
第109回日本選手権10000mが4月12日、9月に国立競技場で開催される「東京2025世界陸上競技選手権大会(東京世界選手権)」、そして5月に韓国で開催される「クミ2025アジア陸上競技選手権大会(クミアジア選手権)」の日本代表選考競技会を兼ねて行われる。会場は、熊本・えがお健康スタジアムで、同地での日本選手権は1998年以来27年ぶり(このときはトラック&フィールド種目全般での開催だった)。今回は、日本グランプリシリーズ第1戦として同日の昼間に実施される「第33回金栗記念選抜陸上中長距離大会2025(金栗記念)」の競技が終了したあと、ナイトゲームとして行われ、男子は19時35分、女子は20時15分にスタートする。
男女10000mの東京世界選手権参加資格は、ワールドアスレティックス(WA)が設定する参加標準記録(男子27分00秒00、女子30分20秒00)を突破するか、1カ国3名で設定されたWAワールドランキング(Road to TOKYO)で、本種目のターゲットナンバー(出場枠:27)内に収まることで得ることができる。ただし、マラソンを除く他の種目と同様にエリアチャンピオン(日本の場合は、アジア選手権優勝者)に加えて10000mについてはクロスカントリーのワールドランキングポイント上位者も条件つきながら参加資格を得ることができる仕組みとなっているため、ターゲットナンバー内に入ること自体が狭き門となっている種目と言えるだろう。
参加標準記録が、男女ともに日本記録(男子27分09秒80、女子30分20秒44)を上回る高い水準であるため、現時点での突破者はゼロ。日本代表選手の選考は、日本陸連が設けている代表選考要項( https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202412/10_171138.pdf )に則って進められるが、今大会では、参加標準記録を突破して3位以内でフィニッシュすれば代表に即時内定する。また、内定者が出なかった場合も、日本選手権の成績(順位)が、その後の選考においても最も高い優先度となっているため、「一つでも上」を狙っての激しい戦いが繰り広げられることになりそうだ。
今大会でも、第107回大会から導入されている電子ペーサー(ウェーブライト)が用いられるほか、男女ともにオープンで参加する実業団所属の外国人選手たちがペースメーカーを務める予定。東京世界選手権に向けては、ロード種目(競歩、マラソン)の代表選手は出ているが、トラック&フィールド種目については、ブダペスト大会優勝により、ワイルドカードでの出場が決まっている女子やり投の北口榛花(JAL)のみ。この日本選手権10000mが最初の選考競技会となり、トラック&フィールド種目の代表争いがいよいよ本格化していく。ここでは、エントリーリストに基づいて、注目選手をご紹介しよう。
※エントリー状況、記録・競技会等の結果は、4月4日時点の情報で構成。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト、アフロスポーツ
【女子10000m】
廣中、V奪還で復活へ
ターゲットナンバー入りを狙う若手にも注目
女子は、当初、オープン参加の実業団所属海外選手1名を含めた全18名がエントリーしていたが、その後、最終エントリー期限までに4名がキャンセルし、全14名で実施されることになった。そのうちの2名が、昨年のパリオリンピックに出場した五島莉乃(資生堂、前回覇者、自己記録:30分53秒31、2024年)と高島由香(資生堂、自己記録:30分57秒26、2023年)。この結果、今回、エントリー自体を見送っていた小海遥(第一生命グループ)も含めて、残念ながらパリオリンピック日本代表3選手の姿がないなかでのレースとなる。こうなると、優勝争いの大本命は、廣中璃梨佳(JP日本郵政G)ということになるだろう。自国開催の東京オリンピックで5000m9位(14分52秒84=当時日本記録)・10000m7位(入賞)の実績を残している選手。その後の世界選手権も2022年オレゴン大会・2023年ブダペスト大会と2大会連続で2種目に出場し、ブダペスト大会では10000mで7位入賞を果たすなど、まさに長距離界の若手エースといえる存在だ。しかし、昨シーズンは、5月3日に開催された日本選手権10000mを体調不良により欠場。2021年から続いていた連覇が途絶えるとともに、パリオリンピックの出場も逃す悔しい結果となった。その後は秋以降に復調の兆しを見せ、11月末の全日本実業団女子駅伝に出場してチームの優勝に貢献。今年1月には全国都道府県女子駅伝でも地元長崎のアンカーを務めて元気な姿を見せ、ファンを安心させた。万全の状態で臨むことができれば、2年ぶり4回目の優勝は十分に可能だろう。廣中の自己記録は、2022年オレゴン世界選手権決勝でマークした30分39秒71(12位)。30分台は2回マークしている。この水準まで仕上げるのは難しいかもしれないが、どこまで調子を上げてくることができるか。自国開催の世界選手権出場に向けて、復活を知らしめるレースにしたい。
