2023.08.28(月)選手
【ブダペスト世界陸上】8日目イブニングセッションコメント:女子5000m・田中希実がこの種目で26年ぶりの入賞!男子4×100mリレー・坂井、柳田、小池、サニブラウンでバトンをつなぎ5位入賞!
Day8:8月26日(土)イブニングセッション
ブダペスト2023世界選手権第8日のイブニングセッションは、男子十種競技を含めて決勝種目が7種目というタイムテーブル。このほか、最終日の明日、決勝が行われる男女4×400mリレーの予選が行われました。注目種目が目白押しのなか、2回目の週末を迎えたこともあり、会場には多くの人が観戦に。朝からの蒸し暑さが残る気象状況のなか、各種目で熱戦が繰り広げられました。日本チームは、女子5000mと男子4×100mリレーで決勝に進出しました。女子5000mの田中希実選手(New Balance)は2019年ドーハ大会と2022年オレゴン大会で、ともに実現ならなかった入賞に、男子4×100mリレーは、銅メダルを獲得した2019年ドーハ大会以来となる2大会ぶりのメダルへの挑戦です。
女子5000m決勝は、日没後も気温が30℃という暑さのなか、20時50分にスタート。レースは、スタートしてすぐにエチオピア・ケニア勢が先頭に立ち、何度も急激にペースを上げ下げして他選手をふるい落とす、「生き残りゲーム」のような形で進んでいきました。田中選手は、序盤は10~12番前後と後方でレースを進め、徐々に位置する順位を上げて、入賞を狙える位置取りで集団に食らいついていきます。その状態は終盤になっても変わらず、4000m過ぎでは7~8番手に。ラスト1周の鐘を10番手で聞きながら通過すると、バックストレートでは6位まで浮上し、大いに期待を高めました。さすがにホームストレートで2選手にかわされたものの、14分58秒99で2位の成績を収めました。
男子4×100mリレーは、前日の予選と同じオーダー(坂井隆一郎、栁田大輝、小池祐貴、サニブラウンアブデルハキーム)で、メダル獲得を狙ってスタートを切りました。予選で上位を占めたアメリカ、ジャマイカ、イタリアに加えて、エースを投入したことでイギリスもタイムを上げてきたなか、日本はバトンパスワークに若干の乱れが生じたこともあり、予選よりタイムを落として5位・37秒83でフィニッシュ。メダルの獲得はなりませんでしたが、この種目で2大会ぶり9回目の入賞を達成しています。このほか、男子十種競技に出場し、1日目に3936点をマークしていた丸山優真選手(住友電工)は、後半の種目でも着実に得点を重ねて、7844点の自己新記録をマーク。15位の成績を残しました。
男子4×400mリレーは、大会序盤での個人種目での活況もあって、最終日に行われる決勝での好走が期待されていた種目。日本は、地主直央選手(法政大学)、佐藤風雅選手(ミズノ)、佐藤拳太郎選手(富士通)、中島佑気ジョセフ選手(東洋大学)のオーダーで予選1組に臨み、3着プラス2の進出条件に挑みました。しかし、やや終盤での伸びやかさを欠いた1走の地主選手から佐藤風選手へのバトンが7番手でのパスになると、その後はなかなか順位を上げられるに苦労する展開に。3走の佐藤拳選手で5位に浮上しましたが、それ以上順位を上げることができず、アンカーの中島選手は5着でフィニッシュ。日本歴代2位となる3分00秒39をマークしたものの、決勝進出ラインには0.16秒足りず悔しい予選敗退となりました。この結果、メインスタジアムにおける日本チームの戦いは、最終日を待たずに終了することに。日本チームの大会最終種目は、翌朝にスタートする男子マラソンとなりました。
<8月26日:イブニングセッション競技後コメント>
◎田中希実(New Balance)
女子5000m 決勝8位 14分58秒99
「最後に抜かれながらなんとか入賞」というのは、東京オリンピック(の1500m)と似たシチュエーションかなと思うが、そのなかでも(目標にしていた)入賞を最低限守れた。嬉しさというよりは、若干の悔しさのほうが今はあって、最後まで追い上げていくような、もっとハラハラしながら見守るというよりは、「おおーっ」ってみんなが喜んでくれるようなラストの上がり方をしたいなとイメージしていたので、その通りにできなかったことが自分のなかでは反省点。
