2021.12.13(月)その他

【第1回ライフスキルトレーニング レポート&受講生コメント】~なりたい自分に近づくためのゴール設定と目標の使い方~



日本陸連は、2020年度から大学生アスリートを対象に、スポーツ界や社会で活躍するリーダー育成を期した「ライフスキルトレーニングプログラム」を展開しています。今年度も受講生の募集を行い、11月に第2期生として10名(https://www.jaaf.or.jp/news/article/15632/)を選出。12月4日に行った1回目の全体講義から、第2期生に向けたプログラムをスタートさせました。

プログラムは、総合人材サービス企業の株式会社東京海上日動キャリアサービスのサポートを得て、大学生アスリートに向けた新たなキャリア形成の場として実施しているものです。自分の思考や状態を自ら認識する方法や、常に最善の選択を行えるように自身をコントロールしていくスキルなどを系統的に学び、トレーニングによって習得していくことで、アスリートとしての競技力向上はもちろんのこと、それと並行して競技以外の面でも「自分の“最高”を引き出す技術」を持った人材として、広く活躍していけるようになることを目指しています。

選出された10名の第2期生は、今後、2022年3月までの4カ月の間に、全体講義や仕事理解・社会理解のワークショップ、グループあるいは個別のコーチングを受けていきます。初回となった12月4日の第1回全体講義は、オンラインで行われました。



全体講義の開始に当たって、本プログラムをサポートする株式会社東京海上日動キャリアサービスの田﨑博道代表取締役社長が登壇して、受講生に向けて挨拶しました。田﨑社長は、いったんは落ち着く傾向を見せていた新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)との戦いが、変異株「オミクロン株」の出現で再び予断を許さなくなってきている状況を挙げ、「皆さんは、大学生活を、コロナ禍のまっただ中でスタートさせた。学業と競技の両立にさまざまな工夫をし、行動変容を起こして、今、ここに立っていると思う。私は、皆さんが経験してきたこと、獲得してきた能力、発揮してきたことが、社会において求められているものに繋がっていくと思っている」とコメント。さらに、「このライフスキルトレーニングプログラムは、スポーツ心理学の視点から、自らの“最高”を引き出す考え方を学び、競技力の向上と社会に求められる能力をともに身につけていただこうというもの。4カ月のプログラムは、かなりハードではあるが、皆さんが競技力を高めるとともに、大転換期にあるといわれている今、さらに、その先にある社会において必要となる能力を身につけていけるようサポートしていきたい」とエールを送りました。

田﨑社長の紹介を受けて、スポーツ心理学博士の布施努特別講師が登場し、第1回の全体講義が始まりました。布施特別講師は、自身の経歴や心理学博士として関わってきた例を引き合いに、ライフスキルトレーニングを経験した選手が、その後、チームのリーダーとなって活躍するケースが増えていることを紹介したうえで、「ライフスキル」について、次のように説明しました。


・「スポーツで強くなりたい」「健康に過ごしたい」「あの学校に合格したい」など自分が一所懸命に打ち込めるもの(ライフ)があるときに初めて、思考の技術(スキル)が身につく。それが「ライフスキル」である。
・ライフスキルは、後天的に身につけることができ、その先にある目的や目標の達成に貢献する。
・身につけたライフスキルは、自分の軸となり、ほかの場面でも応用できる。例えば、スポーツで身につけたライフスキルは、社会人としての目標達成に活用することができる。
・スポーツにおいて獲得できるライフスキルは非常に多く、多岐にわたる。

続いて、布施特別講師は、各受講者に「このトレーニングに参加しようと考えた理由、このトレーニングで何を得たいか?」を質問していくなかで、各受講者が持つ課題を引き出していきました。そして、それぞれの持っている課題は自分一人に限ったものではないこと、ライフスキルトレーニングによって、物事の捉え方や思考の深め方、対処の方法がわかるようになると、課題への対応能力がついてくることを示し、それらは4カ月間にわたるプログラムを終えて、来シーズンに実践していくなかで「こうやっていけばいいのかなとわかるようになってくる」と述べました。



さらに、布施特別講師は、
・ライフスキルトレーニングのベースにあるスポーツ心理学は、「見える化」していく学問。個人の勘や経験を可視化し、トレーニングができる、あるいはイメージとして理解できる状態にしていくことによって、「使える自分の引き出し」を増やしていくことができる、
・自分の“最高”を目指すためには、周りから自分はどう写っているのかの比較(横型比較)ではなく、自分のなりたい自分像と比較すること(縦型比較)が重要になる。将来のなりたい自分と比較し、そこに辿り着くためにどうしたらいいのかを考えていくことにある、

といった点を挙げ、その「なりたい自分を目指していく過程で必要になる」として、「役割性格」という概念について解説していきました。これは、スポーツにおける場面を例にすると、アスリートとして成熟していくために、目指すゴールから自分に必要な役割を見つけ、「こうなりたい自分」を役者のように演じることによって、目標に近づき、達成していくという方法です。