「東京世界選手権代表の座を争う」という角度からみてみると、この種目の参加標準記録は30分20秒00。2020年(実施は2021年)東京オリンピックと2022年オレゴン世界選手権は31分25秒00だったが、2023年ブダペスト世界選手権と2024年パリオリンピックで30分40秒00へと大きく引き上げられ、2025年東京世界選手権ではさらに20秒も設定記録が上がることになった。世界選手権の出場資格を見るWAワールドランキング(Road to TOKYO)は1カ国3名を上限として、ターゲットナンバー(出場枠:10000mは27)を見ていくが、女子10000mについては参加標準記録を上回っている選手がケニア・エチオピアに集中している影響で、ワイルドカードにより出場が決まっているグダフ・ツェガイ(エチオピア)のほか、参加標準記録突破者として順位がつく形でターゲットナンバー内に位置する選手は現段階でわずか6名。クロスカントリーのワールドランキングポイント上位者3名やエリアチャンピオンとして出場資格を得ると見られる選手を加えても、ワールドランキングでの出場権獲得の可能性は、男子よりも大きいとみることができる。
日本勢は、現段階で、五島が19番目、小海が22番目、3番手に前回5位で昨年12月に31分42秒28をマークしている菅田雅香(JP日本郵政G)が25番目に位置し、この3選手がターゲットナンバー内に収まり、前回の日本選手権で3・4位を占めた兼友良夏(三井住友海上)と矢田みくに(エディオン)が日本人4・5番手として僅差で続いている。上位2選手が不在となるだけに、菅田・兼友・矢田は、ここで少しでも順位を上げておきたいところだろう。
現時点でワールドランキングに必要な2レース(10000mは2レースの平均ポイントで順位づけがなされる)を揃えられていない廣中も含めて、共通して言えるのは、高いポイントを得られるアジア選手権代表入りを意識してのレースになってくる点だ。廣中は、日本選手権で着実に高ポイントを手に入れたうえで、アジア選手権でもう1本揃える、あるいは、その後のレースで参加標準記録に迫るタイムを狙っていくことになるだろう。一方、菅田・兼友・矢田は、アジア選手権に出場すると、“安全圏へのジャンプアップ”に繋がっていく可能性がある。いずれにしても、選考の優先度は日本選手権の結果が優先されるだけに、ここで確実に上位を占めておかなければならない。

このほかでは、日本選手権クロスカントリー優勝者の川口桃佳(ユニクロ)、U20年代にトップレベルで活躍したのち一度競技を退きながら、マラソンを目指して33歳の昨年に復帰して10000mでも31分44分85で走っている伊澤菜々花(スターツ)も気になる存在。

そして、3月26日に発表されたばかりの世界選手権女子マラソン日本代表勢では、小林香菜(大塚製薬)がエントリーリストに名を連ねた。早稲田大時代はサークルに所属し、大塚製薬所属で迎えた社会人1年目の昨年、12月の防府マラソンで2時間24分59秒をマークすると、今年1月の大阪国際女子マラソンで日本歴代10位(当時)の2時間21分19秒へと更新。ラスト800mでパリオリンピック6位の鈴木優花(第一生命グループ)を逆転し、日本人トップの2位でフィニッシュしたことで一気に表舞台に躍り出た選手だ。小林の10000mの自己記録は昨年の全日本実業団でマークした32分22秒98。独特の高速ピッチで、これを上回っていく快走を期待したい。
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大会名 :第109回日本陸上競技選手権大会・10000m開催日程:2025年4月12日(土)
開催会場:えがお健康スタジアム(熊本)
午前中は同会場にて「日本グランプリシリーズ第32回金栗記念選抜陸上中長距離大会2025」(以下、金栗記念)が開催されております。
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▼オンエア情報:NHK BSで生中継!
https://www.jaaf.or.jp/jch/109/10000m/
▼昨年大会
https://www.jaaf.or.jp/jch/108/10000m/
▼東京2025世界陸上競技選手権大会/クミ2025アジア陸上競技選手権大会 日本代表選手選考要項
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17671/
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