2023.06.06(火)選手

【日本選手権混成 展望】十種:「キング」の座は8000点超えか!?/七種:大玉初戴冠なるか!?



第107回日本選手権混成競技は6月10~11日、昨年に続き、秋田県営陸上競技場において開催される。今年は、8月にハンガリーのブダペストで開催される世界選手権、そして来年のパリオリンピック出場に向けて大きな影響力を持つアジア選手権(7月、タイ・バンコク)、アジア大会(9月、中国・杭州)の日本代表選手選考競技会も兼ねている。
ブダペスト世界選手権の参加標準記録は、前回のオレゴン大会時より上がって、男子十種競技が8460点、女子七種競技は6480点と、どちらも日本記録(十種競技:8308点、七種競技:5975点)を大きく上回る。現状で、男女ともに突破者は不在で、WAワールドランキングにおいて、他種目に比べると狭き門であるターゲットナンバー「24」内に入るのも、かなり厳しい状況だ。男女ともに、まずは、いかに日本記録に近づき、これを上回っていくか。そして、来年のパリオリンピックの資格獲得有効期間がスタートしてから行われるアジア選手権、アジア大会の代表入りを目指して戦っていくことになる。
陸上人気の高いヨーロッパでは、勝者を「キング・オブ・アスリート」「クイーン・オブ・アスリート」と畏敬の念を持って称えるなど、古くから絶大な人気を誇る種目。2023年日本チャンピオンの座を競う両種目の注目選手を紹介しよう。

※情報や記録・競技会等の結果は、6月5日時点の情報で構成。


【男子十種競技】

奥田 vs. 丸山、8000点台での対決なるか?

ベテラン中村は、最後の日本選手権


写真:フォート・キシモト

両者が万全であるのなら、奥田啓祐(第一学院高教)と丸山優真(住友電工)による8000点を巡る攻防が見られるかもしれない。

前回覇者の奥田は、昨年、初の日本タイトルを手にすると、秋には日本人3人目の8000点台突入となる8008点をマーク、この記録で2023年日本リストの1位を占めた。十種競技を東海大に入ってから始めた選手で、日本選手権の初出場は大学4年の2018年。このときは7472点で4位に入賞している。得意種目が多い前半を好位置で折り返しながらも、安定感を欠く2日目の結果で順位を落とすことが課題だったが、社会人3年目の2021年に自己記録を7768点まで更新して2位となり、日本歴代1・2位を占める右代啓祐(国士舘クラブ)・中村明彦(スズキ)の「ビッグ2」に迫る若手の1人として認知されるように。昨年、待望の初優勝を達成した。

一方、高校時代から八種競技(6214点=高校記録)で突出した力を示していた丸山は、2017年にU20日本選手権の部で、7790 点のU20日本記録を樹立して優勝を果たし、次代のエース候補として広く注目される存在となった。ケガなどの影響で足踏みする期間があったものの、昨年5月に7807点をマークし、日本歴代5位(当時、現在6位)まで浮上、8000点突入目前と期待されるところまで来ていた。しかし、その木南記念の砲丸投で負ったケガが災いして、前回の日本選手権は出場を見送り、治療に専念する決断を下している。日本選手権のタイトル、8000点突入ともに、奥田が達成する形となっていたが、2人揃って代表入りを果たした2月のアジア室内(七種競技)では、丸山が金メダル、奥田が銀メダルと、チームジャパンが上位を独占。今季屋外シーズンでの2人の激突が注目されていた。

今季に入ってからは、奥田は昨年発症した疲労骨折の回復段階にあったために、また、丸山は日本選手権にピークを合わせたトレーニングを積むために、両者とも日本グランプリシリーズ(木南記念)は出場せず、日本選手権で十種競技の初戦を迎える流れを選択している。奥田については、足の回復状況次第といったところで、パリオリンピック、東京世界選手権と、重要大会が続く来年以降のことも見据えながらの対応となりそう。丸山は、日本選手権に向けて計画通りに進行中。今季は、まずアジア選手権を8000点台で優勝することをターゲットとしているため、その代表切符を確実に手に入れるためにも、日本選手権には万全の状態で挑んでくるはずだ。


写真:アフロスポーツ

この2人を追うのが田上駿(陸上物語)。奥田・丸山が不在となった木南記念は、2日目が悪天候となったなか、セカンドベストの7674点で制している。自己記録の7764点は順天堂大大学院2年時の2021年にマークしたもの。この記録を大きく上回っていく準備はできている。前回、自己最高位となる2位で競技を終えた片山和也(烏城塗装工業)は、社会人3年目の2020年に大きく記録を伸ばしてきた選手。同年の日本選手権で7603点の自己記録をマークした(4位)。昨年はセカンドベストの7590点を出している。今季は、木南記念に出場したものの、故障の影響もあって精彩を欠いた。そこからどこまで立て直してきているか。ともにアジア選手権の代表入りを目指すのであれば、7800点台に乗せることは必須となるだろう。


