
第109回日本選手権が7月4~6日、東京・国立競技場で開催されます。この大会は、本年9月に、同じく国立競技場で行われる東京2025世界陸上競技選手権大会の日本代表選手選考競技会を兼ねており、別会期で実施の男女10000m、男女混成競技(十種競技、七種競技)を除く34のトラック&フィールド種目で決勝が行われます。
開幕前日の7月3日には、スタジアムがエントリー選手に開放され、選手たちは最後の調整練習に取り組みました。また、夕刻には大会前日会見も行われ、サニブラウンアブデルハキーム選手(東レ、ダイヤモンドアスリート修了生、男子100mに出場)、泉谷駿介選手(住友電工、男子110mハードル・走幅跳に出場)、田中希実選手(New Balance、女子1500m・5000mに出場)の3名が登壇。ここまでの経過や現在のコンディション、大会に向けての抱負を述べたのちに、メディアからの質問に応えました。
以下、各選手のコメント(要旨)をご紹介します。
【各選手コメント(要旨)】
※会見対応順に掲載サニブラウンアブデルハキーム(東レ、ダイヤモンドアスリート修了生)
エントリー種目:男子100m

この大会に向けて、正直なところを話すと、調子はけっこう上がってきていたのが、6月26日にアクシデントがあり、先日病院に行ってMRとCTをとって調べたところ、右股関節の上の部分が骨挫傷を起こしているという診断を受けた。全治はだいたい3週間と言われ、安静にすることを勧められた。そういう身体の状態ではあるが、プロ選手としても、ここ数年、陸上界を引っ張ってきている身としては、せっかく見に来てくださるお客さまや、今まで出会ってきた応援してくれる子どもたちのために、走らなければいけないという思いがあったので、今回は、できる限りの準備をして、試合に臨もうと思っている。
アクシデントは、練習で牽引走をやっているときに、思わぬ体勢で身体を踏ん張ってしまい、そこで骨に負荷がかかってしまう形で起きた。病院に行ったのは、週が明けてから。少し時間が空いたのは、筋肉へのダメージであれば、少し時間が立てば痛みも引いてくるのだが、東京に帰ってきてからも、なかなか痛みが引かなかったため、診察を受けることにしたからである。ドリルや流しなど、基本的に脚を上げる動き全般に、痛みを伴う状態である。
今年は東京世界陸上があり、自分が出場したいという思いも、もちろん強く持っているけれど、それ以上に、もう自分だけの競技生活ではなくなっていて、関わっている人が多ければ多いほど、プロアスリートとしての責任や、やらなきゃいけないことが伴ってくると思っている。昨年、パリオリンピックで決勝に残っていれば、また話は違ってきていたのかもしれないが、残念ながら決勝に残ることができなかったので、「日本選手権にしっかり出場して、やるべきことをやる」ことにした。自分の意思も強くあるが、見てくださっている方々やサポートしてくださっている方々のために、しっかりとパフォーマンスしていかなければという思いで出場を決めた。
痛みに関しては、先日、痛めた日と、さほど変わりはない。(ウォーミングアップで)身体が温まっていても痛みが伴うし、恐る恐るやっているところも少なからずあるのかなという状態。出力については、走ってみなければわからないというのはあるが、日本選手権は、できる限りの出力で走らなければならない大事な大会。何パーセントなら出せるかとかではなく、1本1本のレースで、やるべきことをしっかりとやっていこうという気持ちでいる。最低限、ケガが悪化しないように、身体に負担がかからないようないい走りをすることがキーになってくると考えている。
泉谷駿介(住友電工)
エントリー種目:男子110mハードル、男子走幅跳

