2023.04.06(木)大会

【アジア室内コメント】女子走幅跳金メダル 秦澄美鈴:海外転戦での収穫を糧に日本記録更新・世界陸上ファイナリストを目指す!

2023年2月10日(金)から2023年2月12日(日)にかけて「アスタナ2023アジア室内陸上競技選手権大会」がアスタナ(カザフスタン)にて開催されました。
女子走幅跳で室内日本記録を更新し金メダルを獲得した秦澄美鈴選手(シバタ工業)のインタビューをお届けいたします。


秦澄美鈴(シバタ工業)

女子走幅跳 金メダル 6m64=室内日本新記録

写真:カザフスタン陸上競技連盟


アジア室内は、「もうちょっと行けたかな」という気持ち

アジア室内は、日本を出発する前の段階では、練習はできていたものの、実はあまり体調が良くなかったんです。調子が上向いてきたのは、開催地のアスタナ(カザフスタン)に入ってから。どんどん良くなってきて、「これは、記録が狙えるな」と思えるくらいまで上がってきました。
「調子が良すぎて、自信しかない」という状態で臨むことができた当日は、1回目から室内の自己記録(6m53、2022年)に近い6m51の跳躍ができ、3回目には6m54の自己新をマーク。4回目には6m62を跳んで室内日本記録(6m57、花岡麻帆、2003年)を更新と、良い流れで試合を進めていくことができました。ただ、大会前に現地で練習していたとき、すごくハマった踏み切りができ、「これが試合でできれば、(6m)60台といわず、(6m)70も行ける」という感覚を得ていたんですね。それもあって最後の6回目は、「(6m)60台で終わるのはもったいない。(6m)70台を出してやろう」という気持ちで跳びました。
その6回目は6m64。室内日本記録をさらに塗り替えての金メダル獲得となりました。私、これまでの試合で6m60台を跳んだときは、「うまく行った!」と思うことが多かったのですが、この試合では全体を通して、「跳んだ!」という感覚を持った跳躍が1本もなかったんです。6回目も記録は伸びたけれど、「あまり(距離が)行かなかったな」という感じ。(会場にいた)みんなが喜んでいたので、「あ、記録、伸びたんだ」と思いましたね。なので、アジアレベルの大会で金メダルを獲得することはできたけれど、パフォーマンスとしては、「うーん、もうちょっと行けたな」という思いのほうが強いです。ただ、練習で良い感覚を得たことは、大きな収穫になりました。


バンコクとブリスベンでの2戦を終えて


写真:カザフスタン陸上競技連盟

アジア室内のあとは、2月はタイで、3月はオーストラリアで屋外の試合に出場しています。タイの試合は6m47(-0.5)で2位、オーストラリアでは6m48(+1.3)で3位という結果でした。
タイで出場したのは「ゴールデン・フライ・シリーズ・バンコク2023」という競技会。バンコク市の中心で、王宮や有名な寺院もすぐ近くにあるサオ・チンチャーという観光名所にモバイルトラックを設置して行う大会です。そのことを全く知らずに会場に行き、「今、跳躍ピットを建設中だよ」と言われ、「あ、そういうタイプの試合なんだ」と初めて知りました。こうしたストリート陸上に出場するのは初めてでしたが、すごく楽しかったですね。
その後、一度日本に戻ってから、オーストラリアへ。3月25日のブリスベン・トラック・クラシックに今年最初のピークを合わせる計画を立てていて、そこに向けてオーストラリアで長めの合宿を張り、暖かい場所でトレーニングをしながら調整していく方法を採りました。オーストラリアには3月6日に入ったのですが、今年は、オーストラリアとしても珍しい残暑だったそうで、気温は毎日30℃超え。「暑い、暑い」と言いながら練習していました。
ピークを合わせて狙おうとしていたブリスベンの試合は、コンディション的には一番底の状態で迎えることになってしまいました。その理由としては、2月の海外遠征の疲労が思っていた以上に大きかったということ、あとは練習場所で使った競技場のサーフェイスがあまり得意なタイプではなく、走りの感覚が崩れてうまくコントロールできなかったことが挙げられます。前者には私の見込みの甘さがあったし、後者については、どんな競技場にも対応するのが私の仕事なので、そこも自分の力不足。今後、海外で試合をしていく機会が増えていくことを考えると、いい経験になったとは思うのですが、ピークを持ってこようと計画していたところで結果が残せなかったことには悔いが残ります。
実際に、ブリスベンの試合は、1回目をファウルで入って、2・3回目は続けて6m24という滑りだし。1本目から試行錯誤し、その後も修正を加えながら跳んではいたけれど、何をやっても良くなる兆しがなかったので、「今日は、このままで終わってしまうかも…」と思うほどでした。最後の跳躍は、開き直って何も考えずに跳んだという感じです。調子が悪かったのでリクエストしていなかった手拍子を、最後に初めてお願いして、思いきり跳んだら6m48(+1.3)に伸ばすことができました。
バンコク、ブリスベンともに6m40台。海外の試合、しかもブリスベンのような状況でも6m40後半をコンスタントに残せたことは成長した点だと思います。だけど、実は私、今年は、「どれだけ調子が悪かったとしても、6m50以上は跳ぶ」ということを、裏テーマ(笑)に掲げているんですよ。それがどちらもわずかに達成できなかったので、合格点は出せないなあという気持ち。そこに、もどかしさはありますね。


