2024.08.06(火)選手

【記録と数字で楽しむパリオリンピック】女子やり投:ブダペスト世界選手権に続き北口が「一番良い色のメダル」を目指す



8月1日(木)から11日(日)の11日間、フランスの首都パリを舞台に「第33回オリンピック」が開催される。

日本からは、24種目に55名(男子35名・女20名)の代表選手が出場し、世界のライバル達と競い合う。

現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する全24種目に関して、「記録と数字で楽しむ2024パリオリンピック」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では世界選手権についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。

記録は原則として7月21日判明分。ただし、エントリー記録などは五輪参加標準記録の有効期限であった24年6月30日現在のものによった。
現役選手の敬称は略させていただいた。

200mから1500mにおいて、予選で落選した選手による「敗者復活戦」が導入され、これによって予選で敗退した何人かが復活して準決勝に進出できることになった。
ただ、各種目での敗者復活戦の組数や何人が準決勝に出場できるのかなどの条件がこの原稿執筆時点では明確にされていない。よって、トラック競技の予選・準決勝の競技開始時刻のところに示した通過条件(○組○着+○)は、「敗者復活戦」がなかったこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、パリではこれとは異なる条件になるはずだ。

日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてほとんどふれていない。日本人の出場しない各種目の展望などは、陸上専門誌の8月号の「パリ五輪観戦ガイド」や今後ネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。

大会期間中は、日本陸連のSNS(=旧Twitter orFacebook)で、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。

現地と日本の時差は、7時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけての競技である。
猛暑の中での睡眠不足にどうぞご注意を!


女子やり投

(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)
・予選 8月7日 A組17:25 B組18:50(7日 A組10:25 B組11:50)
・決勝 8月11日 02:40(10日 19:40)


ブダペスト世界選手権に続き北口が「一番良い色のメダル」を目指す

23年ブダペストで世界の頂点に立った北口榛花(JAL/67m38=23年=日本記録)が五輪でも一番高い表彰台を目指す。エントリー記録の67m38(23年=日本記録)は、32名中のトップ。21年東京に続いて2度目の五輪。世界選手権を含めると19年ドーハから21・22・23・24年と5大会連続の世界の舞台である。

参加標準記録の64m00はクリアできなかったが、ワールドランキング22位の斉藤真理菜(スズキ/エントリー記録61m67=23年・自己ベスト62m37=17年)、同24位の上田百寧(ゼンリン/エントリー記録61m32=24年・自己ベスト61m75=21年)もブダペストに続いて出場する。ともに五輪は初出場。世界選手権には、斉藤が17年と23年、上田は22・23年に出場している。

この種目でのフルエントリーは、世界選手権は17年ロンドン、22年オレゴン、23年ブダペストの3回。五輪でのフルエントリーは今回が史上初である。これで、22年から3年連続での世界大会へのフルエントリーで、北口を筆頭とした日本のレベルの充実ぶりを示している。
パリ五輪にフルエントリーしているのは、日本とオーストラリアのみ。2名は、コロンビア・ラトビア・チェコ・中国の4国だ。

日本の女子フィールド種目では五輪&世界選手権で史上初のメダルとなった22年オレゴンでの北口の「銅メダル」は、「狙って取ったメダル」ではなかった。
試合後には、
「メダルを取り続けることが大事ですし、次は狙ってメダルを取ることを目標にします。最終的には一番良い色のメダルを取れるようにやっていきたいです」
と話していたが、「最終的には」ではなくオレゴンから1年後のブダペストで早くもそれを実現したのだった。

そしてパリでは、「一番良い色のメダル」を「狙って取りにいく」。

斉藤と上田も自己ベストを上回るようなアーチをかけられれば、入賞の可能性はある。
7月22日に2人はそれぞれの地元でパリに向けての抱負を語った。
静岡・浜松市の斉藤は、
「最高の舞台。出るからには全力で、予選の3投をしっかり投げきりたい。体調は申し分ない。まず、自己ベスト(62m37)が目標。そうすれば、決勝進出につながると思う」
福岡・糸島市の上田は、
「自己ベスト(61m75)を更新して、8位入賞を目指したい」

