
第109回日本選手権10000mは4月12日、熊本・えがお健康スタジアムにおいて、9月に東京・国立競技場で開催される東京2025世界陸上競技選手権大会(東京2025世界陸上)、および5月に韓国・クミで開催されるアジア陸上競技選手権大会(アジア選手権)の日本代表選考競技会を兼ねて行われます。
大会前日となる4月11日午後には、出場予定選手による事前会見が、競技会場となるえがお健康スタジアムで開かれました。1人ずつ実施される形となった会見には、男子10000m日本記録保持者の塩尻和也選手(富士通)、男子10000m前回覇者の葛西潤選手(旭化成)、女子10000mで2021年東京オリンピックおよび2023年ブダペスト世界選手権入賞を果たしている廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)の3名が登壇。それぞれに、これまでの状況や大会に向けての思いを語りました。
以下、各選手のコメント(要旨)をご紹介します。
【前日会見出席選手コメント】
※記載は会見実施順
◎廣中璃梨佳(JP日本郵政G)
今年の冬期練習は、順調に練習を積むことができているので、自信を持って明日を迎えられるかなと思っている。私は、末端冷え性ということもあり、寒い時期になると足首の動きなどが悪くなる。去年は例外で膝を痛めていたのだが、これまでの冬期練習では足首まわりを故障することが続いていた。今年は、ホットジェルを使うなど、足首まわりが冷えない対策をとって予防。また、高地合宿として、つい1週間前まで行っていたアメリカでも、しっかりと2月に距離を踏み、3月にかけてスピード練習にも取り組んだ。そうした移行も自分では順調にできたかなと思うので、そういった意味でも自信を持って、ここに来ることができている。昨年は、1年間、なかなか思うように走ることができなかった。目標にしていたパリオリンピックに出場できなかった悔しさも確かにあるのだが、今は、1周回って「走る喜び」を感じることができている。それは、半年間走れなかった時期があったからこそ感じることのできる喜び。また、「初心に戻った」というよりは、1周回って自分のなかで成長しつつ、原点である「走る楽しさ」を感じていて、今は「走ることがやっぱり好きなんだな」というのを改めて感じることができている。そういう意味でも、(昨年の悔しさは)今季に大きくつながるのではないかと思っている。
明日は、外国人選手が(ペースメーカーとして)8000mまで行ってくれるということなので、まずは前半、余裕を持ってどこまで走れるかというのを自分の感覚として試したい。また、10000mでは、後半の5000mがやはり大事になってくると思っているので、そこでいかにペースを落とさずキープし、ラストに向けて上げていくことができるかというのも、自分としては楽しみな部分である。4月の初戦から、トラックレースに帰ってこられたという喜びを感じながら、そこに向けて走りたい。ペーシングライトは31分10秒に設定していただけるので、そのタイムは必ず切りたいと思う。
東京世界選手権に向けては、自分としては確実に参加標準記録を切りたいという思いはもちろん持っているが、(ワールドランキングの)ポイントも、一つ重要視されること。明日は優勝して、まずはアジア選手権の出場資格を獲得し、アジア選手権でも自分らしくいい走りをしてポイントもしっかり重ねていくようにしたい。

◎葛西 潤(旭化成)
(1月1日の)ニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)以降は、試合に出ることなく、じっくりと脚つくりを中心にやってきた。3月くらいからトラックに移行してきていて、ここまで順調に練習が積めている印象がある。なので、明日は、いいコンディションで迎えることができるのではないかと思っている。明日は、ペース設定が27分20(秒)なので、昨年(27分17秒46、優勝)くらいのタイムになるのかなと思う。レースの状況を見ながら、順位・タイムの両方にこだわって走れればと思う。昨年(のこの大会)は、パリ(オリンピック出場)がかかったタイミングでもあったので、そのプレッシャーがあった。今年は、前回大会を優勝させていただいたという、また違ったプレッシャーもあるが、周りの選手もすごく強いし、自分が昨年勝ったからといって、確実に優位にいるかと言われると、そうではないのかなと思うので、今年も昨年同様にチャレンジャーとして、連覇というよりは、もう1回、優勝を取りに行くというような気持ちで臨みたい。
昨年は、パリオリンピックを目指して走っていったなか、その本番のパリでは結果を残すことができず、悔しさだけがすごく残る形となった。そのぶん、今年の世界陸上で、昨年のパリのリベンジをしたいという気持ちが強くある。その過程で迎える明日の日本選手権も、ステップアップの機会にしていきたい。もちろん油断はできないが、先を見据えたレースができればいいなと思っている。
明日も、昨年同様ペースメーカーがいるなかでのレースとなる。ただ、明日は雨の用法が出ているし、気温も若干上がりそうで、タフなコンディションになるのかなとみている。想定しているようにレースが進むかどうかわからないが、ここまでタフな練習環境でやってきた自信もある。あまり焦らずに、周りの選手の状況を見ながら、その場その場で対応していきたい。
世界では26分台が当たり前になってきているなか、日本記録はまだ27分を切れていないということで、やはりタイムは狙っていきたいなと思っている。しかし、それと同時に、タイムを持っていたところで、肝心の勝負所で発揮できなかったり、勝てなかったりでは意味がないとも思っている。タイムにももちろんこだわりつつ、ラストで勝ちきるイメージの両方を持っての練習は、これまでも取り組んできたつもりだが、そのなかで明日は、ペースメーカーの設定がそこまで速くはない状況なので、勝負が一つ、ポイントになってくるのかなと考えている。

