2022.07.31(日)選手

【カリ2022 U20世界選手権】展望:2大会ぶり参戦の日本、次世代を担うエースたちが世界の舞台へ挑む!



20歳未満の世界中のアスリートが集う「カリ2022 U20世界陸上競技選手権大会」が8月1日から6日までコロンビア・カリで行われる。今回で2年連続19回目の開催。日本は昨年のナイロビ大会への派遣を見送っており、2018年タンペレ大会以来2大会ぶりの出場となる。ここでは日本代表選手を紹介していく。(文中のU20世界リストは7月27日時点)
日本選手団は選手34名(男子25名、女子9名)と役員17名。選手の学年構成は高校1年生から大学2年生の早生まれまで。中には2021年ナイロビ大会代表(代表選出後に派遣見送りを決定)が2名いるものの、全員が実質初出場となる。

会場のカリはコロンビアの西部、標高1000mの準高地にある都市だ。会場のエスタディオ・オリンピコ・パスカル・ゲレーロでは、2015年7月に世界ユース選手権が行われ、サニブラウン アブデルハキーム(城西高2東京/現・タンブルウィードTC※ダイヤモンドアスリート修了生)が男子100mと200mで2冠を獲得。女子やり投では北口榛花(旭川東高3北海道/現・JAL※ダイヤモンドアスリート修了生)が優勝している。

U20世界選手権で活躍した選手はその後も各種目の牽引役となっている。タンペレ大会では、男子走幅跳で金メダルを手にした橋岡優輝(日本大学/現・富士通※ダイヤモンドアスリート修了生)が昨年の東京オリンピックで6位。女子3000mで優勝した田中希実(ND28AC/現・豊田自動織機)は東京オリンピック1500mで日本勢初入賞となる8位入賞を果たしている。カリ大会の代表からも、未来の日本のエースが何人生まれてくるか。この後も目が離せない。


ダイヤモンドアスリート

栁田大輝&佐藤圭汰がハイレベルの争いに挑戦

代表選手の中には、日本陸連のダイヤモンドアスリート2名が含まれている。五輪や国際大会での活躍を期待して次世代の競技者を強化育成する「ダイヤモンドアスリート」制度。中・長期的にエリートを育成するために選ばれた、言わば日本陸上界の「金の卵」だ。カリ大会はほぼ同世代の枠組みの中で、将来を見据えた戦いとなる。

まず1人目は男子100mに出場する栁田大輝(東洋大学)だ。東農大二高(群馬)2年時の2020年8月に10秒27(U20日本歴代8位タイ、U18日本歴代3位、高校歴代6位タイ、高2歴代2位)をマーク。翌2021年2月に第7期ダイヤモンドアスリートに認定されると、5月の世界リレー・男子4×100mリレー代表に出場。アンカーを務めて日本の2位に貢献した。


2021年日本選手権100mでは準決勝で10秒22(U20日本歴代3位、高校歴代2位タイ)をマーク。出場機会はなかったが東京2020オリンピック男子4×100mリレー代表補欠に選ばれた。五輪と会期が重なった福井インターハイは慌ただしい日程でも100mを制している。この春に大学生となった後も順調で、6月の日本選手権は準決勝で自己ベストの10秒16をマーク。決勝は3位に入った。
オレゴン2022世界選手権では4×100mリレーの4走を担当。予選は各国のエースたちと引けを取らない走りを見せた。2、3走のバトンパスでミスが出たため日本は失格となったが、その悔しさをカリの地で晴らしてほしいところだ。
ただ、強力なライバルが参戦するかもしれない。その1人がナイロビ大会覇者のレツィル・テボゴ(ボツワナ)だ。4月にU20世界新記録の9秒96をマークすると、オレゴン世界選手権予選では9秒94まで短縮して準決勝に進んだ。さらに、200m19秒49(世界歴代5位、U20世界記録)のエリヨン・ナイトン(米国)も加わる可能性がある。そんな選手と争ってメダル獲得となれば価値は大きい。日本勢のメダル獲得となれば、2014年ユージン大会の桐生祥秀(東洋大学/現・日本生命)の銅以来となる。

2人目は男子3000mと5000mに出場する佐藤圭汰(駒澤大学)だ。京都・蜂ヶ岡中では全中1500m3位やジュニアオリンピックB1500m優勝などの実績を残し、地元の強豪・洛南高へ進んだ。高校在学中、トラックでは1500m(3分37秒18)、3000m(7分50秒81)、5000m(13分31秒19)の3種目で高校記録を樹立。福井インターハイでは1500mで優勝すると、5000mでは日本人トップの4位に入った。


