8月19日開幕のブダペスト2023世界陸上競技選手権大会に出場が決まっている男女競歩日本代表選手のうち、山西利和(愛知製鋼)、池田向希(旭化成)、高橋英輝(富士通)、古賀友太(大塚製薬)、野田明宏(自衛隊体育学校)、丸尾知司(愛知製鋼)、藤井菜々子(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)、岡田久美子(富士通)の8選手が、現在、北海道千歳市で行っている合同強化合宿に参加しています。
8月1日には、メディアに向けて練習を公開。トレーニング後に、各社の合同取材に応じました。各選手のコメント(要旨)は、以下の通りです。
【男子20km競歩】
◎山西利和(愛知製鋼)
この合宿が終われば、いよいよ出国なので、(本番が)迫ってきたなという思いがある。また、練習も大詰めの調整となってきた。(選手ごとに)練習の流れは違うが、それぞれが目標に向かって取り組むことができていると思う。
<山西選手自身の気合いのバロメータは? の問いに>
だいぶ上がってきていて、あとはもうひと押しというか、もうひとピースかなと思っている。(残すところは)最後の「勝ちたいな」という思いがどれだけ高まっていくかという部分。そこは、レースまでの残り2~3週間で、自分自身と会話しながら、少し深掘りしていきたい。
<これまでの取材場面でコメントしてきた「勝ちきる」を実現するためのプランは? の問いに>
やはり後半といえる。各世界選手権、オリンピックすべてで後半の10km勝負となっている。そこは去年(のオレゴン大会)と変わらずに、後半の(レースの)作り方に、今年1年やってきたことやこれまでの経験など、いろいろなことを出せたらと思う。
レース自体は、前半はいつも通り、(1km)4分ちょっとあたりのペースで進んでいくことになると思う。あとは後半のペースを誰が握っていくかというところと、そのなかで自分がどんな立ち回りをしていくかになると思う。
<過去2回優勝したときの自身と現在の自身のとの違いを敢えて言うなら? の問いに>
いろいろなものをひと通り経験させていただいたということは一つの大きな違いだと思う。そのうえで、この(ブダペスト世界選手権での)レースに何を求めるかだと思うので。そこで求めるものというのは僕の感じ方一つなので答えるのは難しいが、あくまで僕という一人の選手が、地道に泥臭く積み上げてきたことが形になればいいなと思っている。自分自身にとっても新しい何かが見えたらいいなと思うし、自分の想定を超えていくような、そういうことがあったらいいなと思う。
今回も金メダルを取れるように、優勝できるように頑張りたい。それが3連覇であるとか、見ている方に何か伝わるレースになればと思う。そうなるように頑張りたい。
◎池田向希(旭化成)
(世界選手権レース当日まで)「まだ」18日という感じ。今は落ち着いてこれまで通りの練習をしていて、通過点のような形で取り組めている。このあと(8月)10日に出国し、来年のオリンピックの視察も兼ねてパリでの事前合宿に行かせていただき、15日にブダペストに入ることになっているので、ブダペストに入るくらいまでは、落ち着いていられるのかなと思う。今は、気持ちの波も普段の合宿と変わりなく、練習も生活も送っている。
2月の日本選手権後は、十分に時間があったので、一回しっかり休んで、土台つくりから始めた。距離をしっかり踏むことと、あとは歩型をもう一度見直して、改善・改良を繰り返すようなトレーニングをやってきた。大きな故障や病気もなく、比較的順調に継続した練習をすることができている。
今回は、これまでよりもいっそう歩型に関しては自信を持って臨めるのではないかと思っている。日本選手権でのノージャッジで歩ききることができたし、そこからさらに改善・改良を繰り返してきて、「よりよいものを」ということを常に意識してつくってきたので。そういった意味では、レース中にどういう変動があったり揺さぶりがあったりしても、歩型を崩さないということができるのではないかと思っている。
<金メダリストの山西選手の仕上がりをどう見ているか? 勝つための一手は? の問いに>
例年通り、(山西選手は)しっかりと(ピークを)合わせてくるんじゃないかなと思っている。私も負けじと(8月)19日に合わせたい。まずはベストコンディションでレース当日を迎えられるよう、準備の段階でミスなくこなすことが絶対条件となる。当日までの残り18日を大事にしたいなと思う。また、レースになってしまえば、あとはしっかり自分のレースをするだけ。自分のやってきたことを信じて戦いたい。
来年、パリオリンピックがあるということで、今回の世界選手権は、日本だけでなく、ほかの国々も大事な大会にしていると思う。レベルの高いレースになると思うので、だからこそ気負わずに平常心を保って、普段通りのレースをしたい。レース当日にピーキングを持ってこられるのは自分の一つの強みかなと思っているので、自信を持って当日に臨み、金メダル獲得を目標に頑張りたい。
◎高橋英輝(富士通)
大会まで18日となったが、ここまでは、まずまず順調に来ている。去年は、ケガもあって、(例年、事前合宿で行っている)この記者会見も苦しい気持ちで臨んでいたのだが、今回は練習もできているぶん、少しリラックスして臨むことができている。
