2023.05.09(火)

【記録と数字で楽しむ第107回日本選手権】男子5000m:至近3年の「表彰台占有率78%」の遠藤vs松枝vs坂東に誰が絡むか?



6月1日~4日に大阪(ヤンマースタジアム長居)で行われる「第107回日本選手権」の「見どころ」や「楽しみ方」を「記録と数字」という視点から紹介する。
各種目の「2023年日本一」を決める試合であるとともに、8月にハンガリー・ブダペストで行われる「ブダペスト2023世界選手権」、7月のタイ・バンコクでの「アジア選手権」、9月末からの中国・杭州での「アジア競技大会」の日本代表選手選考競技会でもある。また、「U20日本選手権」も同じ4日間で開催される。
本来であれば全種目についてふれたいところだが、時間的な制約のため10種目をピックアップしての紹介になったことをご容赦いただきたい。また、エントリー締め切りは5月15日であるが、この原稿はそれ以前の10日までに執筆したため、記事中に名前の挙がった選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれないことをお断りしておく。

過去に紹介したことがあるデータや文章もかなり含まれるが、可能な限り最新のものに更新した。
スタンドでの現地観戦やテレビ観戦の「お供」にして頂ければ幸いである。
なお、「10000m」の日本選手権は12月10日に国立競技場で、「混成競技」は6月10日・11日に秋田で、「リレー種目」は10月7日・8日に国立競技場で行われる。また、「競歩」は「20km」が2024年2月18日に神戸で開催。2022年度からかつての50kmから距離が変更された「35km」は先日4月16日に輪島で行われた。「マラソン」は、10月15日に日本選手権を兼ねたパリオリンピックマラソン日本代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が行われる。


「世界選手権」「アジア選手権」「アジア競技大会」の代表選考要項は、
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15943/

現時点での「ブダペスト世界選手権参加資格有資格者一覧」は、
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17055/

選考に関わる世界陸連の「WAランキング」は
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17277/
をご覧頂きたい。

・記録は、5月5日判明分。
・記事中の「WAランキング」は5月2日時点のもの(毎週火曜日に発表されるので、できる限り最新のものを盛り込みたいところだが、原稿の締め切りの都合で5月2日時点のものとした)。
・記事は、5月5日時点での情報による。上述の通り、エントリー締め切り5月15日以前に書いた原稿のため、記事に登場する選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれない。また、競技の実施日は確定しているが具体的なタイムテーブルとエントリーリストは5月19日に公表される予定である。
・現役選手については敬称略をご容赦いただきたい。

なお、日本選手権の期間中、ここで取り上げることができなかった種目以外の情報(データ)も日本陸連のSNSで「記録や数字に関する情報」として、その都度発信する予定なので、どうぞご覧くださいませ。



>>チケット好評販売中!!
男子5000mは大会1日目 6月1日実施


【男子5000m】

・決勝/6月1日(木)


至近3年の「表彰台占有率78%」の遠藤vs松枝vs坂東に誰が絡むか?


遠藤日向が3連覇に、3年連続2位の松枝博輝は4年ぶりの3度目のVに挑む

大会初日、男子のトラック競技では唯一決勝が行われる種目だ。
ブダペスト世界選手権参加標準記録は「13分07秒00」で大迫傑(ナイキ)が2015年にマークした日本記録(13分08秒40)を上回る。
21年の東京五輪には富士通コンビの松枝博輝坂東悠汰、22年オレゴン世界選手権には遠藤日向(住友電工)が出場した。
21年と22年の日本選手権は、ともに遠藤が制し2位は松枝だった。遠藤も松枝も、日本選手権では非常に安定した成績を残してきている。
遠藤と松枝に20年に勝った坂東を加えた5000mの日本選手権での成績は以下の通りだ。

遠藤松枝坂東
16年11位
17年1位
18年2位14位
19年7位1位17位
20年2位1位
21年1位2位3位
22年1位2位18位

20年以降の3年間で「9つの表彰台」のうち「7つ」をこの3人で占めている。至近3年間の3人の表彰台占有率は77.8%にもなる。「すごい!」といえる。
今回もこの3人、とりわけ2連勝中の遠藤と3年連続2位の松枝が中心になり、これに坂東が絡んでくる展開になるのかもしれない。
あるいは、後述の10000mで好記録を保持する選手などもここに加わってくるかもしれない。

遠藤・松枝・坂東の1500m・3000m・5000m・10000mの自己ベストは以下の通り。
( )内は、23年5月4日現在の日本歴代の順位を示す。

遠藤3.36.69=22年
(5位)
7.49.90=20年
(10位)
13.10.69=22年
(2位)
未出走
松枝3.38.12=19年
(12位)
7.54.33=17年
(34位)
13.24.29=20年
(27位)
27.42.73=21年
(23位)
坂東3.37.99=21年
(10位)
7.52.41i=20年
(18位)
13.18.49=20年
(10位)
28.20.72=19年
(328位)

