
第109回日本陸上競技選手権大会・混成競技(以下、日本選手権混成)は7月12~13日に開催される。会場となるのは、昨年と同じ岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場。本年9月に行われる東京2025世界陸上競技選手権大会(以下、東京2025)の日本代表選考会を兼ねての実施で、例年同様にU20日本選手権が行われるほか、今年はリレー競技の日本選手権も同時に開催される。
東京世界選手権の出場資格は、ワールドアスレティックス(WA)が設定する参加標準記録の突破者と、1カ国3名上限で順位をつけるWAワールドランキング「Road to Tokyo」(以下、ワールドランキング)において各種目のターゲットナンバー(出場枠)内に入った競技者に与えられる。男女混成競技の参加標準記録は、十種競技が8550点、七種競技が6500点と、現状の日本にとっては非常に高く、またターゲットナンバー自体も24と少ないため「狭き門」という状況。日本勢は、開催国枠エントリー(自国開催ながら出場者がいない場合に1名の出場が認められる仕組み)を目指して、まずは、日本陸連で独自につくった開催国枠エントリー設定記録(十種競技8151点、七種競技5976点)のクリアを目指しつつ、日本選手権獲得を競っていくことになりそうだ。
ここでは、十種競技、七種競技それぞれで活躍が期待される注目選手を紹介しよう。
※エントリー選手に関する情報は、7月7日時点の情報に基づき構成。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ
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【男子十種競技】
奥田が開催国枠エントリー設定記録に挑む
メダル争いは混戦必至
男子十種競技は、2023年ブダペスト世界選手権代表で、日本選手権は2連覇中の丸山優真(住友電工)が、昨年秋に日本4人目となる8000点台(8021点)に突入。その後も、好調を維持していたが、連覇を期して挑んだ5月末のアジア選手権の110mハードルで転倒して、9種目を終えた段階で途中棄権を余儀なくされるアクシデントに見舞われてしまった。結局、これが尾を引く形となり、本大会は残念ながらエントリーを見送っている。
こうなってくると、優勝争いの筆頭として、頭一つ抜ける形となるのは奥田啓祐(ウィザス)ということができるだろう。実は、日本選手権獲得も8000点突破も、丸山よりも先に果たしている選手。2022年に日本選手権で初優勝を果たした際は、2010年から続いていた右代啓祐(日本記録保持者:8308点)と中村明彦(日本歴代2位:8180点)によるトップ2の牙城を崩したことでも注目を集め、同年秋には日本人3人目となる8000点突破(8008点)をマークしている。しかし、そこからケガに見舞われて戦線離脱。昨年の日本選手権で2位の成績を残し、秋にはセカンドベストの7825点を出すまで復活してきた。今季は、丸山とともにアジア選手権に出場して、7602点で銅メダルを獲得。優勝とは32点差、2位には16点差という接戦であった。アジア選手権では、棒高跳で自己タイ(4m70)、やり投で自己ベスト(64m24)、1500mでセカンドベスト(4分40秒04)と最後の3種目で好パフォーマンスを見せている。3年ぶりの自己記録更新を、ぜひとも開催国枠エントリー設定記録(8151点)のクリアで達成してほしい。これを実現させるためには、まずは1日目でミスなく確実にポイントを重ねて、安定感が高まっている2日目へと繋げていくことが必要になるだろう。



奥田を追う層では、7600~7700点台を目指しての戦いか。勢いを感じるのは、日本インカレで7508点をマークして優勝を果たしている松下怜(順天堂大)。初めての挑戦となる日本選手権で、どんなパフォーマンスを見せるか。前回大会で7482点の自己ベストを出して3位となった森口諒也(オリコ)は、“ブレイク”が待たれる一人。今季は、東京選手権でサードベストの7423点を、6月中旬には中国で7366点をマークしている。この安定感を、もう1段階引き上げたい。昨年、この大会で7450点の自己新記録をマークしている右代啓欣(エントリー)は、2大会連続4位。7500点台に乗せる自己ベストが達成できれば、初のメダル獲得が近づいてくるはずだ。

