2023.12.15(金)大会

【第107回日本選手権10000mハイライト】女子:廣中、今季日本最高記録で三連覇/男子:塩尻、日本新記録で5000mとの二冠に輝く!




第107回日本選手権10000mが12月10日、来年8月にフランスで開催されるパリオリンピック日本代表選考会を兼ねて、東京・国立競技場で行われました。男子は、塩尻和也選手(富士通)が27分09秒80の日本新記録で、6月に実施された5000mに続き2つめのタイトルを獲得。同じく日本新記録でのフィニッシュとなった2・3位を含めて、上位4選手が日本歴代1~4位の記録を塗り替えました。また、2連覇中の廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)が今季日本最高の30分55秒29で制した女子も、上位4選手が30分台をマーク。男女ともオリンピック代表の内定者を出すことはかないませんでしたが、層に厚みができていることを感じさせる結果となりました。

日中の最高気温が19℃まで上がり、12月とは思えない暖かさとなったこの日は、暑さが懸念されていましたが、16時00分時点の気象状況は、気温15℃、湿度58%、南の風0.1m。風がなく、国立競技場のトラック内には日射しが当たらない時間帯となったこともあり、まずまずのコンディションに恵まれました。また、今大会では、好記録樹立を後押しする取り組みとして、電子ペーサー(ウェーブライト)を導入。男女ともに3段階の記録を想定し、点灯ペースが設定されました。

女子10000m



最初に行われたのは、女子10000m。オープンでの参加となったジュディ・ジェプングティチ選手(資生堂)を除くと23名の出場です。スタートしてすぐにジェプングティチ選手が先頭に立つと、その後ろに2022年オレゴン・2023年ブダペストと世界選手権2大会連続出場中の五島莉乃選手(資生堂)がぴたりとつき、集団は縦に長い隊列に。1周75秒のペースで1000mを3分08秒で通過していきました。隊列は、3周目に入ったあたりから徐々に分かれはじめ、先頭は1600mを通過したところで4人のトップグループと、5人の第2グループに分かれる形に、2000mを6分14秒(この間の1000mは3分06秒、以下同じ)で通過したあとは、先頭グループはジェプングティチ、五島、廣中璃梨佳(JP日本郵政G)、高島由香(資生堂)、木村友香(積水化学)の5選手が縦に続き、渡邊菜々美(パナソニック)、𠮷川侑美(ユニクロ)、小海遥(第一生命グループ)の3選手がこれを追う展開となりました。その後、先頭が74秒ペースに上がったことで木村選手が後れ、4人となった先頭集団は3000mを9分19秒(3分05秒)で通過。一方、後方では、第2グループにいたアジア選手権金メダリストの小海選手が2800mを過ぎたところから単独で抜けだし、3800m付近で先頭集団に追いつく動きを見せたことで、トップ争いは、4000mを12分27秒(3分08秒)で通過したジェプングティチ選手に続く、五島、廣中、高島、小海の4選手に絞られる形となりました。

レースに動きが生じたのは、5000mの通過を迎える直前のバックストレートでした。そこまで3番手にいた廣中選手が、五島選手、ジェプングティチ選手をかわして先頭に立ち、5000mを15分33秒(3分06秒)で通過すると、一気にリードを奪ったのです。しかし、いったんは差が開いたものの突き放すには至らず、逆に、五島選手がリズムをつくる形で後続が廣中選手との差を詰め、6100~6200mで追いつきます。その後は、五島選手とジェプングティチ選手が並んで先頭を引き、廣中・高島・小海選手の順で続いていく展開となりました。



7000mを21分47秒で通過してからは1周のペースは74秒に上がり、集団の形が前後に詰まってきました。7800mで高島選手が廣中選手の前に出て3番手に上がり、8000mは先頭が24分52秒で通過。残り3周となる8800m手前では廣中選手と小海選手が高島選手をかわして3・4番手に浮上し、9000mを27分57秒で通過していきます。9400m地点でジェプングティチ選手がレースを終えたなか、ここまで74秒ペースを刻んでいた選手たちは五島・廣中・小海・高島の順で残り1周に突入しました。

ファイナルラップの鐘とともに動きを見せたのは廣中選手です。五島選手に外側から並びかけると、バックストレートで前に出ます。そして、残り200m地点で渾身のスパートを繰りだし、このキックで後続を突き放してフィニッシュ。パリオリンピック参加標準記録(30分40秒00)に届かなかったために即時内定はなりませんでしたが、セカンドベストで今季日本最高となる30分55秒29で3連覇を達成しました。廣中選手に続いたのは、残り1周の段階で4番手にいたベテランの高島選手。残り200mを過ぎてから小海・五島選手をかわし、日本歴代6位となる30分57秒26でフィニッシュし、2017年にマークした自己記録(31分33秒33)を大幅に塗り替えました。また、ホームストレートで五島選手を逆転し、3位を確保した小海選手は30分57秒67(日本歴代7位)、残り1周までレースを牽引した4位・五島選手も30分58秒83(日本歴代8位)と、ともに自己記録を大きく更新しました。この4選手の記録は、今季アジアリストにおけるトップ4を占める好記録です。また、全体を通しても、出場した日本選手全23名のうち、実に12名が自己記録を塗り替える活況となりました。