続いて説明が行われたのが、「目標の使い方」という考え方です。布施特別講師は、「自信は、自分で立てた小さな目標が達成する数が増えることで高めていくことができる」として、目標は単に設定するだけでなく、「使いきる」ことが大切であると強調。そのコツとして、「目標は、まず大きな目標と小さな目標を掲げる。さらに小さな目標のなかで、最高目標と最低目標を据え、2つのゴールをつくること(ダブルゴール)が鍵である」と述べました。さらに、自信を損なうことなく取り組んでいくためには、挑戦(C:チャレンジ)と能力(S:スキル)のバランス(CSバランス)を保った状態で高めていくことが大切になってくると説明しました。

これらを踏まえて、受講者たちには、次回までの宿題として、
『自分のありたい将来像を描き、大きな目標から逆算して、小さな目標を具体的に書き出す。小さな目標を、最高目標と最低目標に分け、それを達成するための新たに設定した役割性格を演じきる。そのプロセスと変化を記録し続ける。』
という内容が提示され、イメージが想起しやすいように3つの小グループに分かれて、「小さな目標として、どういう項目があるか」の意見交換が行われたのちに1回目の講義が終了しました。


【第1回全体講義受講後:受講生コメント】

景山咲穗(筑波大学2年、100m、200m)



筑波大学からは、昨年度の段階で、第1期生として3名の先輩(高良彩花、小林歩未、渡邉ももこ)が受講しています。今回、第2期生として受講することが決まったとき、先輩からは「ここで関わった仲間とは、今も仲良くしているよ」とか、「競技にも、普段の生活にも、すごく活きてくる内容を教えてもらえるので、とにかく楽しんできてね」といった声かけをしていただきました。

でも、1回目の終えての感想は、「すごく緊張した」というのが正直なところです。オンライン上ではあったけれど、実際に皆さんと顔を合わせると、「何を話せばいいのかな」と考えてしまいましたし、また、発言を求められたときには戸惑ってしまいました。

講義で心に残ったのは「役割性格」について、「利き手と、そうでない手とで、自分の名前を書く」という喩えを挙げて説明していただいた部分です。「素の自分の性格と役割性格との違いは、自分の名前を右手(利き手)で書くことと左手(利き手でない手)で書くことの違いのようなものだ」という話を聞いて、より具体的に「役割性格」というものを認識することができました。私は、自分のことを、相手にうまく伝えられない点を課題だと思っているのですが、「役割性格」を使うことで、それができるようになるのかなと、すごく感じました。また、今日の講義を聞いて、普段、練習をするなかでも、大きな目標と小さな目標を明確に立てて、それを達成するための過程においても、自分のなかでコントロールしていけるようにすればいいんだなと思いました。
まずは、自分自身がもっと積極的に発言したり、まとまりのある相手に伝わりやすい発言をしたりできるようになることを心がけていきたいと思っています。そして、それを通して、一緒に受講する人たちと、活発な意見交換ができるようになっていきたいです。そういった面でも、これから回数を重ねていくごとに、どんどん成長していけると思うので、とても楽しみです。(談)


金子魅玖人(中央大学2年、800m)



どんな雰囲気なのかがわからなかったこともあってか、最初は全員が緊張している感じでしたし、僕自身も緊張していましたが、1対1でのワークショップに入ったときには、自分の話がきちんとできていたので、そこはよかったと思っています。緊張感もあって、今日はまだ、深く聞くことはできませんでしたが、これからプログラムが進むなかで、一人一人のいろいろな考え方を知ることができるようになればいいなと思っています。

全体講義では、「役割性格」という考え方が紹介されました。この話を聞いて、僕は、特に意識していたわけではなかったものの、これまでにも練習に向かうときは、自分の気持ちや意識を、普段の状態から切り替えることをやっていたんだなと思いました。普段は、そんなにやる気に満ちあふれたタイプ(笑)ではないのですが、練習のときはスイッチを切り替えて「よし、やってやるぞ!」みたいな感じで、性格を変えて取り組んでいましたから。それは試合でもいえることで、戦略的なところはレース前から冷静に分析して臨む一方で、中距離ではラスト勝負などで気持ちが大事になってくるところもあるので、「絶対に負けないぞ!」と“強い自分”を意識して臨むようにしているところがありました。今回、「役割性格」という概念を学べたことで、これからはもっと、より具体的に活用できるようになるんじゃないかと思います。また、「理想像(なりたい自分)から逆算して考えていく」という点は、今もやっている「日々練習を全力でやりきる」「練習に対してポジティブに取り組む」「弱音を吐かない」などは、宿題となった「小さな目標」ということができ、すぐに実践できるものなのかなと感じました。

僕は、将来、陸上競技を続ける前提で、社会人としてもきちんとやっていけるようになりたいという思いで、このプログラムに応募しました。今日学んだ「役割性格」などは、陸上競技だけでなく、将来、社会に出ても使えることです。こうしたいろいろな考え方や技術を、これからの講義でたくさん学んでいけることを期待しています。(談)


文・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)


■ライフスキルトレーニングプログラム 特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/lst/


■ライフスキルトレーニングプログラム 第2期受講生決定~競技においてもキャリアにおいても「自分の最高を引き出す技術」を習得する~
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15632/

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