2022.09.09(金)その他

【ライフスキルトレーニング】受講生インタビューVol.1 福島聖:社会人として生かせているスキル、就職活動や競技面に繋がった経験を語る


写真:アフロスポーツ

日本陸連は、日本や世界の頂点に挑み続ける競技者のパフォーマンス向上とキャリア自立を両立する「ライフスキルトレーニングプログラム」を2020年から展開しています。これは、総合人材サービス企業として高い実績を持つ株式会社東京海上日動キャリアサービスのサポートを得て、学生競技者を対象に行われているもの。アスリートがもともと備えている「ライフスキル」(自分の「最高」の引き出す技術)を知識として身につけ、さらに自身の目的に応じて使いこなせるようにトレーニングすることによって、競技力の向上と並行して、人生のさまざまな場面で自身の可能性を最大限に引き出して活躍していける人材を育てていくことを目指しています。
2020年は第1期生として14名の、2021年には10名の学生アスリートが選抜、受講者たちは、さまざまなプログラムを受けるなかで自らのライフスキルを高めてきました。その成果は、競技成績だけでなく、さまざまな場面でアスリートたちに大きな変容をもたらしています。
ここでは、第1期生、第2期生のなかから、3名の受講者にインタビュー。ライフスキルトレーニングによって、自身に起きた変化を振り返っていただきました。


第1期受講生:福島聖(富山銀行)インタビュー



就職と競技の両方に生かしたいと応募

―――福島選手は、2020年度から始まったライフスキルトレーニングプログラムの第1期生です。選抜された14名のうちの一人として、富山大学3年生のとき、受講することになりました。このプログラムは日本陸連としても初めての試みだったわけですが、当時、どんなきっかけで応募したのですか?
福島:大学の恩師から「こういうのがあるから、受けてみたら?」と教えていただき、要項を読んでいくうちに、内容に、とても興味を覚えたことがきっかけです。ちょうど大学3年生で就職活動が間近に迫っていて、でも、実際にどうしたらいいのかという不安もあり、何か少しでも情報が欲しいという時期でもあったので、少しでも就職に役立つなら…という思いがありました。また、陸上競技力の向上にも直結する内容でもあったので、よりいっそう受けてみたいという気持ちになりました。

―――富山大学では、教育系の学科で心理学のゼミに所属していたと聞きました。専門に学んでいたところとリンクする領域だったのでしょうか?
福島:そうですね。大学で学んでいたことを、ライフスキルトレーニングによって、より実践に生かすことができたと思います。特に、陸上競技につなげることができたという点で、すごくいい機会になりました。


スランプ脱出のきっかけに

―――4回にわたる全体講義とゲストを招いてのワークショップのほか、少人数でのグループワークなどを実際に受けてみて、特に印象に残っていることや、大きく意識が変わったことはありますか?
福島:まず1回目の全体講義で、特別講師の布施努先生が「物事を考えるときには、まずに仮説を立てて、その仮説をもとに実行してみて、実際にどうであったかをフィードバックし、それをもとに再仮説を立てていくという一連の流れをつくることが一番大事だよ」と仰ったことが、自分のなかで強く心に残りました。そのときに、「はっ」としたという感じでしたね。高校のころはできていたのに、大学に進んでからは、いつの間にかそれができていなかったことに気がついたんです。

―――具体的には、どんなことが?
福島:高校のときはトレーニング日誌を書いていたのですが、大学に入ってから書かなくなっていたんですね。高校時代は、顧問の先生に書くようにいわれてやっていたのですが、書くこと自体が面倒だなというのもあって…。その結果、自分自身を見つめ直す機会が減っていました。受講を始めたころはスランプの真っ最中だったのですが、布施先生のこの言葉を聞いて、自分がなぜスランプに陥っているのかの原因を、「あ、これができていないからだ」と確信することができたんです。

―――トレーニング日誌をつけることで得られる「振り返り」の大切さに気づいたのですね。
福島:高校のときは、その重要性が認識できていなかったんですね。振り返りが大切ということはわかっていたつもりでしたが、順調に記録が伸びていたこともあって、そこまで大事だと思っていませんでした。逆に、スランプを経たことで、その大切さが理解できたように思います。

