2025.09.21(日)
【東京2025世界陸上】8日目チームJAPANハイライト

チームJAPANハイライト
Day8:9月20日(土)
会期も残すところ2日となった東京2025世界陸上競技選手権大会は、9月20日、大会8日目を迎えました。この日は、5日ぶりにモーニングセッションとイブニングセッションの2部立てで行われるタイムテーブル。7時30分から女子、男子の順番に行われた20km競歩、前日から行われている女子七種競技、8・9日目に実施される男子十種競技を含めて、全部で8種目の決勝が行われました。この日最初の決勝種目として行われたのは、男女20km競歩。7時30分から女子が行われたのちに、9時50分から男子のレースが行われるタイムテーブルです。
まずは、日本陸上界に新たな歴史が刻まれた女子のレースから、ご紹介しましょう。女子がスタートした7時30分時点の気象状況は、天候曇り、気温23℃、湿度66 %(オフィシャルリザルツのデータによる、以下同じ)。それまでの夏の暑さから、秋の気配を感じる気候のなか、出発点となる国立競技場で号砲が鳴りました。日本から出場した藤井菜々子(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)・岡田久美子(富士通)・柳井綾音(立命館大学)の3選手を含む48名の選手たちが、トラックを300mほどまわって、マラソンゲートから神宮外苑のコースへと出ていきます。神宮外苑では1周1kmの周回路が設定され、ここを18周して、再び国立競技場でフィニッシュを迎えるというコース。「最初から先頭集団につくと決めていた」という藤井選手をはじめとして、岡田選手、柳井選手も、それぞれのペースで、レースを進めていきました。
トップグループは、最初の1kmこそ4分42秒と遅いペースでの入りとなりましたが、その後は4分20秒を切るハイペースで展開していくことに。先頭の5kmは22分05秒、10kmでは43分37秒(この間の5kmは21分32秒)とペースが上がり、それとともに集団はどんどん絞られていきました。トップを行くマリア・ペレス選手(スペイン)がさらにペースを大きく引き上げたことで、15kmは1時間04分59秒(21分22秒)での通過となります。藤井選手はキンベルリ・ガルシアレオン選手(ペルー)と3位争いしながらトップと1秒差の1時間05分00秒で通過すると、16kmまでにガルシアレオン選手を置き去りにして、アレグナ・ゴンサレス選手(メキシコ)と2位を争いつつ、さらにペースを上げた先頭のペレス選手を3秒差で追う展開となりました。藤井選手は、16~17kmでゴンザレス選手から少し後れ、そこからは単独3位で歩を進めて国立競技場へ。5番手から順位を上げてきたパウラミレナ・トレス選手(エクアドル)が、ホームストレートで大猛追し、同タイムでのフィニッシュとなったものの藤井選手が僅かに先着。自身が2月の日本選手権で出していた日本記録を更新する1時間26分18秒で、日本女子競歩史上初のメダルとなる銅メダルを獲得しました。

20kmの前日本記録保持者で、この大会を競技者としての集大成と位置づけてレースに臨んでいたベテランの岡田選手は、先頭集団のペースが速すぎると判断してからは、自身のペースでレースを進めていきました。一時は15~16番手を維持していましたが、最後の5kmは22分53秒にペースダウン。残り2kmで順位を落としたものの最後まで粘りきり、1時間30分12秒・18位で笑顔のフィニッシュを迎えました。

柳井選手は、1時間35分44秒で37位。9月に膝を痛め、「20kmを歩ききれるか不安だった」なかでのレースでした。レース後は、「背中を押してもらえた」と早朝にもかかわらず沿道で見守った観客からの温かい声援に感謝していました。