◆五輪&世界選手権での入賞者と日本人最高記録◆

1932年五輪4位39.08真保正子(泉尾高女教)
1936年五輪5位41.45山本定子(中京高女出)
2011年 8位59.08海老原有希(スズキ浜松AC)
2022年 3位63.27北口榛花(JAL)
2023年 1位66.73北口榛花(JAL)

世界選手権で日本人初入賞の海老原さんは、当初は9位だったが、トップの選手がドーピングで失格し、8位に繰り上がった。

なお、「6位まで入賞」だった時代の五輪で下記の2名は現在なら入賞の8位以内に入っている。
1932年 五輪 8位 30.81 石津光恵(山中高女)
1964年 五輪 7位 52.48 佐藤弘子(リッカー)

最高記録は、
<五輪>
62.06 北口榛花(JAL)2021年 予選B組4位
<世界選手権>
66.73 北口榛花(JAL)2023年 1位


◆1999年以降の世界選手権&五輪での「67m38=日本記録」の相当順位、1・3・8位、決勝に進めなかった最高記録◆

・やりの規格が現在のものになった1999年以降。
相当順位1位3位8位予選落最高 
19992位67.0966.0662.6759.50 
2000五輪3位68.1966.1862.1059.21 
20012位69.5364.6961.0158.26 
20031位66.5262.7059.6058.50 
2004五輪2位71.5364.2961.7560.80 
20053位71.7065.9657.9958.74 
20072位67.0764.4261.0359.52 
2008五輪2位71.4265.1358.1359.63=2位70.78がドーピングで失格
20092位67.3064.5158.2558.98=3位66.06がドーピングで失格
20113位71.5865.2459.0859.15=1位71.99がドーピングで失格
2012五輪2位69.5564.9159.4659.91=7位61.62がドーピングで失格
20132位69.0565.0961.3060.32 
20152位67.6965.7960.8862.17 
2016五輪1位66.1864.8062.9261.02 
20171位66.7665.2662.8462.26 
20191位66.5665.4961.1260.84 
2021五輪1位66.3464.5659.9660.78 
20221位66.9163.2760.1858.61 
20231位66.7363.3860.3459.59 
       
最高記録 71.7066.1862.9262.26 
五輪最高 71.5366.1862.9261.02 
世選最高 71.7066.0662.8462.26 

以上の通りで、北口の「日本記録67m38」の相当順位で「メダル圏内」は、五輪を含む19大会中19大会。つまり「メダル獲得確率」は「100%」だ。うち、「金」は7大会で「36.8%」だが、16年以降の至近6大会では、「100%」になる。

斉藤の自己ベスト62m37なら8位以内入賞の可能性は84.2%。
上田の61m75なら78.9%になる。

本番では、予選も決勝も「3投目まで」に確実に「63m以上」を投げておきたいところだ。五輪を含め15年以降の7大会では「予選通過標準記録」が15・17・19年世界選手権が「63m50」、22年が「62m50」、23年が「61m50」。五輪は、16年リオも21年東京も「63m00」だった。

ただ、7大会ともこれをクリアした選手が12名に満たなかったのでそれ以下から拾われている。
12番目での決勝進出者は、15年62m21、16年61m63、17年62m29、19年60m90、21年60m94、22年59m06、23年59m66。
13番目で落選した選手は、15年62m17、16年61m02、17年62m26、19年60m84、21年59m96、22年58m61、23年59m59。
なお、19年の落選者トップの60m84は北口の記録で「ファイナル」に「あと6cm」届かなかった。

