7月15日(金)から7月24日(日)の10日間(日本時間では16日~25日)、アメリカ・オレゴン州ユージーンのヘイワード・フィールドを舞台に「オレゴン2022世界陸上競技選手権大会」が開催される。
日本からは、67人(男子41・女26)の代表選手が出場し世界のライバル達と競い合う。
現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する30種目に関して、「記録と数字で楽しむオレゴン世界選手権」をお届けする。
なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある拙稿と同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では五輪についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介した。
記録は原則として7月7日判明分。
現役選手の敬称は略させていただいた。
日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてあまりふれていない。日本人の出場しない各種目の展望などは、陸上専門二誌の8月号別冊付録の「世界選手権観戦ガイド」やネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。
大会期間中は、日本陸連のSNSで、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。
現地と日本の時差は、16時間。マラソンと35km競歩以外の種目は、日本時間の深夜2時頃から昼頃まで競技が行われる。睡眠不足にどうぞご注意を!
(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)
・決勝 7月24日 10:25(23日18:25)
トリオでの出場は、95・97・99・11・15・19年に続いて7回目。五輪は、96年のアトランタから21年東京まで7大会連続トリオ出場。
エントリー記録(21年6月28日~22年6月26日)では、廣中20位、萩谷23位、田中24位。
いずれにしても、エントリー記録で日本記録(14.52.84)を上回る選手が19人いてレベルは高い。
そんな中で日本人トリオが97年アテネ大会以来12大会ぶりの入賞と日本記録更新を目指す。
800m・1500m・5000mの3種目に出場する田中と5000mと10000mに出場する廣中の日程は、下記の通り。
・日本時間でカッコ内が現地時間
5000mと10000mの順序は、東京五輪の時と逆になった。
1996五輪 4位 15.09.05 志水見千子(リクルート)=日本新
1997 8位 15.21.19 弘山 晴美(資生堂)
日本人最高記録は、
世界選手権が、
14.59.92 福士加代子(ワコール)2005年 12位
五輪が、
14.52.84 廣中璃梨佳(日本郵政グループ)2021年 9位 =日本新
至近3大会のように予選通過には15分ちょっとか14分台が必要になるかもしれない。
決勝は、「記録よりも勝負」のレースであるため、最初の1000mは3分00秒前後で入ることが多い。途中で誰かがロングスパートで「大逃げ」になる展開も稀で、ほとんどは4000mを過ぎてからの「ヨーイ、ドン!」である。
「優勝者と8位の差」は、数秒から40秒以上と大会によって開きがある。09年以降のデータからすると17年までの「8位入賞ライン」は、「15分00秒±15秒前後あたり」が多かった。しかし、19・21年の至近2大会は14分45秒前後のハイレベルになっている。
優勝者は途中で独走にならない限りは、ラストの1000mを2分40秒前後、ラスト2000mを5分30~40秒あたりで走っている。ラスト2000mは1500m換算4分10秒前後のスピードだ。また、独走になった場合を除くとラスト400mも60秒以内のことが多い、ラスト200mも28秒台や29秒台がほとんどだ。
東京五輪で優勝したシファン・ハッサン(オランダ)のラスト1000mは2分39秒0、ラスト800mは2分04秒7。
4600mからの100m毎は、
ラスト1周57秒1、同300m41秒7、同200m27秒7は世界大会優勝者の歴代最速である。
2・3位の選手もラスト400mを58秒9と59秒4でカバーした。
「優勝」や「メダル」を目指すには、上記のようなラスト1周のスパート力がないことには厳しい。
が、「入賞」ならばその条件がかなり下がる。
どういうペースでレースが展開されるかにもよるが、過去のデータからすると3000mあるいは4000mまでを3分前後でいってラスト2000mを5分台、ラスト1000mを2分50秒前後から55秒以内くらいでカバーできれば、「入賞ライン」が見えてくることが多かった。
15年北京世界選手権では鈴木亜由子(日本郵政グループ)が、8位(15.08.00)と0秒29差の9位。19年のドーハでは8位と9位が0秒26差で、これが世界選手史上最少の「8位と9位の差」。鈴木の0秒29差は世界選手権史上歴代2位の僅差で、その時点では「最も悔しい9位」だった。
この時の鈴木の1000m毎は、3.01.77-3.04.60-3.02.76-3.01.83-2.57.44。4000m地点では、8~11位の4人の集団の2番目の位置につけていた。ラストの直線での瞬発的なスピードがないため最後に僅かに競り負けたが、「入賞を狙うための展開」としては素晴らしいレースをした。
また、21年東京五輪の廣中も入賞にあと一歩の9位。
