2023.12.05(火)イベント

「Denka presents 目指せ、陸上スペシャリストへの道! ~レジェンドたちによる子ども走り方教室~」レポート:福島千里さん・栁田大輝選手が参加!笑顔あふれるイベントに



日本陸連は11月23日、オフィシャルスポンサーのデンカ株式会社との共催で、小学生対象の普及イベント「目指せ、陸上スペシャリストへの道!~レジェンドたちによる子ども走り方教室~」を群馬県前橋市のALSOKぐんまアリーナで開催しました。当日は、群馬県内を中心に51名の小学生が参加。家族が見守るなかで、「レジェンド」として講師役を務めた福島千里さん、栁田大輝選手らとともに、楽しい休日の午後を過ごしました。


「目指せ、陸上スペシャリストへの道!~レジェンドたちによる子ども走り方教室~」は、小学生年代の子どもたちが陸上に接することのできる場を設けて、「走・跳・投」のコツを学んだり、トップアスリートとして今なお活躍している「レジェンド」と交流し、身体を動かすことやさまざまな人と触れ合うことの楽しさを知り、陸上をはじめとするスポーツへの興味・関心を高める機会となることを目指しています。
第2回目のイベント開催となる今回もタイアップしたデンカ株式会社は、幅広い領域で事業を展開する総合化学メーカー。電気自動車のリチウムイオンバッテリーなどに使われる電子部材をはじめ、新型コロナウイルス抗原迅速診断キットやインフルエンザワクチンの製造など、健康福祉の増進やスポーツ振興、地域貢献を通じて人々の暮らしや社会に貢献することを目指しています。

実施したプログラムは、4月に東京で実施された第1回に引き続き、日本陸連指導者養成委員会と科学委員会の協力のもと企画。メインプログラムを、「走る、跳ぶ、投げる」の3つを楽しみながら取り組めるアスレティックスタイムと、スペシャルゲストのお二人に話を聞くトークショーの2部構成としました。
スペシャルゲストとして招かれたのは、女子100m・200m日本記録保持者でオリンピック3大会連続出場の実績を残した福島千里さん(セイコースマイルアンバサダー)と、群馬県出身で、今季7月のアジア選手権男子100mで10秒02の自己新記録をマークして金メダルを獲得したほか、8月のブダペスト世界選手権では男子100mで準決勝に進出、男子4×100mリレーでは2走を務めて5位入賞の立役者となった栁田大輝選手(東洋大学、ダイヤモンドアスリート)の2人。エーススプリンターとして長年にわたって日本女子短距離を牽引し続けてきた「レジェンド」福島さんと、20歳になった今夏の大躍進で「レジェンド」への道を踏みだしたばかりの栁田選手が、タッグを組むかたちとなりました。



開会式のあと、子どもたちはまず、福島さんと栁田選手の指導でウォーミングアップ。栁田選手の声がけで、足首やアキレス腱、肩まわりなどをほぐす準備運動を行ったのちに、福島選手が紹介した全身を大きく弾ませながら行う脚ジャンケンにトライ。栁田選手と勝負して、結果に応じて連続ジャンプするゲームで身体を温めました。
学年に応じて、Aグループ(3・4年生)とBグループ(5・6年生)に分けての展開となったアスレティックスタイムは、「50m走・ミニ授業」エリアと、「跳躍・投てき」エリアの2つを、各50分で交替して体験していく形がとられました。



「50m走・ミニ授業」エリアでは、まず、最初に参加者たちが1人ずつ50m走に挑戦しました。科学委員会スタッフが専門機器を使って計測し、タイムだけでなく、各参加者の走スピードとストライドとピッチを割り出して、すぐにデータを掲示。これは、「即時フィードバック」と呼ばれる方法で、オリンピックや世界選手権で活躍する日本代表クラスのアスリートが受けている科学的サポートの1つです。
続いて、データ分析のスペシャリストとして数多くのトップアスリートをサポートしている松林武生先生(科学委員会副委員長)によるミニ授業が行われました。松林先生は、男女世界記録保持者(9秒58)のウサイン・ボルト選手やフローレンス・グリフィス・ジョイナー選手(10秒49)が走っているときの最大スピードが時速何kmになるかをバイクや自動車などと比較しながら紹介したほか、速さ(スピード)はストライド(1歩の長さ)とピッチ(脚の回転数)の掛け合わせで決まることを説明し、「速く走る」は、タイムだけでなく、スピード、ストライド、ピッチという観点からみていけることを紹介しました。また、最大ストライドと最大ピッチの数値から、自分が「ストライド型」か「ピッチ型」かを把握できるとして、ゲストのデータを例に挙げ、福島さんはピッチ型、栁田選手はストライド型であることを提示。参加者たちは、フィードバックされた自身の数値をみて、自分がどちらのタイプかを確認する作業に取り組みました。そのうえで、福島さんと栁田選手が、それぞれに自分が走るときに意識していることや走り方のコツを披露。こうしたアドバイスも参考にしながら、もう1回、50m走計測に挑戦し、自分の数値の変化を確認しました。



2回目の計測では、疾走中の連続写真も撮影。ここで計測されたタイム、スピード、ストライド、ピッチと連続写真の掲載された記録症が用意され、閉会式のあとに参加者全員に贈られました。
福島さんと栁田選手は、2回の計測の最中にも、緊張している様子の子どもたちに声をかけてリラックスする方法を紹介したり、スタートで速く動きだすためのコツを教えたりするなど、「速く走るコツ」を熱心にアドバイス。デモンストレーションとして自らも50m走に挑戦し、子どもたちからの大きな声援を浴びていました。