日本記録保持者の右代啓祐は、7月24日の誕生日を目前に、38歳最後の十種競技に挑むことになる。東京オリンピックへの挑戦が終わった2022年以降は、上位戦線というよりは入賞ラインを目指しての勝負へとシフトしつつある。今季はこの大会が十種競技初戦となるが、単独種目では競技会にも出ており、棒高跳では4m50を跳んでいる。また、得意とする投てき種目は、まだまだ“ひ弱な若手”には太刀打ちできないかもしれない。
このほかでは、棒高跳を専門とする石川拓磨(東京海上日動CS)がエントリー。棒高跳で5m70の自己記録を持つ実力者だが、実は十種競技でも7142点の自己記録を持っている選手。今年は、トラック&フィールド種目の日本選手権が先に開催されたことで、晴れて十種競技の日本選手権にもチャレンジが可能となった。棒高跳でどんな跳躍を見せてくれるか楽しみだ。
【女子七種競技】
熱田の連覇か、新しい女王の誕生か
5975点(2021年)の日本記録を持ち、日本選手権では2023年までに5回の選手権獲得も果たしている山﨑有紀が昨年度で第一線を退いた。また、日本歴代3位である5907点の自己記録を持つヘンプヒル恵(アトレ)も、今年はエントリーを見送っている。今大会では、前回、日本歴代5位に浮上する5750点をマークして初優勝を果たした熱田心(岡山陸協)が連覇するか、それとも“クイーン・オブ・アスリート”が誕生するかが見どころとなりそうだ。
昨年、頂点に立った熱田は、秋にも5668点のセカンドベストをマークしているが、今季は5月の東京選手権 を5351点で3位。その後は、6月末の岡山県選手権に100mハードル、200m、走幅跳の3種目に出場。100mハードルでは、向かい風0.9mのなか13秒83の自己タイ記録をマークしている。6m26の自己記録を持ち、単独種目としても実績を残している走幅跳のほか、100mハードル、200mの好走は、本番でも連覇達成の鍵となってきそうだ。第1種目の100mハードルで好スタートを切りたい。

5720点の自己記録を2023年にマークし、同年のアジア選手権(バンコク)、アジア大会(杭州)で日本代表も経験している大玉華鈴(日体大SMG)は、万全であれば熱田と並ぶ優勝候補の筆頭に挙げられる選手。昨年はケガもあってシーズンベストは5468点にとどまった。今季は、七種競技には出場しておらず、また、単独種目の試合も東日本実業団(走高跳、砲丸投)のみである点が懸念材料。当日までに、どこまで調子を上げてくることができるか。日本選手権での成績は、2019年以降、4位、2位、2位、3位、2位、5位。そろそろタイトルが欲しい。得意種目は1m78の自己記録を持つ走高跳。同時に、砲丸投(12m90)・やり投(51m51)と、投てき種目でもポイントを稼げることを強みとする選手だ。

今季、快進撃を見せているのは、今春からスズキの所属となった田中友梨だろう。3~5月の間に七種競技は4戦消化。2戦目に5648点をマークして、2023年に出していた自己記録(5545点)を更新すると、4月末の東京選手権を5551点で優勝、5月中旬には5678点まで記録を更新している。この安定感は混成競技にとって大きなアドバンテージ。さらにやり投と800mで自己新を連発して、53m15、2分13秒45まで引き上げてきており、優勝争いが最後までもつれた場合は、一気に抜けだす可能性もある。5700点台を飛ばして、5900点に迫っていくような躍進が見たい。

昨年、5506点まで記録を伸ばしてきた梶木菜々香(ノジマT&FC)は、今季は、田中に続き2位となった東京選手権でマークした5384点がシーズンベスト。大会1週間前の日本選手権で史上最高レベルとなった100mハードルに出場して準決勝まで進出。予選(13秒34)・準決勝(13秒33)と自己新記録を連発している。200mや走幅跳でも記録を伸ばしてくる可能性は十分にある。
このほか、前回大会で5540点の自己新をマークし、大玉、田中、梶木を押さえて4位の成績を残している萩原このか(デカキッズAC)の動向も気になるところ。今季は3月中旬の初戦を5152点でスタートし、4月上旬にも1戦消化しているが、その後、競技会に出場していない。自己記録に迫るパフォーマンスが出せるようだと、初のメダルを手にできる可能性がある。
【大会情報】
大会名 :第109回日本陸上競技選手権大会・混成競技開催日程:2025年7月12日(土)13日(日)
開催会場:岐阜メモリアルセンター長良川競技場
主 催 :日本陸上競技連盟
特別協賛:山崎製パン株式会社
主 管 :岐阜陸上競技協会
ハッシュタグ:#日本選手権混成 #ナンバーワンの頂上決戦

▼【第109回日本選手権混成】大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1953/
▼【第109回日本選手権リレー】大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1954/
【応援メッセージ】

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7月12日(土)~7月13日(日)の2日間、岐阜メモリアルセンター長良川競技場にて「第109回日本陸上競技選手権大会・混成競技」を開催いたします。この度出場選手への「応援メッセージ」を大募集!
今大会は「東京2025世界陸上競技選手権大会」日本代表選手選考競技会を兼ねており、日本一が決定すると同時に世界への挑戦が始まる大会でもあります。
皆様からのメッセージは日本一、そして世界の舞台を目指して戦う選手たちにとって大きな力になるはずです!
たくさんのご応募をお待ちしております。
写真提供:アフロスポーツ
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