2020.08.27(木)大会

~国立競技場初の競技会でトップアスリート達が躍動!~  セイコーゴールデングランプリ陸上2020東京 大会レポートその2



5月10日の開催が延期となっていた「セイコーゴールデングランプリ陸上2020東京」が8月23日、東京・国立競技場で開催されました。この大会は、今季からワールドアスレティックス(WA)がダイヤモンドリーグに次ぐ国際主要大会として創設した「コンチネンタルツアー」のゴールド(最高峰)に格付けされていますが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、エントリーは国内在住競技者のみに限定し、無観客での開催に。運営面でも細心の配慮が施されたなかでの実施となりました。

男子100mを筆頭に、実施された全20種目において、国内のトップアスリートが集結。来年に延期された東京オリンピックに向けて、スタートを切りました。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト

大会レポートその1 はこちら


◎注目の男子100m対決は、桐生が制す


今大会、最も前評判が高かったのは男子100m。この種目のみ予選が設けられ、ドリームレーン枠として公募者から選抜された高校生アスリート9名を含む27選手がエントリー。最終種目として行われた決勝には、3組行われた予選で各組上位2着+2に入った選手にワイルドカード(ドリームレーン枠の記録最上位者)1名の計9名が進出して行われました。

トップ競技者では、桐生祥秀(日本生命、前日本記録保持者、9秒98)、小池祐貴(住友電工、9秒98)、山縣亮太(セイコー、10秒00)、多田修平(住友電工、10秒07)、ケンブリッジ飛鳥(Nike、10秒08)と、9秒台と10秒0台の自己記録を持つトップランカー5選手が勢揃い。アメリカに拠点を置いている日本記録保持者(9秒97)のサニブラウン・アブデルハキーム選手の不在は惜しまれましたが、豪華な顔ぶれによる「新国立での最速対決」として、記録・勝負ともに大きな期待が寄せられました。

予選では、肺気胸や故障の影響で昨年のGGP以降レースから遠ざかっていた山縣選手が決勝進出を逃す(予選1組、3着10秒42、-0.3)波乱がありましたが、3組目(+0.7)を1着でフィニッシュした桐生選手の10秒09をトップタイムとして、桐生選手に0秒02差で続いたケンブリッジ選手のほか、多田選手・小池選手も各組で2着ながら順当に通過。約1時間半のインターバルをおいて行われた決勝へと駒を進めました。

迎えた決勝は16時45分にスタート。向かい風0.2mの条件下となりましたが、ここでも予選同様に隣り合うレーンに入った桐生選手とケンブリッジ選手が、頭一つ抜けた感のあるレースを展開しました。ともに上々のスタートを見せた2人は中盤にさしかかるあたりで横一線から抜け出します。60m付近で桐生選手がややリード。ここからラストを得意とするケンブリッジ選手の逆転なるかとも思われましたが、桐生選手がそれを許さず10秒14で先着。ケンブリッジ選手は10秒16でのフィニッシュとなりました。この2人に続いたのは、予選で10秒25を出して4年ぶりに自己記録を更新していた竹田一平選手(スズキ浜松AC)で自己3番目となる10秒28をマークし、2レースを10秒2台でまとめました。

レース後の桐生選手は、「予選と決勝の間が短かったが、そのなかで自分の走りができた。勝ちきることができたので、よかったと思う」と、前日の記者会見でもこだわりを見せていた「勝ち」を手にしたことで満足げな様子。今季日本最高となる8月1日の10秒04も含めて、今季は中盤から終盤にかけて、イメージに近い走りができていることを評価する一方で、「もっと前半が行けると思うので、そこは来週(アスリートナイトゲームズイン福井)、再来週(富士北麓ワールドスプリント)で直したい」と、エントリーしている次の2レースに向けて課題を示しました。

「予選はある程度目標にしていたタイムで入れたが、決勝が少し物足りない感じで終わったのは残念」と振り返ったのは、2位のケンブリッジ選手。「桐生くんは強かった」と認めつつも、「自分自身も前半いい形で入れた割には、後半がうまく走れなかった」と話し、「(初戦の)東京選手権もそうだったが、これまで後半で腰が入って乗り込んでいけたところで、抜けていける感じがある。そこができるようになると、もう少しタイムは伸びると思う」と分析しました。日本選手権で勝負することを考えると「今日は勝っておきたかったというのが正直なところ」という本音も見せつつ、「ここ1~2年の状態を考えると、そんなに悪くはなかった。日本選手権までまだ何レースかあるので、しっかり上げていきたい」と明るい表情を見せていました。