◆「6投目の北口」をデータで示すと……◆

このところ「6投目の北口」というのが、話題になっている。
古くは、高校3年生の15年日本ジュニアで高校新&U18日本新の58m90が6投目。
大学2年生の17年に日本インカレで初優勝した時も6投目での逆転優勝だった。
記憶に新しいところでは、22年オレゴン世界選手権で銅メダルを獲得した時も、23年ブダペスト世界選手権で金メダルを獲得した時も、6投目での大逆転だった。22年は6投目の試技に入る前の順位は5位、23年は4位の位置からの逆転金メダルであった。

また、23年7月16日の67m04、同9月8日の67m38の日本新の時も6投目だった。

高校時代からのすべてを調べる訳にはいかないので、ここでは22年の17試合(うち予選が1試合)、23年の16試合(うち予選が1試合)、24年の8試合(7月20日現在)のシリーズを調査し、何投目にその日のベストを出したのかを示した。結果は、以下の通り。
・【 】内は、3投目までの最高記録を示す。

<2022年・23年・24年の北口の試技内容>
・2022年(17試合/うち予選1試合)
4月23日1)59m631投目59m63-54m97-56m56【59m63】-×-53m76-×
5月1日1)61m201投目61m20-59m55-58m22【61m20】-×-60m47-×
5月8日1)63m931投目63m93-59m51-60m82【63m93】-58m82-62m96-60m91
5月28日1)62m80???試技内容不明
6月11日1)62m253投目59m13-57m07-62m25【62m25】-57m36-×-×
6月14日1)61m971投目61m97-59m53-58m15【61m97】-57m97-60m68-61m97
6月18日1)63m133投目61m91-59m84-63m13【63m13】-×-57m76-61m33
7月8日1)60m426投目58m02-59m25-×【59m25】-55m30-59m53-60m42
7月20日予)64m321投目64m32=通過/全体1位【64m32】
7月22日3)63m276投目62m07-×-55m78【62m07】-61m27-×-63m27
8月6日1)65m106投目60m13-61m37-×【61m37】-61m76-58m68-65m10
8月10日2)62m374投目54m28-59m97-58m44【59m97】-62m37-60m16-59m13
9月2日2)63m456投目60m49-61m58-×【61m58】-×-63m13-63m45
9月8日3)63m566投目57m03-60m51-63m35【63m35】-59m14-56m77-63m56
9月17日1)59m231投目59m23-57m30-56m88【59m23】-×-57m92-×
10月2日1)62m573投目62m02-60m99-62m57【62m57】-59m55-59m16-×
10月8日1)65m683投目61m23-62m71-65m68【65m68】-62m00-×-62m10

1・3・6投目にその日のベストを投げることが多く、1投目が6回、3投目が4回、6投目が5回。
ということは、試技内容が判明している16試合中10回は3投目までにベストをマークしているということで、世界大会での勝負を考えるといい内容だ。
世界大会の決勝進出と決勝でのトップ8入りが確実な「3投目までに63m以上」は5試合(31.3%)。決勝進出やトップ8入りの可能性がかなり高そうな「3投目までに62m以上」は8試合(50.0%)だ。

・2023年(16試合/うち予選1試合)
4月29日1)64m505投目59m01-×-63m45【63m45】-60m37-64m50-61m58
5月6日1)64m432投目63m72-64m43-61m25【64m43】-×-×-61m66
5月21日4)61m346投目58m87-×-59m02【59m02】-×-×-61m34
6月2日2)59m921投目59m92-58m25-×【59m92】-×-×-×
6月9日1)65m093投目58m25-60m87-65m09【65m09】-59m72-58m39-57m80
6月13日2)59m692投目57m17-59m69-55m81【59m69】-×-57m69-58m92
6月27日1)63m722投目60m27-63m72-×【63m72】-×-×-×
6月30日2)63m341投目63m34-×-60m60【63m34】-58m69-60m78-58m95
7月16日1)67m046投目64m12-61m49-62m76【64m12】-×-65m82-67m04
7月20日1)62m526投目59m78-57m40-57m90【59m78】-58m64-61m24-62m52
8月6日1)61m886投目57m74-57m13-×【57m74】-56m54-58m82-61m88
8月23日予)63m272投目59m04-63m27=通過/全体3位【63m27】
8月25日1)66m736投目61m78-61m99-63m00【63m00】-62m36-62m68-66m73
9月3日1)60m063投目55m32-59m93-60m06【60m06】-×-P-P
9月8日1)67m386投目59m56-65m20-62m89【65m20】-60m12-62m69-67m38
9月16日1)63m782投目59m36-63m78-×【63m78】-58m50-59m06-62m76

