2023.12.02(土)選手

【記録と数字で楽しむ第107回日本選手権10000m】 男子:至近3年間の優勝は相澤→伊藤→相澤。1・2位は歴代1~3位の相澤、田澤、伊藤で占める。さて、今回は?




2024年パリ五輪の代表選考会となる10000mの第107回日本選手権が12月10日に国立競技場で行われる。スタートは、女子16時03分、男子16時43分。ここでは、現地観戦あるいはTV観戦のお供に「記録と数字で楽しむ2023日本選手権10000m」をお届けする。

・今回の日本選手権申込資格記録の有効期限は2023年11月19日だが、記事の中ではそれ以降の11月28日判明分までの記録も可能な限り収録した。
・文中敬称略。


【男子】至近3年間の優勝は相澤→伊藤→相澤。1・2位は歴代1~3位の相澤、田澤、伊藤で占める。さて、今回は?

今大会の参加資格は、2022年1月1日~23年11月19日に「28分16秒00」の申込資格記録突破者で、オープン参加の外国籍の1人を含め計30人がエントリーした(https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1749-4.pdf)。

「28分16秒00」を2022年にクリアした日本人選手は61人もいた。23年は11月19日までに36人で、いずれも今回の人数制限(ターゲットナンバー)の「30名」を上回っていた。が、オープン参加の外国籍選手を含め30人のエントリーとなった。30人の資格記録は、22年のタイムが18人(日本人17人)、23年が11人。
日本人に限ると資格記録の27分台は、19人。自己ベストを含めると21人が27分台ランナーだ。
23年11月26日現在の日本歴代リスト上位の出場者は、
1)27.18.75相澤晃(旭化成)2020.12.04
2)27.23.44田澤廉(駒澤大学。現在、トヨタ自動車)2021.12.04
3)27.25.73伊藤達彦(Honda)2020.12.04
10)27.31.27清水歓太(SUBARU)2022.03.06
11)27.33.13太田智樹(トヨタ自動車)2021.11.27
がトップ5だ。

日本選手権にはエントリーしていないが、11月25日の八王子ロングディスタンスで駒大2年の佐藤圭汰が27分28秒50のU20日本新で日本歴代5位、同4年の鈴木芽吹が27分30秒69の歴代9位に入ってきて、同3年の篠原倖太朗も27分38秒66。大学生がこんなタイムを出したことは、日本選手権に出場する実業団選手にとって、「学生に負けるわけにはいかない」と、大きな刺激になっていることだろう。
なお、佐藤の27分30秒切りは、アフリカ勢以外の「U20」の選手では、初のことでもある。


パリ五輪の内定条件

パリ五輪参加標準記録は、日本記録(27.18.75/相澤晃/旭化成/2020.12.04)を上回る「27分00秒00(10kmロードの記録も有効)」で、有効期間は2022年12月31日~24年6月30日。
今大会での五輪代表内定条件は、
A)2023ブダペスト世界選手権で8位以内の成績を収めた日本人最上位の競技者で、2023年11月1日から2024年6月30日までに、ワールドランキング対象競技会において参加標準記録を満たした競技者。

B)今回の優勝者で、第107回日本選手権・10000m終了時点までに参加標準記録を満たした競技者。

「A」の条件の「世界選手権8位以内」はいない。
「B」の「今大会優勝&27分00秒00をクリア」のためには、日本記録を20秒近くも破らなければならず、かなり高いハードルだ。

今大会の優勝者が「27分00秒00」を突破できなかった場合は、24年春に行われる「第108回日本選手権10000m」に選考が持ち越される。そこでも優勝者が「27分00秒00」をクリアできなければ、世界陸連が集計する24年6月30日現在の「WAランキング(Road To Paris 2024)」で、出場枠の「27番目以内」に入る必要がある。
最終的にWAランキングが確定するのは、半年以上先の24年6月30日(発表されるのは、日本時間の7月3~4日あたりの見込み)だが、現時点(23年11月28日現在)では、
18)1204pt 田澤廉(トヨタ自動車)
32)1165pt 篠原倖太朗(駒澤大学)
35)1150pt 太田智樹(トヨタ自動車)
が、1国3人以内のトップ3だ。
日本人4番目の相当順位は、
40)1143pt 塩尻和也(富士通)
である。

