Day2:8月20日(日)イブニングセッション
ブダペスト2023世界選手権の大会2日目となる8月20日のイブニングセッションは、16時35分、肌を焼く日射しと33℃という高気温、さらに発表されている44%という数値以上に強く感じられる蒸し暑さのなかで行われた男子100m準決勝から始まりました。ここで、日本チームは、午前中のセッションに続いて、素晴らしい快進撃を見せます。3組上位2着+2の進出条件のなか、1組目に登場したサニブラウンアブデルハキーム選手(東レ、ダイヤモンドアスリート修了生)が、2019年に当時日本記録として出した自己記録に並ぶ9秒97(+0.3)を叩きだして2着となり、見事着順での決勝進出を果たしたのです。2時間半ほどのインターバルをおいて、2日目の最終種目として19時10分にスタートした決勝は、惜しくも中盤で上位争いからは置いていかれる形となり10秒04(±0)でフィニッシュ。しかし、前回オレゴン大会よりも順位を1つ上げる6位入賞を果たしました。男子100mでは、ダイヤモンドアスリートの栁田大輝選手(東洋大学)も準決勝に進出。金メダルを獲得したアジア選手権でマークした10秒02の自己記録更新と決勝進出を狙いましたが、序盤で他選手にリードを奪われ、10秒14(±0)・7着でのフィニッシュとなりました。
男子100m決勝の前に行われたのが、男子10000m決勝です。このレースには、前回のオレゴン大会に続いて田澤廉選手(トヨタ自動車)が出場。前回大会から順位を5つ上げ、15位(28分25秒85)でフィニッシュしました。また、女子トラック種目では、1500mの準決勝が行われ、田中希実選手(New Balance)が出場。この種目は、今大会からラウンドの進出条件が着順のみとなったため、レースは6着入りを狙っての激しい競り合いに。田中選手は、残り700mから上位に食い込んでいくレースを目指しましたが、ラスト1周で置いていかれる形となり、12着(4分06秒71)でフィニッシュ。東京オリンピック以来となるこの種目での決勝進出は、叶いませんでした。
<8月20日:イブニングセッション競技後コメント>
◎サニブラウンアブデルハキーム(東レ) ※ダイヤモンドアスリート修了生
男子100m 準決勝1組2着 9秒97(+0.3)
=シーズンベスト、自己タイ記録、パリオリンピック参加標準記録突破、決勝進出
※決勝までの時間が短いため、ミックスゾーン対応を行わず(決勝後のコメントをご参照ください)。◎栁田大輝(東洋大学) ※ダイヤモンドアスリート
男子100m 準決勝2組7着 10秒14(±0)
悔しい気持ちが一番。いいところなしに終わってしまったかなというのが今の正直な感想である。
不正出発によるスタートのやり直しはあったが、比較的そんなに気にすることなく落ち着いていけたのかなと思うのだが、こうやって結果が出てしまうと、対応しきれていなかったのかなという気持ちがある。
気がついたらほかの選手たちに呑まれていた。後半もそうだが、前半でもっと飛びださないと戦えないかなと感じた。世界選手権になると、自分が(前半で)うまく飛びだせたと思っても、並んで飛びだせている選手がほかにいるので、そこで固くなってしまった部分もあったかもしれない。
予選のあとに言っていた通りになったし、イメージもちゃんとできていたのだが、それでも飛びだしきれなかったのは、力が足りないということ。もっと練習しなければいけない。
予選よりもタイムは上がってはいるけれど、ファイナルには全然届かないタイム。もう1段階どころか、もう2~3段階上げなければダメだったのかなという感じ。
欲を言えば、この大会で3本走って、ファイナルも経験したかったが、今の自分にはその力がなかったということ。悔しいのは悔しいが、まだリレー(4×100mリレー)も残っているので引きずってはいられない。気持ちを切り替えて、あとはリレーで自分の仕事を全うしたい。
◎田中希実(New Balance)
女子1500m 準決勝1組12着 4分06秒71
今年は、自分で支配するレースというか、レース展開をいろいろと試してきたのだが、それらは全部、自分のためのレースであったり自分が支配しているレースのなかでやっていたりと、いわば「井の中の蛙」状態のレースだった。いざ世界でやろうとしたときに、そういういろいろな引き出しを持っていても、それを出せないということを改めて体感した。
去年のオレゴンでは特に「こうしよう」というプランもなく、とにかく行っていたのだが、今回は逆に、自分がしたいことをさせてもらえなかったというところで世界の壁を感じた。気持ちの部分もあるかもしれないが、今日は技術の部分で特に劣っていたんじゃないかと思う。
やりたかったのは、ラスト1周というよりは、ラスト700mなど、世界のレースに合わせた想定で上がっていくレース。自分一人だったら気持ち良く上がれる…ペースを配分をしながらのラスト700mでも、位置取りをしながらラスト(のキック)を持っている海外の選手を相手にしたとき、自分で押しきるというよりは、ぶら下がっていく感じになってしまった。
今までチャレンジャーだったときは、ただぶら下がるだけでよかったのが、こういうレースがしたいという部分が出てきたとき、自分の実力を信じながらもちょっと自信がなくて、そこを出せるか出せないかという迷いもありながら走ってしまった面が今日は出てしまった。