3投目までにベストを投げたのが15試合中8回(53.3%)。5・6投目がベストだった7試合もうち4回(57.1%)は3投目までに63m以上の記録を残している。
「3投目までに63m以上」は、予選を含む16試合中10回(62.5%)で、22年の「31.3%」の倍になっている。

・2024年(8試合/7月20日現在)
4月27日1)62m976投目55m97-56m43-58m93【58m93】-56m57-61m44-62m97
5月5日1)61m836投目60m98-60m53-60m15【60m98】-×-59m86-61m83
5月19日1)63m456投目60m20-60m19-58m30【60m20】-×-62m02-63m45
5月28日1)60m473投目×-57m63-60m47【60m47】-×-59m47-×
6月22日2)64m286投目57m64-×-64m08【64m08】-×-×-64m28
6月28日1)62m872投目61m10-62m87-×【62m87】-×-×-59m87
7月12日1)65m216投目64m63-60m96-×【64m63】-61m46-62m38-65m21
7月20日4)62m692投目60m50-62m69-58m43【62m69】-×-62m07/5投目で打ち切り

4~5月はまだエンジンがかかっていなかったが、6月以降は上向いてきた。
23年7月16日から続いていた決勝での連勝記録は、24年6月22日にトップと43cm差で敗れたことによって24年5月28日までの「11連勝」でストップした。その後の日本選手権、7月12日のモナコで連勝。パリ五輪前の最終戦となった7月20日のロンドンでは1年2カ月ぶりの4位だったが、23年7月16日からの1年間トータルでは、13勝2敗。8割6分7厘という勝率を残した。

2022~24年に北口が決勝でその日のベスト記録を投げた試技の回数別の内訳をまとめると以下の通りで、「6投目」が4割近くになる。

<北口がその日の最高記録を出した試技回数別の内訳>
・2024年は、7月20日現在の記録
回数2022年=15試合2023年=15試合2024年=8試合22~24年の合計=38試合
1投目5回(33.3%)2回(13.3%)07回(18.4%)
2投目04回(26.7%)2回(25.0%)6回(15.8%)
3投目4回(26.7%)2回(13.3%)1回(12.5%)7回(18.4%)
4投目1回(6.7%)001回(2.6%)
5投目02回(13.3%)02回(5.3%)
6投目5回(33.3%)5回(33.3%)5回(62.5%)15回(39.5%)

試技内容が判明している3年間の決勝38試合中15回(39.5%)は6投目にその日のベストをマークしている。
全体の4割近くが6投目、24年は8試合中5回で6割超えというのは、「びっくり」の数字である。

ただし、どの試合でも結果を残すには、3投目までに世界大会の予選を通過したり、決勝でトップ8に残れる記録を残す必要がある。
15年以降の至近7回の世界大会で予選を通過するためのレベルが最も高かったのは「62m29=17年」。8位入賞がもっともハイレベルだったのは「62m92=16年」だ。
22年以降の試合で北口が3投目までに投げた「60m00以上の1m00毎」と「予選通過最高ラインの62m29以上」「8位入賞最高ラインの62m92以上」を投げた割合を調べてみた。
<北口の3投目までの「60m00以上の1m00毎」と「62m29以上」と「62m92以上」の割合>
 2022年2023年2024年22~24年合計
60m00以上12/16(75.0%)11/16(68.8%)7/8(87.5%)30/40(75.0%)
61m00以上12/16(75.0%)10/16(62.5%)4/8(50.0%)26/40(65.0%)
62m00以上8/16(50.0%)10/16(62.5%)4/8(50.0%)22/40(55.0%)
     
