「セイコーゴールデングランプリ陸上2022東京」(セイコーGGP)が5月8日、ワールドアスレティックス(WA)がダイヤモンドリーグに次ぐ国際主要大会と位置づけて展開する「コンチネンタルツアー」のゴールド(最高峰)として、東京・国立競技場で開催される。
昨年夏に開催された東京オリンピック以降、国立競技場で開催する国際大会は、これが初めて。海外トップアスリートの招聘が実現しただけでなく、有観客での開催も決定。ワクワクに満ちた華やかな「GGP」が3年ぶりに戻ってくる。当日は、男子9、女子5の合計14種目が実施されるタイムテーブル。来日するメダリストたちとの勝負はもちろんのこと、オレゴン世界選手権出場を目指しての参加標準記録への挑戦や、代表入りを目指す国内選手間の戦いにも注目が集まる。ここではトラック編とフィールド編に分けて、注目の選手や見どころを、ご紹介していこう。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト、アフロスポーツ
女子やり投
今回のGGPは、フィールドでは、男子は走高跳、走幅跳、やり投、女子は走幅跳、やり投の計5種目が行われる。どの種目にも、オレゴン世界選手権に出場、さらには決勝進出や上位を狙って戦っていこうとする日本選手がエントリーしている。好記録が誕生する可能性も十分にある状況だ。
なかでも記録、勝負ともに高いレベルのパフォーマンスを期待できそうなのが女子やり投。66m00の日本記録を持つ北口榛花(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)がエントリー、来日が実現した東京オリンピック銅メダリストのケルシー・リー・バーバー(オーストラリア)と対戦する。
北口は、東京オリンピックは、予選を1回の試技で通過したものの、そこで生じた左脇腹(斜腹筋)の肉離れにより、決勝は12位(最下位)にとどまった。完治までに3カ月の期間を要する重症だったが、トレーニングを再開してからはしっかりと強化を進めることができている。5月1日の木南記念では、雨で気温の上がらない悪条件下にもかかわらず、1回目に今季世界7位となる61m20をマーク。5回目にも60m47と、60mラインを越えるアーチを描いた。
オレゴン世界選手権での決勝進出を今季の目標に据える北口は、そのために「3回目(の試技)までに63~64mを安定して投げられるようにしたい」と木南記念でコメントしていた。GGPで実現できれば、当然、世界選手権参加標準記録64m00の突破も見えてくる。さらに、バーバーは、昨年のシーズンベストは64m56だが、自己記録は2019年にマークした67m70で、同年のドーハ世界選手権で金メダルを獲得している実力者。GGPでの戦いぶりは、世界のライバルたちも注目しているはず。5月5日時点の今季世界最高は65m70。北口からパーソナルベストに迫る一投が飛び出すようだと、世界選手権本番に向けての強烈な先制パンチとなることだろう。
女子やり投では、北口以外の日本選手にもレベルの高い好投が期待できる。2019年ドーハ世界選手権代表の佐藤友佳(ニコニコのり、自己記録62m88)、2017年ロンドン世界選手権代表の斉藤真理菜(スズキ、自己記録62m37)、さらには昨年に記録を伸ばしてきた武本紗栄(佐賀スポ協、62m39)・上田百寧(ゼンリン、61m75)と、60mスローワーが顔を揃える。また、木南記念で59m37まで自己記録を更新してきた長麻尋(国士舘クラブ、ダイヤモンドアスリート修了生)も60mラインを大きく越えていける力を持っている選手。日本の「オレゴン行きチケット」は最大3枚。これを巡る戦いも、しっかりチェックしておきたい。
男子やり投
男子やり投では、ベテランと呼ばれる年代になったディーン元気(ミズノ)が、その名の通り“元気”だ。木南記念では、2回目でトップに立つと、後半に記録を伸ばしていくシリーズを展開し、6回目で81m91をマーク。東京オリンピック代表の小南拓人(染めQ、自己記録82m52)らを圧倒した。この記録は、今季世界8位に浮上するもの。木南記念では4回目にも80m68と、2度の80mオーバーを果たしている。ディーンは早稲田大学時代の2012年に大ブレイク。自己記録の84m28は同年にマークしたもので、2012年ロンドンオリンピックで決勝進出も果たした。故障に苦しむ期間が長かったが、オフシーズンにはやり投王国フィンランドでトレーニングするなど、従来にはなかったスタイルを築いてきた選手でもある。東京オリンピック出場は逃したが、パリオリンピックに向けて、さらなる一歩を踏み出している。
この種目の世界選手権参加標準記録は85m00。木南記念では、「やり投は5~6mは簡単に記録が伸びる。あわよくばセイコーGGPで」と突破に向けて意欲を見せており、これが実現すれば、10年ぶりの自己記録更新、さらには2013年ユニバーシアード(現ワールドユニバーシティゲームズ=WUG)以来となる“日本代表入り”にも大きく近づくことになる。