世界陸上への出場は、これで5回目となる。私個人としては、もうそろそろ競技も集大成だなと感じていることもあって、1回1回の合宿が感慨深いし、気持ちが引き締まる思いがある。また、今、一緒に競技している人たちとの練習や生活がすごく大事に感じていて、そこでの時間を大切にしたいという気持ちで頑張っている。
ここまで重視して取り組んできたのは、コンディショニングとフォームの部分。私は夏場に自分の力を発揮することを課題としていて、成功への一番のポイントになると思っているので、そこに留意しながら調整してきた。また、国内でも国外でも、勝負所で注意や警告が出てポジションを下げることが多いので、その部分をなんとか今回の世界陸上で克服していけたらと思っている。
(本番での)目標は2つあって、1つは入賞ラインでしっかりレースを進めて8番以内でゴールすること。あとは、これまでなかなか笑顔でゴールできていないので、しっかり笑顔でゴールするということを目指している。
<パリオリンピックに向けてという意味で世界選手権をどう考えているかの問いに>
来年(のパリオリンピック)に向けても、競歩はこの(世界選手権の)レースが最初の選考会となる。自分がそれを狙えるポジションにいられるかはちょっと厳しいかなとも思っているが、オリンピックを狙う以上、しっかりチャレンジしていきたいなと思う。ただ、私にとっては、この世界陸上自体がとっても大切な国際大会。パリのことは考えずに、しっかりチャレンジしていきたい。
◎古賀友太(大塚製薬)
初の(世界選手権)日本代表ということで、緊張する思いやプレッシャーもあるが、それ以上に自分の力がどこまで通用するかとか、ワクワクする気持ちや楽しみに思う気持ちにほうが大きい。
日本の代表選手は、世界陸上やオリンピックでメダル獲得や入賞をされている方たちばかり。身近なところに大きな目標があるのはありがたいことだなと思うし、私自身も続いていきたいと思っている。また、一緒に練習していくなかで、自分のあらが明確になった面もあるので、練習環境という意味でもありがたいなと思う。メダルや入賞に絡んでいけるよう、残りの期間も、しっかりと準備していきたい。
(代表に決まってからは)6月にスペインのラコルーニャで大会があったが、歩型に課題を残すことになった(1時間24分49・29位)ので、以降は、その解決に取り組んだ。コーチやほかのスタッフの方々とも話し合い、より低い足の運び方とかさばき方といったところを重点的にやってきた。練習から、その都度アドバイスをもらい確認するという反復作業を行い、ここまでは順調に積めてきている。課題が解決しつつあるという実感はある。
世界陸上は世界のトップ選手が集まる場所。そういう陸上の最高峰の大会で競い合えることをずっと目標にしてきた。まだスタートラインに着こうという段階ではあるが、勝負を楽しめるような、ワクワクしながらゴールできるような展開にもっていけるようにしたい。
【男子35km競歩】
◎野田明宏(自衛隊体育学校)
(日本新記録で優勝を果たした)輪島が終わってからは、若干体調を崩すこともあったが、いい休養だと思って過ごし、その後は、良い練習ができた。夏場に入った段階で少し(暑さで)へばった時期もあったが、北海道に来てからは良い環境でトレーニングでき、調子も戻ってきている。いい準備ができているという自信はある。
輪島の前の段階で、土台の部分はしっかりつくっていたので、それにプラスして、歩型の技術的なところなどをさらに突き詰めていっている状況。練習に関してはコーチを信じているので、自分としては(コーチの出す)練習メニューを、いい歩型でしっかりと取り組んでいくということを輪島の前と変わらずにずっと継続している。代表に決まってから特に何かをやったということはなく、やるべきことをしっかりやってきたという形である。
過去に出場した2大会は、途中棄権(2019年ロンドン大会:50km競歩)と9位(2022年オレゴン大会)。特に昨年に関しては、あと数秒で入賞というところだったので、とても悔しい思いをした。“三度目の正直”ではないが、今度こそ結果を出したい。輪島で出したタイム(2時間23分13秒、2023年世界リスト2位)的にも、メダル争いが見えてくると思っているし、しっかり準備もできている。入賞といわずメダル獲得を目標に、残りの期間を体調不良やケガなく取り組んでいけるようにしたい。
メダル獲得に向けて必要になってくるのはレース展開。昨年(のオレゴン大会で)は全然ついていけなかったので、その反省を生かし、しっかり先頭集団で勝負をしながら集団のなかでレースを見極め、冷静に判断しながら進めていきたい。最終的にはラスト勝負になってくると思う。そこで落ち着いて周りを見ながら勝負できればと思う。
◎丸尾知司(愛知製鋼)
この合宿に参加するのは久しぶりでいろいろなことを懐かしく感じている。ホテルに着いたとき、ホテルの方からも「久しぶり」と言っていただけたので嬉しかった。去年は(オレゴン大会に)出られない時間が非常に辛かったのだが、その間、いろいろな方に支えていただいた。「必ず帰ってくる」と思っていたので、今は、支えていただいた方々と一緒に帰ってきたような気持ち。ここまで来ることができたのは、普段から応援してくださっている会社の方々の支えが大きい。結果が良くても悪くても変わらず、むしろ悪いときのほうが応援していただけるような、すごく温かい会社。家族はもちろんだが、そういった方々の支えがあってのことだと思っている。