遠藤は、10000mを走ったことはないが18年元旦の全日本実業団駅伝では12.3kmの1区を34分55秒で走って区間賞を獲得している。34分55秒の平均ペースは10km換算28分23秒。この時点での5000mのベストは17年12月3日の13分38秒79だった。それで10km28分23秒のペースで2km以上長い12.3kmを走りきれた。当時の「10000m÷5000m」で算出した種目間の倍率(持久係数)は「2.0802」である。これに現在の5000m13分10秒69をあてはめると、10000mの推定タイムは「27分24秒80」という計算になる。また、実業団駅伝では1区以外にも外国人限定区間の2区8.3kmも2回担当して10kmよりも1.7km短いとはいえ10km換算27分44秒でカバーしてもいる。


遠藤のスパートにライバル達はどう対応するのか?



遠藤が5000mの自己ベスト13分10秒69をマークしたのは、22年5月4日の延岡でのゴールデンゲームズ。大迫の日本記録(13分08秒40)にあと2秒29に迫り、同走していたアフリカ勢十数人をラスト1周で退けて優勝した。
この時の1000m毎(非公式計時)は、
2.41.32.41.3
5.20.32.39.1
8.00.62.40.3
10.40.82.40.2
13.10.692.29.9

ラスト1000mを2分29秒9でカバーした。
このラスト1000mは、それまでの展開にもよるが、五輪や世界選手権の入賞争いでも十分に通用するスピードだ。
このレースでは、4000mまでアフリカ勢が形成する十数人の集団の後方で、先頭から2秒弱ほど遅れた位置にいた。残り700mあたりから徐々に上がっていき、ラスト450m付近で先頭に立った。

最後の1周の100m毎(非公式計時)は、
14.114.1 
28.614.528.6
42.013.4 
55.713.727.1

でラスト400m55秒7、ラスト200mを27秒1でカバーした。残り800mは1分58秒6だった。
そして、ベスト記録が12分59秒台の選手を筆頭にレース前までの遠藤のベスト13分16秒40を上回る自己記録を持っていた7人を含む17人のアフリカ系選手をラスト勝負で抑え、2位に4mあまりの差をつけて勝ち切ったのだった。

2連勝を決めた22年日本選手権も4200mからの一気のスパートで勝負を決めた。
そのラスト800mの100m毎は以下の通りだ(非公式計時)。
14.614.6 
15.430.030.0
14.944.9 
15.41.00.330.3
14.71.15.0 
15.21.30.229.9
14.81.45.0 
15.22.00.230.0

最終的には2位松枝に8秒02もの大差をつける圧勝での連覇だった。
ラストに切れがある遠藤に対して、他の選手がどんな展開や対応をしてくるかも注目ポイントだ。

10000mを得意とする選手が参戦してくれば勝負は一層面白くなりそうだ。
27分30秒以内のタイムを保持し同種目の日本歴代上位に並び、5000mの日本選手権参加標準記録(13.36.00)もクリアしている田澤廉(トヨタ自動車/13.22.60=22年)、伊藤達彦(Honda/13.17.65=23年)、田村和希(住友電工/13.27.56=22年)が出場すれば、当然のことながら優勝争いに絡んでくることだろう。とりわけ伊藤は、5月4日に3年前の自己ベストを16秒以上も更新して勢いがありそうだ。



また、日本で活動しているケニアを中心とする外国籍選手のうち資格記録上位2名が「オープン参加」という扱いで日本選手権に出場できる。日本人選手には彼らを目標として、8年ぶりの「日本新」とともに「ブダペスト世界選手権参加標準記録(13.07.00)」をクリアしてもらいたいところである。



遠藤が「3連覇」ならば歴代3位タイ。「富士通」が3年連続トリオ入賞ならば史上初

遠藤が3連覇を果たせば、この種目の連勝記録としては、
1)5村社講平(1934~38年)
2)4新宅雅也(1980~83年)
3)3松宮隆行(2006~08年)

に続き、歴代3位タイの記録となる。

21・22年は「富士通勢」が2年連続でトリオ入賞している。
8位までが入賞となった1989年以降での同一チームの3人以上入賞は、下記の通り。

1993年鐘紡2・4・5・7位=4人入賞
2004年カネボウ2・4・7位
2005年カネボウ1・2・5位
2015年旭化成1・3・5・6位=4人入賞
2021年富士通2・3・5位
2022年富士通2・6・8位

今回、富士通は6人がエントリーしている。3人以上が入賞すれば「3年連続」となり2004~05年のカネボウと自チームの21~22年を上回り、史上初の快挙となる。
松枝、坂東以外の富士通勢では、18年に3000mSCで日本一になったことがある塩尻和也が元気だ。
2月26日の日本選手権クロスカントリーの10kmは29分15秒で優勝。三浦龍司(順大4年。当時は3年)に13秒差をつける快勝だった。
3月24日に3000m7分48秒56の自己新。
4月8日の金栗記念5000mでは最終組で日本人トップの13分26秒03で、佐藤圭汰、吉岡、坂東に先着。
5月4日のゴールデンゲームズの10000mでは27分46秒82で、3月に27分28秒04で走っている田澤廉(トヨタ自動車)に4秒以上の差をつけて優勝。
以上の通り、今年の塩尻は、2月から勢いに乗っている。



「若手」にも注目!!