8位には6秒35届かなかったが、14分52秒84で16年ぶりの日本新だった。
この時の1000m毎は、3.00.7-3.00.1-2.59.9-2.57.9-2.54.2。ラスト1周が66秒9、同200mが33秒3だった。
4000mでは11人の先頭集団の最後方だったが先頭との差は1秒5、8位と0秒3差。残り2周から先頭には徐々に差を広げられたが、4200mで8位とは0秒3差、4300mで0秒2、4400mで1秒5、4500mで2秒2、4600mで2秒3差。最終的には6秒35差がついたが、よく粘って日本新をものにした。ちなみに、あと1周で8位から7位に上がった選手(14.46.29)のラスト400mは62秒7、7位から8位に落ちた選手(14.46.49)は66秒0。ラスト1000mは7位が2分47秒9、8位が2分49秒9だった。
5000mの日本新をはずみに、廣中は5日後の10000mでは「7位入賞」を果たしたのだった。
田中にとって5000mは、東京五輪の「リベンジマッチ」となる。
本来は「本命種目」だったが、予選で14分59秒93の「初14分台」の自己新で走ったものの決勝には0秒38届かなかった。
上表の「予選落選の最高記録(決勝に進めなかった最高記録)」の「14.59.93」は、田中の記録だ。この時は、残り1000mを2分48秒0でカバーしたが、ラスト400mに65秒5を要して惜しいところで「ファイナリスト」を逃した。
また、19年ドーハでも予選(15分04秒66)も決勝(15分00秒01)も自己ベスト(当時、日本歴代2位)で走ったものの史上最もハイレベルなレースで14位。入賞ラインには15秒ちょっと届かなかった。
この1年あまり、田中は「ラスト400m60秒」を課題として、400mから10000mまで様々な距離のレース挑んできた。
今年の日本選手権では800m決勝を2分04秒51(2位)で走った73分後に5000mのスタートラインに立った。
日本記録保持者の廣中を残り400mからのギアチェンジで一気に突き離し優勝(15分05秒61)。
この時のラスト1000mは、2分48秒9。
4600mからの100m毎は、
五輪と世界選手権の入賞ラインが最もハイレベルだった21年東京五輪と19年ドーハ世界選手権の10位までの選手の残り1000m、同400m、同200mのタイムをまとめたのが下のデータだ。
22年日本選手権での田中(15.05.61)とは5000mのタイムで40~10秒あまりの差がある。とはいえ、田中は、800m決勝の73分後にスタートした5000mだったという条件を考慮してもいいだろう。
田中のラスト1000mは2分48秒9、同400m62秒0、同200m31秒4は、メダリストのラスト1周58~59秒台やラスト200m28秒台などには及ばないものの5~6位以下の選手と比較すると十分に勝負ができそうだ。田中が残り1周を切ってから本来のスパートができれば「入賞争い」で競り負けることはほとんどないだろう。
廣中には田中ほど瞬発的なスピードはないが、20年12月の日本選手権で田中(15.05.65)に最後で突き放されて2位(15.07.11)だった時のラスト1000mは、2分53秒3(田中は2分51秒4)でカバーしている。
また、萩谷も20年7月のディスタンスチャレンジ網走大会で当時のベスト15分05秒78をマークした時(4位=日本人2位。1位は田中で15分02秒62)のラスト1000mは2分52秒1(田中は2分50秒0)だった。
19年ドーハ世界選手権の決勝は、21時25分のスタート時の気温が27℃、湿度71%の中でレースが行われ、
という世界選手権史上最もハイレベルなものとなった。
「27℃・71%」というと「蒸し暑い」ということになるが、ドーハの競技場にはトラックを取り囲むスタンドの壁から冷風が送られるような冷房装置が設置されていた。よって、走る選手にはかなり快適な条件だったようだ。
今回の予選が行われる7月20日16時25分(日本時間21日午前8時25分)、決勝がスタートする7月23日18時25分(日本時間24日午前10時25分)に近いユージーンの19年から21年の過去3年間の気象状況は、下記の通り。
【過去3年間の7月20日(女子5000m予選の日)のユージーンの気象状況】
【過去3年間の7月23日(女子5000m決勝の日)のユージーンの気象状況】
以上の通りで、30℃を超えた年もあるが湿度は20~30%台から40%丁度。
直射日光を受けると暑さを感じるかもしれないが、曇っていればそれほどでもないかもしれない。
なので、高温多湿の日本よりも条件はかなりいい可能性が高そうだ。
よって、優勝記録も入賞ラインも至近2世界大会を上回るようなレベルになるかもしれない。
東京五輪の決勝で廣中が日本記録(14.52.84)を出した時の100m毎のペースは下記の通りだ。
【廣中璃梨佳の日本記録(14.52.84)の時の100m毎】
・世界陸連HPのデータ。
・カッコ付き数字は通過順位。
・前半7.30.2+後半7.22.6(前後半差△7.6)
・ラスト800m、2.18.6
・ラスト1500m、4.22.8
・ラスト2000m、5.52.1
・ラスト3000m、8.52.0
基本的には、400mを72秒、1000mを3分00秒の「15分00秒ペース」のほぼイーブンで3000mまでを刻み、4000mまでに2秒、ラスト500mで「5秒を削り出した」というペース配分だった。
前半のペース次第で「入賞ライン」がどの程度になるかはわからないが、こんなデータも紹介しておこう。
全種目を網羅した世界陸連採点表による田中の各種目ベストのポイントは、
だ。