今季狙うのは日本記録更新と世界選手権決勝進出

写真:フォート・キシモト

今年は、日本記録(6m86、池田久美子、2007年)を更新して、世界選手権の決勝の舞台で戦うということを、一番大きな目標に置いています。
実現は、先ほど少し触れたアジア室内の練習でつかんだ感覚があれば、可能だと思っています。どんな感じだったか、ですか? 今まで、助走とか踏み切りの兼ね合いでうまくハマらなかった部分があったのですが、練習していたときに、割と大きく最後まで助走が走れていたなかで自分が一番踏み切りたいポジションで踏み切ることができた1本があったんです。そのときは、着地まで持っていかずに走り抜けたので、実測がどうだったとかいうわけではないのですが、今までに6m60台を出したときの踏み切りや助走スピードの感覚とは全然違っていたんですね。「これが試合でできると行ける!」と思いました。まあ、そうはいっても、実際の数字にするのが大変ではあるわけですが(笑)、その感覚が、しっかりと身体に残っている状態に今年はなっているということ。そこは本格的にシーズンを戦っていくうえでは強いかなと思っています。
筋力も確実に上がっています。ウエイトトレーニングでも、速い挙上スピードで扱える重量が以前よりも高まっていて、そういう面のベースアップもできています。今は、そこを助走の走りにつなげる作業に取り組んでいるところです。まだ、うまく行く本数が少ないので、その精度を高めていきたいと思っています。


観客が多いと力を出せるタイプ。いいジャンプをお見せしたい


写真:フォート・キシモト

このあと、国内では、地元で開催される兵庫リレーカーニバルが初戦になる予定で、そこから静岡国際セイコーゴールデングランプリ日本選手権という流れを計画しています。強い海外選手が来日するゴールデングランプリに向けて、状態を上げていくことを考えていますが、兵庫リレーカーニバルが行われるユニバー競技場は、私の好きなスタジアム。いい跳躍ができるんじゃないかなと思うし、セイコーゴールデングランプリで、日本記録に届けばいいなと思っています。そうすれば、ブダペスト世界選手権の参加標準記録(6m85)を突破した状態で、日本選手権を迎えられるので。
日本記録を狙うとともに、先ほど話した裏テーマの「どんな条件でも6m50以上」にもこだわりたいですね。ここに目標を1つ置いておくと、合格点を出せる試合の数が増えて、気持ちとしても成長を実感できて、盛り上げていくことができますから。あとは、試合当日「良い天候に恵まれて、いい追い風が吹いてくれー!」と思いますね。
また、今年は、コロナ禍による制限が解除されていくなかで、以前のように、多くの方に会場へ足を運んでいただけるようになっています。私は、お客さんがたくさんいると、それがすごく力になるタイプ。多くの人から見られているなかで跳躍するのが好きで、そのほうが力を出せるんです。いいジャンプをお見せしたいと思っているので、ぜひ、たくさんの方にピットの近くで応援していただけたら嬉しいです。競技場でお待ちしています!(談)


取材・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)


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【2023年シーズン開幕!】秦選手出場予定

日本グランプリシリーズ】兵庫リレーカーニバル 4月23日開催!


「オレゴン2022世界陸上競技選手権大会」日本代表の 秦澄美鈴(シバタ工業)、田中希実(New Balance)、卜部蘭(積水化学)、青木涼真(Honda)、西山雄介(トヨタ自動車)計5名がエントリー。当日はライブ配信も予定しておりますので、是非会場やライブ配信から、応援をよろしくお願いいたします。


セイコーGGP】5月21日(日)横浜で開催!


セイコーゴールデングランプリ陸上」は、2011年から始まり今年で12回目を迎えます。
今大会は、初開催となる「日産スタジアム」を舞台に世界のトップアスリートが集結し、熱い戦いを繰り広げます。熱い戦いに是非ご注目ください!


日本選手権】6月1日(木)~4日(日)大阪で開催!

日本の王者が決まる日本選手権。本大会は「オレゴン2023世界陸上競技選手権大会」「バンコク2023アジア陸上競技選手権大会」「杭州2022アジア競技大会」の日本代表選手選考競技会を兼ねており、王者誕生と同時に頂点の先にある「世界」への挑戦が始まります。チケット先行販売は4月10日(月)11時よりスタート!

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