写真:アフロスポーツ

長きにわたって、「キング」の座を巡って激しく競い合ってきた日本記録保持者の右代啓祐(国士舘クラブ、8308点、2014年)と、日本歴代2位(8180点、2016年)の中村明彦(スズキ)も、エントリーしている。ただし、中村は5月中旬の段階で、今季をもって現役を退くことを発表しているため、この2人が一緒に競い合う姿を見るのは、今年が最後となる。

順調に冬のトレーニングを積めていたという中村だが、3月末に発症したアキレス腱周囲炎の影響で、5月の木南記念は直前で欠場した。引退を発表した5月中旬ごろからは、自身のSNSで、最後の日本選手権に向けての練習ができるようになってきている様子を報告している。秋田では、得意種目として数々の名場面を残してきた最終種目の1500mまでの姿を、しっかりと胸に刻みたい。

右代は、3月から記録会などで複数の種目で“試運転”ののち、木南記念でシーズンイン。得意とする2日目が悪天候となった不運もあって得点を重ねていくことが難しく、田上に次いで2位となったものの、記録は7112点に留まった。投てきを中心とするパワー系の種目では力を発揮できているだけに、スプリント系種目の調子をどこまで上げていけるかが鍵となる。1986年生まれで、7月には37歳となる右代。エントリーリストを見ると、ひと回り以上の年齢差となる選手も年々増えている。1つ1つの種目に向かう集中力や気迫、パフォーマンスに対する(良い意味での)執着心は、全く衰えを感じさせない。若い選手たちには、それを肌で学ぶ貴重な時間にもなるはずだ。


【女子七種競技】

山﨑、2年ぶり5回目のタイトル獲得へ

初優勝期す大玉にも注目


写真:アフロスポーツ

女子七種競技は、5975点の日本記録(2021年)を持つ山﨑有紀(スズキ)と、5907点(2017年、日本歴代3位)の自己記録を持つヘンプヒル恵(アトレ)による日本人女子初の6000点を超えるレベルでの勝負が期待されていたが、少し様相が変わってきている。

昨年は、手術を要する両膝の大きなケガを克服したヘンプヒルが、5年ぶりに日本タイトルを奪還するとともに、5872点をマークして日本リスト1位の座も占め、完全復活を印象づける1年となった。オフシーズンも、トレーニング拠点を置くアメリカで順調に強化を進めていたが、仕上げの時期に脚に痛みが出たことで、今季は5月の木南記念を欠場。日本選手権に向けて合わせてくるものとみられていたが、残念ながら直前でエントリーを断念している。

逆に、昨年は故障の不安を抱えながらのシーズンインとなった山﨑は、日本選手権はヘンプヒルに5連覇を阻まれる形となったが、その後は順調に推移してきた。8月にはシーズンベストの5807点をマークした。今年に入ってからは、2月に五種競技で実施されるアジア室内に出場して4078点の日本新記録を樹立して銅メダルを獲得。屋外では3月から七種競技に出場して5358点でシーズンイン。2日目が悪天候となった木南記念も5683点で制している。アクシデントがなければ、2年ぶり5回目の栄冠を手にする可能性は高い。木南記念で1m58、5m63に留まった走高跳と走幅跳が本調子まで戻ってくるようだと、5800~5900点が見えてくる。


写真:アフロスポーツ

山﨑のV奪還を阻めるとしたら、大玉華鈴(日体大SMG)となるだろう。日本体育大4年時の2021年に日本歴代7位となる5633点の自己記録を出している選手。日本選手権では、2019年に初入賞(4位)を果たしてから、2位・2位・3位。そろそろ「金のライオン」(日本選手権のメダルには、ライオンの顔を模したデザインが彫り込まれている)を手にしたいはずだ。今季は、木南記念で、得意の前半を1日目の日本最高となる3505点の高得点で折り返しながら、2日目最初の走幅跳で3回ファウルして記録なしに終わる大失敗。しかし、その後も競技を続行し、6種目で4972点(7位)を獲得している。自己記録はもちろん、5800点を上回っていく点数を獲得できる力はついている。得意種目の走高跳でしっかりと得点を獲得し、「まさか」というミスを出さないよう高い集中力をキープできるかが課題といえる。U20年代では、2018年アジアジュニア選手権の日本代表に選出されて金メダルを獲得している。山﨑とともに、シニアでもアジア選手権への出場を狙いたい。

このほかでは、日本学生個人選手権で学生歴代7位に浮上する5545点をマークして優勝し、8月に行われるワールドユニバーシティゲームズ(WUG)の日本代表に内定している田中友梨(至学館大)が、どんなパフォーマンスを見せるかも興味深い。田中は木南記念にも出場し、5424点で山﨑に続いて2位と、安定した力を印象づけた。ただし、3~5月の間に4試合に出場している点、4戦目の東海インカレが走幅跳記録なし、800mはフィニッシュせずという結果(3691点)に終わっている点がやや懸念材料。WUGに向けて弾みのつく結果にしたい。また、昨年急成長を遂げ、日本選手権で4位の成績を残した熱田心(岡山陸協、5517点)が、得意のスプリントで、どこまで上位を脅かすかにも注目だ。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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