2023.04.04(火)選手

【ダイヤモンドアスリート】金融経済教育研修レポート②:お金の知識とお金の増やし方について



第9期ダイヤモンドアスリートを対象とするリーダーシッププログラムは、は、昨年12月にスタートして以降、この冬、定期的に実施されてきました。2月末には、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて、久しぶりに対面式での研修も実現しています。3月13日と23日には、今期から初めて導入され、全3回で展開した金融経済教育の2・3回目の研修がオンラインで開催。10回にわたって行われたリーダーシッププログラムの全日程を終えました。

金融経済教育研修は、第9期から新たにサポート企業として参画したSMBC日興証券株式会社によるバックアップのもと実施されたプログラムです。2・3回目も、2月末に対面式で実施された1回目の研修に続いて、SMBC日興証券の経営企画部サステナビリティ推進室に所属する川西麻美さんが講師を担当。「現役時代から引退後までの“ライフプラン”を描く」という研修全体のテーマに沿って、ファーストキャリアである競技人生から引退後のセカンドキャリアの描き方を、“お金”という観点で着目した際に、基礎的な知識として備えておきたい金融経済に関する事柄や情報が、さらに詳しく紹介されました。


第2回研修:お金の知識を身につける

3月13日に行われた2回目の研修では、まず、「ライフプランを考える」というタイトルのもと説明が行われた1回目の内容( https://www.jaaf.or.jp/news/article/17617/ )を、川西さんが振り返っていくところからスタート。ダイヤモンドアスリートたちは、今後、競技活動に取り組みながら社会に出て、自身で収入を得て、生活していくようになったときに直面する可能性がある出来事や必要となってくるお金に関する知識や考え方(収入と支出のバランスを考えたり管理したりすることの大切さ、トップアスリートとして大きな収入を得ることによって見舞われる恐れのあるトラブルの例、陸上選手としての社会に出たときの収入の得方、引退後のキャリアや人生において必要となる資金について)など、前回の研修で学んだことを再確認しました。



そのうえでダイヤモンドアスリートたちが取り組んだのが、実際に、自身のライフプランを描いてみることです。現在から50歳までという設定のもと、まず、「人生の目標や夢」「競技者としての目標や引退後のキャリア」「配偶者や子どもを持つか否か、子どもの教育方針、住宅や車の購入についてなど、プライベート面でのプラン」などをざっくりと書きだしたうえで、それらを1年ごとに一覧できるライフプラン表に落とし込み、その時々に動くと思われる“お金”を予測。収入、支出、貯蓄に分けて書き込んでいくワークに挑戦しました。

互いに様子を見たり相談したりすることができない状態で、自身の将来についてイメージを膨らませ、具体的な金額を予想して記入していく作業は意外と難しかったようで、ダイヤモンドアスリートたちの手も止まりがちに。作業の途中に川西さんからヒントとして示された「住宅購入資金」「結婚資金」「車の購入資金」など一般的な平均金額や、室伏由佳ダイヤモンドアスリートプロジェクトマネージャーからの「選手時代の試合は、目標とする大きな競技会から逆算して、どういう大会を目指していくかを考えていた」「会社員時代にかかる経費は、私はこういう感じだったが、どこに所属して、どんなサポートをいただけるかで、ずいぶん変わってくる」「どこを拠点に活動するかによっても金額は変わってくる。競技成績の見込みも含めながら考えるとよいのでは?」といったアドバイスを参考に、作業を進めていきました。

時間的な制限もあり、完成させるまでには至りませんでしたが、川西さんは、「まず“書きだしてみる”ことが、とても大事」とアドバイス。「“どの年齢でいくら必要になるのか”“この年齢の部分をもう少し書き込んでみよう”と考えながらライフプラン表を埋めていくことで、頭のなかが整理され、お金についての漠然とした不安が減る」と述べ、「毎年書いてみるようにするとよい」と促しました。

