2022.02.09(水)大会

"競歩"の歴史に迫る!~競歩競技の誕生とオリンピック種目としての変遷~



大会を楽しみにしていただいているファンの皆様に、少しでも本大会を楽しんでいただけるよう「競歩競技の歴史」をご紹介いたします。

オレゴン2022世界選手権では男子20km競歩にて山西利和選手(愛知製鋼)が金メダルを獲得し2連覇を達成、池田向希選手(旭化成)が銀メダルを獲得、住所大翔選手(順天堂大学)が8位入賞を果たしました。また、女子20㎞競歩では、藤井菜々子選手(エディオン)が2大会連続の6位入賞、男子35km競歩では川野将虎選手(旭化成)が銀メダルを獲得し、チームJAPANの強さを改めて示しました。

競歩競技の誕生やオリンピック種目として採用されてからの過程など意外と知らない競歩競技の歴史を是非ご覧ください!


"WALK"と「競歩」

「歩く」という身体動作は、人類が直立二足歩行をはじめて以来、それが発展した「走る」という動作とともに、人間の移動運動のひとつとして欠かすことのできない行動様式として位置づけられてきました。
この「歩く」という動作は、太古の時代から労働の手段として生活の中にしっかりと組み入れられてきましたから、「競歩競技」も「競走」よりも後発だったものの、各種の「競走」と同様、世界各地でいろいろな形で、様々な距離を設定して行われるようになったのは必然の成り行きでした。

「競歩競技」は英語では、walk-raceあるいはwalking-race、race-walking などと呼んでいます。このwalk という英語は、スウェーデン、ノルウエー、デンマークなどの北欧で「重いものを引っ張る」、「足を引きずる」「のろのろ進む」や「転びまわる」、「もがき進む」などの意味で使っている valka、walke と同じ語源を持つ語であり、「まわる」、「投げ上げる」の意味を持つ古英語のwealcan や「行く」という意味の gewealcan から転じた語です。今日では、この walk は人間や動物が足を使って「歩く」動作を表現する言葉として使われています。

「競歩競技」は「競走」に比べてそれほど古い歴史を持っているわけではありません。古代オリエントやギリシアの競技には主として短距離を中心とする「競走」が実施されていたことが見受けられるものの、この「競歩」が行われていた形跡は見当らないのです。


7マイル競歩が定着

19世紀半ばに、イギリスでは、クリケット場などのグランドを使った興行としての賭レースが開催されていきますが、「競歩」もまたこれらの大会の種目の中に組み入れられていきます。しかし、選手の層が薄かったこともあり、常勝の選手が決まっていたので賭レースとしての興味はなくなり、次第に現役の大学生や大学を卒業したアマチュアによる「競歩」が中心になっていきました。

グランドを使ったアマチュアの試合では、1866年3月23日に開催された「第1回アマチュア陸上競技クラブ(AAC)大会」で、「7マイル(11.265km)競歩」が初めて採用されました。
7マイル競歩が唯一選ばれた理由として、距離が長ければグランドでのレースとしては所要時間が長すぎて試合運営上に支障をきたしますし、短ければ選手はスピードを上げようとして「いずれかの足が、常に地面から離れないようにして前進すること」という「競歩規則」が守られないからであると考えられます。この大会で優勝したケンブリッジ大学の学生 J· チャンバースの記録は、59分32秒でした。

その後、7マイルがグランドでの競歩競技の距離として定着していきましたが、時には2マイル(3.2km)程度の短いものも行われました。しかし、短い距離ではどうしても「走」に近い形になり、反則かどうかをめぐって常に「もめ事」が絶えず、短い距離の競歩は次第に行われなくなりました。