―――自発的に、日誌をつけて振り返りを行うようになった?
福島:はい。今も、ずっと続けています。布施先生にこの一連の流れを教えていただいてから、1年半くらい経つわけですが、このサイクルをずっと繰り返していくことの積み重ねが、今、結果となって現れているのかなと思います。


競技や仕事だけでなくライフスタイル全般に変化

―――ライフスキルトレーニングで学んだことは、就職活動でも生かされたのでしょうか?
福島:はい。就職活動の際は、具体的には、スランプを経験して、それを克服していった過程をアピールしたのですが、それができたきっかけはライフスキルトレーニングにあったという話をさせていただきました。

―――ご自身の変化を紹介されたわけですね。
福島:ライフスキルトレーニングを受けたことで、自分が大きく変わったなと思っているので、就職活動のときだけでなく、いろいろな人に話していることなのですが、ライフスキルトレーニングは、今、いろいろなことで悩んでいる人が受けるのにぴったりなんじゃないかなと思うんです。競技を続けていきたい人、就職や今後のキャリアをどうしていこうかと思っている人、実際に悩んでいる人には、自分を変えるきっかけになると思いますね。

―――この春からは、富山銀行の所属となりました。
福島:大学の恩師に相談しながら、陸上競技が続けられる環境を探していたのですが、ちょうど富山銀行が今年の4月からアスリート採用を始めることになるタイミングだったんです。そうした縁もあって、就職することになりました。

―――現在の業務は?
福島:平日は9時から15時くらいまで働いて、そこから練習をするという生活をしています。営業統括部の所属で、事務系の仕事が中心です。ここは営業にあたって必要ないろいろな企画などを考える部署で、いわゆる銀行業務ではないのですが、支店に配るパンフレットを作ったり、今後は銀行のホームページの作成などもやっていく予定だったりと、さまざまな仕事に幅広く取り組んでいます。

―――仕事をするうえで、ライフスキルトレーニングが生きていることは?
福島:仕事で「これに生きている」というよりは、ライフスキルトレーニングを受講してから、自分の生活全般のスタイルが変わったと言ったほうがよいかもしれません。スケジュール管理に力を入れるようになりました。これはトレーニング日誌による振り返りをしていくなかでやれるようになったことです。時間を決めて効率よく練習したほうが、いいトレーニングになるんじゃないかという仮説を立てて、そこにフォーカスを当てて取り組むことを、大学4年のシーズン中にずっとやってみたんです。実際に社会人になってからは、練習時間が非常に限られているわけですが、うまくトレーニングできているのは、その成果だと考えています。

―――第1期生は、福島選手は大学3年生でしたが、大半が大学2年生で、あと大学院1年生もいて、年代にやや幅がありましたが、講習以外での交流はあるのですか?
福島:同じ種目の瀬尾くん(瀬尾英明、順天堂大学)とは、日本選手権やグランプリシリーズなどの際に、少し話をすることはできたのですが、コロナの問題もあって、そういう機会自体が少なくて…。

―――確かに、話したり、集まったりということが難しい時期でしたからね。富山大学からは後輩の手塚麻衣選手が2期生として受講しています。応募するにあたっては、福島選手から勧められたという話を伺いました。
福島:めちゃくちゃ勧めました(笑)。手塚さん自体も、私と同じゼミに入っているので、心理学はさわりの部分は理解しているのですが、実際にライフスキルトレーニングを受けてみて、「実践していくのは、なかなか難しいなあ」といったことを話していました。でも、彼女なりにしっかりと解釈して、実際の練習に取り入れていましたね。そういうのを見ると、きっと彼女にとっても、とてもいい機会になったのではないかと思います。