レース中に何度か、自分の位置をなんとか安定させようとして、外側に出て前に出ようとしたのだが、その動きをしたとたん海外の選手もすぐに反応してきた。そこがハマらなかったというか、もう、その時点から自分の流れをつくらせてもらえないことをすごく感じた。ただ、同様な状態でも焦りを持ちながらもそれができて、着順で通っている選手もいるわけで、言い訳ができない部分でもある。そこを制する力をつけていかなければいけないなと思った。
今回、たくさんの方が応援してくださっていて、結果だけでなくてレースの中味までみて応援してくださっていることをすごく感じたレースになった。そこを結果で応えられなかったのをすごく悔しく思っている。まだ、5000mが残っていることが救いだと思って、5000mは頑張りたい。
◎田澤廉(トヨタ自動車)
男子10000m 決勝15位 28分25秒85
力不足だなと思った。後半の5000mから(ペースが)上がることを予想して、最初からそれに対応できるようにレースを動かし、(ペースが)上がったときに対応しようと思っていたのだが、思ったよりも自分の体感がめちゃくちゃ早く上がった(苦しくなった)というのがあるし、接触があったときにちょうど動いてしまって、対応できなかったという場面がレースのなかであった。ただ、最初のほうは、思うようにレース展開を運ぶことができたので、昨年(のオレゴン世界選手権)よりはしっかり戦ったといえるレースをしたのではないかと思う。
きつくなったのは、7500mあたりから。そこで一気に急に上がってきつくなってしまった。最初のほうはペースの上げ下げにも対応できていた。ペースの上げ下げについては、昨年もあったので、1年かけてその上げ下げに対応する練習はやってきていたのだが、後半では、自分がやっていたタイムよりも振り幅が大きくなり、それで対応できなくなってしまった。今後は振り幅の大きなレース変化の練習もやる必要があるなと思った。
それでも、昨年よりは戦えたので、来年、パリ(オリンピック)で結果を残せる選手になりたい。これから大八木弘明監督ともう1年間努力して、パリの舞台をつかむようにしたい。
◎サニブラウンアブデルハキーム(東レ) ※ダイヤモンドアスリート修了生
男子100m 決勝6位 10秒04(±0)
めちゃくちゃ悔しい。走りもダメダメだったと思う。準決(勝)のように前半からつくっていければ、もっと集団と一緒に40~60(m)を抜けていけたはず。そこがしっかりできないと離されて終わりなので、こういうところでしっかり揃えてくる人たちがメダルを取るし、勝つんだなということをまた、今年も再確認した感じである。
<前に出られて力んだのか? との問いに> 力んだというよりはレースプラン通りに組み立てられなかった。60(m)を抜けてくるところで、すーっとしっかりストライドを刻んでいくことができなかったいうのがある。こういう大舞台で、練習でやっていることを、いかに出せるかというのがカギになってくるので。
そういう意味では、(9秒97で2着となった)準決勝は、一応、コーチから指摘された点はあったが、大まかなレース全体をみたら自分的には満足する走りができた。コーチに指摘されたのは、40~60(m)で抜けてくるところで、身体がいきなり立ってしまったために、そこで足がフラットになり失速してしまった部分があったということ。それは常々練習でも言われているところなのだが、そこですーっと上がってきて、もっともっと重心の高い位置で走っていければ、(メダルを取った)あの選手たちみたいに、60(m)からほかの選手たちと離れるような感じで抜けていくことができるのだと思う。ちゃんとしっかりレースを組み立てて、そこで抜けてくることができるようになれば、(9秒)9前半、(9秒)8(秒)は出ると思う。
準決勝は、どちらにしても9秒台を出さないと抜けられないと思っていたので、出てよかったという感じ。<準決勝で9秒台を出して、着順で通過したことについて、の感想を問われ>(決勝の順位も1つ上がったし)まあ、去年よりは1ステップ上がったかなと思う。
<悔しさを、去年の悔しさと比べると、どう感じるか、の問いに> 今年のほうが悔しい。それは調子が去年よりよかったというのもあるが、去年は満身創痍の状態で決勝に挑んで、メンタルもそうだし、身体もうまくリセットできない状態で挑んでいた。今年は去年よりも時間があり、コンディションも悪くなかったので、そのなかで最大の結果、パフォーマンスができなかったのが一番悔しい。身体自体も動いていたし、痛いところもなかったし、本当に練習通りの走りをやるだけだったと思うので。
<参加標準記録(準決勝で)も突破してパリオリンピックに向けての思いは? の問いに> そうですね、そういえば切っていますね。まあ、どうだろうな。とりあえずは今シーズンケガせずに終わるのが一番かなと思う。
<2大会連続で決勝に進んだことを、どう感じているか、の問いに> もちろん自信にもなるし、どういう流れでもっていけばいいのかもわかる。あとは自分がどれだけこの舞台でできるのかが再確認できたので、経験として、この先、ものすごく生きてくると思う。
<メダルへの距離感は? の問いに> まあ、1位ずつ近づいているので、そのうち取ろうと思う(笑)。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
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