現時点(23年11月28日現在)で、ロード10kmを含めて「27分00秒00」の参加標準記録突破者が世界で5人。WAランキングの「27番目」の選手のポイントは「1179pt」で、その選手の2レースのタイムは27分41秒44(1191pt=記録1161pt+順位30pt)と28分15秒64(1168pt=記録1108pt+順位60pt)だ。
21年東京五輪、22年オレゴンと23年ブダペストの世界選手権でのボーダーラインの2レース平均のポイントは、1190pt台あたり。順位によるポイントがつかずに記録ポイントのみでの「1190pt」は「27分23秒01」、「1200pt」は「27分16秒70」である。このあたりのレベルでの記録ポイントの差は、概ね「0秒7で1pt差」「7秒で10pt差」というところである。

「順位ポイント」は、大会のグレードによっていくつかに区分されているが、日本選手権のカテゴリーは「B」で、各順位のポイントは以下のとおりだ。
1位 60pt
2位 50pt
3位 45pt
4位 40pt
5位 35pt
6位 30pt
7位 25pt
8位 20pt

よって、日本選手権では、ひとつでも上の順位でフィニッシュすることが「WAランキング」のポイントを稼ぐためには何よりも重要である。1位と2位の順位ポイントの「10pt差」をタイムに換算すると約7秒差、1・3位の「15pt差」は、10秒5くらいの差になる計算だ。ほとんど差がなくほぼ同タイムでフィニッシュしても、WAランキングのポイントでは、上記のような差がついたのと同じ扱いになるのだ。
また、記録ポイントが「1140pt」の「27分55秒01」であっても、トップでフィニッシュすれば順位ポイントの「60pt」が加算されるのでトータルは「1200pt」となり、2レース平均でのボーダーラインと予測されるポイントを稼げることになる。
このところの世界大会では、「27番目と28番目」の2レース平均のポイント差は、1点差とか同点で少数点以下の差で決まることも……。「0秒01差」が晴れの舞台に出場できるかどうかの明暗を分ける場合もある。

なお、今回の日本選手権で内定者が出なかった場合、あるいは優勝者が27分00秒00をクリアして内定した場合は2人目以降の選考は 【24年5月3日に袋井(エコパ)で行われる】 「第108回日本選手権10000m」に持ち越されることになる。


2015年以降の世界大会の日本代表とその成績

2015年以降の世界選手権と五輪の代表と本番での成績は以下のとおり。

<至近7世界大会の代表と成績>
「★」は、今回の日本選手権出場者。

2015北京世界選手権 
18)28.25.77鎧坂哲哉(旭化成)
22)29.50.22村山謙太(旭化成)
23)30.08.35設楽悠汰(Honda)
2016リオデジャネイロ五輪 
17)27.51.94大迫傑(Nike ORPJT)
29)28.55.23設楽悠汰(Honda)
30)29.02.51村山紘太(旭化成)
2017ロンドン世界選手権 
出場者なし 
2019ドーハ世界選手権 
出場者なし 
2021東京五輪 
17)28.18.37相澤晃(旭化成)★
22)29.01.31伊藤達彦(Honda)★
2022オレゴン世界選手権 
20)28.24.25田澤廉(駒澤大学)★
22)28.57.85伊藤達彦(Honda)★
2023ブダペスト世界選手権 
15)28.25.85田澤廉(トヨタ自動車)★

至近3大会の代表は、日本歴代1~3位に位置する相澤・田澤・伊藤の3人で分け合っている状況だ。


至近8年間の日本選手権での入賞歴

・今回の出場者に限る。掲載順序は、直近年の順位順
 1516171819202122年
相澤晃8411
伊藤達彦212
市田孝433843
大池達也4
太田智樹5
松枝博輝6
森山真伍7
田澤廉82
岡本雄大8
大石港与6

2020年からの至近3年間の優勝者は、相澤→伊藤→相澤で、相澤が優勝した時の2位は伊藤で日本歴代1・3位の力を示している。同歴代2位の田澤廉は、伊藤が勝った21年の2位。つまり、この3年間の1・2位は歴代1~3位の選手で占めているのだ。さて、今回は? である。