その後、「引退後の生活は、だいたい50~60年。つまり、競技者として過ごすファーストキャリアよりも、セカンドキャリアのほうが断然長くなるということ。そこを見据えたライフプランや資産運用を、今から意識しておこう」と、川西さんの説明は、引退後の生活で必要となってくる金融経済に関する事柄へと移っていきました。
まず、

・必要な資金を得るためには、「働く」「貯蓄する」「投資する」「借り入れる」の4つの方法があり、貯蓄や投資で資産を増やすことを「資産運用」ということ
・社会に出たとき、企業(実業団)に所属して活動するかプロとして活動するかによって収入の得方や支払う税金の種類が変わってくること
・プロ選手として活動した場合、「個人事業主」となるため、収入の大幅な変動によって税金面でのリスクがある。働き方にあわせて必要な税金の知識を身につけておきたい
といった働くことによって得る収入と税金に関する内容を解説。さらに、「アスリートも現代を生きる1人として、為替や円高について関心を持ってほしい」と、クイズ形式の問いを盛り込みつつ、「物価上昇」「円高・円安とは」などを紹介し、「為替とは何か」「為替の変動が、日常の生活にどう影響するか」などについても触れていきました。
税金に関する用語や、為替や円相場の話題は、いずれも日常でよく見聞きするものの、具体的には意外と理解できていない言葉といえます。ダイヤモンドアスリートたちは、ここでのやりとりを通じて、概要を把握することができました。


第3回研修:お金の増やし方を学ぶ

金融経済教育研修の3回目は、3月23日に開催されました。第9期に向けたリーダーシッププログラムとしては10回目、これが最後となります。講師として、引き続きSMBC日興証券の経営企画部サステナビリティ推進室に所属する川西さんが登壇し、「お金の増やし方を学ぶ」を主題とする研修が行われました。川西さんは、まず、2回目に行った研修の内容を振り返り、その補足として、「収入と所得の違い」「社会人1年目の収入の平均額」「給与明細の見方」「給与における額面と手取額の違い」など、より具体的な例を示しながら詳しい解説を加えました。また、企業(実業団)に所属するアスリート1年目を想定した収入のシミュレーションを行い、手取額や想定される支出、可能となる貯蓄額を予想した図を用いて説明したことで、ダイヤモンドアスリートたちは、得た収入と手取額とのギャップや、支出としてどのくらいの金額が必要となるのかを、よりリアルに実感できた様子。さらに川西さんからは、「手取額は、額面の75~85%と覚えておくとよい」「収入の約2割を貯蓄に回せるとベスト」といった貴重なアドバイスも提示されました。

話題は、いよいよ「お金の増やし方を学ぶ」というメインの内容へ。川西さんは、貯蓄や投資で資産を増やす「資産運用」から話を進めていきました。「自身の資産は、自分が働いて収入を得るのと並行して、“お金にも働いてもらう”と、効率的に増やすことができる」と述べた川西さんは、日本の金利の推移、モノやサービスの価格がどう変動して今後どう変わっていくと見込まれるか、日本とアメリカにおける家計の金融資産構成の違いなどを示し、昔のように銀行預金からの金利収入が期待できない現代において資産運用の必要性を示唆。ダイヤモンドアスリートたちに、「投資に対して、どんなイメージがあるか?」を問いながら、混同されやすいギャンブルや投機(とうき:短期的な相場の値動きに注目してお金を増やす方法)との違いを説明したうえで、「投資とは、企業の成長にお金を投じること。将来的なリターンを求めて、現在保有する資産を出資するもの」と紹介し、その本質は「長期的な目線で、リターンを狙うこと」にあると述べました。



そして、実際に投資をするうえで最低限必要な知識として、代表的な金融商品である預貯金、株式、債券、投資信託の4つを挙げ、それぞれの特徴を紹介。また、金融商品には、安全性(預けたお金が減ったりしないか)、収益性(どれだけ利益が期待できるか)、流動性(預けたお金を自由に引き出せるか)の3つの性質があり、「すべてを兼ね備えた金融商品はない」として、4つの金融商品における、それぞれのリスク(収益の振れ幅)とリターン(得られる成果)の関係を明示しました。そのうえで、「“ローリスク・ハイリターン”の金融商品はない」ときっぱり。「食べ物にたとえながら、金融商品を選ぶ時には、安全性、収益性、流動性のどの性質を自身が重視するか自分の中で判断軸を持っておく必要がある」と説明しました。

