2019.02.22(金)委員会

【女子リレー】新プロジェクト強化合宿/レポート&コメント



2020年東京オリンピック出場権獲得を最大目標として立ち上げられた女子リレー新プロジェクト。セレクションで選抜された第1期日本代表候補選手たちは、1月25~27日に実施された合宿から強化をスタートさせ、次のステップに進んでいます。4×100mRチームは2月16~18日、4×400mRチームは2月15~19日の日程で、味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて、2回目の強化合宿を行いました。

前回の合宿においては、練習が公開された4×100mRチームの様子をレポートしましたが、今回は、4×400mRチームのトレーニングの模様をご紹介します。

 


2月15~19日の日程で行われた4×400mRの2回目の合宿には、大学の実習の日程が重なったために不参加となった広沢真愛選手(日本体育大)を除き、青山聖佳選手(大阪成蹊大)、井戸アビゲイル風果選手(至学館高)、稲岡真由選手(園田学園女子大)、岩田優奈選手(中央大)、小林茉由選手(日本体育大)、武石この実選手(東邦銀行)、藤沢沙也加選手(セレスポ)、松本奈菜子(筑波大)の8名が参加しています。

今回の合宿では、1回目の合宿に置いて測定された個々のデータに基づき、国立スポーツ科学センター(以下、JISS)に設置されている低酸素室を利用した「低酸素トレーニング」をメインに据えた強化練習に取り組みました。4日目の2月18日は、午前中にスプリントトレーニングを、午後は持久性トレーニングを行うプログラム。どちらも、1回目の合宿で測定されたデータに沿って、各選手が最大効果を得られるような数値が設定され、一定の手順によってトレーニングを実施。そのトレーニングの強度(きつさ)を、直後に測定した血中乳酸濃度(以下、乳酸値)によって把握していきます。午前中のスプリントトレーニングでは、エアロバイクを用いた高強度インターバルトレーニングとして、セット間休息4分の設定で、各選手の体重に応じた負荷での30秒間全力ペダリングが5セット行われました。

取材を行った午後の持久性トレーニングは、トレッドミルを用いての漸増負荷ランニング30分間とエアロバイクでの定常負荷ペダリング30分間を、3分間の休息をおいて行うという内容。トレッドミルでのランニングは、選手ごとに乳酸値が4mmol出るスピードに対してのパーセンテージが走速度として設定され、最初の5分間を75%でスタート。その後、5分ごとに80%、85%、90%、95%、100%と速度を上げていき、最後まで走りきることを最大目標としてオールアウト(限界の状態)になるまで走るというプロトコル(手順)で、エアロバイクでのペダリングは、各選手の体重の3.5%の負荷で、1分間に80回転をキープし、30分漕ぐというプロトコル。これを、3200m前後の高度に設定され、14.5%の酸素濃度に設定された低酸素トレーニングルームで実施します。 設備の都合により一度に行えるのは4人となるため、練習は2班に分かれて実施。各班ともに馴化を兼ねたウォーミングアップを20分行い、2組のペアとなってそれぞれがトレッドミルとエアロバイクを入れ替わる形でトレーニングを開始しました。

3200mの高度は、富士山では8合目付近に相当する高さ。特に、走速度を上げていくトレッドミルでのランニングでは、終盤になると呼吸が荒くなり、限界に近い状況下に陥る様子も見られました。そんななかで、スタッフだけでなく、ペダリングを行っている選手たちがそれぞれに「ファイト!」「頑張ろう!」「もうちょっと」と声をかけ、励まし合いながら取り組んでいる様子が印象的でした。

この低酸素トレーニングのフィードバックは、夜のミーティングにおいて行われるとのこと。各選手たちは、データによって示された結果を見ながら、自身のトレーニングの進捗や効果を把握したうえで、さらなる課題を設定し、次のトレーニングへと向かっていく形となります。

 

【コメント(要旨)】
◎吉田真希子(4×400mR強化スタッフ/強化委員会強化育成部委員)

4×400mRチームは、前回の合宿(1月25~27日)は、無酸素性能力と有酸素性能力の測定を中心に行った。今回は、その結果をもとにして、体力的な要素の底上げを図るための取り組みを行っている。メインとしているのが、低酸素環境下で行うトレーニング。前回の測定結果を、各個人にフィードバックし、それぞれの強みや課題を明確にしたうえで、今回、400mに必要となる無酸素性能力、有酸素性能力のどちらにも働きかけるようなトレーニングを徹底的に進めている。