「日本一のタイトル」こそ手にはしていないが、市田孝(旭化成)が安定して好成績を残している。日本選手権初出場の16年以降の7年間で20年以外はすべて入賞。しかも、うち5回は、3位3回、4位2回と非常にコンスタントだ。惜しかったのは、入賞を逃した20年で2組タイムレースで実施された第1組の1着で27分52秒35。実力者が揃った第2組では相澤の27分18秒75を筆頭に伊藤、田村和希(住友電工)の3人が従来の日本記録(27.29.69)を上回り、入賞者8人中6人が自己ベスト、15人が27分台でフィニッシュするという日本陸上競技史上最高レベルのレースとなった。同一レースでの日本人の「27分台15人」は、すべての競技会を含めて現在でも史上最多人数だ(歴代2位は、21年・八王子ロングディスタンス・第7組の14人)。そのため、20年日本選手権の2組トータルでの市田の総合順位は11位だった。「たら、れば」の話になってしまうが、もしも市田が第2組で走っていれば、いい流れに乗って8位入賞ライン(27.46.09)に届いていたかもしれない。20年も入賞できていたならば、出場したすべてが入賞で7年連続入賞となるところだった。優勝してスポットライトを浴びることはなかったが、市田は、日本選手権の10000mにおいて「いぶし銀」の輝きをみせている選手といえよう。


日本選手権の連勝記録

この種目での連勝記録の歴代リストは、
1)6連勝村社講平1934~39年
2)4連勝佐藤悠基2011~14年
3)3連勝末永包徳1942・46・47年(43~45年は戦争で中止)
〃)〃松宮隆行2006~08年
5)2連勝大西増夫1952・53年
〃)〃林田積之介1956・57年
〃)〃林田・青木積之介1960・61年=2回目の連覇
〃)〃大槻憲一1969・70年
〃)〃喜多秀喜1977・78年
〃)〃中村孝生1982・83年
〃)〃浦田春生1988・89年
〃)〃T・オサノ1990・91年
〃)〃A・ニジガマ1994・95年
〃)〃大迫傑2016・17年
相澤が連覇を果たせば、14人目で15回目、日本人では12人目で13回目となる。


日本歴代TOP3の10000mでの対戦成績

  相澤晃 vs 田澤廉
2020.12.04日本選手権1)27.18.75 8)27.46.09
2022.05.07日本選手権1)27.42.85 10)28.06.34
   2-0 

  相澤晃 vs 伊藤達彦
2018.04.21兵庫リレー5)28.17.81 19)29.12.04
2020.12.04日本選手権1)27.18.75 2)27.25.72
2021.07.30東京五輪17)28.18.37 22)29.01.31
2021.11.27八王子LD20)27.58.35 4)27.30.69
2022.04.09金栗記念5)27.45.26 2)27.42.48
2022.05.07日本選手権1)27.42.85 2)27.47.40
2022.06.05ヘンゲロ13)28.17.41 15)28.39.38
   52 

  田澤廉 vs 伊藤達彦
2019.11.23八王子LD2)28.13.21 9)28.26.50
2020.12.04日本選手権8)27.46.09 2)27.25.72
2021.05.03日本選手権2)27.39.21 1)27.33.38
2022.05.07日本選手権10)28.06.34 2)27.47.40
2022.07.17世界選手権20)28.24.25 22)28.57.85
2023.03.04ザ・テン6)27.28.04 15)27.54.64
   33 

上記のとおり、相澤が田澤にも伊藤にも勝ち越し。田澤と伊藤は3勝3敗の五分だ。


相澤晃の日本記録(27.18.75)の時のペース

20年12月4日の日本選手権(長居)で相澤が27分18秒75の日本記録をマークした時の400m毎は下記のとおり。以下はすべて相澤の通過タイム。カッコ付き数字は、その地点での相澤の通過順位(オープン参加の外国籍選手を含む)を示す。
・以下、筆者による非公式計時
400m6)1.06.366.3   
800m7)2.13.767.4   
1000m7)2.46.2 2.46.2  
1200m7)3.19.165.4   
1600m8)4.25.466.3   
2000m8)5.31.265.82.45.02.45.0 
2400m7)6.35.964.7   
2800m7)7.41.966.0   
3000m7)8.14.0 2.42.8  
3200m7)8.46.965.0   
3600m6)9.52.365.4   
4000m7)10.57.965.62.43.95.26.7 
4400m6)12.03.765.8   
4800m6)13.09.365.6   
5000m6)13.41.7 2.43.8 13.41.7
5200m6)14.14.765.4   
5600m6)15.20.565.8   
6000m6)16.25.665.12.43.95.27.7 
6400m5)17.31.766.1   
6800m4)18.38.066.3   
7000m4)19.10.5 2.44.9  
7200m4)19.43.065.0   
7600m3)20.48.165.1   
8000m3)21.54.866.72.44.35.29.2 
8400m2)23.01.065.2   
8800m2)24.07.366.3   
9000m2)24.40.1 2.45.1  
9200m2)25.13.366.0   
9600m2)26.18.965.6   
10000m1)27.18.7559.92.38.75.24.013.37.1(前後半差△4.6)