やや課題を残す結果となったのは、多田選手と小池選手。多田選手は10秒37で6位、小池選手は10秒53で8位にとどまりました。「アップのときは調子がいいかなと思ったが、いざ走ると噛み合わないところがあった」振り返った多田選手は、「正直、後半も力んでいた」と明かし、「持ち味のあるスタートから置いていかれた感じがあったので、まずはそこを直さないと」と反省していました。一方、このレースが初戦だった小池選手は、「いい状態に仕上げていたつもりだったが、思った以上に身体が軽くて、地面を押せなかった」とコメント。「レースのときにぐっと力が上がってくる感じとか、地面を押し返せている感じが今日は感じられなかった」と振り返り、「とりあえずは何本かこなして、レースを重ねることで出力の感覚を取り戻せていければ…」と話していました。


 

◎女子100mHでは寺田が好記録V。他種目でも区分別歴代上位記録が誕生


このほか、女子100mHは、昨年12秒97の日本記録を樹立し、ドーハ世界選手権にも出場した寺田明日香選手(パソナ)が、今季初レースながらサードベストとなる13秒03(+0.3)をマークして快勝。「中盤のハードリングで何台か浮いてしまった。それを修正すればベストはすぐに出ると思う」と頼もしい言葉を聞かせてくれました。なお、この種目では、2位でフィニッシュした青木益未選手(七十七銀行)が、昨年出した13秒15の自己記録を更新。日本歴代7位となる13秒09をマークする好走を見せています。

近年活況を呈している男子110mHは、前日本記録保持者(13秒36、2018年)で、8月2日の初戦で13秒34(日本歴代2位)の自己新記録を出していた金井大旺選手(ミズノ)が、向かい風0.4mのなか自己3番目となる13秒45で快勝。好調を維持している様子がうかがえました。金井選手に続いたのは村竹ラシッド選手(順天堂大)。大学1年生となった今季、走るたびに自己記録を更新し、8月2日には13秒78(U20日本歴代3位)まで記録を短縮している選手ですが、今回、U20日本歴代2位の13秒65をマークし、日本記録保持者の高山峻野選手(ゼンリン、13秒74、3位)に先着しました。

大会最初の決勝種目となった男子走高跳は、衛藤昂選手(味の素AGF)と真野友博選手(九電工)のジャンプオフに。ジャンプオフ最初の高さとなった2m27をクリアした衛藤選手の勝利となり「優勝第1号」となりました。日本記録保持者の戸邉直人選手(JAL)も2m24をクリアしていますが、試技内容の差で3位にとどまりました。

ドーハ世界選手権代表3選手が出場した男子走幅跳は、風の回る、難しいコンディション下での試合となりました。同大会8位入賞を果たした橋岡優輝選手(日本大、ダイアモンドアスリート修了生)が7m96(-0.1)で優勝。2位には今年から社会人となった津波響樹選手(大塚製薬)が7m76(-0.3)で続き、昨年8m40の日本記録を樹立し、世界選手権では決勝進出を果たした城山正太郎選手(ゼンリン)は7m71(+1.0)・3位で競技を終えました。なお、この種目には、昨年、高校2年生にしてU20年代最初の8mジャンパー(8m12=U20日本記録)となった藤原孝輝選手(洛南高3年・京都、ダイヤモンドアスリート)が招待選手として出場。強豪のシニア選手と初めての直接対決する機会となりましたが、今季を通じて解消できずにいる助走での課題がネックとなり、結果は7m42(-0.7)・7位にとどまっています。

同じくドーハ世界選手権代表3選手が出場した男子棒高跳も、風に悩まされるなかでの競技となりました。優勝は、5m60をクリアした山本聖途選手(トヨタ自動車)。江島雅紀選手(日本大、ダイヤモンドアスリート修了生)が5m50を成功させて2位となり、日本記録保持者(5m83)の澤野大地選手(富士通)は5m30で5位という結果でした。

男子200mは、飯塚翔太選手(ミズノ)が20秒74(+0.6)で優勝。男子400mHは安部孝駿選手(ヤマダ電機)が49秒32で制しました。女子やり投は昨年66m00の日本記録を樹立した北口榛花選手(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)が社会人デビュー。助走の改良に取り組んでいるなかでの試合で、課題を残しつつも、59m38で優勝を果たしています。

