2025.09.14(日)
【東京2025世界陸上】メダリストインタビュー:勝木隼人(自衛隊体育学校)男子35km競歩・銅メダル

東京2025世界陸上競技選手権大会の第1種目として、9月13日に行われた男子35km競歩では、勝木隼人選手(自衛隊体育学校)が、2時間29分16秒でフィニッシュして銅メダルを獲得。日本選手団に、最初のメダルをもたらしました。勝木選手の喜びの声を、インタビュー形式でご紹介しましょう。
◎勝木隼人(自衛隊体育学校)
男子35km競歩 決勝3位 2時間29分16秒
――銅メダル獲得、おめでとうございます。今の心境を。
勝木:「金メダル、取りたかったな」という気持ちです。あとは、メダルというところは、日本の(競歩の)長い距離の種目で、2015年(北京大会から続く)伝統だったので最低限でした。まず取ることができてホッとしています。
――レース展開は、想定していた通りのものだった?
勝木:そうですね。もともと最初から先頭で行く予定でした。僕の想定では、15kmくらいで8人以内に(集団を)絞って、一度ペースを落としてから、ラスト10kmを切ったあたりでペースを戻して5人くらいに絞り、そこからもう一段階ペースを上げて優勝することを考えていました。しかし、思ったよりもペースが速くなりすぎて集団が絞られすぎてしまったこと、あとはペースを落としたところが思っていた以上に落ちてしまったこと、ラスト5kmで上げようと思っていたのに、その「ラスト5km」に気づかず通過してしまい、まさかの「ラスト3km」で気がつく事態が発生して(笑)ペースを上げるタイミングが遅れてしまったことなど、そういったところの詰めが甘かったことが反省としてあります。ただ、ここまでやってきたことはずっと一緒で、この1年間、このために先頭を引くレースをやってきていました。全体を通してみると、やりたいレースができたと思います
――レース展開については、「チームジャパン」として話し合って決めたこと?
勝木:(移動の)バスの座席が隣だったので、川野くん(将虎、旭化成)に「どういうレースをするんですか?」という話をしたんです。そのなかで、「一応、序盤で8人には絞りたいよね」という話になり、「誰も出なかったら僕が引く」という話をしていたので、その通りに(先頭を)引きました。で、その話をしていたので、10km過ぎくらいで、川野くんが「もう、3人に絞れました」と言ってくれたんです。なので、僕が1人で取ったメダルではなく、本当に協力して取ったメダルだと思います。
――終盤、メダル圏外に(順位が)落ちていたことは把握していた?
勝木:はい。「危ないな」と思っていました。ただ、15~25kmは、ペースが落ちてもいいと思っていましたし、最後は(ペースを)上げられる自信はあったので、そういった意味では、けっこう余裕を思って(レースを)眺めながら、入賞圏外から行かないようにしようというところから、最後でまくれればいいなと思っていました。ただ、思った以上に、(エヴァン・)ダンフィー選手(カナダ、金メダル)、カイオ(・ボンフィム)選手がめちゃくちゃ強かったので、ちょっとびっくりしました。
――ダンフィー選手が上がってきたことに驚きがあった?
勝木:いえ、想定内でした。ダンフィー選手が強いのは知っていましたし、優勝争いするとしたら、あとは(川野)将虎選手だと思っていたんです。でも、まさかカイオ選手が間に入ってくるとは思っていなかったのでびっくりしたのと、「やっぱり簡単には勝たせてくれないな」と思ったのが、僕のレースの総括です。
――暑さ対策は、どのようにしてきたか?
勝木:去年の段階から、選考会のことは考えずに、基本的には涼しいところには行かずに暑さ対策をしてきました。去年に関しては、氷とか掛け水とかを1回もとらずに夏を関東で過ごして、身体がどういう状態になるのかとか、何もとれない状態でどれくらいのペースで押していけるかというところも、把握できるようになっていました。今年に関しては、試合(世界選手権)が近くなったというのもあるので、最後のほうは氷で冷やすなどレース当日に近いことをやりましたが、基本的には、約2年間は、この東京世界陸上だけを見据えて、しっかり準備してきました。なので、暑さ対策では、他の選手に間違いなくひけをとらないなというのがあって、そこがかなりアドバンテージになっていたのかなと思います。
――レース中の蒸し暑さを、どう感じていたか?