仮説思考のベースを高めてさらなる積み重ねを

―――競技面を見てみると、ライフスキルトレーニングを受講して迎えた大学4年の2021年シーズンに10秒31の自己ベストをマークして、2022年シーズンは卒業・就職という変化を挟んで迎えたにもかかわらず、10秒17と、さらに大きく記録を塗り替えました。この躍進と、ライフスキルトレーニングとは何か影響はあるのでしょうか?
福島:最初に話した通り、自分では、仮説思考を積み重ねてきた結果だと思っています。最初のころは、かなり難しいと思っていたけれど、実際にやっていくなかで、練習の質が上がってきたことが実感できましたし、タイムが伸びていくことが楽しくて、それによって「もっと、こうしたらいいんじゃないか」というように、好んで新たな仮説を立ててみるようになっていきましたね。このロールモデルに出合えたこと自体が、大幅な自己ベスト更新につながったと思いますし、その積み重ねが生きて今の自分があるということを身にしみて感じています。

―――積み重ねるなかで、より「確信」が高まっていくという感じ?
福島:そうですね。実際に積み重ねていくなかで、確固たる自信になったという感じです。布施先生は、「根拠なき自信」と言われていたと思うのですが、まさしくその通りで、いろいろな仮説を立てて、どんどんクリアすることが自信につながっていきましたし、それとともに「いつの間にか強くなっていた」という感覚だったんです。タイムが出たときも、まさか自分が10秒17を出せるとは思っていなかったので驚きました。自己ベストは出せるとは思っていましたが、「出て(10秒)2台かな」と思っていたので…(笑)。

―――今年は、準決勝で10秒29のセカンドベストをマークした日本選手権も、決勝進出まで本当にあと少しでした。「ああ、惜しいっ!」という感じで…。
福島:そうですね、(着順通過まで)あと0.01秒でした。

―――悔しさもありつつ、「まだまだ行ける」という思いも強まってきたのでは? 今後については、どういうイメージを持っているのでしょう?
福島:先日発表されたように、100mの世界選手権参加標準記録が10秒00に上がったことで、9秒台を出さないとブダペスト世界選手権には出られない状況になってきました。自分はまだ日本でも勝つことができていませんから、まずは国内でしっかりと上位に入っていけるようになることが前提になってくるのですが、これからは、「どうやったら9秒台が出るのかな」ということを常に考えながら生活していこうと思っていますし、今後はそこをベースとして仮説を立てていくつもりです。自分が陸上競技人生で一番の目標としているのは、2年後のパリオリンピックと、その翌年にある2025年東京世界選手権。そこで自分の最大のパフォーマンスを発揮できたらいいなと思っているので、そのためにも、いろいろな経験を積んでいきたいですね。

―――最後に、ライフスキルトレーニングに応募しようかなと思っている学生の皆さんにメッセージをお願いします。
福島:大学2年生の時期から就職のことを考える機会を持つことは、ほかの就活生に、すごく差をつけることができると思います。また、大学では、陸上競技の活動が中心の生活になっていると思いますが、人生は、競技生活を引退してからのほうが長いことを考えると、セカンドキャリアをしっかり考えることはとても重要で、その人生をより良く生きていくためにも、ライフスキルトレーニングはすごく役立つと思います。私は、ライフスキルトレーニングの1期生ですが、実際に受講することによって、自分自身を本当に大きく成長させることができました。機会があれば、ぜひ受けてみてください、とお伝えしたいですね。

―――経験を踏まえた貴重なお話、ありがとうございました。ベースを高めたなかでの仮説思考のサイクルが、さらに積み重ねられていくことを楽しみにしています。
(2022年9月1日収録)

取材・構成:児玉育美(日本陸連メディアチーム)


福島選手から新規受講生へのメッセージ

福島選手より、応募を考えている皆様へメッセージをいただきました。是非ご覧ください!
第3期受講生は2022年9月末より募集開始予定です。



>>ライフスキルトレーニングプログラム特設サイト 
 2022年9月末 第3期受講生募集開始!


>>第1期受講生 伊藤選手×松尾コーチ×田﨑社長 インタビュー
<Vol.1>大きな飛躍の裏側にあった変容や学び
 https://www.jaaf.or.jp/news/article/15564/

<Vol.2>物事を素直に受け止めること、自分を冷静にみることの大切さ
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15565/

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