スタート前は、本当にどうなるかわからないと思っていた。1500mの予選のように、誰かが最初からハイペースで行くかもしれないし、もしかしたら去年のオレゴンのように、超スローになるかもしれないと、両方を想定していた。(ペースが超スローになったり、急に上がったりと)こんなに変化に富んだ(笑)展開になるとは思わなかったが、私の場合は、ずっとハイペースで押していったり後半に急に上げたりとかというよりは、変化をつけながらの練習を今までやってきたので、いつも通りかなと、余裕を持って走ることができた。自分のなかで、ちゃんとレースに参加できていたなと思う。
(レースが)本当に動くのはラストかなと思っていて、1500mの教訓もあるのだが、ラストまではどの位置にいても一緒かなと思った。通過のところでずっとメダル(上位)の位置にいても、結局は最後に抜かれてしまうし、そこで団子になっていたら消耗してしまうだけだと思った。そこは、しっかり1500mの教訓を生かせたと思う。
予選をあの(ハイ)ペースで行っていたおかげで、今日はすごく余裕をもって通過できたし、タイムはあまり良くなかったが、5000mのペースより速い1500mのスピードを入れていたことが、(ペースに)変化があって一瞬上がっても、あまり響かなかったというよう形でレースに生きた。そこは1500mと5000mの2種目にトータルで取り組んできたからかなと思う。
初めて世界陸上に出たドーハのときは、5000mでビギナーズラックのような形で決勝に進んだし、東京オリンピックの1500mも、そういう感じがあったが、そのあとにすごく怖さが出てきてしまって、タイムとしてとか結果としてとかいう目に見える実力があるのに、自分で自分を信じられないことがずっと続いていた。今回はそこを乗り越えての結果だったので、本当の意味で「世界のトップ」に仲間入りできたのではないかと思う。
まだまだ1500mも5000mもレース展開の下手さが課題だと思うので、このあともっと練習や実戦を積みたい。パリオリンピックは(1500mと5000mの)2種目で狙いたいと思っているので、今度こそは両種目で決勝に残って、そして自分自身が、レースをどんどん動かしていくことができるような強さを持って戻ってきたい。
◎日本(坂井隆一郎、栁田大輝、小池祐貴、サニブラウンアブデルハキーム)
男子4×100mリレー 決勝5位 37秒83
・1走: 坂井隆一郎(大阪ガス)
個人の走りとしては、スタート自体はうまく切れて、加速にもしっかり乗れて走ることができたのだが、内側の(レーンに入った)アメリカに追い上げられているという感じはあったので、そこの個人の力の差を実感するレースとなった。ただ、選手が見えたわけではないので、気持ち自体はそんなに焦ることなく行けた。走りには影響はそんなになかったのではないかと思う。予選に比べると、決勝のほうが気持ちは入っていたので、決勝のほうが走れていたように思う。バトン(パス)は、少し詰まり気味、攻めきれなかったという印象。
5位という結果は、メダルを目指していたので悔しいなというのが一番にある。日本記録を出せればメダルも狙えるし、出せるんじゃないかという気持ちがあった。
・2走: 栁田大輝(東洋大学)※ダイヤモンドアスリート
各国の速い選手が2走に集まってくるので、僕のところでもっと前で展開しないと、メダルは見えてこない。僕自身がもっと力をつけないと…と思った。バトンパスは、映像を見ていないのでわからないのだが、最低限のことはできたと思う。メダルを取れると思っているので、ここで満足は全然していない。僕個人としても、チームとしても、もっと上を目指していきたい。初めての世界陸上は、満足の行く結果ではなかったが、得られるものも少なからずある。また来年に向けて、力をつけて戻ってきたい。
・3走: 小池祐貴(住友電工)