勝木:暑さについては、僕は「涼しいな」と思っていました。ただ、本当に今年は関東での練習は、晴れのなかでしかやってきていなかったので、(今日のコンディションと)やってきた練習環境とが違いすぎていることに、レース前は焦りがありました。僕としては、最高気温は35℃を超えてほしいし、できれば快晴であってほしいというのが願いで、それでも今日くらいのタイムで歩ききれる準備はできていました。なので、今回の湿度というのは、正直準備できていなかったんです。ただ、まあ、「いつも(練習で)やっているのよりは楽かな」という思いだったので、「じゃ、とりあえず、いつも通りやってみたらいいんじゃない?」という感じで臨みました。だから、暑さ対策が本当に生きるかどうかは、やってみないとわからなかったんです。
ただ、後半でしっかり粘れたというのは、最高気温が35℃を超えるような暑いなかでも、「タレきらない」という練習をずっとやっていたから。ペースは落ちるけれども、最後にもう1回上げられるという練習をずっとしてきたので、そういった意味ではけっこう自信がありました。
――取り組んできたスピード強化が、どう成果につながってきたと思うか?
勝木:パリオリンピックの選考会くらいから、しっかり20kmにも取り組むようになりました。というのも、これまで35kmで勝った選手とか、メダルを取った選手とかは、20kmでも上位に入ってくる選手ばかりだったからです。まず、20kmを歩けないと、35kmでは戦えないと思いました。まずは20kmのスピードを準備しようということで、それもやはり2年くらいかけて取り組んできました。今年の神戸(日本選手権20km競歩)はペナルティーゾーンに入ってしまいましたが、それ(待機時間の2分)を差し引くと1時間17分台という記録になっています。本当にこの2年間でかなり大きく身体も変わってきたし、暑さにも強くなったし、スピードもかなりあるし、と自信がついていました。また、体力に関しては50kmを主戦場にいていたので、もともと持ち合わせていましたから、「スピードが武器になったというよりは、スピードを補えるようになった」という感じ。僕にとって、かなりプラスになったと思っています。
――沿道やスタジアムでの歓声を、どう感じた?
勝木:「いやあ、これがテレビで見ていた光景か」と思いながら歩きました。競技場がスタート・ゴールになるレースは最近なかったので、僕が子どものころに見ていた光景。それを体験できたことは、僕にとってもすごくいい経験になりましたし、皆さんの声援がすごく力になって、これから「いい夢」として出てきそうです。
――4年前の東京オリンピックは無観客で、競歩は札幌で開催された。選手として、観客の前で東京で戦うことに、どんな意義があると思うか?
勝木:東京オリンピックに出るまでは、オリンピックと世界陸上の代表になれていなかったこともあり、観客の皆さんが、今回は声を出してしっかり応援できる状態だったので、僕自身、すごく力になりました。あとは、僕ら競歩選手としては、次のロサンゼルスオリンピックは種目が1種目(ハーフマラソン競歩)になってしまったので、なんとしても、東京という都心でやる大きな大会で、しっかりと競歩を盛り上げて、「競歩って面白いんだぞ」というところをお見せしたかった。まず、いいレースができたというのはありますが、今回をスタートにして、もっと国内の大会でも盛り上げられるようなレースをするとか、一つ一つの大会にしっかり出場するとかしてきたいと思っています。
※本稿は、競技後、ミックスゾーンで行われた共同インタビューおよび記者会見での発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:アフロスポーツ
【東京2025世界陸上】9月13日~21日 国立競技場開催

>>https://www.jaaf.or.jp/wch/tokyo2025/
◆期日:2025年9月13日(土)~21日(日)
◆会場:国立競技場(東京)
◆チケット情報:https://tokyo25-lp.pia.jp/
【東京2025世界陸上】応援メッセージキャンペーン

夢の舞台に立ち、世界に挑む選手たちに向けた「応援メッセージ」を大募集します!
いただいたメッセージは、選手のプロフィールページや本連盟公式ウェブサイにて紹介し選手へ届けます。
皆様からのメッセージは、サンライズレッドをまとい世界の強豪と戦う選手たちにとって大きな力になるはずです!
たくさんのエールをお待ちしております。
▼こちらから▼
https://www.jaaf.or.jp/wch/tokyo2025/news/article/22465/
【国立満員プロジェクト】日本代表を応援!

東京2025世界陸上は国立競技場へ行こう!
あなたの「行こう!」の声が、応援する気持ちが、次の誰かを動かします。
抽選で、日本代表選手サイン入りグッズや応援タオルをプレゼント!ぜひご参加ください!