日本陸連の科学スタッフだけでなく、JISSからも全面的なご協力をいただくことができたため、この分野に精通された先生方々による「今、これが一番いい」とされているプロトコル(手順)を適用して実施できている。そういう意味では、選手からすればもう「地獄」(笑)といえるくらいのきついトレーニングになっていると思う。

ただ、当の選手たちには「やらされている」という感じは全くない。目指すところが明確であるうえに、測定結果をしっかりと認識したうえで取り組めていることによって、「つらいけど、これをやれば、自分の可能性が引き出されるんだ」という思いがあるようで、実際に見ていても、苦しい練習に向かっていこうとする強い意志を、全員から感じることができている。また、フィードバックの際には、示された自分の数値を読み解こうと努力したり選手間で話し合ったりする姿が見られるほか、練習中も「どうして3分休みなのですか?」「この部分に何か理由があるのですか?」というように選手側からJISSの方に質問をする場面もよく目にする。それぞれの選手に、主体的に取り組もうとする意識が芽生えているなという印象がある。

練習自体は本当にきつく、「乗り越えなければならないもの」ではあるが、それに向かっていくマインドや取り組む姿が、互いにいい刺激を与え合っているようだ。例えば、井戸アビゲイル風果は、マイルチームでは唯一の高校生。おそらく非常に大変だと思うのだが、本当に一所懸命に取り組んでくれている。そうした彼女のひたむきな姿に、ほかの選手たちが触発されている面もあるし、逆に、ずっとトップでやっている年長者が見せる「底力」のようなもの触れた高校生や大学生が、自分との違いを肌で感じて、学んでいることも多いように思う。

3回目の合宿は、2月28日から沖縄で実施するが、出発前の2月27日にもう一度測定を行い、1月下旬からの取り組みによって、選手たちがどう変化しているのかを把握する。そして、3月以降は、これらの体力ベースの底上げを、400mという種目に変換していく作業にとりかかっていくことになる。

 

◎藤沢沙也加(セレスポ)

合宿も2回目に入って、チームとしてすごくまとまってきた感じがある。コミュニケーションもしっかりとれているし、とてつもなくきつい練習(笑)を一緒にすることによって、“つらいのは自分1人じゃない。みんながいるので頑張れる”という思いで取り組むことができるようになってきた。低酸素トレーニングは、本当にもう、今までにないきつさだが、それによってチーム力が上がっていることも実感できていて、この先、何か変われるチャンスがあるのではないかと思っている。

低酸素室を用いたトレーニングを行うことで、私自身の変化としては、体重がみるみる落ちている。また、本当に経験したことのないつらさ…脚が全く動かなくなったり、手も努めて動かさなければならない状況になったりする…まで追い込むということは、通常ではなかなか体験できないこと。本当に強い気持ちで臨まないとできないし、その上で、合宿にかかわっているスタッフの皆さんが心から支えてくださっているので、このトレーニングを経験することで、自分が強くなっていることを信じたいという気持ちが強い。

私個人としては、2年前の日本選手権200mの予選でアキレス腱を断裂し、すぐに手術したあと、いったん第一線から外れて、昨シーズンはリハビリに費やす1年を過ごした。そのなかで、やっと練習をこなせるようになり、今回の代表入りのチャンスをつかんでいる。メンバーのなかでは最年長。しっかりとそのチャンスをものにできるよう、年齢もだが、記録でもみんなを引っ張っていけるようでありたい。まずは自分自身がみんなよりもいい記録で走るという強い意志で、シーズンに臨みたいと思っている。

また、チームとしては今後、「みんなが100%以上の力を出しての日本記録樹立、さらに、それより上の水準の記録」が求められることになる。それを実現して「チームジャパンとしての最大目標」をクリアできるよう、自分の役割を果たしたい。

 

文・写真:児玉育美/JAAFメディアチーム

 

▶強化方針および今後の合宿、試合スケジュールはこちら
【女子リレー】新プロジェクト説明会 その3

【女子リレー】新プロジェクト合宿公開練習/レポート&コメントVol1はこちら



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