2023.05.26(金)選手

【第107回日本選手権展望】男子跳躍編:走高跳と走幅跳でハイパフォーマンスを期待!走幅跳の吉田は表彰台で世界選手権日本代表内定!!



第107回日本陸上競技選手権大会」が6月1~4日、第39回U20日本選手権との併催で、大阪市のヤンマースタジアム長居で開催される。今回、実施されるのは、12月10日に予定されている男女10000m、6月10~11日に行われる男女混成競技(十種競技、七種競技)を除くトラック&フィールド全34(男女各17)の決勝種目。2023年度の「日本一」の座が競われるとともに、本年8月にハンガリーのブダペストで開催される世界選手権、そして来年のパリオリンピックに向けて大きな影響力を持つアジア選手権(7月、タイ・バンコク)、アジア大会(9月、中国・杭州)の日本代表選手選考競技会も兼ねている。

ブダペスト世界選手権の出場資格は、昨年行われたオレゴン世界選手権同様に、ワールドアスレティックス(WA)が設定した参加標準記録を突破した者と、各種目のターゲットナンバー(出場枠)を満たすまでのWAワールドランキング上位者に与えられる。日本代表選手の選考は、日本陸連が定めた選考要項( https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202209/27_175114.pdf )に則って進められるため、日本選手権で即時内定を得るためには、3位以内の成績を収めたうえで、決勝を終えた段階で参加標準記録を突破していることが条件(ただし、オレゴン世界選手権入賞者は、順位に関係なく参加標準記録を突破した段階で内定)となる。
ここでは、各種目の注目選手や見どころをご紹介していこう。

※エントリー状況、記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は5月26日時点の情報により構成。同日以降に変動が生じている場合もある。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


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【男子走高跳】

真野と赤松、2m32での“空中対決”なるか



昨年は、2020年に日本歴代4位タイの2m31を跳んでいた真野友博(九電工)が、日本選手権で2年ぶり2回目の優勝。初の世界大会出場となったオレゴン世界選手権では、日本人初の決勝進出と8位入賞の快挙を一度に成し遂げるなど、実績面で大きく躍進した1年となった。真野は、自己記録の2m31に加えて、2m30は2020年に1回、2021年に1回、2022年に2回成功しており、その水準は、日本記録保持者(2m35)の戸邉直人(JAL)に次ぐ。この種目の世界選手権参加標準記録は、オレゴン(2m33)から1cm下がり、ブダペスト大会は2m32となっている。真野にとっては、自己新記録への挑戦をも意味する。

オレゴン世界選手権で入賞したことにより、真野については、日本選手権を待たずとも参加標準記録を突破した時点で、代表に内定できる状況だった。昨年は世界選手権後にイタリアで2戦して、ともに2m27をクリアしていたが、その後は、故障の影響もあって記録突破の機会を得られずに来ている。室内シーズンを回避しして、3月末にオーストラリアの競技会(2m23)でシーズンイン。5月5日にはダイヤモンドリーグ(ドーハ大会)に初参戦。基重な経験は積めたものの、最初の高さを越えられず、残念ながら記録を残すことはできていない。5月21日のセイコーゴールデングランプリでは2m25を跳んで、3位の長谷川直人(新潟アルビレックスRC)と同記録ながら4位という結果で競技を終えている。

日本選手権で2m32を跳べば、順位を問わず、その場で内定。しかし、今年に入ってこの高さをクリアしているのは世界でも3人のみ。間違いなく3位内に入っているはずだ。さらにターゲットナンバー「36」のこの種目において、真野は、ともにオレゴン世界選手権に出場した赤松諒一(アワーズ)に次いで日本人2番手の15位に位置している。まず安全圏内にいるとみてよいだろう。今後、アジア選手権(もちろん代表入りする必要はあるが)や海外の試合で記録も狙えるし、ポイントを上積みすることも可能と思えば、心的な負担も軽くなる。ブダペスト本番を目指しての取り組みが可能だ。

ただし、今季日本リスト上位が2m25で並んでいることや、室内シーズンの活況などをみていると、優勝争いという点では安閑とはしていられない。強敵となるのWAワールドランキングで日本人最上位の11位にいる赤松。日本選手権室内で2m27、アジア室内では2m28を跳んで優勝を果たし、この高さでの安定感を深めている。赤松も、屋外はまだ2m25がシーズンベスト。世界選手権出場という点では安全圏内といえる状況だが、2m30以上の持ち記録と屋外でも日本選手権を獲得した状態で夏を迎えたい。

