2022.06.21(火)大会

【ホクレンDC】ホクレンディスタンスチャレンジがもたらす日本長距離界の明るい未来 河野匡(ホクレンDC実行委員長)×高岡寿成(日本陸連強化委員会中長距離・マラソン担当シニアディレクター)



2003年に誕生して、今年で20周年を迎えたホクレンディスタンスチャレンジ。別開催されていたミドルディスタンスチャレンジシリーズとの一本化や3000m障害物や競歩種目、さらには3000mや2000m障害物などが加わったことにより、日本の中長距離シーンには欠かせないシリーズへと成長を遂げるとともに、日本の中長距離界のレベルアップに大きく貢献してきました。

ここでは、さまざまな立場で、ホクレンディスタンスチャレンジに関わってきた河野匡さん(ホクレンディスタンスチャレンジ実行委員長)と高岡寿成さん(日本陸連強化委員会長距離マラソン担当シニアディレクター)に、ホクレンディスタンスチャレンジのこれまでを振り返っていただき、日本中長距離界に何をもたらしたかをうかがいました。
※本文中の所属や役職は当時のもの。

取材・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト、深川市(競技写真)、児玉育美(インタビュー)

転戦しながら強くなっていける
ヨーロッパのようなシリーズを


写真:第1回ホクレンディスタンスチャレンジ深川大会

―――今年でホクレンディスタンスチャレンジが20周年となります。河野さんは、現在はディスタンスチャレンジディレクターのお立場で関わっておられますね。

河野:実は、私は、ホクレンディスタンスチャレンジが始まる前、強化委員で中距離副部長をやっていたころにミドルディスタンスチャレンジというものをつくっているんですよ。中距離はずっと長く停滞していたので、まずはヨーロッパでやっているように、中距離の大会をシリーズ化して、800mや1500mだけでなく、1000mや2000m、600mとかトレーニングで使うような距離を導入して、日本記録にチャレンジしていく場をつくることで活性化させようとしました。当時、長距離の強化を担当しておられた木内敏夫さんや村尾愼悦さんがそれを見て、「長距離でもやろう」と、夏の合宿でお世話になっていた北海道の各地域に声をかけて、実現することになったわけです。その後、私自身も長距離の担当になったこともあり、一緒にやったほうが華やかになるんじゃないかと、中距離もそこに参画していったという経緯です。

―――それがホクレンディスタンスチャレンジの起源ということですね。「ヨーロッパでやっているような大会を」というところがスタートになっている?

河野:私自身もヨーロッパ遠征をした経験があったので、世界で戦える選手になるためには、ああいった試合を転戦していくことは絶対に必要だと思っていました。トップ選手がヨーロッパを転戦する仕組みはできていたので、最初のころは、トップ選手よりも少し下のレベルの選手が「来年こそは、ヨーロッパ転戦するぞ」と思いながらホクレンディスタンスチャレンジを転戦して、力をつけていくというイメージでした。

高岡:そうそう、向こうの連戦はハードですからね。ここ(ホクレン)の連戦ができないことには、ヨーロッパでの連戦なんか、当然できませんから。

―――高岡さんは、当時、現役のトップアスリートとして活躍していました。ホクレンディスタンスチャレンジは、どういう位置づけで臨んでいたのでしょうか?

高岡:ヨーロッパへ行かなければできなかったことが、北海道でできるとうのが新鮮でしたね。僕の場合は、ホクレンディスタンスチャレンジに何レースか出てからヨーロッパへ行って、ゴールデンリーグ(※現在のダイヤモンドリーグ)に出ていくという流れで利用していました。選手やチームの方針や戦略によって、自分たちの使い勝手がいいように選択できることがよかったですね。近年ではペースメーカーも設定して、自己記録や世界大会の標準記録に挑戦したりできるようにもなっています。貴重な大会だと思いますね。

「手づくり」だから、“味変”も可能
臨機応変に動ける組織による大会づくり

 