男子20km競歩は、女子のトップがフィニッシュしてから1時間弱の9時50分に号砲が鳴りました。スタート時の気温は24℃で湿度は68 %。気温上昇とともに、晴れ間が見えてきたことで、女子よりも暑さを感じさせる気象状況です。
神宮外苑の周回コースは、藤井選手がメダル獲得を果たしたことでボルテージが上がり、さらに多くの観衆によって二重三重の人垣ができ、関係者を驚かせました。それは選手たちも同様だったようで、のちに「(沿道側の)右耳がおかしくなったかと思うくらい、ずっと大きな声援を送ってもらえた」と感謝していましたが、その熱い応援が選手たちを奮い立たせ続けるレースとなりました。
日本からは、この種目の世界記録保持者(1時間16分10秒、2025年)で、2019年ドーハ・2022年オレゴン大会金メダリストの山西利和選手(愛知製鋼)、初日の35km(26位)に続いて2種目での出場を果たしたベテラン丸尾知司選手(愛知製鋼)、そして今回が初の世界大会の吉川絢斗選手(サンベルクス)が出場しました。
レースは、上位候補選手たちが、山西選手の動きを伺いつつ歩を進めていく展開に。スタート直後に飛び出した選手が5km(20分17秒)で山西選手や丸尾選手を含む後続集団に吸収されてからは、大きな先頭集団が形成されます。このトップグループは、10kmを44分04秒で通過したときに10選手に絞られ、そこから熾烈なトップ争いが繰り広げられ、15kmは15分37秒で通過していきました。ここでレースを動かしたのは山西選手です。それまで集団のなかでペースに緩急をつけてレースをコントロールしていましたが、15kmを過ぎの給水のタイミングで動きを切り替えると大きくリードを奪っていきました。このまま、金メダルに邁進するかと思われましたが、そこからロスオブコンタクトのレッドカードが立て続けに2枚で出て通算3枚となり、16kmを通過した直後にペナルティーゾーンへ。2分間の待機を課せられ、万事休すの状態となってしまいます。28位でコースに戻ってからは、順位を上げていくことは叶いませんでしたが、最後までしっかりと歩ききり、1時間22分39秒・28位でレースを終えました。

山西選手がペナルティーゾーンに入ったところで日本人トップに浮上したのは、世界選手権初出場の吉川選手。終盤で勝負することを期して、レース序盤は後方からスタートする戦略をとった吉川選手は、5km(20分23秒)を23位で通過すると、10km(40分14秒)では15位に浮上。13~14kmの周回で、丸尾選手に追いつき9位集団に加わり、59分59秒で通過した15kmでは9位グループの先頭に立つ形で、着実に順位を上げてきました。16kmでは単独9位に、17kmでとうとう7位に浮上。そのまま粘りきって1時間19分46秒でフィニッシュし、入賞を果たしました。

35kmに続いて2レース目となった丸尾選手は、序盤は計画通り先頭グループに位置し、終盤まで入賞が見える位置で、レースを進めていきました。後方から上がってきた吉川選手に逆転されてからは、単独で8位を歩いて吉川選手を追い、その順位を維持して国立競技場に戻ってきます。「入賞まであともう少し」というころでしたが、バックストレートでディエゴ・ガルシアカレラ選手(スペイン)にかわされ、1時間20分09秒で9位。入賞まであと4秒という形で、東京世界選手権の幕を引きました。

20km競歩の熱戦が神宮外苑で繰り広げられている間、スタジアム内では、男女混成競技(十種競技/七種競技)が進行するのと並行して、男子円盤投の予選が行われました。A・B2組に分かれての実施で、設定された予選通過記録は66m50です。日本からは、今季64m48を投げて日本記録を奪還した湯上剛輝選手(トヨタ自動車)が世界大会初出場を果たしました。湯上選手は、1回目を53m75でスタートさせると、2回目の試技で56m40へと記録を伸ばします。3回目で、もうワンステップ上げたいところでしたが56m23とどまって2回目が最高記録となり組19位で競技を終えました。56m40は、2007年大阪大会でマークされた55m71(畑山茂雄)を更新する世界選手権における日本人最高記録です。なお、湯上選手は、東京世界選手権後、11月には東京で初開催されるデフリンピックにも日本代表として出場。その活躍が期待されています。