最もポイントが高い1500mの「1212pt」を5000mのタイムに当てはめると「14分35秒25」。つまり、1500m3分59秒19の走力からすると田中は5000mを14分35秒くらいで走れても不思議ではないということだ。
あるいは、少々古いデータだが筆者が1986年から2010年の25年間に日本・高校・中学リストに入った各種目数千人の年次ベストのデータを分析したところ、平均では1500mの記録の「3.686470倍」のタイムで5000mを走っていた。田中の1500m3分59秒19の「3.686470倍」は、「14分41秒77」となる。倍率の標準偏差は、「±0.088142」でこれを考慮すると「14分20秒69~15分02秒85」で走れる可能性が統計学的には「68.26%」ということになる。
また、廣中の10000mのベスト31分00秒71(東京五輪7位の時)は、「1192pt」。これと同じポイントの5000mのタイムは「14分45秒40」。
また、上述の筆者の分析による5000mと10000mの平均的倍率と標準偏差の「2.085137倍±0.039937」をもとに廣中の10000mから5000mのタイムを逆算すると「14分52秒37」。標準偏差の範囲は「14分35秒60~15分09秒79」だ。
いずれにしても、田中にも廣中にも14分30秒台くらいの可能性はあるということだ。
ということは、すなわち「入賞」につながる。
萩谷については、5000mのベスト14分59秒36のポイントが「1164pt」で他の種目の自己ベストよりも高いので、田中や廣中のように他種目から逆算しての比較はできない。が、これまでの世界選手権と五輪の世界大会の予選で最もレベルが高かった21年東京五輪での「予選通過ライン(14.59.56)」を上回るベストを持っている。
トリオで決勝進出となれば、25年前の97年アテネ世界選手権以来12大会ぶり2回目となる。是非とも実現してもらいたい。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト
>>オレゴン2022世界陸上競技選手権大会 特設サイト
日本からは、67人(男子41・女26)の代表選手が出場し世界のライバル達と競い合う。
現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する30種目に関して、「記録と数字で楽しむオレゴン世界選手権」をお届けする。
なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある拙稿と同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では五輪についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介した。
記録は原則として7月7日判明分。
現役選手の敬称は略させていただいた。
日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてあまりふれていない。日本人の出場しない各種目の展望などは、陸上専門二誌の8月号別冊付録の「世界選手権観戦ガイド」やネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。
大会期間中は、日本陸連のSNSで、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。
現地と日本の時差は、16時間。マラソンと35km競歩以外の種目は、日本時間の深夜2時頃から昼頃まで競技が行われる。睡眠不足にどうぞご注意を!
(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)
女子5000m
・予選 7月21日 08:25(20日16:25) 2組5着+5・決勝 7月24日 10:25(23日18:25)
14分台トリオが出場、「入賞」と「日本新」の期待も
参加標準記録(15分10秒00)をクリアしていて日本選手権1位だった田中希実(豊田自動織機/資格記録&自己ベスト14.59.93=21年)、東京五輪9位の廣中璃梨佳(日本郵政グループ/資格記録&自己ベスト14.52.84=21年=日本記録)、萩谷楓(エディオン/資格記録&自己ベスト14.59.36=21年)が出場。東京五輪と同じ3人だ。トリオでの出場は、95・97・99・11・15・19年に続いて7回目。五輪は、96年のアトランタから21年東京まで7大会連続トリオ出場。
エントリー記録(21年6月28日~22年6月26日)では、廣中20位、萩谷23位、田中24位。
いずれにしても、エントリー記録で日本記録(14.52.84)を上回る選手が19人いてレベルは高い。
そんな中で日本人トリオが97年アテネ大会以来12大会ぶりの入賞と日本記録更新を目指す。
800m・1500m・5000mの3種目に出場する田中と5000mと10000mに出場する廣中の日程は、下記の通り。
・日本時間でカッコ内が現地時間
1500m予選 | 田中 | 7月16日 | 10:10(15日18:10) | 3組6着+6 |
10000m決勝 | 廣中 | 7月17日 | 04:20(16日12:20) | |
1500m準決 | 田中 | 7月17日 | 11:05(16日19:05) | 2組5着+2 |
1500m決勝 | 田中 | 7月19日 | 11:50(18日19:50) | |
5000m予選 | 田中&廣中 | 7月21日 | 08:25(20日16:25) | 2組5着+5 |
800m予選 | 田中 | 7月22日 | 09:10(21日17:10) | 6組3着+6 |
