12回目を数える東京マラソンは2月25日、前回に続いて西新宿の東京都庁前をスタート、東京駅前・行幸通りにフィニッシュする42.195kmで開催される。向かい風とアップダウンがきつかった旧コースから〝高速コース〟へと改革されて2年目。今回も好記録への期待が高まる。アボット・ワールドマラソンメジャーズ・シリーズ11の第6戦で、今回は8月下旬のアジア大会(インドネシア・ジャカルタ)の日本代表選考会であり、さらには2020年東京五輪日本代表選考会であるマラソングランドチャンピオンシップシリーズも兼ねる。国内外のトップ選手が一堂に集結するビッグレースに注目だ。
(月刊陸上競技3月号より)
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今年も有力選手が集結する東京マラソンで、最も期待を集めている日本人ランナーが2016年リオ五輪男子10000m代表の設楽悠太(Honda)だろう。
初マラソンとなった前回は、持ち味のスピードを生かして10kmを29分12秒、20kmを58分34秒、中間点を1時間1分55秒で通過。33km付近まで日本記録(2時間6分16秒)のペースを上回る果敢な走りを見せ、後半は苦しんだものの2時間9分27秒にまとめた。
昨年9月にはチェコのハーフマラソンで1時間0分17秒の日本記録を樹立。その1週間後には世界屈指のメジャーレースであるベルリン・マラソンで2時間9分03秒と自己記録を塗り替えて6位に食い込む〝離れ業〟をやってのけている。
2018年になっても設楽の勢いはとどまらない。元日の全日本実業団対抗駅伝では最長22.4kmの4区で区間2位の井上大仁(MHPS)に34秒差をつけて区間賞を獲得。埼玉の代表として出場した1月21日の全国都道府県対抗駅伝でも、最終7区(13km)で4位からトップに立ち、ぶっちぎりの区間賞を奪って優勝ゴールに飛び込んでいる。2月4日の香川丸亀ハーフでは、雪と後半の向かい風に苦しみながらも1時間1分13秒で日本人トップの2位を占めた。
今大会には2連覇がかかる前世界記録保持者のウィルソン・キプサング(ケニア)ら世界の強豪もやってくる。日本人向けの「1km3分」で進むペースメーカーも用意される予定だが、「キプサング選手にも挑戦したいですし、前半から攻めていこうと思います」と設楽は今回も積極的なレースを仕掛けることを明言した。
攻めの走りにプラスして、最近は安定感もアップ。その要因について、「試合に向けてしっかり準備ができているからだと思います」と設楽は自己分析する。初マラソンの前は一度も40km走を行わずに挑戦したが、今回も40km走は予定していないという。
「距離を踏まないとマラソンは走れないという声をたくさん聞きますけど、もうそんな時代ではありません。僕は40km走をやらなくてもマラソンは走れます。今は環境にも恵まれているので、いいシューズを選び、効率良く練習すれば結果はついてくるんじゃないでしょうか」
3週連続のレースとなったベルリン・マラソンでも結果を残しており、今回の東京も3週間前の丸亀ハーフを経て、2週間前に唐津10マイル(2月11日)に出場予定。いずれも「全力で走る」プランだ。
「マラソンの1~2週間前まで試合に出るのも、僕の中では普通です」と豪語する設楽。昨年9月から厚いソールが特徴的なレース用シューズを履くようになって連戦がきくようになったという。
絶好調の設楽は、東京マラソンの招待選手発表を兼ねた1月22日の記者会見で日本記録の2時間6分16秒を上回る「2時間6分10秒」を目標としてタイマーに表示させた。より実現可能性の高い目標としては、同学年である大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が昨年12月の福岡国際マラソンでマークした現役日本人最速記録の2時間7分19秒を挙げる。
「まずは大迫選手のタイムを一番のターゲットとして走りたいと思います。高校時代は憧れでしたけど、今は目標としている選手。切磋琢磨しながらマラソン界を盛り上げたいですね。東京五輪に出場するには大迫選手に勝たないといけないですし、それには日本記録を上回るようなタイムが必要。また、世界と勝負するためには(2時間)4分台、5分台を出さないといけません。みなさんが楽しみにしているのは日本記録更新だと思うので、絶対に抜く気持ちで走りたいです」
福岡の大迫に続き、東京では設楽が2020年東京五輪の〝希望の星〟に輝こうとしている。
(文/酒井政人)
写真提供:フォート・キシモト
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