62m29以上6/16(37.5%)10/16(62.5%)4/8(50.0%)20/40(50.0%)
62m92以上5/16(31.3%)10/16(62.5%)2/8(25.0%)17/40(42.5%)
     
63m00以上4/16(25.0%)9/16(56.3%)2/8(25.0%)15/40(37.5%)
64m00以上2/16(12.5%)4/16(25.0%)2/8(25.0%)8/40(20.0%)
65m00以上1/16( 6.3%)2/16(12.5%)1/8(12.5%)4/40(10.0%)

世界選手権で2大会連続のメダルを獲得し、エントリー記録もワールドランキングも「トップ」に位置する北口である。陸上競技にあまり詳しくないであろう日本の国民の多くの方々は、北口のパリ五輪での「決勝進出」や「トップ8入り」は、「何の心配もないこと」と思っていらっしゃるかもしれない。
が、上記のデータの通り、「史上最高レベルの予選」や「史上最高レベルのトップ8」になった場合、北口といえども「まったく心配なし」ではないことを知っておいていただきたい。これまでの最もハイレベルな「予選通過」と「トップ8」の記録を「北口が3投目までに投げた記録のデータ」にあてはめると、22~24年のトータルでは、「予選通過」「トップ8」もほぼフィフティーフィフティーくらいの数字になるのだ。

世界チャンピオンの北口といえども、五輪や世界選手権の舞台は予選から手抜きなどが許されない世界なのである。

◆北口の成長過程を年別のトップ5記録でみていくと……◆

6月の日本選手権前にも紹介したが、下表は、北口がやり投を始めた2013年の高校1年生の時からの各年の上位5試合を記録順に並べて比較したものだ。
21年以前と比較して22年から23年の2年間で北口の力が一段とアップしてきていることが、下記のデータからよくわかる。

<北口の年別の上位5位記録の比較>
・2024年は7月20日までの記録
学齢試合数1位2位3位4位5位60m以上回数(率)63m以上回数(率)
高120131149.3145.4945.3745.2545.10  
高220141953.1553.0852.1652.1651.93  
高320151258.9057.0256.6355.9954.44  
大1201661.3860.8457.2356.7556.162(28.6%) 
大220171061.0760.4959.5959.0857.962(20.0%) 
大3201860.4858.8358.6258.3856.991(11.1%) 
大420191466.0064.3663.6861.9460.8410(71.4%)3(21.4%)
社1202063.4559.3859.3058.36 1(25.0%)1(25.0%)
社2202162.0661.4959.1157.1957.182(25.0%)
社320221765.6865.1064.3263.9363.5615(88.2%)8(47.1%)
社420231667.3867.0466.7365.0964.5014(87.5%)10(62.5%)
社5202465.2164.2863.4562.9762.878(100.0%)3(37.5%)

年によって出場した試合数に違いはあるが、自己ベストの進歩の状況、2番目以下の各順位ごとの記録の年ごとの上昇具合、あるいは自己ベストが60mを越えた16年からは右横の「60m以上回数」やその「率」の数字の変化、これらを見ていくとまさに世界の「メダリストの常連」や「一番良い色のメダル」に向かって、着実に進歩してきた様子がよくわかるだろう。

