2021.06.06(日)大会

9秒95日本新記録!布勢スプリント優勝 /男子100m山縣亮太選手 記者会見コメント

布勢スプリント2021は6月6日、ヤマタスポーツパーク陸上競技場(鳥取県立布勢総合運動公園陸上競技場)で、サトウ食品日本グランプリシリーズ鳥取大会として開催されました。グランプリ男子100m決勝では、東京オリンピック参加標準記録(10秒05)を突破する10秒01(+1.7)で予選を通過していた山縣亮太選手(セイコー)が、自身初の9秒台突入となる9秒95(+2.0)でフィニッシュ。2019年にサニブラウン アブデルハキーム選手(タンブルウィードTC、当時フロリダ大)が出した日本記録(9秒97)を更新して、優勝を果たしました。
ここでは、競技終了後に行われた記者会見での山縣選手のコメントをご紹介します。



――今の率直な気持ちを。
山縣:すごく嬉しいのと、ホッとしているのと、その気持ちが大きい。

――今日は、予選で10秒01。東京オリンピックの参加標準記録(10秒05)を切ったあとでの決勝だった、どういう気持ちで(レースに)向かったのか?
山縣:ここ(決勝レース)が世界(大会)の準決勝だと思って臨んだ。

――予選で、オリンピック参加標準を突破したので、決勝を棄権する選択肢もあったと思うのだが、それは考えていなかった?
山縣:もちろん、身体にどこか不調があれば、大事をとって(やめる)という選択肢もあったのだが、それもなかったし、世界の大会で戦うことを考えたら、「このタイムで何本揃えられるか」がキーになってくると思ったので、「なんとか記録が出せるように調整して(臨んで)みよう」と思った。(記録が)出るかどうかはわからないけれど、とりあえず1本走ろうという気持ちで、決勝レースに向かった。

――その決勝では、多田修平選手(住友電工)に先行されたなかでのレースだった。走りながら考えていたことを。
山縣:多田選手が先行して、途中まで前に見えていたが、今回は、ラストまでしっかり集中力を切らさずに、自分の走りのペースを崩さないようにということをすごく意識していた。そのあたりがうまくハマってくれたことが、ラスト(で多田選手を)かわせた要因だったかなと思う。

――中盤からの加速を感じる走りだったが、フィニッシュしたときの手応えは?
山縣:多田選手がすごく近くにいたので、(意識としては)勝負ということに向かっていた。なので、正直、タイムのことは気にしていなかったのだが、それでも「今日はいい記録が出るだろうな」とは思っていた。

――今日のレース2本は、自分としてはどう評価している?
山縣:全体的には(予選・決勝の)どちらもよかったのだが、予選は、スタートが少し失敗したなと思ったので、そのあたりを、決勝で修正できたらいいなと考えながら2本目(決勝)に臨んだ。その2本目もスタートで先行することができなかったので、「まだまだなのかな」と思うところはある。しかし、全体的には、中盤から終盤でペースを乱さない走りできた。それが、今回の好記録に繋がったと思っている。


――今回体感した9秒95の速さは、今までと何か違いはあったか?
山縣:いいことか悪いことかはわからないのだが、最後のところで、脚の回転が追いつかなくなってくるような感覚があった。10秒00くらいで走っているときは、最後まで地に足が着いたような走りができるのだが、今日は、最後のほうはフワフワしてしまった。そのあたりで「まだこのスピード感に身体が慣れていないんだな」ということは感じている。

――速報でまず「9秒97」が出て、正式結果(9秒95)が出るまでに少し時間がかかったが、その間、何を考えていたか?
山縣:“公認(記録)であってくれ”と(笑)、思っていた。

――9秒95の表示が出た瞬間は?
山縣:(9秒)97でも嬉しかったのだが、まさか日本記録…(9秒)95が公認で出るとは思っていなかったので、なんかこう…(言葉を少し探して)2倍嬉しかった(笑)。

――改めて、日本新記録9秒95という数字を、自身でどう捉えているか?
山縣:このタイムを追い風1m以内でも出せるように、今後は走りの精度を上げていきたいなと思う

――世界で戦うことを考えたときに、どう評価する?
山縣:世界の準決勝は、風がなくてもこれくらいのタイムで走らないといけない世界。もう1歩、前進しなければいけないと感じている。

――9秒95は、出るべくして出た記録だった?
山縣:この大会には、(9秒)95というよりも9秒台を…とりあえず(追い風)2.0mでもなんでもいいから、まずは9秒台をどこかで出したいなと思って臨んでいた。本当に、その通りになってよかったと思う。

――ここまで、肺気胸があって、足首の故障があって、膝が痛んで…と、何度も苦境に陥ながらも、必ずそこから復活してきた。今シーズンに期するものはあったのか?
山縣:毎年勝負のシーズンだと思って取り組んでいるなかで、ここ2年は思うようにいかない日々が続いていたわけだが、ケガは、ある種、自分の走りの課題を突きつけられているものだと思っていた。なので、ケガをしっかり克服できれば、もっともっといい走りができると信じて、ここまでトレーニングをやってきた。それが自己記録という形で実を結んで、本当によかった。


――100mでオリンピック参加標準記録を突破した選手は、これで5人となった。日本選手権に向けて、どう繋いでいくか?
山縣:もちろん簡単なレースにはならないと思うので、日本選手権はしっかり気を引き締めて、「絶対に(オリンピックの)代表権を取るぞ」という強い気持ちを持って臨みたい。

――10秒00がベストだったときと、動きは変わってきている?
山縣:「意識していることは全然違うのだが、理想のイメージはけっこう同じところを向いているな」という感じ。今、振り返ってみると、そういう気がする。

――今、意識していることとは?
山縣:フォームの話をするのだったら、「しっかりとお尻を使えて、でも、前傾をかけられる」ということ。その両立(が大切)かなと思っている。

――ライバルたちを、どう見ているか。
山縣:日本選手権のライバルになる選手たちの走りには、それぞれに特徴があって、多田選手みたいにスタートから自分のレースをつくっていく選手もいれば、終盤のところで追い上げてくる選手もいる。自分の強みは、多田選手とかぶるのだが「スタートから自分のレースをつくっていくこと」。日本選手権ではそこが大事になってくると思う。そういう意味で、今回、多田選手と一緒に走ることになって、中盤まで先行されるレースのなかで最後まで走りきることができた。(日本選手権に向けての)いい予行演習になったかなと思う。

――結果が出ていない時期に、「自分はチャレンジャーになった」といったような発言があった。今回の結果で(日本記録保持者という形で)トップに立ったわけだが、自分のその気持ちの有りようは変わるのか?
山縣:変わらない。とにかく変化を恐れずにやっていきたい。また、今日のレースで出た新たな課題もあるので、それを次に生かすというスタイルは変えずにやっていきたいと思っている。

――長年挑戦してきてた9秒台を出しての感慨はあるか?
山縣:実感がないわけではないのだが、なんか、まだちょっとフワフワしているので(笑)、家に帰ってから噛みしめたい。

※この一問一答は、大会終了時に行われた記者会見における質疑応答の一部をまとめたものです。内容をより明瞭に伝えることを目的として、構成に編集を加えています。

構成・文、写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)


~東京への最終章~ 

第105回日本陸上競技選手権大会 6月24日~27日開催!
#誇りをまとうために。

https://www.jaaf.or.jp/jch/105/



各申請が完了次第、正式に日本記録として公認されます
■日本記録が公認されるまで
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11991/

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