この2人に続くのは、昨年の静岡国際で2m27を跳び、初の日本代表となったアジア室内で4位(2m24)の成績を収めた瀬古優斗(滋賀陸協)だが、屋外では2m20にとどまっている。パリオリンピック、東京世界選手権とビッグ大会が続くことを考えると、この機会に一気に上位陣との差を縮めておきたい。WAワールドランキングは日本人3番目の25位。これを押し上げるためには、アジア選手権代表の座も狙っての勝負となってくるだろう。セイコーゴールデングランプリで日本人首位となった長谷川は、2m26(2021年)が自己ベスト。国内大会では上位争いの常連といえる存在だけに、そろそろもう一つ上の高さでの勝負に絡めるようになりたい。


【男子棒高跳】

山本、世界選手権6大会連続出場に迫る!新たに名乗りを上げる選手の登場は?



男子棒高跳のブダペスト世界選手権参加標準記録は5m81。前回のオレゴン大会(5m80)から1cm高くなった。この高さを成功させたことのある日本選手は現役にはおらず、最も近づいたのは5m77の自己記録(室内日本記録、2016年)を持つ山本聖途(トヨタ自動車)となる。この5~6年で、5m60~70台のパーソナルベストを持つ日本選手の数は年々増え、層は確実に厚くなってきているのだが、一方で、世界では、5m81という参加標準記録を、1カ国3人に絞ってもすでに19人がクリア。残念ながらレベルアップのスピードが、世界に追いつけていない。また、今季日本リストの記録が全般に低いのは、主要競技会の気象コンディションに恵まれなかったことも影響している。とはいえ、条件を問わず5m60~70の記録が当たり前だった時代もあったことを思うと、もう少し高いレベルでの安定感が欲しい。

前回覇者の江島雅紀(富士通、ダイヤモンドアスリート修了生)は、昨年負った骨折からの復帰過程にあり、今回はエントリーしていない。ブダペスト世界選手権の出場権ということでは、拠点をフランスに移してトレーニングに取り組んでいるベテランの山本が、WAワールドランキングで28番手に位置し、圏内にいる状況だ。山本は、初出場となった2012年ロンドンオリンピック以降、昨年のオレゴン世界選手権までのすべての世界大会に代表入りしている選手。2013年のモスクワ世界選手権では6位入賞も果たしている。例年同様に室内シーズンをフル活用し、今季も1~3月にフランスで積み重ねたポイントが効いている格好だ。屋外のシーズンベストは木南記念の5m40ながら、2月には5m60、5m52をクリア。しかし、室内・屋外ともに5m70を越えていた昨年に比べると物足りなさがある。ターゲットナンバーは「36」で、今後、世界各国で競技会が本格化することを考えると、安全圏にいるとは言いがたい。天候の影響を大きく受ける種目だけに、さらなるランキングアップを期して、日本選手権、アジア選手権を戦っていく必要がある。2018年から遠ざかっている5回目の日本タイトルを手にして駒を進めたい。

WAワールドランキングには、山本のほか、石川拓磨(東京海上日動CS)、柄澤智哉(日本体育大)、澤慎吾(きらぼし銀行)、原口篤志(東大阪大)の名前が上がっているものの、日本人2番手の石川でも88位と、山本以外はランキングでの出場は見込めない。ブダペスト切符を掴むためには5m81を跳ぶしかなく現実的ではない。この日本選手権は、来年のパリオリンピック(参加標準記録はさらに上がって5m82となる)の参加資格有効期間が始まる7月以降に行われるアジア選手権&アジア大会代表の座を手にすることが目標となってきそうだ。

今季日本リスト1位に立っているのは、大学生の柄沢智哉(日本体育大)。5m56は4月初旬の対校戦でマークしたもので、昨年出した5m60に続く自己2番目の記録だ。学生では、柄沢と、5m52の自己記録(2021年)を持つ古澤一生(筑波大)が、日本学生個人選手権(5m30、柄沢)・関東インカレ(5m40、古澤)と同記録で優勝争いして1勝1敗。ともに代表に内定したワールドユニバーシティゲームズでのメダル獲得に向け、日本選手権で弾みをつけられるか。大学2年生の原口篤志(東大阪大)は、昨年、U20世界選手権で7位入賞を果たした選手。織田記念、水戸招待を2連勝し、木南記念も3位の成績を残した。水戸招待ではセカンドベストの5m40をクリア。良い流れに乗って昨年マークした自己記録(5m45)を塗り替えてトップ陣に追いつきたい。WAランキングに名前の挙がる石川、澤は、それぞれ5m70、5m61の自己記録を持つが、競技会での安定感に難がある。これを払拭する結果を見せてほしい。2021年覇者の竹川倖生(丸元産業、5m70)、2020年覇者の来間弘樹(ストライダーズエーシー、5m60)を含めて、5m50~60の戦いになるようだと、誰が勝ってもおかしくない。5m30あるいは5m40前後の失敗試技が明暗を分かつ可能性もあるだろう。 