―――ホクレンディスタンスチャレンジが、東京オリンピックに向けた強化で果たした役割も、非常に大きかったと思うのですが…。

河野:大きかったですね。東京オリンピックに向けては、まずワールドアスレティックス(WA)がワールドランキング制度を導入したことで、大会自体の形を変えていかないとオリンピックの代表になれないという状況への変化があったんですよ。3000m障害物の場合、ポイントを獲得していくことを考えると、3000m障害物のレースだけをやっても3試合分の平均のポイントを上げていく(※長距離種目のワールドランキングは、3レース分の平均ポイントで順位づけられる)のは難しいんですね。また、3000m障害物のレースの間に、2000m障害物を1本挟むと、3本目の3000m障害物の記録をアップできることを、私が経験的に実感していたものですから、6月に行われる日本選手権で獲得したポイントが1つあるなら、ホクレンディスタンスチャレンジで2000m障害物と3000m障害物を設定すれば、6~7月の1カ月間で3本のレースができる。そうすれば必要なポイントが稼げるのではないかと想定して提案したら、岩水嘉孝くん(3000m障害物担当オリンピック強化コーチ)が理解してくれて、実現に向けて動いてくれたわけです。

―――東京オリンピックに向けては、5000m・10000mの強化に、3000mを積極的にやっていく方針も打ち出し、ホクレンディスタンスチャレンジでも実施しています。

河野:
3000mの記録を上げないと、5000mや10000mの記録は上がらないということは昔からわかっていたことなんです。でも、選手たちは一定のいいペースで走って5000mのタイムを欲しがる傾向がありました。試合を重ねていくなかで無理やり速いペースで走ったほうが、タイムが出てくることはわかっているんだけど、なかなかそのチャレンジをしてくれなかったんですね。3000mが、5000mのワールドランキングのなかに、シミラーイベント(ワールドランキング集計対象となるサブ種目のこと)として入ったこともあり、東京オリンピックの強化の施策として、男子の綾部健二くん(男子長距離担当オリンピック強化コーチ)と、女子の野口英盛くん(女子長距離オリンピック強化コーチ)と認識を共有して、「とにかく3000mはやろう、やり続けよう」ということを決めて、2017年度からスタートさせました。

―――高岡さんは、当時は、どういう立場だったのでしょうか?

高岡:チームとしては監督でしたが、陸連では強化委員、という立ち位置でした。

河野:昨年の11月にシニアディレクターに就任するまでの間は、強化委員として、トラック種目に出場する外国人選手のアテンドをしてくれたり、場内のアナウンスをしてくれたり…。大会を盛り上げるために、いろいろなことをしてくれました。

―――強化スタッフの立場で、そうしたことを経験したことで、気づいたことはありますか?

高岡:選手の立場だと、「走るだけ」「記録が欲しいだけ」なのですが、運営する側に回ったことで、いろいろな苦労や思うようにいかないことが、本当にたくさんあるのだなと気づかされましたね。一緒にやるメンバーに恵まれたこともあり、そういったことを、面白がりながら、楽しくできました。あと、物事を進めていくのにスピード感がありました。そのことで「自分たちがやっているんだ」という気持ちは、より強まったように思います。

河野:「手づくりでやっている」ことの良さですよね。手づくりだから、味付けを変えることも自由にできる。だから「今回は、ここに焦点を当てていこう」となったときに、「だったら、こういう選手を集めよう」「じゃあ、ここに声をかけようか」といった具合に、積極的に意見を出し合うなかで、臨機応変に進めていける集団になっています。また、長距離に特化したなかでシリーズを動かしていったことで、関わった指導者とさまざまな形で意思疎通を図れたことも、本当に大きかったと思いますね。その積み重ねで、だんだんいい記録が出るようになって、出場を希望するチームや選手も増えてくれました。20年かけて、長距離の大会として、認知されていったといえますね。

コロナ禍に負けるな!!
エポックメイキングな1年となった2020年大会


――ここ数年ということでは、コロナウイルス感染症(COVID-19)に付随する問題が、すごく大きかったと思います。2020年には最初の緊急事態宣言発出に伴い、4月から6月末までの3カ月間、スポーツ活動そのものの自粛を余儀なくされました。2020年度のホクレンディスタンスチャレンジは、自粛明けの最初の大きなイベントとなりました。実施に至るまでには、大変な苦労があったと聞いていますが…。

河野:このときは、私は「対策委員長」を拝命して対応しました。陸連としても、コロナによる自粛期間後は、そこから活動を再開していこうと6月の初めくらいに決めていたんですね。再開できない可能性もあったけれど、準備は完璧にしておく必要がありました。感染症対策を勉強したり、さまざまなことを検討・手配したり、各自治体に理解を求めたり…。今思うと、「まあ、よくあれだけやれたな」と思います。で、結論として、クラスターも出なかったし、終盤に実施した大会は有観客で開催することもできたわけです。緊急事態宣言が6月30日に解除され、7月1日から「さあ、競技会やるよ」となったとき、各自治体の皆さんが、本当に協力してくださったことが嬉しかったですね。

―――開催してみて、感じたことはありましたか?