(5位という結果は)狙ったところではもちろんなかったと思うが、記録とかを見ても、メダルは手の届く位置にいる。そういったところでは、いい収穫というかいいデータがとれたのかなと思うが、バトンパスの精度とか、今回のように、レーンが予選では内でも、決勝では外になる。そうなったときに、微調整が難しくなるのだが、ある程度みんな、足長も含めて、「攻めるぞ!」を持ってこられてるように見えたので、そういう勝負強さはあったと思う。
僕ら(小池・サニブラウン)がアメリカにいるというのもあって、今回は、「顔合わせ」的なところも若干あったが、日本の国民性というか(笑)、「和を重んじる」ところはしっかりみんなあるので、(100mに出た)3名の個人種目が終わったあと、和やかな感じのなか、ある程度まとまって行動できた。リレーは、「後ろの走者が(バトンを)届かせてくれると信じて、前だけ見て走る」という、競技に対する信頼もなければいけない種目。そういったところは一発目のメンバーで全員が前だけ見て全力で出られていた。来年以降に向けては、非常にいいのではないかと思う。
・4走: サニブラウンアブデルハキーム(東レ)※ダイヤモンドアスリート修了生
(バトンを)もらうところで振り返ったので、ほとんど加速ができない状態で走ったと思う。
<メダル圏内の選手に届きそうな感じはあったか、の問いに> いや、本当に加速に乗れているので、たぶん全く無理だと思う。バトンパスの足長は予選と同じ。(3走の)小池さんとは、予選のアップでやったのもそうだったが、試合の時も悪くなかったと思うので、そこは問題ないと思う。
去年(のオレゴン大会では)、自分は走っていないけれど、決勝に残れなくて(予選でオーバーゾーンにより失格)、今年はこのメンバーで走って、そのなかで決勝に残って走ったことは、今後の経験になる。(今後、個人種目で100mと200mにも挑戦する場合)ここから200(m)が加わったら、相当きついと思うので、もっともっとしっかり練習して、全部走りきれるように身体をつくっていかなければならないと思う。
◎丸山優真(住友電工)
男子十種競技 15位 7844点 =自己新記録
2日間、楽しかった。なんか久々に、昔の「陸上大好きな丸山」を思い出したような気持ちがあった。それはめちゃくちゃよかったと思う。110mハードルで13秒台出したかったとか、そういういろいろはあるが、「この舞台を、ホンマに楽しんでたな」というのが今思えるので、各種目を楽しめてやれたというのは、記録どうこうでなく、本当によかったなと思う。1500mを走る前の段階で、自己ベストも出ていなかった。1500mは「この雰囲気だったら」絶対に出るやろうなと思っていたので、この会場のあと押しは、めちゃくちゃあった。
上位で戦っている選手を見ると、僕なんかまだまだ。今のこのコンディションで上の人と戦おうと思うと、逆に力んでしまって全然ダメだったと思う。そこを敢えて「楽しむ」という意識で、世界のトップ選手を見て、この人たちに刺激を受けて、次のオリンピックに向けて僕がどうしたらいいかを考えてやっていきたいと思って臨んだ。僕は、十種競技に出場した回数は、日本人選手と比べても少ないほうだが、今、3カ月連続(6月の日本選手権混成、7月のアジア選手権、8月の世界選手権)でやってみて、やっと、ちょっとずつ十種競技がわかってきたのかなと感じている。
一緒にやってみて思ったことは、どの選手も一つは頭抜けて得意とする種目があること。何か一つ…例えば、右代(啓祐)さんだったら投てき、(中村)明彦さんだったら1500mといったように、そういう武器を…僕はけっこうアベレージ型で、ドーンというのがないので、全体にレベルアップしていきながらも、何か一つ(単独種目でも日本のトップと)戦えるような種目を持ちたいなと感じた。
世界選手権を戦ってみて、パリオリンピックへの思いは、間違いなく強くなった。やっぱり、この選手たちと同等に戦いたい。今でも楽しいが、そういう競り合いがあるともっと楽しいはず。「勝つか負けるか、生きるか死ぬか」くらいの戦い…そういうのが僕の陸上みたいな感じなので、もっとレベルアップして、そうやって戦えるようにしたいと思う。