13年(高1)から16年(大1)は、毎年どんどん自己ベストを伸ばしてきた。
17・18年(大2~3)は自己ベストは停滞したが、その年の3~5番目の記録が自己ベストをマークした16年よりもアップして、次のステップへのエネルギーを蓄えていた時期といえる。
そして、そのエネルギーが19年(大4)に大爆発。
コロナの影響もあって20・21年(社1~2)は試合数が少なくやや後退したが、次のステップアップに向けての試行錯誤や軌道修正、今後に向けての計画立案の時期だったのかもしれない。
22年(社3)には19年以来2度目の大爆発。自己ベストこそ19年のままだったが、その年の2番目以下の記録が19年から大きくアップ。60m以上や63m以上の回数や率も19年のレベルを大きく上回り、大きな土台が築かれてきたことを示している。それが、ブダペスト世界選手権での「銅メダル」につながった。
それらのしっかりした土台をもとに、23年はさらに進化した。4月の織田記念と木南記念での64m台を皮切りにどんどん記録を伸ばし、2カ月半後の7月16日には、その時点の世界1位の67m04にまでたどり着いた。そしてその勢いでブダペストに乗り込み、世界の頂点に登りつめたのだった。

下表は、北口のシーズン初戦の記録と各年の最終的なシーズンベストを調査し、初戦からどのくらい記録を伸ばしているのかをまとめたものである。

<北口榛花のシーズン初戦とその年の最高記録>
年月日初戦-->年最高月日記録の伸び(m)
2013.05.0534.13-->49.3110.1815.18
2014.04.2953.08-->53.1510.210.07
2015.05.1055.99-->58.9010.162.91
2016.04.2956.75-->61.3805.084.63
2017.04.2954.64-->61.0710.086.43
2018.04.2958.62-->60.4809.081.86
2019.04.0657.87-->66.0010.278.13
2020.08.2359.38-->63.4509.194.07
2021.05.0257.18-->62.0608.034.88
2022.04.2359.63-->65.6810.086.05
2023.04.2964.50-->67.3809.082.88
2024.04.2762.97-->(65.2107.122.24)

・2024年は、7月20日までの記録

初めてやりを投げたのは、旭川東高校1年生の2013年5月5日で「34m13」が初の公認記録。
それから、5カ月半後には49m31にまで伸ばし、その年の高校リスト12位、当時の高校学年別歴代の1年生の2位タイになった。9年後に世界の「銅メダリスト」に、10年後には「金メダリスト」なる選手だけのことはある1年目の成長ぶりである。

シーズン初戦から15m以上も記録を伸ばした1年目のデータは除外したが、2年目以降の初戦とシーズンベストとの差である「記録の伸び」は、最小で「7cm」、最大で「8m13cm」。
23年までの10年間の平均値は、「4m191」だ。
22年以前の北口の「シーズン初戦の最高記録」は、22年の59m63だった。が、23年と24年は初戦から60mラインを大きくオーバーした。ワンランクあるいはツーランクの底上げができたことを示すものであろう。世界の「金メダル」を獲得したのだから、底上げは当たり前ではあるのだけれども……。

◆2024年に北口に「土」をつけた選手との対戦成績は?◆

さきに、北口の23年7月16日からの連勝記録が24年6月22日に「11連勝」でストップし、パリ五輪前の最後の試合となった7月20日のロンドンダイヤモンドリーグでは、1年2カ月ぶりの4位になったことを述べた。この1年あまりで北口が黒星を喫したのは、2試合で世界で4人。その4人との対戦成績を調べた。

6月22日に43cm差で北口に勝利を収めたのは、V・ハドソン(オーストリア)。
<北口 vs V・ハドセンの対戦成績>
 北口榛花vsハドソン 
2019.07.102)60.15○●7)56.80ナポリユニバーシアード
2019.08.031)60.25○●3)54.80アンドルフ
2021.05.196)57.49●○5)58.06オストラバ
2021.05.195)54.69○●2)57.21レーリンゲン
2023.06.302)63.34○●5)61.24ローザンヌDL
2023.08.251)66.73○●5)62.92ブダペスト世界選手権
2023.09.081)67.38○●2)64.65イヴォ・ヴァンダム記念
2023.09.161)63.78○●6)57.99プレフォンティン記念
2024.06.222)64.28●○1)64.71モトネットGP
2024.07.121)65.21○●4)59.35モナコDL
2024.07.204)62.69○●6)60.35ロンドンDL