また、年末の全国高校駅伝では1年時に2区区間賞に輝くと、2、3年時にはいずれも3区を務めて日本人トップタイムをマーク。チームの2年連続高校最高記録更新に貢献している。この春に第8期ダイヤモンドアスリートに認定され、5月のゴールデンゲームズinのべおか5000mでU20日本新記録の13分22秒91をマークした。
長距離はケニア、エチオピア、ウガンダといったアフリカ勢が強い。佐藤は今季3000mに出場していないが、昨年の自己記録で比較するとU20世界リスト7位、5000mは12位(1カ国2人で換算すると8位)だ。アフリカ選手が得意なペース変化に対応して、終盤まで食らいつきたいところ。佐藤が自己ベスト程度で走れば、メダルの可能性もある。


【男子展望】4×100mリレー・10000m競歩を筆頭に15種目で上位進出を目指す

■短距離種目

栁田とともに100mに出場するのが藤原寛人(中央大学)。U20日本選手権を制し、千葉・東海大浦安中3年時の2017年熊本全中以来、5年ぶりの全国タイトルを獲得した。タイムでも自己新の10秒37をマークするなど勢いがある。200m代表の舘野峻輝(東洋大学)は関東インカレ準決勝で初の20秒台(20秒98)を出すと、U20日本選手権でも自己タイ記録で優勝した。カリでどこまで記録を伸ばせるか。


ショートスプリント勢が結集する4×100mリレーも注目だ。4×100mリレーの代表には200m20秒78の池下航和(環太平洋大学)が加わる。ナイロビ大会では南アフリカがU20世界新の38秒51で優勝。2位のジャマイカが38秒61、3位のポーランドが38秒90だった。メダル獲得にはU20日本記録(39秒01)更新が最低条件。栁田を中心に結束力を見せたレースを期待したい。

400mには2名が出場。友田真隆(東京理科大学)は昨年の日本インカレでは自己ベストの46秒35で1年生優勝を果たした。もう1人が有田詞音(九州共立大学)。昨年のベストの48秒台から急成長を遂げ、U20日本選手権予選で46秒58をマークすると、決勝は2位に入った。自己記録を塗り替えれば、上位ラウンド進出が見えてくる。



■中長距離種目

800mの代表は、自己ベスト1分47秒69(U20日本歴代7位、高校歴代2位)の後田築(創成館高3・長崎)と1分48秒86の東秀太(広島経済大学)の2名。海外勢の駆け引きにうまく対応して力を発揮できるか。1500mに出場する間瀬田純平(早稲田大学)は昨年、佐賀・鳥栖工高3年時に3分42秒22の自己記録を出している。故障で代表を辞退した大塚直哉(立大)の分も、存分にトラックを駆け抜けてほしい。佐藤と同じく3000mと5000mに出場するのが、高校生の吉岡大翔(佐久長聖高3・長野)だ。インターハイや全国高校駅伝で実績を重ね、3000mは8分01秒29(高校歴代3位)、5000mは13分38秒96(高校歴代6位)の自己記録を持つ。アフリカ勢ら強豪相手に実力を存分に発揮してほしい。



■110mハードル・400mハードル

U20規格(高さ99.1cm)で行われる110mハードルには、13秒49の阿部竜希(順天堂大学)と13秒47の真名子凌成(福岡大学)が挑む。2人とも今季に入って一気に台頭し、U20日本選手権で上位を占めた。タンペレ大会で銅メダルを獲得した泉谷駿介(順大/現・住友電工)のようなパフォーマンスが飛び出すか。


400mハードル代表は森髙颯治朗(近畿大学)と小川大輝(東洋大学)。森髙はU20日本選手権決勝で初の50秒台(50秒71)をマークしており、小川は今季50秒50を筆頭に50秒台を連発している。ファイナル進出もありうる位置だ。



■3000m障害物

男子3000m障害物の黒田朝日(青学大学)は玉野光南高(岡山)3年時の昨年、8分39秒79(U20日本歴代4位、高校歴代2位)をマークしているだけに、ハイレベルな海外勢相手に入賞を狙いたいところ。大沼良太郎(城西大学)は自己ベストの8分48秒83を更新できるかがカギとなりそうだ。



■10000m競歩

4月の全日本競歩輪島大会U20・10kmで優勝(41分11秒)した下池将多郎(鹿児島工高3)と2位(41分18秒)の大家利公(順大)が出場。強豪・ロシア勢がいないだけに、上位進出のメダルの可能性も出てきた。下池はトラックの5000mでも自己新の20分33秒82で歩くなど好調をキープ。大家も春先の調子を取り戻せば、上位を争う実力を持つ。シニアと同じく「競歩ニッポン」をアピールしてほしい。