800m準決 | 田中 | 7月23日 | 10:35(22日18:35) | 3組2着+2 |
5000m決勝 | 田中&廣中 | 7月24日 | 10:25(23日18:25) | |
800m決勝 | 田中 | 7月25日 | 10:35(24日18:35) |
5000mと10000mの順序は、東京五輪の時と逆になった。
◆世界選手権&五輪での入賞者と日本人最高記録
この種目は、世界選手権では1995年から(それ以前は3000m)、五輪では1996年から実施されるようになった(1984~92年は3000m)。入賞者は、以下の通り。1996五輪 4位 15.09.05 志水見千子(リクルート)=日本新
1997 8位 15.21.19 弘山 晴美(資生堂)
日本人最高記録は、
世界選手権が、
14.59.92 福士加代子(ワコール)2005年 12位
五輪が、
14.52.84 廣中璃梨佳(日本郵政グループ)2021年 9位 =日本新
◆世界選手権&五輪での先頭の1000m毎とラスト400m・200m、1・3・8位とその差、決勝に進めなかった最高記録
以下は、5000mが採用された1995年からの世界選手権での先頭走者の「1000m毎のスプリット」「ラスト400mとラスト200m」「1・3・8位の記録」「1・8位の差」「予選で落選した最高記録(決勝に進めなかった最高記録)」をまとめたものである。年 | ~1000m | ~2000m | ~3000m | ~4000m | ~5000m | Last400 | &200 | 1位記録 | 3位記録 | 8位記録 | 1・8位差 | 予選落最高 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1995 | 2.51.95 | 3.01.53 | 3.04.72 | 3.02.87 | 2.45.40 | 61.50 | 28.80 | 14.46.47 | 14.53.77 | 15.08.05 | 21.58 | 15.20.89 |
1996五輪 | 3.06.15 | 3.02.61 | 2.59.26 | 2.57.23 | 2.54.63 | 70.14 | 34.70 | 14.59.88 | 15.07.42 | 15.17.33 | 17.45 | 15.28.35 |
1997 | 3.11.74 | 2.58.66 | 2.58.22 | 3.02.21 | 2.46.85 | 61.90 | 29.50 | 14.57.68 | 14.58.85 | 15.21.19 | 23.51 | 15.37.19 |
1999 | 3.00.43 | 2.55.47 | 2.56.83 | 2.59.68 | 2.49.41 | 61.40 | 29.40 | 14.41.82 | 14.44.22 | 15.03.47 | 21.65 | 15.28.41 |
2000五輪 | 3.03.84 | 2.53.50 | 3.01.19 | 2.55.27 | 2.47.39 | 60.01 | 28.60 | 14.40.79 | 14.42.33 | 14.50.31 | 9.52 | 15.16.66 |
2001 | 3.10.06 | 3.03.47 | 3.03.72 | 3.04.43 | 2.41.71 | 60.40 | 29.04 | 15.03.39 | 15.10.17 | 15.19.55 | 16.16 | 15.20.78 |
2003 | 3.04.25 | 3.05.63 | 2.59.00 | 2.57.57 | 2.45.27 | 60.10 | 29.70 | 14.51.72 | 14.52.30 | 14.54.98 | 3.26 | 15.04.00 |
2004五輪 | 3.12.26 | 2.53.31 | 2.46.66 | 2.55.53 | 2.57.89 | 68.56 | 32.70 | 14.45.65 | 14.51.83 | 15.07.23 | 21.58 | 15.14.57 |
2005 | 3.02.53 | 2.51.32 | 2.58.77 | 3.01.78 | 2.44.19 | 58.19 | 28.10 | 14.38.59 | 14.42.47 | 14.45.14 | 6.55 | 15.20.59 |
2007 | 2.59.22 | 3.05.47 | 3.07.30 | 3.01.06 | 2.44.86 | 58.58 | 28.13 | 14.57.91 | 14.59.21 | 15.03.86 | 5.95 | 15.25.59 |
2008五輪 | 3.39.20 | 3.06.21 | 3.12.72 | 3.06.64 | 2.36.63 | 59.54 | 30.20 | 15.41.40 | 15.44.96 | 15.49.03 | 7.63 | 15.15.87 |
2009 | 3.06.02 | 3.05.02 | 3.04.01 | 3.00.74 | 2.42.18 | 58.62 | 28.80 | 14.57.97 | 14.58.41 | 15.11.12 | 13.15 | 15.32.33 |
2011 | 3.02.10 | 3.05.00 | 3.03.87 | 3.02.63 | 2.41.76 | 58.68 | 29.17 | 14.55.36 | 14.56.94 | 15.09.35 | 13.99 | 15.38.23 |
