2019.05.16(木)大会

【セイコーゴールデングランプリ2019大阪 展望その1】男子100m:桐生vs.山縣vs.多田vs.小池、戦いを制するのは?/男子走高跳:戸邉vs.衛藤、2m33を超える空中合戦の予感



セイコーゴールデングランプリ陸上2019大阪が5月19日、国際陸上競技連盟(IAAF)ワールドチャレンジ第3戦として、大阪市のヤンマースタジアム長居において開催されます。IAAFワールドチャレンジ種目として実施される男子12種目(100m、200m、400m、800m、110mH、400mH、3000mSC、走高跳、棒高跳、走幅跳、三段跳、やり投)、女子7種目(100m、200m、800m、100mH、400mH、走幅跳、やり投)のほか、IAAFハンマースローチャレンジとして女子ハンマー投が、オープン種目として男女4×100mR、女子4×400mR、女子3000mSC、パラリンピック種目(男子100mT63/64、男女混合4×100mユニバーサルリレー)が行われます。

今季から本格的に動き始めたIAAFワールドランキング制度において、競技会カテゴリーAに位置づけられているこの大会は、日本のトラック&フィールドの競技会としては最高水準のプレイシングスコアを得ることができます。このため、単に、今年秋にドーハ(カタール)で開催される世界選手権の参加標準記録、そして2020年東京オリンピック参加標準記録を突破する機会としてだけでなく、IAAFワールドランキングの獲得ポイントをより高めるために、いかに良い順位を得ることができるかも、特に2020年東京オリンピック出場に向けては、大きな意味を持ってきます。

会場をヤンマースタジアム長居に移して2回目の開催となりますが、今回も、オリンピックメダリストをはじめ、海外からも多くのトップ競技者がエントリー。ハイレベルな戦いが期待できそうです。

ここでは出場を予定している日本選手を中心に、好記録や名勝負が期待できそうな種目をピックアップしてご紹介します。

※各選手の動向は、5月15日段階の情報に基づくもの。


 


◎男子100m

桐生vs.山縣vs.多田vs.小池、戦いを制するのは?

例年、この大会の注目種目となっている男子100mは、今年も熱い戦いを見ることができそうです。日本勢は、山縣亮太選手(セイコー)、桐生祥秀選手(日本生命)、小池祐貴選手(住友電工)、多田修平選手(住友電工)の4選手がエントリー。2014年以降、不出場だった2015年を除いて4回優勝し、現在3連覇中のジャスティン・ガトリン選手(アメリカ)に挑みます。 

今季、好調なシーズンインを果たしているのは、9秒98の日本記録を持つ桐生選手。3月にオーストラリアで初戦に臨み、100mで10秒08(+2.0)、200mでは自己新の20秒39(+1.5)をマークして、両種目でドーハ世界選手権の参加標準記録(100m10秒10、200m20秒40)をクリアすると、4月にそのドーハで開催されたアジア選手権男子100mでは10秒10(+1.5)で優勝。アジアチャンピオンの座に輝いています。単独種目でのレースは、ゴールデングランプリ(GGP)が国内初戦となりますが、日本記録更新の可能性は十分にある仕上がりぶりといえるでしょう。 

昨年、日本選手に負けなしの戦績を残した山縣選手は、アジア大会では自身2回目となる10秒00をマーク。昨シーズン走った14レース中、3レースで10秒0台(10秒00、10秒01、10秒05)、8レースで10秒1台と、記録的にも非常に高いレベルの安定感を見せました。今季は、3月にアメリカでシーズンイン(10秒18、+2.1)したのちに、公認記録ではアジア選手権の準決勝で10秒18(+1.2)をマークしています。アジア選手権では、脚の違和感から大事をとって決勝を棄権。その状態が心配されていましたが、5月6日の木南記念を10秒21(+0.1)で制すると、第2走を務めた世界リレーでも好走を見せており、レースを重ねるごとに状態が上がってきている様子がうかがえます。山縣選手は、GGPの舞台となる長居スタジアムで、2017年に10秒00、2018年に10秒01(ともに全日本実業団)をマークしており、相性がいいといえるこのスタジアムで、自己記録の更新に挑みます。 