<気合いのバロメータはどのくらい上がっているか? の問いに>
気合いはもう120%で、昂ぶりは非常にある。厳しいレースになるとは思うが、35kmに出る全員の選手と協力しながら、全員いい結果で帰ってきたい。私の強みは、粘り強さだと思っているので、最後まで諦めずに目標に向かっていく姿を見ていただけたらと思っている。
世界選手権は2017年(のロンドン大会50kmで4位)に入賞して以来となる。同じヨーロッパでの開催だし、イメージはすごく良い。ロンドン大会で一緒に出場した荒井(広宙)さんと小林(海)くんはいないが、全員が入賞したあのときのように、自分が最年長となって臨む今回も、全員、笑顔で帰ってきたい。
35kmでの出場は初めてとなるが、去年のレースをみていると、50kmのレースとは全く違っていて、前半のペースの速いところを、いかに楽な動きで歩けるかがカギになってくると思っている。そのあたりを(大会までの)残り期間でさらに極めながら、後半に力を残すイメージでレースを進めることができたらと考えている。
世界陸上では、ロンドンのとき後半にぐっとペースが上がってきたいい思い出がある。後半にかけて身体がよく動いてきて、しっかり順位を上げていけるレース展開になればと思う。自分は4位が最高成績なので、メダルをターゲットにしながら入賞圏内を歩いていきたい。最後は笑顔でゴールできるように…そんな余裕はないかもしれないが(笑)、頑張りたい。
【女子20km競歩】
◎藤井菜々子(エディオン) ※ダイヤモンドアスリート修了生
ブダペスト世界選手権に向けては、昨年度こなせなかった練習なども入れ、前回大会とは違う練習内容を積んできた。(2月の日本選手権以降は)5月くらいまで持久力をしっかり向上させる練習…20kmや25kmといった長い距離を中心とした練習を行い、そこからスピードを中心とする練習に切り替えた。去年は、長い距離を中心とした練習をする期間が短かったので、それを2~3カ月多めにとったうえで、スピードを中心とした練習に変えている。
今までは距離に不安を覚える部分があったのだが、25kmとかを踏んだことで距離への不安のなくなったし、トップスピードも楽に出せるようになっている。そういう出力的な面では、すごく自信のある状態となっている。
ここまで(2019年ドーハ大会)7位、(2022年オレゴン大会)6位ときたので、順番的には次は5位という形になる(笑)が、少しでもメダルに近い順位を意識している。また、少しでもトップ集団についていくこと、そして今回は記録も狙っていきたいと思っているので、まずはそこを目標に歩きたい。順位としては6位以上、タイムは1時間28分30秒。まずはそこをクリアして、パリ(オリンピック)につなげていきたい。
記録としては、1時間27分台…日本記録(1時間27分41秒、岡田久美子、2019年)に迫るところを目指せれば…。今回は気温も低いと思うので、そのレベルでないと戦えない。高速レースに備えたい。
【女子35km競歩】
◎岡田久美子(富士通)
7月に入ってからここまで、とても順調に練習を積むことができている。6月は自分のなかに焦りとかがあって少し失敗した部分もあったのだが、そこからうまく立て直すことができ、7月はすごく充実した1カ月を過ごすことができた。初めての20km以上の距離、しかも暑いなかでのレースで、ワクワクしつつも心配もある。そうしたいろいろな気持ちを抱きながら、本番に向かって、今練習を継続しているところである。
現在の練習では、(1km)4分20秒とかのスピード練習はほとんどやっておらず、だいたい4分40~45秒、4分35秒のペース感覚を研ぎ澄ますような練習をしている。また、20kmを中心としてやっていたときよりは、25kmとか30kmとか、そういった長い距離にも挑戦してきた。距離に対しては、4月の輪島の段階で少し不安がありながらのレースだったのだが、そこで成功することができたので、その経験を成功と捉えて、しっかりと距離を踏んできた。本番は大きな心配なく向かうことができると思っている。
<自分のなかで合格点が出せる結果やタイムは? との問いに>
合格点が出せる順位というのは8位以内。入賞することが一つターゲットになってくる。また、2019年(ドーハ大会20km)に初めて入賞したわけだが、そこが6番だったので、できれば6番より上の順位を目指して歩ききりたい。
今回、女子35kmは(フルエントリーとなる)3人で出場する。まずは大ベテランの渕瀬さん(真寿美、建装工業)がいらっしゃるし、また、輪島で最後まで競り合った勢いのある園田さん(世玲奈、NTN)もいる。3人で力を合わせたい。レース展開などについて、まだ話し合ってはいないが、現地に入ってから意見を出し合ったり、体調を確認したりしながら、本番に向かって高め合っていければと思う。
※コメントは、代表合同取材における各氏の発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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