残り3000m8.08.3
残り2000m5.24.0
残り1500m4.01.2
残り800m2.05.5
残り600m1.32.8
残り500m1.16.3
残り400m59.9
残り300m44.4
残り200m29.5
残り100m14.7

5000m過ぎまで、B・コエチ(九電工)とC・カンディエ(三菱重工)が交互に引っ張り、日本人集団がついていく展開。相澤は6~7番目で常に先頭から2秒以内くらいの位置をキープした。
6000m過ぎからコエチが日本人集団との差を徐々に広げにかかるが、伊藤が追いかけて7000mでコエチの背後に。相澤は一時は10m以上離されたが徐々に差を縮めて7600mで3人の集団に。8400mから伊藤が離れ、コエチと相澤のマッチレースに。残り370m付近で相澤が初めて先頭に立ち、0秒67の差でトップフィニッシュ。上述のとおり15人の日本人が27分台をマークする史上最速レースとなった。
最初の2周こそやや遅めだったが、1000m以降はほぼ400m65秒台、1000m2分43~44秒台の安定したペースを刻んだ。相澤は残り400mを59秒9のキックで決めて「27分18秒75」でフィニッシュ。従来の日本記録(27.29.69/村山紘太/旭化成/2015.11.28)を11秒近く更新したのだった。
前半13分41秒7に対し後半13分37秒1で、後半が4秒6速いネガティブスプリットだった。


五輪参加標準記録「27分00秒00」の平均ペースは「400m64秒8」、「1000m2分42秒0」

このところの五輪と世界選手権の参加標準記録は、どんどん引き上げられてきている。

<世界大会の参加標準記録と前年にそれを上回った世界と日本の人数>
  参加標準前年突破数世界日本
2016年五輪28.00.002015年=81人11人
2017年世選27.45.002016年=52人1人
2019年世選27.40.002018年=20人0人
2021年五輪27.28.002020年=13人2人
2022年世選27.28.002021年=37人1人
2023年世選27.10.002022年=13人0人
2024年五輪27.00.002023年=(8人)0人
・24年五輪はロード10kmの記録も有効なため11月27日時点で計8人

21年東京五輪からは「WAランキング」による出場資格付与の制度が導入された。
24年パリ五輪に向けては、ロード10kmを含めて有効期限の24年6月30日までに「27分00秒00」をクリアできるのは、世界で十数人であろうからターゲットナンバー27人の約半数は「WAランキング」での出場となりそうだ。

とはいえ、確実に出場するためには参加標準記録を突破するのが確実だ。
「27分00秒00」を平均ペースでならすと、400m「64秒8」、1000m「2分42秒0」である。

女子のところでも述べたが、これまでの世界や日本の様々な競技会の10000mで好記録が出た時のペースを調べると、前後半の落差が数秒、あるいは後半の方が速いということが多い。上述の相澤の日本記録の時も後半の方が速いネガティブスプリット。世界記録26分11秒00の時も「13分07秒73+13分03秒27」だった。女子の世界記録29分01秒03も「14分42秒2+14分18秒8」で後半の方が23秒4も速かった。
「前半で貯金を作って……」とハイペースで突っ込むと、踏ん張りどころの6000mあたりから苦しくなって終盤に大きくペースダウンしてしまうというケースをよく見かける。そうなると、ラスト1000mや残り1周のスピードも上がらずに、結果的には、「前半の貯金」を大きく取り崩してしまい目標にほど遠い結果に終わってしまうことも多いようだ。

レース当日の気象条件にもよるが、「27分00秒00」のためには、400m「64秒8」、1000m「2分42秒0」から大きく外れることなくスタートから安定したペースを刻むことがポイントだ。

1000m2分42秒0で刻んでいくと、
1000m2.42.0
2000m5.24.0
3000m8.06.0
4000m10.48.0
5000m13.30.0
6000m16.12.0
7000m18.54.0
8000m21.36.0
9000m24.18.0
10000m27.00.0
となる。