2017年のこの大会で素晴らしい序盤の飛び出しを見せ、優勝したガトリン選手をも驚かせた多田選手。昨シーズンは思うような走りができず苦しい1年を過ごしましたが、社会人1年目となった今季は、レースに多く出場していくなかで、持ち味の序盤から中盤の加速力を生かす走りに磨きをかけてきています。特に、世界リレーの決勝では、1走として素晴らしい“好ダッシュ”を披露。大きな手応えをつかんで、出身地の大阪で開催されるGGPを迎えようとしています。また、昨シーズンに急伸長を遂げ、200mでアジア大会金メダリストとなった小池選手は、4月のアジア選手権で20秒55(+1.7)をマークして銀メダルを獲得。世界リレーでは3走を務めるなど、チームジャパンの主力メンバーとしての立ち位置を着実なものにしつつあります。今季は初戦として臨んだ3月末のアメリカの大会の100mで、予選10秒09(+3.0)、決勝10秒07(+2.8)と追い風参考記録ながら10秒0台を2本続けてマーク。それ以来の100mとなるGGPでの走りが注目されるところです。向かい風や追い風に大きく左右されないパワフルな走りが小池選手の持ち味。昨年マークした自己記録(10秒17、+0.6)は確実に上回るレースが期待できそうです。 

男子100mのドーハ世界選手権参加標準記録は前述の通り10秒10。そして5月1日から有効期限内となった2020年東京オリンピック参加標準記録は10秒05です。後者を突破しているのは、5月11日に日本歴代2位となる9秒99(+1.8)をマークしたサニブラウン・アブデル・ハキーム選手(フロリダ大)のみ。果たしてGGPでは何人の選手が、サニブラウン選手に続くでしょうか? ドーハの代表切符はもちろんのこと、東京オリンピックの出場権を巡る戦いもすでに始まっています。 


 

◎男子走高跳

戸邉vs.衛藤、2m33を超える空中合戦の予感

「ワールドクラス」という点ではこの種目! 今年は男子走高跳も要チェックです。戸邉直人選手(JAL)と衛藤昂選手(味の素AGF)が、屋外での日本最高記録2m33を上回る高さで、空中合戦を繰り広げてくれるかもしれません。 

“屋外での日本最高記録”と書いた2m33は、今年、2月に更新されるまでの日本記録(醍醐直幸、2006年)。この記録を、2月19日のIAAF世界室内ツアー第2戦となるカールスーエ大会(ドイツ)で塗り替えたのが戸邉選手(当時、つくばツインピークス)です。戸邉選手は、カールスーエ大会を2m35の日本新記録で制すると、第5戦バーミンガム大会(イギリス、2m29)、最終戦デュッセルドルフ大会(ドイツ、2m34)と出場した3大会で全勝し、全種目を通してIAAF世界室内ツアーで日本人初の総合優勝を達成。その快挙とレベルの高い連戦での跳躍は、世界的にも大きく注目されました。

3月には博士号を取得して、筑波大学大学院を修了。4月からJALに所属する社会人として、新たなスタートを切ったばかりです。屋外初戦となったアジア選手権は、勝負の決め手となった2m29で助走をうまく噛み合わせることができず2m26で3位にとどまりましたが、室内シーズンも含めて国内では、このGGPが2019年シーズン第1戦となります。GGPでは、すでに突破を果たしているドーハ世界選手権参加標準記録(2m30、2018年9月7日から有効期限となっているため、室内の2m35で突破となった)の再度のクリアはもちろんのこと、5月1日から有効期限がスタートした東京オリンピックの参加標準記録(2m33)を上回る高さでの跳躍を期待することができそうです。

この戸邉選手の快進撃に負けじと、今季、好調な滑り出しを見せているのが衛藤選手。アジア選手権では、戸邉選手がクリアできなかった2m29を3回目に成功して、マジュド・ガザル選手(シリア)に次ぐ銀メダルを獲得しています。さらに、5月3日の静岡国際では、自己タイ記録でもある2m30を成功させてドーハ世界選手権参加標準記録を突破。クリアはなりませんでしたが、東京オリンピック参加標準記録の2m33にも挑んでいます。

5月7日更新時点の男子走高跳のIAAFワールドランキングでは、戸邉選手が5位、衛藤選手は15位。カテゴリーAであるGGPでの記録と順位は、このランキングにも反映されるとともに、特に衛藤選手については、ダイヤモンドリーグなど海外主要大会への参戦にも影響する重要な試合となるはず。ちなみに、5月15日現在の2019年の屋外リスト1位の高さは、2m31。GGPでは、両選手が今季世界最高記録の高さで優勝争いする可能性も十分にあります。 

また、日本からは、戸邉選手、衛藤選手とともに、真野友博選手(九電工)も出場することになりました。昨年、福岡大4年の昨年、2m26まで自己記録を伸ばしてきた選手ですが、社会人1年目の今季は5月3日の静岡国際で2m27の自己新記録をクリア。学生時代からの恩師である片峯隆コーチ(福岡大)の自己記録(1983年、当時日本記録)に並びました。今年はドーハ世界選手権への出場を目標に掲げているだけに、ハイレベルな展開が期待できるこのGGPで、標準記録の2m30をクリアし、現在の生活拠点である福岡で開催される日本選手権を迎えたいところでしょう。

【セイコーゴールデングランプリ2019大阪 展望その2】へ続く…

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト

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