2012五輪 | 3.07.58 | 3.09.77 | 3.10.40 | 2.57.06 | 2.39.44 | 60.20 | 29.70 | 15.04.25 | 15.05.15 | 15.14.55 | 10.30 | 15.06.81 |
2013 | 3.10.78 | 3.03.24 | 3.04.33 | 2.50.66 | 2.40.90 | 59.82 | 29.31 | 14.50.19 | 14.51.33 | 15.14.70 | 24.51 | 16.03.03 |
2015 | 3.01.65 | 3.04.62 | 2.49.36 | 2.43.62 | 2.47.68 | 66.97 | 33.72 | 14.26.83 | 14.44.14 | 15.08.00 | 41.17 | 15.47.97 |
2016五輪 | 2.59.86 | 3.00.50 | 2.47.44 | 2.51.95 | 2.46.42 | 65.59 | 33.30 | 14.26.17 | 14.33.59 | 15.00.69 | 34.52 | 15.29.07 |
2017 | 3.18.61 | 2.48.59 | 2.50.64 | 2.51.90 | 2.44.91 | 60.44 | 29.92 | 14.34.86 | 14.42.73 | 14.58.33 | 23.47 | 15.08.20 |
2019 | 2.56.90 | 2.55.58 | 2.51.89 | 2.59.69 | 2.41.66 | 58.43 | 9.67 | 14.26.72 | 14.28.43 | 14.44.92 | 18.20 | 15.11.76 |
2021五輪 | 3.00.70 | 2.59.55 | 2.59.59 | 2.57.28 | 2.39.70 | 57.10 | 27.70 | 14.36.79 | 14.38.87 | 14.46.49 | 9.70 | 14.59.93 |
最高記録 | 2.51.95 | 2.48.59 | 2.49.36 | 2.50.66 | 2.36.63 | 57.10 | 27.70 | 14.26.17 | 14.28.43 | 14.44.92 | 3.26最小 | 14.59.93 |
最低記録 | 3.39.20 | 3.09.77 | 3.10.40 | 3.06.64 | 2.57.89 | 70.14 | 33.72 | 15.41.40 | 15.44.96 | 15.49.03 | 41.17最大 | 16.03.03 |
世選最高 | 2.51.95 | 2.48.59 | 2.49.36 | 2.50.66 | 2.40.90 | 58.19 | 28.10 | 14.26.17 | 14.28.43 | 14.44.92 | ----- | 15.04.00 |
五輪最高 | 2.59.86 | 2.53.31 | 2.46.66 | 2.51.95 | 2.36.63 | 57.10 | 27.70 | 14.26.72 | 14.33.59 | 14.46.49 | ----- | 14.59.93 |
至近3大会のように予選通過には15分ちょっとか14分台が必要になるかもしれない。
決勝は、「記録よりも勝負」のレースであるため、最初の1000mは3分00秒前後で入ることが多い。途中で誰かがロングスパートで「大逃げ」になる展開も稀で、ほとんどは4000mを過ぎてからの「ヨーイ、ドン!」である。
「優勝者と8位の差」は、数秒から40秒以上と大会によって開きがある。09年以降のデータからすると17年までの「8位入賞ライン」は、「15分00秒±15秒前後あたり」が多かった。しかし、19・21年の至近2大会は14分45秒前後のハイレベルになっている。
優勝者は途中で独走にならない限りは、ラストの1000mを2分40秒前後、ラスト2000mを5分30~40秒あたりで走っている。ラスト2000mは1500m換算4分10秒前後のスピードだ。また、独走になった場合を除くとラスト400mも60秒以内のことが多い、ラスト200mも28秒台や29秒台がほとんどだ。
東京五輪で優勝したシファン・ハッサン(オランダ)のラスト1000mは2分39秒0、ラスト800mは2分04秒7。
4600mからの100m毎は、
4600 | 5)13.39.7 | 16.2 | ||
---|---|---|---|---|
4700 | 3)13.55.1 | 15.4 | ||
4800 | 1)14.09.1 | 14.0 | 29.4 | |
4900 | 1)14.22.8 | 13.7 | ||
5000 | 1)14.36.79 | 14.0 | 27.7 | 57.1 |
ラスト1周57秒1、同300m41秒7、同200m27秒7は世界大会優勝者の歴代最速である。
2・3位の選手もラスト400mを58秒9と59秒4でカバーした。
「優勝」や「メダル」を目指すには、上記のようなラスト1周のスパート力がないことには厳しい。
が、「入賞」ならばその条件がかなり下がる。
どういうペースでレースが展開されるかにもよるが、過去のデータからすると3000mあるいは4000mまでを3分前後でいってラスト2000mを5分台、ラスト1000mを2分50秒前後から55秒以内くらいでカバーできれば、「入賞ライン」が見えてくることが多かった。
15年北京世界選手権では鈴木亜由子(日本郵政グループ)が、8位(15.08.00)と0秒29差の9位。19年のドーハでは8位と9位が0秒26差で、これが世界選手史上最少の「8位と9位の差」。鈴木の0秒29差は世界選手権史上歴代2位の僅差で、その時点では「最も悔しい9位」だった。