男子800mでは、若手選手の好走が目を引きました。今春から大学生となった金子魅玖人選手(中央大)が、7月にマークした自己記録(1分48秒65)を再び更新する1分47秒30で優勝したのです。この記録は、今季日本最高記録。この結果により、金子選手は学生歴代・U20日本歴代ともに5位にランクインしました。優勝した金子選手と最後まで競り合ったのは、1年生ながら昨年の日本インカレを制して注目を集めた松本純弥選手(法政大)。昨年の日本選手権(予選)でマークした1分47秒70の自己記録を、1分47秒48へと更新し、学生歴代で7位に浮上。両選手による日本インカレでの再対決、さらには日本選手権での勝負が楽しみになってきました。

 


◎“ドリームレーン”で、高校生アスリートが躍動


今年のGGPでは、コロナ禍により競技活動を制限されるとともに、最大の目標となるインターハイの中止を筆頭に、シーズン序盤に開催される予定だった数多くの競技会が中止・延期となる事態に見舞われた高校アスリートを対象とした、「ドリームレーン」と称する出場枠が設定されました。

出場希望者を全国から募集し、これに応じた高校生アスリートのなかから、シドニーオリンピック女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん、北京オリンピック4×100mR銀メダリストの髙平慎士さん、山崎一彦日本陸連トラック&フィールドディレクターの3名が選考委員を務めて、28名の出場者を選出。最終的に25名の高校生アスリートが、東京オリンピックの舞台となる国立競技場で日本のトップ選手の胸を借りて競技に挑み、出場選手のうち、8名が自己新記録をマークする結果を残しました。出場した全選手のコメントは、GGPの特設サイト( http://goldengrandprix-japan.com/ )内に、男女別にまとめられていますので、そちらをご覧いただくとして、ここでは、特に目を引く活躍を見せた選手たちをご紹介しましょう。

予選・決勝の2ラウンドが行われた男子100mには、まず予選で各組3名ずつ合計9名が出場。「ドリームレーン」の最上位者1名に、決勝進出のワイルドカードが与えられることになっていましたが、予選3組を走った栁田大輝選手(東京農大二高2年・群馬)が、高2歴代2位(高2最高記録保持者は桐生選手)となる10秒27(+0.7)の好記録をマークして着順(2着)での通過を果たしたことで、高校生2名がGGPのメインイベントに据えられた決勝に進出することとなりました。予選で栁田選手に次ぐタイムをマークしていたのは、1組に出場した井澤真選手(立命館慶祥高3年・北海道)で、10秒42(-0.3)の自己新記録をマークしていましたが、予選で右ハムストリングを痛めたためにワイルドカードを辞退。井澤選手に次ぐ10秒49(+0.7)の記録を出していた河田航典選手(中京大中京高3年・愛知)がワイルドカードで決勝に進むこととなりました。

迎えた決勝(-0.2)では、河田選手は10秒65(9位)、栁田選手は10秒36(5位)と、2人とも予選の記録を上回ることはできませんでしたが、栁田選手は多田修平選手・小池祐貴選手(ともに住友電工)に先着する結果を残しました。栁田選手は、2018年全日中で走幅跳優勝、100m2位の実績を持ち、昨年の茨城国体でも少年B男子走幅跳を7m48で制している選手。また、河田選手は、昨年のインターハイ男子4×100mRで中京大中京高のアンカーを務め、大会新記録となる39秒91での優勝に貢献した選手で、今季は100mで10秒39(+1.6)をマークしています。2選手ともに秋シーズンも活躍が期待できそうです。

男子やり投に出場した巖優作選手(市尼崎高3年・兵庫)は、順位は6位ながら4回目の試技で74m29のアーチを描き、高校歴代2位の好成績を残しました。昨年のU18日本選手権やり投優勝者で、今季は、7月に初の70m台(71m91)をマークすると、8月に入って72m00まで記録を伸ばしていました。高校の先輩にあたり、84m05のビッグスローで復活Vを果たしたディーン元気選手(ミズノ)が見守るなかでの好投でした。

男子1500mでは、甲木康博選手(城西大城西高3年・東京)が、トップ選手たちの胸を借りるレースを展開。高校歴代3位となる3分44秒62の好記録をマークしました。実は、この記録は、同じくドリームレーン枠で、この種目に出場が決まっていながら、体調不良により欠場となった石塚陽士選手(早稲田実高3年・東京)が7月に出したものと同タイム。同じ東京の同学年ライバルが高校歴代3位に並ぶこととなりました。男子1500mの高校記録は3分38秒49(佐藤清治、1999年)、歴代2位は3分44秒57(半澤黎斗、2017年)。秋シーズンには、これらの記録が塗り替えられるかもしれません。


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