NEWSニュース

2025.09.19(金)

【東京2025世界陸上】中間総括



東京世界選手権は9月17日、大会中日となる第5日を迎えました。日本陸連は同日のイブニングセッションの開始前に、日本選手団のチームリーダーを務める山崎一彦強化委員長の囲み取材を行い、中間総括を行いました。山崎委員長のコメント要旨は、下記の通りです。


◎山崎一彦強化委員長(日本選手団チームリーダー)

まず、強化とは異なることから話をさせていただきたい。今大会、本当に多くのお客さんが来場してくれて、選手に対して温かなエールをいただいていて、そのことにすごく感動している。私は選手として1991年の東京大会に出場し、また、2007年の大阪大会にはコーチの立場で選手団に入ったのだが、特に2007年のときには日本チームが苦戦し、さらに運営の面でも集客に苦慮した。また、(延期により)2021年に開催された東京オリンピックは無観客での開催だったこともあり、今回の世界選手権についても、「本当に、お客さん、来てくれるのかな」ということが不安だったし、「陸上競技を、日本の選手たちを見に行こう!」と思ってもらえるのかを、とても心配していた。
しかし、いざ始まってみると、朝から多くの方々が足を運んでくれて、イブニングセッションでは初日から満員となる状態で、日本の選手たちに対して大きな声援を送ってくれている。選手たちも、それを力にして、全力で戦うことができている。そうした状況に、とても感動するとともに心から嬉しく思うし、来場してくださっているお客さんに対して、そして選手たちに対して、本当に感謝している。

大会前半といえる4日目までの競技を終えた時点で、日本選手団は、メダル1,入賞6の成績を上げている。

【大会前半における日本選手団の上位成績】
<メダル>
・男子35km競歩:勝木隼人(自衛隊体育学校) 銅メダル
<入賞>
・男子110mハードル:村竹ラシッド(JAL) 5位
・女子10000m:廣中璃梨佳(JP日本郵政G) 6位
・女子マラソン:小林香菜(大塚製薬) 7位
・男子3000m障害物:三浦龍司(SUBARU) 8位
・男子走高跳:赤松諒一(SEIBU PRINCE) 8位
・混合4×400mリレー:日本[吉津拓歩(ミキハウス)・井戸アビゲイル風果(東邦銀行)・今泉堅貴(内田洋行AC)・松本奈菜子(東邦銀行)] 8位

私たちとしては、メダル、そして入賞が目標で、もう少しメダルは取りたいところではあるが、選手たちは、この歓声のなか、きちんと結果を出してくれている。自己記録を更新したり、日本新記録を樹立したりと、自分自身を超えている選手たちが非常に多く、そういう意味では、これまでの日本代表にはなかった戦い方というか、強化委員会が目指してきた戦い方をしてくれていると感じている。これまで自国開催の大会やオリンピックなど大きなプレッシャーのかかる場面では、「大勢の観客に圧倒されて、力が出せなかった」という言葉を聞くことも多かったが、今回の代表選手たちは、満員の観客からの大きな声援や寄せられる期待を、重荷に捉えることなく自分自身の力に変えている。そんな選手たちの様子に、「新しい陸上競技が始まったな」と感じている。


【質疑応答】

Q:男子110mハードルの村竹選手の結果は、どのように受け止めているか?
山崎:結果の通りだと思っている。準決勝から決勝に向かうところで想定されたのは、「6位からメダル」あたりで、その想定のなかに入ったということ。もちろん、(専任コーチの立場である)個人的にも、(チームリーダーの立場である)日本チームとしても、とても悔しい。メダルを取りたいという気持ちでやっていたので、そこは本当に悔しいのだが、やはり実力の通りだったと思う。本人もそういうことを話していたが、私もその通りだと感じている。

Q:ここまでの入賞数は、想定していたか? どう評価しているか?
山崎:ケガなく、みんな入賞してくれているなという印象である。悪く出れば、これで終わってしまうくらいのメダル・入賞数を、すでに出せていることを考えると、前半戦でのこの結果は上出来ということができる。ホスト国の代表として出場することは、大きなプレッシャーを伴うもので、それは日本人に限ったことではないのだが、そんななかで、本当に選手たちは善戦している。
また、ラウンドを勝ち進んでいる選手たちが、今までよりも増えていることも評価したい。今大会は(開催国枠なども含めて)権限が得られるのなら出場できる人たちは全員出場してもらいたいという気持ちはあった。しかし、敢えてそうはしないで、ある一定の水準を定め、「世界大会に参加して、そこで戦うというのはどういうことなのか」を知るチーム編成にした。ラウンドをクリアするというのは、「戦う」という意味での最低限のこと。それを実現できている者が増えているということで、私たちの思い描いてきたことが、できるようになってきていると感じている。

Q:開催国枠で出場した選手が、結果を残したり経験を積んだりできている点について
山崎:今回、トラック&フィールド種目については「開催国枠エントリー設定記録」を、また、リレー種目については、「リレー候補競技者基準記録」を設定した。これに対して「少し(設定水準が)高いのではないか」という批判もかなりあった。しかし、それをクリアしてくれた人たちが、この舞台に立っている。そうして出場を果たした選手たちが、きちんと活躍し、自身の力を十二分に発揮できているケースが多いことを嬉しく思っている。

Q:一方で、男子100mなど、活躍が期待されたなかで、残念な結果に終わっているケースもあるが、そこはどうみているか?
山崎:出場するためには、まず記録を出すことが必要となる。これは長距離でも同じことがいえるのだが、そのゆえに代表権を得ようとする段階では、短距離の場合は良い条件下でとにかく記録を出そうとするし、長距離ではペースメーカーをつけて記録を出そうとする。確かにそれで記録は出るわけだが、ただ、その仕組みだけでは、本番では戦えないということが、はっきり出たのかなと思っている。記録だけなくて勝負をすること、世界のなかで勝負をしていく経験を積んでいく必要があると感じている。もちろん、日本で記録を出すことも大事だし、海外に出ればいいというわけでもないが、まずは経験を積んでいくこと、そういう勝負をしていくことが必要。また、条件が悪いところでも記録を出す、順位をとっていくといった、陸上競技(の勝負)に求められる、そもそもの根本的なものに取り組んでいくことが、これからも強化には必要だと思っている。

Q:大会後半に向けての期待や思いを。
山崎:5日目を迎えて、大会も折り返しとなるが、後半も注目されている種目が続いていく。メダルが期待されている種目も複数残っているので、その期待が、選手の重圧にならないように、みんなが楽しく臨めるようにしたい。選手が「期待されていることがいい」と思えるようにすることが、私たちの目指すこと。みんなの期待を励みにして、選手たちがその期待に応えようと頑張っていけるようにできれば、力になるかなと思っている。

※本内容は、9月17日に実施した囲み取材において、山崎一彦強化委員長が発言した内容をまとめました。より明瞭に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

JAAF Official Top Partner

  • アシックス

JAAF Official Major Partner

  • 大塚製薬
  • 日本航空株式会社
  • 株式会社ニシ・スポーツ
  • 積水化学工業株式会社

JAAF Official Supporting companies

  • 株式会社シミズオクト
  • 株式会社セレスポ
  • 近畿日本ツーリスト株式会社
  • JTB
  • 東武トップツアーズ株式会社
  • 日東電工株式会社
  • 伊藤超短波株式会社

PR Partner

  • 株式会社 PR TIMES