

▼東京2025世界陸上競技選手権大会 大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1927/
▼東京2025 日本代表選手選考要項(トラック&フィールド種目・リレー種目除く)
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202412/10_171138.pdf
▼第109回日本選手権・代表選考条件
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202506/18_142729.pdf
■【マラソン/競歩】 既発表の代表選手
▼競歩代表選手(2025年4月16日発表)https://www.jaaf.or.jp/news/article/21572/
▼マラソン代表選手(2025年3月26日発表)
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21504/
▼マラソン代表選手(2025年5月8日発表)
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21635/
■関連リンク
▼陸上日本代表オフィシャルサイトhttps://www.jaaf.or.jp/teamjapan/
▼"新"日本代表ウェア発表~進化した"サンライズレッド"を身にまとい、世界へ挑む~
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21762/
▼陸上日本代表 歴代ユニフォーム紹介
https://www.jaaf.or.jp/uniform/
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