男子10000m



16時43分にスタートした男子10000mは、オープンでの参加となったシトニック・キプロノ選手(黒崎播磨)に加えて、24名が出場して行われました。スタート直後から前々回の覇者で日本歴代3位の自己記録を持つ東京オリンピック代表の伊藤達彦選手(Honda)が前に出ましたが、すぐにキプロノ選手がトップに立って、この2人に清水歓太選手(SUBARU)、太田智樹選手・田澤廉選手(以上、トヨタ自動車)といった上位候補が続き、全選手による縦に長い一列ができ上がります。有力どころとして名前が挙がっていた塩尻和也選手(富士通)や相澤晃選手(旭化成)は8~9番手に位置。最初の400mが62秒と速すぎた影響で、次の1周は67秒、1000mの通過が2分42秒とペースに上下動が生じたものの、2000mを5分28秒(2分46秒)で通過したころから徐々に落ち着き、1周のペースは65~66秒あたりに。1000mごとの通過も、その後はきっちり2分44秒で進んでいく流れとなりました。

上位陣では、2300m付近で伊藤選手をかわして、清水選手が2番手に浮上。キプロノ選手が、3000mを8分12秒、4000mを10秒56秒と日本記録を上回るペースを刻んでいくうちに、一連で続いていた列が徐々に切れ始めて先頭グループはキプロノ選手を含めて13人に。4200mを過ぎたあたりで伊藤選手が後退し、5000mを13分40秒(2分44秒)で通過した段階では11人に、残り11周を迎える直前で清水選手が後れ始め、6000mを16分24秒(2分44秒)で通過したときにキプロノ選手に続いたのは、太田、田澤、小林歩(NTT西日本)、塩尻、相澤、菊地駿弥(中国電力)、清水、田村友佑(黒崎播磨)の8選手となりました。

次の1周で田村選手が、残り9周の周回で清水選手が、さらに残り8周に入ったところで菊地選手がふるい落とされ、6人となった7000mは19分08秒で通過していきます。この周回で4番手から最後尾へと後退していた小林選手も、7600mを過ぎたところで上位戦線から脱落し、8000m(21分51秒:2分43秒)通過時点でキプロノ選手に続いたのは太田、田澤、塩尻、相澤の4選手に。そして8200mを過ぎたところで田澤選手がペースを維持できなくなり、8400mからの周回は最後尾で粘ったものの、ここで上位陣に突き放されてしまいました。



レースが大きく動いたのは、残り3周となった8800mからの周回でした。太田選手をかわして塩尻選手が2番手に上がると、それに追随する形で相澤選手が続き、キプロノ、塩尻、相澤、太田の順で9000mを24分35秒で通過していきます。この周回を64秒にペースを上げたキプロノ選手にぴたりとつけたのは塩尻選手のみ。残り2周に入ったところで、キプロノ・塩尻選手と相澤・太田選手との差はみるみる開いていきました。塩尻選手はこの周回のバックストレートでキプロノ選手を抜いて先頭に立ち、ラスト1周となる9600mを26分09秒で通過。最後の周回を60秒でカバーする圧巻の走りを披露し、従来の自己記録(27分45秒18)を大きく更新する27分09秒80の日本新記録でフィニッシュし、6月に獲得済みの5000mに続き、2種目で2023年日本チャンピオンの座に就きました。

2位争いを制したのは太田選手です。27分12秒27の自己新記録でフィニッシュしたキプロノ選手を追う相澤選手との差を詰め、残り50mを切ったところで相澤選手を抜き去りました。太田選手の27分12秒53、そして3位となった相澤選手の27分13秒04も日本新記録。この結果、塩尻選手は今季世界リスト9位に、太田選手は14位、相澤選手は17位に浮上。オリンピック代表の即時内定は実現しませんでしたが、来季に向けて大きく躍進するレースとなりました。また、4位となった田澤選手も日本歴代4位の27分22分31をマーク。5位の小林選手が出した27分28秒13も日本歴代7位となるもので、上位7名が自己新記録。完走した23名のうち9名が自己記録を更新する好結果でした。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト


▼女子10000m優勝 廣中璃梨佳(JP日本郵政G)コメント
https://www.jaaf.or.jp/jch/107/news/article/19286/

▼男子10000m 1~3位 コメント
https://www.jaaf.or.jp/jch/107/news/article/19285/

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