河野:この自粛期間を経験したことで、「大会を開催しないことが、こんなにもストレスになるんだ」と実感しました。いつ試合があるかわからない状況下では、練習計画も立てられない。しかもオリンピックが1年延びて、目標が見えなくなっている状態だったので、とにかく動かしていかないとオリンピックが開催できる雰囲気も出てこないな、と。だから、「7月のホクレンは絶対に開催するぞ!!」という勢いで立ち向かっていました。

高岡:私は、試合のない状態が続いていて、そこから試合に出たときの記録が、みんな良かったということに、とても驚きましたね。条件を問わず、どのレースでもいい記録が出ていて、それまで日常的に試合があったときに、記録を出すことに必死になっていた状態って、いったいなんだったんだろう(笑)と思うくらいでしたよね。当たり前だと思っていた「試合に出ること」が、実は、こんなに特別なことだったのかということに気づけたというか…。

河野:そして、2020年のホクレンディスタンスチャレンジは、日本の長距離界にとって、本当に歴史的な大会だったと思います。コロナの問題を抱えながらも大会が開催できて、すごい記録が出たということもそうなのですが、もう1つは、東京オリンピックが1年延びたなかで、2020年にブレイクした選手が、そこで浮かび上がってきたから。三浦龍司くんもそうだし、田中希実さんにしても、廣中璃梨佳さんにしても、あの1年があったことで、もう一段階レベルアップすることができました。日本の長距離界にとっては、あの(2020年の)ホクレンディスタンスチャレンジをやれたことが、オリンピックで長距離がほぼほぼフルエントリーできた要因といっていいと思います。さらに、翌2021年のホクレンディスタンスチャレンジが、オリンピックへの足がかりになるプレミートといえる機会になりましたね。

  

Beyond Tokyo2020(正確には2021)
さらなる進化・発展を


―――日本が長く目標として掲げてきた東京オリンピックが終わり、今年は、新たな一歩を踏み出す年です。高岡さんは、2024年パリオリンピックに向けて、今後、ホクレンディスタンスチャレンジをどう活用していきたいと思っていますか?

高岡:今までと同じような流れにはなるかもしれませんが、河野さんが先ほど仰っていたように、ホクレンディスタンスチャレンジをステップに、力をつけていく選手が増えてくれればいいなと思います。WAワールドランキング制度に対応するために、ポイントを高く獲得できるよう、大会カテゴリーを上げていく必要もあると思っています。また、力のある選手を集めた質の高いレースを実施することによっても、大会の価値をさらに高めていけると思いますね。

―――河野さんは、実行委員会のお立場で、ホクレンディスタンスチャレンジを今後、どういう大会にしていきたいと考えていますか?

河野:世界選手権やオリンピック出場へのプロセスが、参加標準記録とワールドランキングとの併用となっている今、1つは記録を出せる環境を整えて、本当に名前の通りに「チャレンジ」できる試合をたくさん設定することが必要だと思っています。また、高岡さんが言ってくれたように、カテゴリーの高い大会をつくるためには、シリーズのうちの1戦くらいは、インターナショナルな大会にしていくことも検討すべきで、それをもう少し研究して、完成させたいですね。

いずれにしても、長距離に特化した大会が20年も続いたということは、ものすごく大きな財産。それだけに、「もっと良くしていこう」という気持ちを忘れずに、進化させていかなければならないと常に思っています。

―――20周年となる今年は、全5戦のほかにもう1大会が予定されているそうですね。

高岡:はい。20周年の記念大会と銘打って、深川で、6月22日に開催します。

河野:日本選手権で参加標準記録を突破できなかった中長距離種目について、記録に挑戦する機会にしようという思惑です。6月26日までが有効期間となるので、日本選手権の結果を見て、どういうプログラムを組むかを決めていく予定です。

―――20周年を記念するレースで、世界への扉を開く選手たちがたくさん出るようだと、新しい歴史を踏み出す1歩としても素晴らしいですね。楽しみにしています。

(2022年4月29日収録)

【ホクレンディスタンスチャレンジ 特設サイト】

>>https://www.jaaf.or.jp/distance/
■ホクレン・ディスタンスチャレンジ2022
6月22日(水)20周年記念大会 (会場:深川)
7月 2日(土)士別大会
7月 6日(水)深川大会
7月 9日(土)北見大会
7月13日(水)網走大会
7月16日(土)千歳大会

▼ホクレンDC公式Twitter
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▼オレゴン2022世界選手権参加資格有資格者一覧
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15543/

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