この時の鈴木の1000m毎は、3.01.77-3.04.60-3.02.76-3.01.83-2.57.44。4000m地点では、8~11位の4人の集団の2番目の位置につけていた。ラストの直線での瞬発的なスピードがないため最後に僅かに競り負けたが、「入賞を狙うための展開」としては素晴らしいレースをした。
また、21年東京五輪の廣中も入賞にあと一歩の9位。
8位には6秒35届かなかったが、14分52秒84で16年ぶりの日本新だった。
この時の1000m毎は、3.00.7-3.00.1-2.59.9-2.57.9-2.54.2。ラスト1周が66秒9、同200mが33秒3だった。
4000mでは11人の先頭集団の最後方だったが先頭との差は1秒5、8位と0秒3差。残り2周から先頭には徐々に差を広げられたが、4200mで8位とは0秒3差、4300mで0秒2、4400mで1秒5、4500mで2秒2、4600mで2秒3差。最終的には6秒35差がついたが、よく粘って日本新をものにした。ちなみに、あと1周で8位から7位に上がった選手(14.46.29)のラスト400mは62秒7、7位から8位に落ちた選手(14.46.49)は66秒0。ラスト1000mは7位が2分47秒9、8位が2分49秒9だった。
5000mの日本新をはずみに、廣中は5日後の10000mでは「7位入賞」を果たしたのだった。
田中にとって5000mは、東京五輪の「リベンジマッチ」となる。
本来は「本命種目」だったが、予選で14分59秒93の「初14分台」の自己新で走ったものの決勝には0秒38届かなかった。
上表の「予選落選の最高記録(決勝に進めなかった最高記録)」の「14.59.93」は、田中の記録だ。この時は、残り1000mを2分48秒0でカバーしたが、ラスト400mに65秒5を要して惜しいところで「ファイナリスト」を逃した。
また、19年ドーハでも予選(15分04秒66)も決勝(15分00秒01)も自己ベスト(当時、日本歴代2位)で走ったものの史上最もハイレベルなレースで14位。入賞ラインには15秒ちょっと届かなかった。
この1年あまり、田中は「ラスト400m60秒」を課題として、400mから10000mまで様々な距離のレース挑んできた。
今年の日本選手権では800m決勝を2分04秒51(2位)で走った73分後に5000mのスタートラインに立った。
日本記録保持者の廣中を残り400mからのギアチェンジで一気に突き離し優勝(15分05秒61)。
この時のラスト1000mは、2分48秒9。
4600mからの100m毎は、
4600m | 14.03.6 | 17.3 | ||
---|---|---|---|---|
4700m | 14.18.9 | 15.3 | ||
4800m | 14.34.2 | 15.3 | 30.6 | |
4900m | 14.49.6 | 15.4 | ||
5000m | 15.05.61 | 16.0 | 31.4 | 62.0 |
五輪と世界選手権の入賞ラインが最もハイレベルだった21年東京五輪と19年ドーハ世界選手権の10位までの選手の残り1000m、同400m、同200mのタイムをまとめたのが下のデータだ。
2021年東京オリンピック | 2019年ドーハ世界選手権 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順) | 記録 | 残1000 | 残400 | 残200 | 記録 | 残1000 | 残400 | 残200 |
1) | 14.36.79 | 2.39.0 | 57.1 | 27.7 | 14.26.72 | 2.41.66 | 58.42 | 29.56 |
2) | 14.38.36 | 2.41.2 | 58.9 | 29.1 | 14.27.49 | 2.42.20 | 59.00 | 30.07 |
3) | 14.38.87 | 2.41.6 | 59.4 | 29.4 | 14.28.43 | 2.43.29 | 60.02 | 31.13 |
4) | 14.39.62 | 2.42.3 | 59.9 | 29.8 | 14.29.60 | 2.43.99 | 60.64 | 31.01 |
5) | 14.41.24 | 2.44.1 | 61.5 | 31.2 | 14.36.05 | 2.50.69 | 67.58 | 37.82 |
6) | 14.45.11 | 2.47.5 | 64.8 | 33.3 | 14.40.57 | 2.54.63 | 70.02 | 35.42 |
7) | 14.46.29 | 2.47.9 | 62.7 | 30.1 | 14.44.57 | 2.51.26 | 64.37 | 31.48 |
8) | 14.46.49 | 2.48.9 | 66.00 | 33.1 | 14.44.92 | 2.51.71 | 64.91 | 31.69 |
9) | 14.52.84 | 2.54.2 | 66.9 | 33.3 | 14.45.18 | 2.51.69 | 65.36 | 31.64 |
10) | 14.54.39 | 2.56.2 | 68.7 | 34.1 | 14.46.17 | 2.53.42 | 65.70 | 32.28 |
22年日本選手権での田中(15.05.61)とは5000mのタイムで40~10秒あまりの差がある。とはいえ、田中は、800m決勝の73分後にスタートした5000mだったという条件を考慮してもいいだろう。