「跳躍・投てき」エリアでは、1学年ごとのグループに分かれて、国際コーチの資格を持つ指導者養成委員会の先生のレクチャーのもと、「跳躍」と「投てき」に取り組みました。
跳躍では、身体のバランスをとりながら前後左右に、速く、短く、リズミカルに連続ジャンプする「クロスホッピング」と、全身のバネを使って大きく前に跳んでいく「立ち幅跳び」の、性質の異なる2種類の跳躍に挑戦しました。どちらも最初に、身体の動かし方や上手に跳ぶコツを教えてもらって、それぞれで練習。その後、クロスホッピングではペアを組んで1分間に何回跳べるかを競争し、立ち幅跳びでは、2チームに分かれて、1人が跳んで着地した箇所から次の人が跳ぶ「立ち幅跳びリレー」で合計距離を競いました。



投てきでは、ターゲットスローが行われました。これは、全国小学生陸上競技交流大会で実施しているジャベリックスローで使われているジャベボールを、点数を記した的(バナー)に向かって、狙う点数に当てることを狙って投げるもの。バナーは、難易度に応じて点数のエリアが色分けで示され、さらに大きさの異なる穴に投げ込むことができた場合は大量得点を獲得できる仕組みになっています。参加者たちは、最初に、①投げる前には周りに声をかける、②周りの人は返事をして投てきが行われることを確認する、③投てき物は全員が投げ終わったことを確認したうえで取りにいく、という投てきを行う際に最も大切な安全面のルールを学んだうえで、ジャベボールの持ち方、投げるときの構え、きれいにまっすぐ飛ぶ投げ方のレクチャーを受け、安全確認の声かけを実践しながら狙う的に当てる練習に取り組みました。最後に、3チームに分かれて、得点を競うゲームに挑戦。バナーから離れた位置から投げるほど得点がアップする変則ルールが加わったことで、ゲームの終盤では、他チームの得点を上回ろうとして、得点から逆算して投てき位置や狙う的を決める頭脳戦も繰り広げられることとなり、大いに盛り上がりました。



第2部は、アスレティックスタイム終了後、少しの休憩を挟んでスタート。スペシャルゲストの「レジェンド」に話を聞いていくトークショーが行われました。このセッションでは、それまで2階の観覧席から見学していた参加者の家族もアリーナに降りてきて、子どもたちと一緒に参加する形で行われました。
トークショーでは最初に、今回のイベント全体の司会進行を務め、アスレティックスタイムでは子どもたちと一緒に、走・跳・投に挑戦したモノマネタレントのこにわさんがインタビュアーとなって、福島さんと栁田選手に話を聞いていきました。小学校時代のスポーツ経験に関する話題では、北海道出身の福島さんが小学生のころ、陸上のほか、冬にはスピードスケートに取り組んでいたことや、栁田選手は両親ともに陸上経験者で、小学生のころから陸上クラブに入っていたものの、そんなに熱心だったわけでもなく、むしろ野球のほうが好きだったといったエピソードも。50m走計測のとき、緊張した様子の子どもたちが多かったことを振り返ったこにわさんが、緊張について質問すると、「私はすごく“緊張しい”でした」と答えた福島さんは、「緊張するのは当たり前のこと。そう思って、受け入れることができたら大丈夫になる」という考えから、「人に聞かれたときはいつも、“緊張しても大丈夫と思っていたら、緊張しても大丈夫”と伝えています」とコメント。「僕もめちゃくちゃ緊張するタイプ」と応じた栁田選手も、「緊張してナンボ。それでいいと割りきってやっている」と話しました。



このほか、小学生時代の食生活や睡眠についての質問では、「実は、お父さんお母さん泣かせの小食で、身体も小さかったので、まず食べること、なんでもいいから食べることに気をつけていた」という福島さんに対して、栁田選手は、「出されたものをなんでもたくさん食べる子どもだった。好き嫌いもあまりなく、3食しっかり食べていた」と振り返り、さらに、「小学生のころは、夜は9時には寝て、起きるのは朝7時。毎日10時間くらい寝ていた。“寝る子は育つ”を体現していた感じ」だったことを明かしました。
子どもたちからのQ&Aでは、陸上に関する具体的な質問が上がりました。「スピードを上げるにはどんなトレーニングをしたらいいですか?」という問いには、「速く動かすことが大事。例えば、腕を限界まで速く振ってみるとか、まずは身体のどこか一つを速く動かすことを意識してみては?」(福島さん)、「福島さんと同じで、大事なのは速く動かすこと。それも、速く、大きく動かすようにすると、より進むようになる。小学生のころは、まず“速く、大きく動かす”を頭に入れて取り組んでほしい」(栁田選手)と回答。また、「どうやったらスタートがうまくいきますか?」という質問には、栁田選手は「反応が遅れると焦ってしまうので、まずは集中して、(スタートの)“音”に反応することが大事」と答えました。こにわさんがさらに質問を深掘りする形で「スタートしてから加速に乗っていくときのポイントは?」と問われた福島さんは、「前傾姿勢をとることが大切になるが、ただ前傾すればいいというわけではなく、自分のちょうどいい状態を見つけることがとても大事」と述べ、「足が身体の真下で接地できるように、何回も何回も遊び感覚でやって身につけていくと、スタートが速くなるきっかけになると思う」とアドバイスしました。
最後に、全員で記念撮影を行ったのちに、アスレティックスタイムで計測された50m走の記録証を、福島さんと栁田選手が一人ずつ名前を読み上げて授与。あわせてデンカ株式会社と日本陸連からの記念品も手渡され、3時間にわたるプログラムを終えました。



文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト


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