オリンピックにおける「競歩競技」

1964年東京オリンピック 男子20km競歩

オリンピック大会での競歩競技は、1906年にアテネで行われた、俗に「中間大会」 といわれている「近代オリンピック復活10周年記念大会」で1500mと3000mの2種目が行われたことを契機に、1908年の「ロンドン大会」では3500mと10マイル、12年の「ストックホルム大会」では10000m、20年の「アントワープ大会」では 3000mと10000m、24年の「パリ大会」では10000mのみが行われました。
その後、トラックで実施された「7マイル競歩」の判定をめぐって紛糾し、1927年の「国際陸連総会」で「競歩競技」を存続させるかどうかの激論が交わされた結果、28年の「アムステルダム大会」では中止となりました。しかし、28 年の総会で再びこの問題が議題に上がり、32年の「ロサンゼルス大会」からは、メイン・スタジアムをスタート・フィニッシュとする道路を使った「マラソン競歩」ともいうべき「50km競歩」を実施することとしました。同時に「競歩」の定義を「いずれかの足が常に地面から離れないように前進することである」と再確認しました。

道路を使っての「50km競歩」という「マラソン競走」よりも長い距離が選ばれるようになった理由は、「走っても」「歩いても」結果的に記録が変わらないような「長い距離」を採用することによって、「競歩であるかどうか」の難しい判定を避けようとしたのではないかと思われます。
これ以後、「競歩」は「オリンピック」や国際的な大会では、道路を使ってトラックよりも長い距離を「歩く」ことによって、「走る」動作を未然に防ぎ、反則をめぐる審判上のトラブルや失格者を出さないような方法で実施することになりました。

第二次世界大戦後のオリンピック大会では、48年の「ロンドン大会」、52年の「ヘルシンキ大会」にて50km競歩のほかにトラック内で再び 10000m競歩を行いました。しかし、国際的な支持は得られず、56年の「メルボルン大会」からは周回の道路を使った「20km競歩」を導入し、1930年代以降行われてきた「50km競歩」との2種目がオリンピックや世界選手権での公式な種目となりました。

そして、2021年に開催された東京2020オリンピック(札幌大通公園スタート・フィニッシュ)をもって、オリンピックや世界選手権等の主要国際大会では50km競歩は廃止されることとなりました。2022年からは、新たに「35km競歩」が導入され、「20km競歩」と「35km競歩」の2種目が主要国際大会の公式種目となっています。



東京2020オリンピック 女子20km競歩

周回の道路を使ったコースの規定も年を経てより厳格になっています。競歩審判員の目が十分に行き届くことを目的に、現在の規則では、「周回コースは 1周、最長で 2km、最短で 1km」と定められおり、オリンピックや世界選手権では、1kmの周回コースが原則となっています。

女子の種目については、1923年に始まった「イギリス女子選手権大会」で 800mから2500mまでのさまざまな距離の「競歩」が行われてきました。1926年のイェーテボリでの「世界女子選手権大会」ではトラック内で行う「1000m競歩」が採用されました。今日、オリンピックや世界選手権では「20km競歩」が道路を使って行われていますが、2017年「50km競歩」も世界記録として公認される種目として追加され、2017年5月に開催された世界陸連(当時 国際陸連)主催の世界チーム選手権には、アメリカの女子選手が 50kmに出場。2017年のロンドン世界選手権で女子50km競歩が採用されて以降、日本国内でも女子の50kmのレースが行われてきました。しかしながら、オリンピック種目としては実施されず、2022年のオレゴン世界選手権では「35km競歩」が公式種目となりました。

出典『陸上競技のルーツをさぐる』(立命館大学名誉教授・岡尾惠市著)
著者の許可を得て一部改変
写真提供:フォート・キシモト


■第47回全日本競歩能見大会 大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1704/

■第107回日本陸上競技選手権大会・35km競歩 大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1750/

■競歩特設サイト「Race walking Navi」
https://www.jaaf.or.jp/racewalking/ 

■難しすぎる陸上クイズ競歩編~これであなたも競歩マスターの仲間入り!~
https://www.jaaf.or.jp/news/article/14642/

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