【男子走幅跳】

エース橋岡、ビッグジャンプの披露なるか?ブダペストに王手の吉田、表彰台で内定



5月21日のセイコーゴールデングランプリで、吉田弘道(神崎郡陸協)が日本歴代3位となる8m26の大ジャンプ。実績を持つ国内選手だけでなく、昨年の世界選手権でアジア人として初の走幅跳金メダリストとなった王嘉男(中国、自己記録8m47)にも土をつけた。8m25のブダペスト世界選手権参加標準記録も上回って、この種目最初の突破者に。日本選手権で3位以内の成績を残せば、代表に内定する。

立命館大3年の2020年に追い風参考ながら8m05を跳び、脚光を浴びた選手。公認記録では翌2021年に8m14を跳んで8mジャンパーの仲間入り。同じ大会では8m23(+3.1)の跳躍も残した。昨年のシーズンベストは8m12。着実な足どりをみせてきた。3月末に100mで10秒26の自己新をマークしており、今季はスピードが向上した状態で迎えている様子がうかがえる。高校3年の2017年インターハイ2位になっているが、日本選手権は2021年7位、2022年8位と、表彰台には上がっていない。昨年は、ワールドユニバーシティゲームズの代表に内定しながら、新型コロナウイルス感染症の影響で大会が延期され、初の日本代表が幻となる無念も味わった。ほぼ手中のものとなりつつあるブダペスト行きチケットを、初の表彰台の、できるだけ高いところで懐に収めたい。

日本の大エース橋岡優輝(富士通、ダイヤモンドアスリート修了生、8m36)は、国内初戦となったセイコーゴールデングランプリは7m95(-0.5)で8位にとどまった。しかし、これは昨年秋からトレーニングを積んでいるアメリカからの帰国直後での結果で、4月末にはフロリダ州の競技会で、ファウル、8m11(+1.5)、8m11(+3.3)の結果を残している。アメリカでは、男子100mのサニブラウンアブデルハキームが所属するタンブルウィードTCに腰を据え、半年かけて助走の改造に取り組んできた。世界選手権でピークを迎えるスケジュール感で計画を組んでおり、日本選手権もその過程において「まだ完成していない状態」(橋岡)で臨む予定だ。ブダペスト世界選手権に向けては、有効期間内にランキングの平均値(5大会)に必要な競技会数に達していないため、現段階ではランキング自体に名前がないが、橋岡の場合は、それなりの状態が整えば8m25はそう難しくないはず。3年連続6回目の勝利とともに、代表入りも決めておきたいところだろう。

WAワールドランキングで日本人最上位に位置するのは、オレゴン世界選手権代表の山川夏輝(Team SSP)。昨年、自己記録を8m17(日本歴代7位)に更新。初の世界大会出場を果たした。4月初旬にアメリカで8m00(+2.0)をマークし、今季日本リストで2位につける。ワールドランキングの順位は、ターゲットナンバー「36」のなか36位。安全圏内とは言いがたく、標準記録突破を目指しつつ、この順位を上げていくことも必要だ。

跳躍を見る限りでは、橋岡とともにドーハ世界選手権、東京オリンピックに出場した津波響樹(大塚製薬、8m23)と城山正太郎(ゼンリン、8m40=日本記録保持者)が良い状態で仕上がってきている。故障や腰痛に苦しんできた津波は、木南記念を8m00(+2.2)で日本人トップの2位。セイコーゴールデングランプリではシーズンベストの7m90(+1.4)をマークするとともに、ファウルながら8mの目盛りを大きく越えるジャンプを見せた。例年スロースタートの傾向にある城山は、木南記念とセイコーゴールデングランプリの2大会で7m94をマーク。ともに参加標準記録を狙える状態で日本選手権に臨んできそうだ。

昨年、仲間入りを果たした鳥海勇斗(日本大、8m11)、松本彗佑(極東油業、8m07)を含めて、8m台の自己記録を持つ選手は全部で9人。気象状況にもよるが、複数が8mを上回る激しい攻防を期待したい。


【男子三段跳】

勝負は17mジャンパー伊藤の回復次第。池畠、2回目のVなるか!?



