Sport for Tomorrowの柱の1つである「スポーツを通じた国際協力および交流」の促進を目的として、「外務省スポーツ外交推進事業」のスキームを活用し、外務省、ガンビアオリンピック委員会、日本オリンピック委員会および日本陸上競技連盟が協力し、ガンビアへの陸上競技指導者派遣(コーチングクリニック)が実現しました。
指導者講師として、IAAFの指導者資格(CECS Level 1‐Youth Coach)を有している中村明子(創価高等学校)、森健一(武蔵大学)、加藤伸栄(静岡県立袋井高等学校)の3名を派遣しました。
3月15日(火)から18日(金)の4日間の日程で派遣し、講習はインディペンデンススタジアムで行われました。
参加者は、30名(年齢21~43歳)であり、男性が16名、女性が14名でした。参加者の所属は、小学校・中学校教員、ガンビア大学学生、各スポーツクラブ(警察、軍隊、刑務所、入国管理局)に所属する者などであり、多岐にわたっていました。
主なプログラムとして、ガンビア陸連から要請のあったフィールド種目(走幅跳、三段跳、走高跳、棒高跳、砲丸投、円盤投、やり投)の指導方法を、講義と実技を混ぜながら実施しました。
プログラムの内容については、IAAFがグローバルに展開している指導方法に準じ、各種目の理論、基本動作や技術を中心に実施しました。
1日目
初日(15日)の午前は、自己紹介、日本の紹介(外務省による日本紹介ビデオ、日本語でのあいさつ)、講義として「コーチ哲学」を行いました。コーチ哲学では、“Athletes First Winning Second”の理念を重点的に解説しました。また、コーチングの基礎技術についても解説しました。午後は、走幅跳、三段跳の講義と実技を実施しました。
2日目
2日目の午前は、走高跳と棒高跳、午後は砲丸投、円盤投、やり投の講義と実技を実施しました。投擲においては、ヴォーテックスフットボール、バスケットボール、ハンドボールを用いました。
3日目
3日目は、これまでに学んだコーチ哲学、各種目の理論および指導方法を踏まえて、参加者を3グループに分け、各グループで指導者と生徒役に分かれ、全員がお互いにコーチングを行いました。
4日目
4日目の午前には、3日目に実践した内容を、近隣の生徒を対象に実践指導を実施しました。午後は、これまで学んだ内容をさらに発展させるために、参加者が普段指導している生徒を想定して、今後の活動計画をグループ毎に立ててもらい、発表を行いました。
意欲のある参加者
参加者の多くは、「走る」運動は経験があるものの、跳ぶ、投げるといった運動は経験が浅く、実技においては苦戦しているように思われましたが、実技においても積極的にチャレンジし、何度もチャレンジする意欲は非常に高いものがありました。
ガンビアの状況
今回、ガンビア陸連から要望のあった種目がフィールド種目であったが、一般的に日本で普及しているトレーニング用具はなく、ヴォーテックスフットボールを3個持参しました。非常に興味・関心が高く、積極的に使い方を学んでいました。同様に、棒高跳ではポール・マット・支柱がないため、ポールの代わりに竹を現地で調達しそれを用いました。用具を用いる競技やマットや砂場などの施設が必要となる競技においては、今回のコーチングクリニックを機会に、ゴム跳びやボール投げなどの遊びを含めて、その運動形態に近い動作が出来るように広く普及していってもらいたいです。
4日間を通して、参加者は非常に勤勉であり、講義・実技ともに質問も多くみられました。実技においては、常に自分のフォームについての確認を我々に求め、指導実践の時にも指導方法に問題がないかなど常に質問をする姿勢がみられました。一方で、陸上競技の基本的なルールに関する質問もあり、更に学んでもらいたいです。
ガンビアオリンピック委員会も協力
開会式および閉会式においては、国際オリンピック委員会委員Ms. Beatrice Allen氏、ガンビアオリンピック委員会会長Mr. Momodou Dibba氏にも出席いただきました。
参加者に、ユース・ジュニア世代の指導において大切な事、コーチの役割についてお話があり、今回のコーチングクリニックがすべてではなく、これを機会に更に学びを深め、レベルアップをして欲しいと激励の言葉を頂いきました。今回の派遣により、ガンビアと日本の友好関係の増進と共に、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたスポーツの価値とオリンピック・パラリンピック精神の普及が期待され、非常に有益な派遣事業であったと思われる。
最後に、今回の派遣において現地で参加者への連絡や近隣生徒の募集、用具の調達等など幅広く丁寧に対応してくださったコーディネーターのMr. Alieu Y. Cham氏、Ms. Mariama Sallah氏にもこの場をお借りして感謝申し上げます。
文責:森健一(普及育成委員会委員、武蔵大学)/中村明子(創価高等学校)/加藤伸栄(静岡県立袋井高等学校)