22年末時点の高校歴代リスト5000mの6位まで(13.22.99~13.37.46)が2020年から22年の3年間にマークされている。20年に石田洸介(東農大二高・群馬。現、東洋大3年)が出した13分34秒74の高校記録を21年に佐藤圭汰(洛南高・京都。現、駒大2年)が13分31秒19に更新。22年には吉岡大翔(佐久長聖高・長野。現、順大1年)が13分22秒99に伸ばした。大学生となった佐藤も22年に13分22秒91にベストを縮め、高校時代の「U18日本記録」とともに「U20日本記録」の保持者にもなった。

23年5月4日のゴールデンゲームズinのべおかの最終組では佐藤と同学年の吉居駿恭(中大2年)が13分27秒33で実業団勢を抑えてトップでフィニッシュ。自己ベストを13秒あまり更新するとともに日本選手権参加標準記録の13分36秒00をクリアして、出場資格を得た。
佐藤と吉岡はともに2004年生まれで、2023年も「U20」の資格がある。「U20」の歴代1・2位の対決でもある。

また、2つ差の弟・吉居駿恭に自己ベストで2秒以内に迫られ、資格記録では上回られてしまった兄・吉居大和(中大4年/13.25.87=20年。資格記録13.29.35=22年)は日本選手権の舞台では兄の意地を見せたいところだろう。こちらは兄弟対決だ。

日本人学生最高記録は、16年前の07年に竹澤健介さん(早大。現、摂南大ヘッドコーチ)がマークした13分19秒00。そろそろ更新してもらいたいところである。


佐久長聖高校出身の「ベテラン」にも注目!!



「若手」に劣らず「ベテラン」では、まずは上野裕一郎(セントポールクラブ)に注目したい。85年7月29日生まれの37歳。立教大学を55年ぶりに23年の箱根路に導いた「日本一速く走る監督」だ。
22年のベストは13分39秒95だったが、5月4日の延岡で13分32秒36をマークして日本選手権参加標準記録(13.36.00)をクリアした。ただし、ターゲットナンバー(出場人数制限)が「30名」なので参加標準記録をクリアしていても、出場できなくなってしまう可能性もあるけれども……。
日本選手権では、エスビー食品時代の09年に1500mと5000mの二冠王に輝いている。

また、上野の長野・佐久長聖高校の1年後輩にあたる86年11月26日生まれの36歳・佐藤悠基(SGHG)も22年に13分33秒61で参加標準記録をクリアしている。佐藤も14年に5000mを制し、10000mでは11年から4連覇した。14年は5000mとの二冠だった。

5000mの日本記録保持者で91年5月23日生まれの32歳・大迫傑も佐久長聖高校の出身。こちらも22年に13分30秒23で参加資格がある。16年に5000mを制し、10000mは16年と17年を連覇している。

上野・佐藤・大迫のベテラントリオが出場してくれば、高校の後輩にあたる04年5月18日生まれの19歳・吉岡大翔と、佐久長聖高校OBによる「年の差対決」となる。吉岡は上野とは18歳差、佐藤とは17歳差、大迫とは13歳差だ。


日本選手権での「着順別最高記録」

1)13.18.492020年/13.14.181998年=外国人/13.05.052005年=OPEN外国人
2)13.24.782020年/13.15.881999年=外国人/13.05.332005年=OPEN外国人
3)13.25.872020年/13.05.992005年=OPEN外国人 
4)13.28.702020年/13.12.552005年=OPEN外国人 
5)13.32.062021年/13.29.272005年=OPEN外国人 
6)13.34.192022年/13.30.482005年=OPEN外国人 
7)13.34.602022年  
8)13.35.632020年  

かつては外国籍の選手も正式な順位として認められていたが、現在ではオープン参加の扱いになっている。よって、大会記録は外国籍選手による13分14秒18(1998年)が残っている。
日本人による大会最高記録は2020年の坂東悠汰(富士通)の13分18秒49である。
至近3年間で各順位別の最高記録がマークされているが、今回もそれらのすべてが更新されそうなメンバーが揃いそうである。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト/アフロスポーツ


【第107回日本陸上競技選手権大会】




今年はスペシャルチケットとして、テーブル・コンセント付きの最上位グレード席となる「SS席」、1日50席限定の「B席アスリート交流チケット」、1日15席限定の「カメラ女子席」、そして日本選手権では初めてサブトラックの観戦ができる「サブトラック観戦チケット」を販売!既に一部の席は完売となっておりますので是非お早めにお買い求めください!
>>エントリーリスト(5月1日8時00分時点)
※エントリー締切期日は5月15日(月)17時00分となります。
※エントリー締切後に資格審査を行った後に、出場可否が決定します。
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