・北口の9勝2敗。24年6月22日に敗れたあとは、北口が2連勝している。

7月20日に優勝したM・リトル(オーストラリア)。
<北口榛花 vs M・リトルの対戦成績(決勝のみ)>
 北口榛花vsリトル 
2019.07.102)60.15○●8)55.37ナポリユニバーシアード
2021.08.0612)55.42●○8)59.96東京五輪
2022.06.181)63.13○●4)61.23パリDL
2022.07.223)63.27○●5)63.22オレゴン世界選手権
2022.08.102)62.37○●3)61.76モナコDL
2023.05.214)61.34●○1)64.10GGP横浜
2023.06.091)65.09○●7)58.54パリDL
2023.06.302)63.34●○1)65.70ローザンヌDL
2023.07.161)67.04○●2)64.50スコリモウスカ記念
2023.08.251)66.73○●3)63.38ブダペスト世界選手権
2023.09.161)63.78○●3)61.24プレフォンティン記念
2024.04.271)62.97○●2)62.12蘇州DG
2024.05.191)63.45○●6)59.12GGP東京
2024.07.121)65.21○●2)64.74モナコDL
2024.07.204)62.69●○1)66.27ロンドンDL
・北口の11勝4敗(予選を含めると12勝4敗)

7月20日に2位のA・ヴィラゴシュ(セルビア)。
<北口榛花 vs A・ヴィラゴシュの対戦成績>
 北口榛花vsヴィラゴシュ 
2022.09.022)63.45○●3)63.00イヴォ・ヴァンダム記念
2023.06.271)63.72○●2)61.22オストラバ
2023.06.302)63.34○●4)61.87ローザンヌDL
2023.07.161)67.04○●8)56.88スコリモウスカ記念
2024.05.281)60.47○●3)60.21オストラバ
2024.07.121)65.21○●5)58.04モナコDL
2024.07.204)62.69●○2)65.58ロンドンDL
・北口の6勝1敗

7月20日に3位のM・マローン・ハーディン(アメリカ)。
<北口榛花 vs M・マローン・ハーディンの対戦成績>
 北口榛花vsハーディン 
2021.08.0612)55.42●○10)59.82東京五輪
2023.06.091)65.09○●8)57.67パリDL
2023.09.161)63.78○●4)60.42プレフォンティン記念
2024.04.271)62.97○●4)60.47蘇州DG
2024.07.204)62.69●○3)62.99ロンドンDL
・北口の3勝2敗

以上の通りで、北口がすべて勝ち越していて、4人トータルでは29勝9敗である。

さらに2024年の記録で世界1位(66m70/5月12日)のF・D・ルイス(コロンビア)。
<北口榛花 vs F・D・ルイスの対戦成績>

 北口榛花vsルイス 
2022.06.141)61.97○●3)61.49クラドノ
2023.08.251)66.73○●2)65.47ブダペスト世界選手権
2023.09.081)67.38○●4)62.51イヴォ・ヴァンダム記念
2024.04.271)62.97○●3)60.70蘇州DG
2024.05.191)63.45○●2)62.06GGP東京
・北口の5勝0敗

7月20日のロンドンでは、ダイヤモンドリーグの特別ルールによって上位3名しか6投目を投げられなかった。そのため、「6投目の北口」の投げを披露する機会がなかった。
「五輪前にこういう経験ができて良かった。ここから2週間半ぐらいあるので、しっかり後悔がないようにやれればいい」
「パリで65m以上を投げたいし、やるからには金メダルを目指して頑張りたい」
と、本番に向けて決意を新たにした。



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)


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