このタイムをトラックでクリアしたのは、23年11月27日現在、世界歴代で72人による145回しかない。
同じ世界歴代順位を100mにあてはめると、9秒92相当。パフォーマンスの回数145回ならば9秒86という記録になる。
全種目を網羅した「WAスコアリングテーブル(2022年版)」の「27分00秒00」の得点は「1226pt」。100mならば9秒95に相当する。

パリ五輪の各種目の参加標準記録を「WAスコアリングテーブル」のポイントで比較すると、下記のようになる。
種目参加標準記録ポイントターゲットナンバー
100m10.001206pt56
200m20.161195pt48
400m45.001180pt48
800m1.44.701183pt48
1500m3.33.501195pt45
5000m13.05.001191pt42
10000m27.00.001226pt27
マラソン2.08.10.1191pt80
110mH13.271202pt40
400mH48.701195pt40
3000mSC8.15.001189pt36
20kmW1.20.10.1187pt48
走高跳2.331206pt32
棒高跳5.821217pt32
走幅跳8.271197pt32
三段跳17.221188pt32
砲丸投21.501211pt32
円盤投67.201193pt32
ハンマー投78.201175pt32
やり投85.501179pt32
十種競技84601198pt24
ターゲットナンバー(参加人数の制限枠)が、10000mの27名に対し、100mが56名、200~800mは48名、マラソン80名、フィールド種目32名、十種競技24名などの違いがある。この人数の多少によっても参加標準記録のレベルに違いが出てこようが、記録のポイントで比較する限り、10000mのレベルが最も高い。

今回の日本選手権で「27分00秒切り」あるいは日本記録更新に向けては、27分14秒76のタイムを有するオープン参加のシトニック・キプロノ(黒崎播磨)が、ペースメーカーの役目を果たしてくれそうだ。

しかし、今回は日本選手権では初めて導入される、「電子ペーサー(ウェーブライト)」という頼もしい味方も存在する。トラック内側の縁石のところに1m毎にLEDライトを設置し、設定したペースで発光していく機器だ。7月の北海道でのディスタンスチャレンジ、11月25日の八王子ロングディスタンスでも使用された。
ライトは何色かに色分けができ、いくつかの目標記録別に点灯させることができる。
今回の日本選手権での設定ペースは、11月末時点では明らかにされていないが、「パリ五輪参加標準記録の27分00秒」「日本記録の27分20秒」に設定される可能性が高く、その他にも2種類くらいのペースが設定されることになるだろう。


世界の27分台選手の約6割が日本に集結。29分30秒以内は全世界の半数以上も……

以下は、今回の日本選手権のレースとは直接関係のないお話である。
まずは、今回の日本選手権申込資格記録「28分16秒00以内」をクリアした2022・23年の人数を他国のそれと比較し、日本の層の厚さなどについて調べた。
22年の1年間と23年の11月26日現在の日本の「28分16秒00以内」は、22年が61人、23年が集計途中で67人。
同じ条件で人数が多いのは以下の国だ。

<28分16秒00以内の国別人数上位国>
国名22年23年
KEN69人78人
JPN61人67人
USA25人22人
ETH9人12人
GBR8人6人
世界全体235人221人
国の数30国28国
各年の「世界100位」の記録は、22年が「27分49秒81」。23年は11月26日現在で「27分54秒91」である。

22年も23年も、今回の日本選手権申込資格記録「28分16秒00以内」の人数では、日本はケニアについで2位。
女子は、アメリカがトップだったが男子は、日本がアメリカの2.5倍から3倍に近い人数である。
世界リストでの28分16秒00は、22年が235位、23年が11月末の時点で221位だ。

地域(州)別の人数は、

<「28分16秒00以内」の地域別人数>
地域名22年23年
アフリカ93人97人
アジア62人68人
ヨーロッパ45人29人
北アメリカ29人25人
オセアニア5人1人
南アメリカ1人1人
世界全体235人221人
トータルでは、やはりケニアとエチオピアを中心としたアフリカの人数が多い。それに続くアジアは、22年は62人中61人、23年は68人中67人が日本人選手だ。
ヨーロッパには54の国があり、7億5千あまりの人口を有するが、「28分16秒00以内」の人数は、22年は日本の73.8%、23年は43.3%に過ぎない。