今回は、110mハードルと走幅跳の2種目に出場する。まずはケガなく終えて、2種目で代表を勝ちとれるように頑張りたい。
この2種目出場に向けて、ここまでの練習は、ハードルをメインとして取り組み、週に1回、走幅跳の助走練習ができればいいかな、という感じのスケジュールでやってきた。ここまでのトレーニングでは、走幅跳の助走もけっこうまとまってきていて、踏み切りもロイター板をつけて軽く踏み切って、空中動作の確認とかもやっていて、着地練習もいい感じにできている。それが本番の踏み切りできればいいなと思っている。また、ハードルについては、今まであまり噛み合っていない感じがあったのだが、この大会に向けての練習で噛み合ってきた感じを持っている。
けっこういろいろ懸かっている試合なので、いつも以上に気持ちが入っていて、ワクワク感もありながら、緊張感もあって、今は非常にいい状態。どちらも、もちろん優勝を狙って頑張りたいと思っている。また、最近、試合に出ていないので、タイムについてはあまり気にしていないのだが、優勝するために、ハードルは13秒0台か1台を、幅跳びでは参加標準記録(8m27)を突破することを目標としている。
大会期間中は、いかに体力を残すかということが大事になるとは思っているが、1日1日を全力でやりきって、それで3日間乗り越えられるような練習は積んできている。あまり考えずに、1日ずつ頑張っていこうと考えている。
ハードルのほうは、国内のレベルもすごく上がってきているので、「自分も頑張らないとな」という気持ちはもちろんあるし、「負けられない」という気持ちもある。そこは自分の気持ちに正直になって頑張っていきたい。(レベルが高い状況にある)110mハードル、走幅跳の2種目に挑戦することは、もちろんリスクもあるが、単純に今、自分がやりたいからやっているという気持ちが大きい。2種目に挑戦することが、今後に繋がることは絶対にあると思っているし、自分にしかできないという思いもある。自分にしかできないことを追求し、目標に向かって頑張りたい。
田中希実(New Balance)
エントリー種目:女子1500m、女子5000m

この大会では、一つは確実に世界陸上の即時内定をいただけるような結果を出すことを、また、個人的には2種目とも優勝できる結果を目指して頑張りたいと思っている。
今までもダイヤモンドリーグをはじめとして、レベルの高い国際大会にたくさん出ていくという経験を積めてきていたが、今シーズンはグランドスラムが入ってきたことで、かつてないシーズンとなったし、そのことで気持ちの持ちようというところに難しい部分があった。それはまるでちょうど毎月、世界大会に出ていくような感じ。しかし、1回1回、モチベーションを世界大会並みに持っていくというのは難しいことで、中途半端な気持ちで臨んでしまって、当然のごとく、しっぺ返しというか、痛い思いもたくさんした。また、ダイヤモンドリーグでも、気持ちの部分や身体の使い方の部分で、自分を見失ってしまうところが多かった。練習では、力や実力自体はすごく上がっていることを感じられているのだが、それを試合で形にしていくところが、今まではあまり考えなくても勝手に形になっていたのに、今は、その形にしていく方法がわからなくなってしまい、余計に考えすぎてしまう(悪)循環が生まれてしまった。そこにもどかしさもあった。
7月上旬という時期の日本選手権は、皆さんもそうだが、私もほぼ初めて。9月の世界陸上も暑くなると思うので、今回、「暑いなかで走って、そこでどれだけいいパフォーマンスを発揮できるのかな」ということを考えている。今までの日本選手権では、勝つことを大事にしてきていて、順位のことだけを重要視していたのだが、今回は「世界陸上で戦う」ということを、ちゃんと意識したような日本選手権にしたい。
世界陸上で戦うことを考えたときに、どのレースパターンを選択したとしても、まだまだ通用しない点は、たくさんある。そのなかで、どういったレース展開を選んで、スポットを絞っていくかの実験的な取り組みができるのが日本選手権なのかなと思う。(実際に)どういうモチベーションや展開で行くかは、これからコーチと話し合っていくことになるが、自分のなかでも、「ああしたい、こうしたい」という気持ちや、逆に「こうしたほうがいいんじゃないか」「こうしないといけないんじゃないか」という部分がある。(日本選手権のレースで)そこをしっかりと精査できたら、どんなレース展開を選んだとしても、それは世界陸上に生きてくるんじゃないかなと思っている。
大会初日の7月4日は、13時45分に同時スタートとなる女子棒高跳と女子円盤投で競技が開始。トラック種目では、14時05分から行われる女子400mハードル予選が最初の種目となります。3日間会期となった今大会では、1日目に8種目、2・3日目に13種目の決勝が予定されており、各種目の2025年日本チャンピオンの座を巡って、熱戦が繰り広げられます。
日本陸連では、公式ホームページ内に日本選手大会サイトを特設。タイムテーブルやスタートリスト、結果速報のほか、テレビ放映やライブ配信のスケジュール、大会展望企画など、競技に関するさまざま情報を掲載しています。また、サブイベントやスポンサーブースの紹介、キッチンカーの出店案内など、大会期間中に会場で楽しめるさまざまな情報もご案内していきます。
このほか、例年同様、出場選手に向けた「応援メッセージキャンペーン」も、最終日の競技終了時刻まで募集しています。応募者には抽選による素敵なプレゼントの用意も。ぜひ、ご活用ください。
第109回日本選手権 大会特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/jch/109/文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
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