男子走高跳
男子走高跳には、2m36のオセアニア記録保持者で、東京オリンピックで5位に入賞したブランドン・スターク(オーストラリア)がエントリー。対する日本も、2m35(室内)の日本記録保持者で、東京オリンピックで日本人として49年ぶりの決勝進出を果たした(13位)戸邉直人(JAL)のほか、2m31の自己記録を持つ真野友博(九電工)らが出場する。まずまずの滑りだしを見せているのは真野で、5月3日の静岡国際は2m27で優勝。昨年は東京オリンピック出場には、あと一歩のところで届かなかっただけに、2024年パリオリンピックに向けてのスタートとなる今季は、参加標準記録(2m33)をクリアしてのオレゴン世界選手権出場を目指したい。気象条件に恵まれれば、セイコーGGPでその跳躍が見られるかもしれない。戸邉は、3月の世界室内選手権、5月の静岡国際ともに2m15にとどまった。5~6月の3戦で2m30をクリアした昨シーズンの状態に、どこまで近づけていけるか。ワールドランキングのポイントを獲得するうえでも、セイコーGGPでは、それなりの記録と順位が必要だ。
男子走幅跳
男子走幅跳は、東京オリンピック6位入賞を果たした橋岡優輝(富士通、ダイヤモンドアスリート修了生)が、回復途上にある足首の故障を考慮して欠場することになったのは惜しまれるが、橋岡とともに、東京オリンピック、そして2019年ドーハ世界選手権にも出場した城山正太郎(ゼンリン、日本記録保持者8m40)、津波響樹(大塚製薬、8m23)はエントリー。両者ともに、今季はスロースタートの印象だが、2大会連続となる世界選手権出場を目指して、そろそろエンジンをかけていきたい。世界選手権参加標準記録は8m22。できることなら梅雨どきの開催となる日本選手権前に跳んでおきたいはずだ。
今季安定した跳躍を見せているのは、社会人1年目となる吉田弘道(神崎陸協)だ。7月上旬に中国で開催される成都WUG代表選考会として行われた日本学生個人選手権(大学を卒業しているためオープン扱い)では、7m85をマークして優勝記録を上回り、兵庫リレーカーニバル(一般・高校の部、7m87、木南記念(7m88)も連勝している。自己記録は昨年マークした8m14で、参加標準記録まであと8cm。すでに出場が決まったWUGに続く、世界選手権出場も夢ではないところまで来ている。
女子走幅跳
女子走幅跳のオレゴン世界選手権参加標準記録は6m82。この条件をクリアするためには、日本記録(6m86、池田久美子、2006年)に迫るビッグジャンプが必要な状況だ。オリンピックや世界選手権本番でこの記録を跳べば、入賞可能なレベルであるだけに、非常に敷居の高い記録といえるが、ここ数年で、着実にその距離を縮めてきているのが秦澄美鈴(シバタ工業)だ。
秦の自己記録は昨年の兵庫リレーカーニバルでマークした6m65(+1.1)で、このときは追い風参考(+3.0)では6m69を跳んでいる。昨年は出場した試合はすべて6m40以上の跳躍で優勝。しかし、WAワールドランキングで高いポイントが得られるアジア選手権等が中止となった不運も重なって、東京オリンピック出場は叶わなかった。今年は3月の日本選手権室内は6m52を跳んで、室内日本記録(6m57、花岡麻帆、2003年)に肉薄。4月の兵庫リレーカーニバルは6m60(+1.8)のセカンドベストで連覇、疲労を考慮して2回の跳躍にとどめた木南記念も6m43(-0.6)で優勝と、引き続き安定した戦績を残している。セイコーGGPのWAにおける競技カテゴリーは、アジア大会と同レベルのA。日本国内で開催される競技会としては最高水準に位置づけられ、そのぶん獲得できるポイントも高くなる。6m70台での優勝が実現すれば、初の世界選手権代表入りが、ぐんと近づくとともに、6m82という参加標準記録への足がかりとなる。全6回で、どんな跳躍を見せてくれるかに注目したい。
>>トップアスリートのパフォーマンスを国立競技場で
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■「セイコーゴールデングランプリ陸上2022東京」出場選手情報
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■5月7日(土) 国立競技場で日本一・オレゴン世界選手権日本代表が決まる!
「日本陸上競技選手権大会・10000m」特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/jch/106/10000m/
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