田中のラスト1000mは2分48秒9、同400m62秒0、同200m31秒4は、メダリストのラスト1周58~59秒台やラスト200m28秒台などには及ばないものの5~6位以下の選手と比較すると十分に勝負ができそうだ。田中が残り1周を切ってから本来のスパートができれば「入賞争い」で競り負けることはほとんどないだろう。
廣中には田中ほど瞬発的なスピードはないが、20年12月の日本選手権で田中(15.05.65)に最後で突き放されて2位(15.07.11)だった時のラスト1000mは、2分53秒3(田中は2分51秒4)でカバーしている。
また、萩谷も20年7月のディスタンスチャレンジ網走大会で当時のベスト15分05秒78をマークした時(4位=日本人2位。1位は田中で15分02秒62)のラスト1000mは2分52秒1(田中は2分50秒0)だった。
◆「日本新」の可能性も……
「記録よりも順位優先」の世界大会ではあるが、当日の気象状況やレース展開によっては、廣中の日本記録(14分52秒84)を更新するかもしれない。というか、決勝では日本記録を破らないと「入賞ライン」に届かない可能性が高そうだ。19年ドーハ世界選手権の決勝は、21時25分のスタート時の気温が27℃、湿度71%の中でレースが行われ、
1)14.26.72=大会新 |
2)14.27.49 |
3)14.28.43 |
4)14.29.60 |
5)14.36.05 |
6)14.40.47 |
7)14.44.57 |
8)14.44.92 |
「27℃・71%」というと「蒸し暑い」ということになるが、ドーハの競技場にはトラックを取り囲むスタンドの壁から冷風が送られるような冷房装置が設置されていた。よって、走る選手にはかなり快適な条件だったようだ。
今回の予選が行われる7月20日16時25分(日本時間21日午前8時25分)、決勝がスタートする7月23日18時25分(日本時間24日午前10時25分)に近いユージーンの19年から21年の過去3年間の気象状況は、下記の通り。
【過去3年間の7月20日(女子5000m予選の日)のユージーンの気象状況】
時刻 | 2021年7月20日 | 2020年7月20日 | 2019年7月20日 |
---|---|---|---|
15時54分 | 晴・27.8℃・38% | 晴・34.4℃・26% | 晴・28.9℃・24% |
16時54分 | 晴・27.8℃・40% | 晴・34.4℃・25% | 晴・29.4℃・24% |
【過去3年間の7月23日(女子5000m決勝の日)のユージーンの気象状況】
時刻 | 2021年7月23日 | 2020年7月23日 | 2019年7月23日 |
---|---|---|---|
17時54分 | 晴・31.1℃・21% | 晴・27.2℃・35% | 曇・25.6℃・40% |
18時54分 | 晴・30.0℃・23% | 晴・26.7℃・39% | 曇・23.9℃・40% |
以上の通りで、30℃を超えた年もあるが湿度は20~30%台から40%丁度。
直射日光を受けると暑さを感じるかもしれないが、曇っていればそれほどでもないかもしれない。
なので、高温多湿の日本よりも条件はかなりいい可能性が高そうだ。
よって、優勝記録も入賞ラインも至近2世界大会を上回るようなレベルになるかもしれない。
東京五輪の決勝で廣中が日本記録(14.52.84)を出した時の100m毎のペースは下記の通りだ。
【廣中璃梨佳の日本記録(14.52.84)の時の100m毎】
・世界陸連HPのデータ。
・カッコ付き数字は通過順位。
100 | 9) 19.9 | 19.9 | |||
---|---|---|---|---|---|
200 | 1) 39.1 | 19.2 | 39.1 | ||
300 | 1) 57.2 | 18.1 | |||
400 | 1) 1.15.0 | 17.8 | 35.9 | 75.0 | |
500 | 1) 1.32.8 | 17.8 | |||
600 | 1) 1.50.3 | 17.5 | 35.3 | ||
700 | 1) 2.07.9 | 17.6 | |||
800 | 1) 2.25.3 | 17.4 | 35.0 | 70.3 | |
900 | 1) 2.43.1 | 17.8 | |||
1000 | 1) 3.00.70 | 17.6 | 35.4 | 3.00.7 | |
1100 | 1) 3.18.4 | 17.7 | |||
1200 | 1) 3.36.5 | 18.1 | 35.8 | 71.2 | |
1300 | 1) 3.54.5 | 18.0 | |||
1400 | 1) 4.12.6 | 18.1 | 36.1 | ||
1500 | 1) 4.30.5 | 17.9 | |||
1600 | 5) 4.48.3 | 17.8 | 35.7 | 71.8 | |
1700 | 6) 5.07.5 | 19.2 | |||
1800 | 6) 5.25.3 | 17.8 | 37.0 | ||
1900 | 5) 5.42.8 | 17.5 | |||
2000 | 6) 6.00.8 | 18.0 | 35.5 | 72.0 | 3.00.1 |
2100 | 5) 6.18.9 | 18.1 | |||
2200 | 7) 6.36.7 | 17.8 | 35.9 | ||
2300 | 7) 6.55.1 | 18.4 | |||
2400 | 10) 7.12.6 | 17.5 | 35.9 | 71.8 | |
2500 | 10) 7.30.2 | 17.6 | |||
2600 | 10) 7.47.2 | 17.0 | 34.6 | ||