イブニングセッションは、懸念されていた雨も競技開始までには上がり、湿度が上がって蒸し暑さを感じるなかでプログラムが進んでいきました。日本勢が出場したのは、最終日の9月21日に決勝が組まれている男子4×400mリレーおよび男子4×100mリレーの予選と、田中希実選手(New Balance)が進出を果たした女子5000m決勝の3種目です。
男子4×400mリレー予選は、全2組で行われ、「上位3着+2」を進出条件として全2組で行われました。日本は、ボツワナ、イギリス、ベルギー、ジャマイカといった強豪国が名を連ねた2組目に入ってのレース。オーダーは、1走から中島佑気ジョセフ選手(富士通)、佐藤風雅選手(ミズノ)、吉津拓歩選手(ミキハウス)、今泉堅貴選手(内田洋行AC)。400mのフラットレース代表2人と、初日に8位入賞を果たした混合4×400mリレーを走った2選手で、予選突破に挑みました。中島選手は、44秒65のラップをマークして4番手でバトンをつなぎましたが、2走の佐藤選手のところでレーンがオープンになると、コーナートップを狙って上位候補国が激しく競り合う展開に。佐藤選手は接触もあったなか位置取りに苦労しながら吉津選手にバトンパス。そこからはアンカーの今泉選手を含めて、上位に浮上することがかなわないまま7着でのフィニッシュとなりました。フィニッシュタイムの2分59秒74は、1組目であれば、2着で通過できる記録。その後、同組を3着でフィニッシュしていたオーストラリアが失格となったことで、日本の着順は繰り上がって6着となりましたが、トータルの記録では7番目に位置しながら、「プラス2」には0.04秒及ばず、無念の予選敗退という結果になりました。


男子4×100mリレーの予選も、4×400mリレー同様に、2組で行われました。こちらも各組上位3着あるいは、3着以下の記録上位2チーム内となることが、通過の条件です。チームジャパンは、1走・小池祐貴選手(住友電工)、2走・栁田大輝選手(東洋大学)、3走・桐生祥秀選手(日本生命)、4走・鵜澤飛羽選手(JAL)のオーダーで2組8レーンに入って、予選突破に挑みました。きっちりバトンをつなぐことを最優先とした「安全バトン」でのパスワークでレースを進めた日本は、1走の小池選手は3番手(10秒39)で入ると、栁田選手(9秒11)で4番手となり、桐生選手(9秒50)がその位置を維持した状態で、アンカーの鵜澤選手へ。鵜澤選手は、1着でフィニッシュしたガーナのアブドゥルラシード・サミヌ選手と同タイムで、全2組を通じてもトップタイ記録となった9秒07で1つ順位を上げ、ガーナ、オランダに続いて3着(38秒07)でフィニッシュ。着順で決勝に駒を進めました。
男子4×100mリレー決勝は9月21日、今大会最後のトラック種目として、21時20分にスタートします。


女子5000m決勝には、日本記録保持者の田中希実選手(New Balance)が出場しました。この種目では2019年ドーハ大会以来、4大会連続してのファイナル進出。前回の2023年ブダペスト大会(8位)に続く入賞を狙ってのレースです。決勝が速いペースになると想定した田中選手は、「ハイペースにぶら下がって粘り抜く」という自身が最も好む展開で後方から順位を上げていくことを選んでスタートしました。その予想に反して、レースは最初の400mが77秒78、1000mの通過は3分17秒13、2000mも6分19秒94というスローな展開に。全選手が大きな集団をつくったままで進んでいく形となりました。後方14~15番手を走っていた田中選手は、3000mを過ぎたあたりから少しずつ順位を上げて、4000mは7番手で通過。ラスト2周となる4200mでは「絶対に引かないという気持ち」で3番手に浮上します。しかし、そのあたりから全体のペースも上がって、最後の周回は入賞が見える7番手での通過に。懸命に粘ったものの、バックストレートで9位に後退すると、「ヘナヘナになってしまった」という残り200mで3つ順位を落として15分07秒34・12位でのフィニッシュとなりました。レース後は、「完敗」「力負け」という言葉を口にしつつも、「自分の可能性を感じながらスタートラインに立つことができ、最後の一瞬までそれを感じられたので清々しい気持ち」と田中選手。明るい表情で、東京世界選手権の2種目挑戦を終えました。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:アフロスポーツ
【東京2025世界陸上】9月13日~21日 国立競技場開催

>>https://www.jaaf.or.jp/wch/tokyo2025/
◆期日:2025年9月13日(土)~21日(日)
◆会場:国立競技場(東京)
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