◎日本(地主直央、佐藤風雅、佐藤拳太郎、中島佑気ジョセフ)
男子4×400mリレー 予選1組5着 3分00秒39
・1走: 地主直央(法政大学)
ちゃんといい走りをして頑張ろうと思って頑張ったのだが、思ったよりも走れなかったし、走りとして相当に自分では納得できないものだった。悔しい気持ちでいっぱいである。
前半から行こうと思って、しっかり行ったのだが、中盤で失速してしまい、そのままずるずると、いつもの後半を出せず終わってしまった。ユニバーシアード(ユニバーシティーゲームズ)で海外の人と戦うことを経験しているので、緊張自体はなかったのだが、気持ちとして、個人の400mとかを見えて、焦りというか気持ちだけ「やらなくちゃ、やらなくちゃ」なってしまった。それにうまく身体がついてこなかったなと思う。
・2走: 佐藤風雅(ミズノ)
バックストレートのイメージを持っていこうと思っていたのだが、後方からの展開になってしまい、そこから自分の思ったような前半に進めない状態になって、後手後手の展開になってしまった。さらに、ポジション取りがうまくいかなかったために(外に)膨らんでしまった影響で、もうひと伸びさせたかった後半も伸びず、第3走者に順位を上げずに(バトンを)渡すことになってしまった。すごく悔しい。個人種目からレストもとって、万全の状態で臨めていたので、うまく行かなかった要因が自分のなかで出てこない。自分の前半がイメージしたものだったのかを、早くスタッフと確認したい。
個人がうまく行っていたぶん、マイルもうまく行けるという気持ちが強かったぶん、その反動で今ショックが大きい状態。個人が良かったからこそ、マイルはもう一回、気持ちを締めて、改めて臨むべきだったように思う。
・3走: 佐藤拳太郎(富士通)
今は、考えが頭にうまくまとまっていない。信じられない気持ちである。メダルはおろか決勝にも行けなかったのは、すべて私がチームをまとめきれなかったところに責任があるし、私がもっと前の位置で(バトンを)でジョセフくんに渡さなければいけなかったというのが今の感想である。
個人(種目)でうまく走れたぶん、マイルはそれ以上の結果が求められるし、それ以上の走りをしなくちゃいけないと思っていたので、しっかり走ることを心掛けたが、最後の直線でもっと抜けたのではないか、もっと私自身にできることがあったんじゃないか、何よりこのチームを決勝に連れていけなかったことはすべて私の責任だと思っている。
来年のパリオリンピックまで、とにかく時間がない。今、この場で決勝に残れないチームが、メダルなんて到底取れないと感じているし、足りないところが多かったということ。何よりも昨年のチームが決勝に残って、私が代表に戻った瞬間にまた決勝に残れなかったことが、すごく心にきている。私の不甲斐なさ、私の至らなさが浮き彫りになったと思っている。
・4走: 中島佑気ジョセフ(東洋大学)
予選で落ちてしまったという現実を、しっかり受け止めなければならないと感じている。チーム全体としての反省もそうだが、自分の走りも、思っていた以上に後方で来たというところで、冷静さに欠いてしまうようなバトンパスとか位置取りをしてしまった。自分のレースができなかったというところもあるし、何かもっとできなかったのかなということ…結果論になってしまうが、着順(での進出)を狙っていくべきであると同時に、いかにq(スモールキュー:プラスでの進出)のタイムを上げるかも必要だったので、もっと違うレースの展開ができたのかなと思ったりする。
個人の走りも、マイルの自分の走りも含めて、しっかりと内省して、今後の秋シーズンの試合もそうだし、来年(のオリンピックで)、個人(400m)・マイルの両方で望む結果を出すために、まずはしっかりと現実を受け止めて、また、次に続く原動力にしていければと思う。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ
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