2700 | 10) 8.05.2 | 18.0 | |||
2800 | 10) 8.23.6 | 18.4 | 36.4 | 71.0 | |
2900 | 9) 8.42.4 | 18.8 | |||
3000 | 9) 9.00.7 | 18.3 | 37.1 | 2.59.9 | |
3100 | 9) 9.19.1 | 18.4 | |||
3200 | 9) 9.37.3 | 18.2 | 36.6 | 73.7 | |
3300 | 11) 9.55.0 | 17.7 | |||
3400 | 11)10.12.1 | 17.1 | 34.8 | ||
3500 | 11)10.30.0 | 17.9 | |||
3600 | 11)10.47.7 | 17.7 | 35.6 | 70.4 | |
3700 | 11)11.05.7 | 18.0 | |||
3800 | 11)11.23.3 | 17.6 | 35.6 | ||
3900 | 11)11.41.0 | 17.7 | |||
4000 | 11)11.58.6 | 17.6 | 35.5 | 70.9 | 2.57.9 |
4100 | 11)12.16.5 | 17.9 | |||
4200 | 10)12.34.2 | 17.7 | 35.6 | ||
4300 | 10)12.52.3 | 18.1 | |||
4400 | 10)13.10.3 | 18.0 | 36.1 | 71.7 | |
4500 | 10)13.28.4 | 18.1 | |||
4600 | 10)13.45.9 | 17.5 | 35.6 | ||
4700 | 9)14.03.2 | 17.3 | |||
4800 | 9)14.19.5 | 16.3 | 33.6 | 69.2 | |
4900 | 9)14.36.0 | 16.5 | |||
5000 | 9)14.52.84 | 16.8 | 33.3(66.9) | 2.54.2 |
・ラスト800m、2.18.6
・ラスト1500m、4.22.8
・ラスト2000m、5.52.1
・ラスト3000m、8.52.0
基本的には、400mを72秒、1000mを3分00秒の「15分00秒ペース」のほぼイーブンで3000mまでを刻み、4000mまでに2秒、ラスト500mで「5秒を削り出した」というペース配分だった。
前半のペース次第で「入賞ライン」がどの程度になるかはわからないが、こんなデータも紹介しておこう。
全種目を網羅した世界陸連採点表による田中の各種目ベストのポイントは、
800m | 2.02.36 | 1120pt |
---|---|---|
1000m | 2.37.72 | 1133pt |
1500m | 3.59.19 | 1212pt |
3000m | 8.40.84 | 1171pt |
5000m | 14.59.93 | 1163pt |
10000m | 31.59.89 | 1139pt |
最もポイントが高い1500mの「1212pt」を5000mのタイムに当てはめると「14分35秒25」。つまり、1500m3分59秒19の走力からすると田中は5000mを14分35秒くらいで走れても不思議ではないということだ。
あるいは、少々古いデータだが筆者が1986年から2010年の25年間に日本・高校・中学リストに入った各種目数千人の年次ベストのデータを分析したところ、平均では1500mの記録の「3.686470倍」のタイムで5000mを走っていた。田中の1500m3分59秒19の「3.686470倍」は、「14分41秒77」となる。倍率の標準偏差は、「±0.088142」でこれを考慮すると「14分20秒69~15分02秒85」で走れる可能性が統計学的には「68.26%」ということになる。
また、廣中の10000mのベスト31分00秒71(東京五輪7位の時)は、「1192pt」。これと同じポイントの5000mのタイムは「14分45秒40」。
また、上述の筆者の分析による5000mと10000mの平均的倍率と標準偏差の「2.085137倍±0.039937」をもとに廣中の10000mから5000mのタイムを逆算すると「14分52秒37」。標準偏差の範囲は「14分35秒60~15分09秒79」だ。
いずれにしても、田中にも廣中にも14分30秒台くらいの可能性はあるということだ。
ということは、すなわち「入賞」につながる。
萩谷については、5000mのベスト14分59秒36のポイントが「1164pt」で他の種目の自己ベストよりも高いので、田中や廣中のように他種目から逆算しての比較はできない。が、これまでの世界選手権と五輪の世界大会の予選で最もレベルが高かった21年東京五輪での「予選通過ライン(14.59.56)」を上回るベストを持っている。
トリオで決勝進出となれば、25年前の97年アテネ世界選手権以来12大会ぶり2回目となる。是非とも実現してもらいたい。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト
>>オレゴン2022世界陸上競技選手権大会 特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/wch/oregon2022/
>>世界選手権ガイド
https://www.jaaf.or.jp/wch/oregon2022/guide/>>記録と数字で楽しむオレゴン世界選手権
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