さらに、実際に投資を行っていく際のリスクを極力抑えた投資方法として「長期投資」「分散投資」「積立投資」について解説されました。ダイヤモンドアスリートたちは、金融商品を長期にわたって保有することでリスクを減らす効果や複利効果が期待できること、投資先や購入時期を分散させるとリスクを抑えられることなどを学んだほか、積立投資については、投資タイミングを判断するゲームを交え、コツコツと積立投資していたほうがリスクは軽減されることを理解。この積立投資を後押しすべく、国が2014年からスタートさせたNISA制度(少額投資非課税制度)についても学びました。
また、投資を行うことによって、「株主優待でサービスを受けられる」「株式を通して企業を応援できる」「経済や社会の動きに関心を持つ機会になる」などのメリットが得られることも改めて認識しました。

最後に説明が行われたのは、資金を得るための方法として4つめに挙がっていた「借り入れる」についてです。川西さんはまず、「借り入れる」際に用いられるローンとクレジットについて、それぞれの仕組みやどんな種類があるかを説明。そのなかで両者の違いを示しつつも、「どちらも、“この人なら返済してくれる、あとで代金を払ってくれる”という信用をもとに成り立つもの。また、言葉は異なっていてもどちらも“借り入れ”なので、契約内容に沿って支払う義務が発生する」点を強調しました。
さらに、具体的なメリット・デメリット、利用する際の注意点、トラブルに見舞われたときの相談窓口などを紹介し、「ローンやクレジットは、本当に必要なときに計画的に利用することにより、お金を有効に活用できるというメリットがある一方で、正しく利用しないと収支のバランスが崩れたり、トラブルに巻き込まれたりすることも考えられる。利用する際はその両面をきちんと認識するようにしましょう」と訴えました。

講義が終わったところで室伏マネジャーが登壇。「3回の講義で、ようやく“こういう感じなんだな”と、お金に関する知識の全体像がつかめたのではないか。耳慣れない言葉もあれば、聞いたことがあっても具体的にどういうことなのかを知らなかった言葉もあったはず。それらをとてもわかりやすく説明していただけた」と、川西さんに感謝の意を示しました。そして、「資産の話はプライベートな内容なので、なかなか人と話題にする機会がないもの。実際に考える必要が出たときは、どうしても専門家と自分との対話となる。ただ、そのときに自分に知識がないと、うまく話をすることができない。こうして金融経済について基本的なことを学びながら、みんなで一緒に考える機会を持てたことは、本当によかったと思う」とコメント。
ダイヤモンドアスリートたちに、「この研修によって、トップアスリートである皆さんは、これから先、他の人とは違う形で収入を得る可能性があることや、アスリートとして活動するゆえに抱えるリスクもあることを理解できたのではないかと思う。いずれにしても生きていくうえでお金は必要で、皆さんが将来どんな道に進んだとしても必ずついてくるもの。この機会をきっかけに、これからも掘り下げて、ぜひ身につけてほしい」と呼びかけ、研修を締めくくりました。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


【ダイヤモンドアスリート】金融経済研修ダイジェスト

■【金融経済教育研修レポート①】お金の知識・引退後のライフプランについて考える https://www.jaaf.or.jp/news/article/17617/


【ダイヤモンドアスリート】特設サイト

>>https://www.jaaf.or.jp/diamond/

■【リーガル研修レポート】自分を守るために大切な知識や法律について
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17421/

■【メディア研修レポート】メディア対応の必要性と自分を表現することの大切さを学ぶ
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17540/

■メンタル研修レポート:最高のパフォーマンスを発揮するために必要な考え方
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17554/

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