■棒高跳

男子棒高跳に出場する原口篤志(東大阪大学)は7月18日の記録会で今季U20世界リスト3位の5m45(U20日本歴代4位)に成功しており、上位入賞が視野に入る。タンペレ大会では江島雅紀(日本大学/現・富士通)が銅メダルを獲得。再び日本勢が表彰台に上がるか。また、水谷翼(福岡大学)はU20日本選手権で自己新の5m30を跳んでおり、入賞を狙える位置につけている。



■走幅跳

走幅跳の代表はU20日本選手権覇者の渡邉希(筑波大学)と昨年の福井インターハイ覇者・北川凱(東海大学)。渡邉は今季、自己記録を一気に42cm更新する7m85をマーク。一方、北川も7m81の自己記録を持つ。8mへの手応えをつかむ跳躍を見たいところだ。



■やり投

自己ベスト72m16のU20日本選手権覇者・中村竜成(国士大学)と、昨年から5m近く記録を伸ばして71m43を投げている井上堅斗(九州共立大学)が出場する。2人そろってビッグアーチを描いて入賞に絡んでほしい。



【女子展望】日本代表9名で入賞・メダル獲得を目指す!

■1500m

1500mには柳樂あずみ(名城大学)と澤田結弥(浜松市立高2静岡)が出場。柳樂は4月に4分15秒71(U20日本歴代9位)をマークすると日本選手権は4位入賞を果たした。5月に4分16秒90(高2歴代7位)で走っている澤田も勢いがある。アフリカはじめ海外勢はラストのスプリントに優れているが、日本選手2人は主導権を握るレース展開で入賞に挑戦してほしい。



■400mハードル

短距離系種目ではただ1人代表に選ばれたのが、400mハードルの松岡萌絵(中央大学)だ。元々フラットレースが専門だったが、昨年からハードルに取り組み、今年の日本選手権で出した57秒57(U20日本歴代4位)は、U20世界リスト4位。メダル獲得となれば、2010年モンクトン大会の三木汐莉(東大阪大学)の銅メダル以来となる。



■10000m競歩

さらに、メダル期待種目が10000m競歩だ。出場するのは、急成長の大山藍(鹿児島女高2)と、福井インターハイ5000m覇者の柳井綾音(立命大学)だ。今春の全日本競歩輪島大会U20・10kmでは大山が45分19秒(U20日本歴代4位、高校歴代3位)で優勝し、柳井は45分21秒(U20日本歴代5位)で2位。その後もトラックで実績を積み、5000mで大山が5月下旬に22分10秒30(U20日本歴代8位、U18日本歴代2位、高校歴代4位、高2最高)をマークすると、柳井は7月10日に22分08秒08(U20日本歴代7位)を出しており、2人とも好調だ。
ロード10kmのU20世界リストではロシア勢を除き、大山が2位で柳井は4位。ちなみにトラック(10000m)のリストトップは45分24秒1のオリビア・サンデリー(豪州)で、2位は45分50秒台と離れている。日本選手同士の金メダル争いになるかもしれない。



■女子フィールド種目

走幅跳代表はただ1人の高校1年生・近藤いおん(城西高・東京/流山ホークアイ)。クラブチームを拠点に活動し、昨年は全中2位、U16大会優勝を果たすと今季は6m13(高1歴代8位)をマークした。16歳が世界舞台に挑戦する。

ハンマー投に出場するのはU20日本記録(62m88)保持者・村上来花(九州共立大学)。弘前実高(青森)2年時から高校記録を連発し、大器と注目された逸材だ。実は前回のナイロビ大会では男子短距離の栁田とともに代表に選出されていたが、派遣見送りで出場できなかった。その後、膝の靭帯を断裂するケガに見舞われたものの、この春に復帰。7月上旬の西日本インカレでは今季初の60m台(60m31)まで調子を取り戻してきた。この世代でも世界の壁は厚いが、今後の弾みとなる試技に注目だ。


この他、投てきではやり投に村上碧海(日本体育大学)と辻萌々子(九州共立大学)の福井インターハイ1、2位コンビが選出された。今季は村上は56m30(U20日本歴代10位)、辻は57m22(U20日本歴代5位)を投げて自己べストを更新。U20世界リストでは辻が5位、村上が6位でW入賞やさらなる上位進出も狙えるだろう。タンペレ大会は、桑添友花(筑波大学/現・日本栄養給食協会)が銀メダルを獲得しており、2人が続くことを期待したい。

文:月刊陸上競技編集部
写真:フォート・キシモト

>>U20世界選手権 大会ページ
日本代表選手情報や競技日程など掲載中

■カリ2022 U20世界陸上競技選手権大会WA公式サイト
https://www.worldathletics.org/competitions/world-athletics-u20-championships/cali22

■ダイヤモンドアスリート特設サイト 
https://www.jaaf.or.jp/diamond/

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