26分台から29分30秒以内までの30秒毎の国別の累計人数を調べたのが、下表である。

<2022&23年の男子10000mの30秒毎のタイム別の国別累計人数>
・「<27.00」は「27分00秒00以内」、「<29.30」は「29分30秒00以内」を示し、「○/△」は「2022年/23年の累計人数」を示す。
国名<27.00<27.30<28.00<28.30<29.00<29.30
 22/23年22/23年22/23年22/23年22/23年22/23年
JPN・/・1/221/26117/136378/395681/680
KEN2/125/1754/5984/96119/130150/170
USA1/・4/416/841/35112/87187/145
ETH4/26/58/1111/1318/1422/14
GBR・/・・/・6/212/917/1527/24
表の見方を日本を例に説明すると、日本記録(27.18.75)を上回る「27分00秒00以内」は当然のことながら22年・23年ともに誰もいなくて、「・/・」。「27分30秒00以内」は、22年に1人、23年に2人で「1/2」。「28分00秒00以内」の累計は22年が21人、23年が26人で「21/26」という表記になる。日本の圧巻は、28分台以降である。「28分30秒00以内」の累計人数が100人を超え、「29分00秒00以内」は400人に迫る。さらに「29分30秒00以内」は、23年は集計途中で12月にもまだまだレースがあるが、700人オーバーとなりそうな勢いだ。

22年に世界陸連に世界各国から報告された「29分30秒00以内」の合計人数は1220人。うち、日本からの報告分は564人でそのシェアは46.2%になる。
「短距離王国・アメリカ」の男子100mでも、22年世界1000傑(10秒46以内)に占める同国のシェアは、28.0%なのだから、日本の男子10000mの29分30秒以内の層の厚さがいかにすごいものであるかということがわかるだろう。
なお、世界陸連への未報告分を含めると実際には681人の日本人選手が22年に29分30秒00以内で走っている。
12月のいくつかの競技会を残して23年は、早くも22年と肩を並べる人数(680人)に達している。

このように「29分30秒以内」のレベルでみると日本の層が驚異的に厚いのだが、世界大会でメダル争いをするレベルの26分台、入賞争いに加われそうな27分台前半になると、ケニアとエチオピアの東アフリカ勢がやはり充実している。特にケニアの「27分30秒00以内」の層の厚さはものすごい。22年に27分30秒00以内で走った選手は、世界で47人だったがその半数以上の25人がケニアの選手だ。そのシェアは、53.2%。23年はまだ競技会が残っているが、11月26日現在で「27分30秒00以内」が世界に31人。うちケニア人選手が17人でそのシェアは、54.8%だ。

23年(11月26日現在)に「27分59秒99以内」で走ったケニア人選手は58人いるが、そのうちの実に50人(86.2%)が日本の実業団か大学に所属している選手だ。よりレベルの高い「27分30秒00以内」のケニア人選手は17人だが、うち14人(82.4%)が日本で走っている。
23年に「27分59秒99以内」で走った世界で127人のうち26人が日本人選手、「27分59秒99以内」の日本在住のケニア人選手が50人でその合計は76人。地球の陸地面積の380分の1(0.26%)に過ぎない極東の小さな島国に、23年に「27分59秒99以内」で走った選手の「59.8%」が集結しているのだ。これは、驚きの数字である。
さきに述べたように、「29分30秒00以内」の日本人選手は700人近くもいる。地球上で10000mを速く走れる上位130人あまり(27分59秒99以内)の約60%、さらには上位千数百人(29分30秒00以内)のうちの半数以上くらいが日本に住んで日々の練習を積み重ねているのだ。何とも、スゴイことである。

話は変わるが、最後にエチオピアについても少々。
世界大会でケニア勢とメダル争いをしているエチオピアは、26分台の人数は22年も23年もケニアのそれを上回っている。が、27分00~30秒の選手は22年2人、23年3人でケニア(25人・17人)に大きく離される。とはいえ、エチオピアは26分台を合わせると27分30秒以内は22年が6人、23年が5人でケニア以外ではトップの人数だ。だが、それ以下の層は非常に薄い。28分台(28分00~59秒台)の選手は22年が10人、23年は3人しかいない。日本の「28分台」は、22年が357人、23年369人だ。
女子も同様だったが、エチオピアでは世界の舞台で活躍できるレベルではない人は、競技を続けられる環境がないということなのかもしれない。世界陸連に報告されているエチオピアの30分台までの選手は、22年が32人、23年は20人しかいない。「競技人口が少ない」のか、「世界陸連への報告を怠っている」のかは定かではないけれども……、である。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

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