ブダペスト世界選手権参加標準記録は17m20と、オレゴン大会より6cm上がる厳しい状況だ。この種目では、2021年に伊藤陸(スズキ、当時近畿大工業高専)が、日本人3人目で、2000年以来の17m台となる17m00の学生新記録を樹立して歴史の扉を動かしたが、昨年は故障が続き、日本選手権初優勝は果たしたものの、記録・戦績ともに思うような結果が得られないシーズンにとどまった。年が明けてからは日本選手権室内で2連続3回目の優勝を果たしたのちに、初の代表としてアジア室内に出場(9位)。帰国後、屋外では2試合に出場しているが、疲労骨折が判明したことで、4中旬以降は、競技会にも出場していない。来年にはパリオリンピック、さらには2025年には東京世界選手権も控えていることを考えると、まずは完治させることが最優先だが、社会人1年目の今季も「我慢の時」が続いている状態だ。日本選手権の上位争いは、伊藤の回復状況によっても、結果が変わってくることになるだろう。

安定感と勝負強さで目を引くのは、池畠旭佳瑠(駿大AC)。2020年に当時日本歴代9位の16m75を跳び、コロナ禍の影響で秋開催となった日本選手権での初優勝はじめ、各大会で高い勝率を上げトップ戦線に躍り出た。ケガなどもあって、その後は自己記録の更新に至っていないが、出場した国内の主要大会では確実に優勝もしくは上位争いに絡む結果を残している。今季は織田記念、水戸招待ともに日本人トップの座を堅持。東日本実業団で16m35(-0.7)をマークして、これが今季日本最高となっている。伊藤が本調子で臨めない場合は、優勝候補の筆頭となろう。ターゲットナンバー「36」のこの種目において、WAワールドランキングは日本人最上位の49位。ブダペスト世界選手権を狙うには、やや厳しいと言わざるを得ないが、16m50~70台で推移した2020年シーズンの記録水準に近づけること、さらにはパリオリンピックの参加資格有効期間もスタートするアジア選手権やアジア大会の代表となって結果を残していくことで、道は自ずと拓けてくる。

前回2位の成績を残し、秋の日本インカレで自己記録を16m31(優勝)まで更新、走幅跳との2冠を達成している安立雄斗(福岡大)は、順当であれば上位を争う一角となるのだが、日本選手権室内2位で迎えた屋外シーズンは、日本学生個人選手権(12位、14m77、-2.4)後は競技会を欠場。動向が気にかかる。

優勝争いの中核になれる自己記録を持つ山下祐樹(富士防、16m57)は2021年の、山下航平(ANA、16m85、2016年オリンピック代表)は2018・2019年のチャンピオン。この2人が16mを大きく上回ってくるような跳躍を見せてくれると、全体の空気がぴりっと締まるはずだ。


【日本選手権】楽しむポイント

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https://www.jaaf.or.jp/jch/107/news/article/18021/

記録と数字で楽しむ 第107回日本選手権

第107回日本選手権展望:みどころをチェック!


【チケット情報】

今年はスペシャルチケットとして、テーブル・コンセント付きの最上位グレード席となる「SS席」のほか、1日50席限定の「B席アスリート交流チケット」、1日15席限定の「カメラ女子席」、そして日本選手権では初めてサブトラックの観戦ができる「サブトラック観戦チケット」の販売をいたします。既に完売の席種もございますので、是非お早めにお買い求めください!



■S席のポイント


S席はメインスタンド1階層の中央からフィニッシュ付近の座席です!
トラック種目のフィニッシュシーンを間近で観戦できます。
王者誕生の瞬間を近くで見届けたい方におすすめの座席です!


■A席のポイント


A席は南サイドスタンド側、フィニッシュ付近の自由席です!
トラック種目のフィニッシュを正面から観戦できるため、フィニッシュ直後の選手たちの表情も間近で見ることもできます。
また、投てき種目(やり投・ハンマー投・円盤投・砲丸投)のピットも近いので選手たちの投てき前の集中した表情も観戦できます。


■B席のポイント


B席はメインスタンドのスタート側から中央にかけての自由席です!
100m、100mハードル、110mハードルのスタートシーンが間近で観戦できます。
スタート前は選手の鼓動が聞こえるほどに静まり返ります。


■C席のポイント


C席はサイドバックの自由席となります
C席のチケットをお持ちの方の他、サブトラック観戦チケットを除く全てのチケットの方も移動しての観戦が可能です!!
バックスタンド側で実施される走幅跳・三段跳では是非、バックスタンド側のC席から大きな拍手で応援をお願いいたします。
また、北サイドスタンド側では3000m障害物の水郷付近での観戦が可能です。水しぶきをあげて駆け抜ける迫力のある走りを是非ご覧ください。

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