◎塩尻和也(富士通)
ここまで予定していたトレーニングを順調に消化してくることができているので、明日のレースは自信を持って臨めるかなと思う。目標は、やはり優勝。タイムのほうは事前のペースメーカーの設定もあるが、そこからどこまで上積みできるかというところを目指し、少しでも速いタイムで走れればと思っている。勝負所となると思っているのは、ペースが少し上がってくる8000m以降の部分でしっかり走ること。ペースが上がったなかで先頭集団から落ちることなく、その上がったペース以上に攻めた走りをしたい。この大会に向けては、何か特別な練習をしたということではないのだが、今回、開催が4月の上~中旬と普段よりも少し早いタイミングでの日本選手権ということで、通常の冬期練習よりも、多少はスピードの仕上がりを早くするようなトレーニングの予定を組んだ。あとは、先月、エキスポ駅伝があったので、そのエキスポ駅伝を踏まえたトレーニングを組んだ。少し距離を踏むような練習から、エキスポ駅伝を挟んで、またスピード練習で削っていくような練習をして、今回、このレースに臨んでいる。
ここ数年は、毎年世界大会が行われていて、どの年も、目指す場所として、その世界大会に出ることを目標にしてきたわけだが、昨年はパリオリンピック出場を目指していたものの、出ることができず悔しい思いがあった。今年の世界陸上は、東京での開催。2021年に自国開催として行われた東京オリンピックのときも、出たいと思って目指しながらも出場することができなかったので、「今回こそは」という気持ちで、まずは出場を目指している。
世界選手権に向けては、参加標準記録とポイント(ワールドランキング)の観点があるが、標準記録のほうは今後の監督・コーチとの相談次第ではあるものの、現状として国内のレースで狙っていくのは少し厳しいという思いがあるので、まずはポイントのほうでの出場を目指していくことを想定している。つまり、今回の日本選手権の結果や、それを踏まえての5月末にあるアジア選手権の結果での出場を目指していく形となる。
(参加標準記録27分00秒00を切る)26分台という記録は、日本記録となる自己ベストを走ったときの感覚からすれば、十分に目指せるタイムかなと自分自身では考えてはいる。しかし、やはりそう簡単に出せるタイムではない。しっかりと準備をして、狙ってつくっていくようなレースをしなければ、(実現は)難しいかなという思いもある。世界大会で戦っていくなかでは、どんな場面でもそういったタイムが出せるような力が必要になってくると思うし、もちろん26分台は狙いたい部分ではあるのだが、この日本選手権においてはまずは勝負に徹したい。そして、26分台は、またどこかのタイミングで狙っていければと考えている。
大会は4月12日、同日・同会場において行われる日本グランプリシリーズ熊本大会第33回金栗記念選抜陸上中長距離大会2025(金栗記念)の競技が終わったあとに、ナイトゲームとして開催。男女ともに一発決勝での実施で、男子は19時35分、女子は20時15分にスタートします。
この大会では、ワールドアスレティックス(WA)が設定する東京2025世界陸上参加標準記録(男子27分00秒00、女子30分20秒00)を突破して、3位以内でフィニッシュすれば日本代表に即時内定することになっていますが、内定者が出なかった場合も、本大会の(順位)が選考上での高い優先度を有するため、代表入りを目指す選手たちによる激しい上位争いが予想されています。
レースの模様は、NHKBSにおいて、生放送(19:30~21:00)が予定されています。また、日本陸連公式サイト内にオープンしている「日本選手権10000m」特設ページ( https://www.jaaf.or.jp/jch/109/10000m/ )からは、出場選手の情報やスタートリスト、結果速報等にアクセスできるほか、Googleフォームを用いて出場選手に応援の気持ちを伝える「応援メッセージキャンペーン」の募集も実施しています(4月13日23時59分まで)。観戦および応援に、ぜひ、お役立てください。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
【第108回日本選手権・10000mアーカイブ】
【日本選手権10000m】大会おすすめ情報

>>日本選手権10000m特設サイト
大会名 :第109回日本陸上競技選手権大会・10000m開催日程:2025年4月12日(土)
開催会場:えがお健康スタジアム(熊本)
午前中は同会場にて「日本グランプリシリーズ第32回金栗記念選抜陸上中長距離大会2025」(以下、金栗記念)が開催されております。
金栗記念と日本選手権10000m両方観戦できるお得なセット券も販売中です!
▼チケット販売中!金栗記念セット券もこちらから
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21405/
▼オンエア情報:NHK BSで生中継!
https://www.jaaf.or.jp/jch/109/10000m/
▼男子レース展望記事
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21537/
▼女子レース展望記事
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21538/