日本陸連では、2020東京オリンピックと、その後の国際大会での活躍が大いに期待できる次世代の競技者を強化育成する「ダイヤモンドアスリート)」制度を、2014-2015年から実施しています。7年目に突入する今年も、新型コロナウイルス感染拡大の影響等でやや日程がずれ込んだものの、第7期(2020-2021)指定競技者が決定。2月18日には継続認定者4名に新規認定者2名を加えた全6名(https://www.jaaf.or.jp/news/article/14653/ )が発表されました。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から認定式・修了式は行われませんでしたが、今後、認定競技者には、さまざまなプログラムが提供されていくことになります。
その第一弾として、2月26日には、第1回リーダーシッププログラムが行われました。リーダーシッププログラムは、ダイヤモンドアスリートに提供される「測定・研修プログラム」の1つ( http://www.jaaf.or.jp/diamond/program/ )で、「競技力向上だけではなく、豊かな人間性を持つ国際人育成のための個を重視した育成プログラムの中でリーダーシップ教育と位置づけて行い、国際的なリーダーシップを発揮できるアスリートの育成を目指す」ことを目的としています。今年も、東京マラソン財団スポーツレガシー事業として実施されました。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全3回をすべてオンラインで実施していく予定です。
初回となったこの日は、第7期生として認定された6名のうち、現在、アメリカで大学生活を送っているクレイアーロン竜波選手(相洋AC、800m)を除く、中村健太郎選手(日本大、やり投)、出口晴翔選手(順天堂大学、400mH)、藤原孝輝選手(洛南高校、走幅跳)の継続認定者3名と、栁田大輝選手(東京農業大学第二高校、100m )とアツオビンジェイソン選手(大阪桐蔭高校、砲丸投)の新規認定者2名のほか、第6期で修了した海鋒泰輝選手(日本大学、走幅跳)と小林歩未選手(筑波大学、100mH)が参加。2部構成で展開された約3時間にわたる講義を受けました。
第1部では、為末大さん(男子400mハードル日本記録保持者)によるトークセッションが行われました。第1期からさまざまな形でこのプログラムに参加している為末さんは、まず、ダイヤモンドアスリート(DA)認定制度が始まった経緯や、東京マラソン財団からどういう形で支援を受けているかなどを説明しました。
そして、「東京五輪開催に賛成か、反対か?」「競技以外のことを、なぜ考えないといけないのか?」「リーダーシップとは何か?」「陸上競技は何のためにあるのか?」といった設問をDAたちに投げかけ、それぞれの意見や感想を引き出していくなかで、
・今見ている風景がすべてではなく、自分の見ているものとは全く違う世界がある、
・正解がないなかでも意見を求められ、それに応えなければならないことが、リーダーにはある、
・競技のみに集中していると思っても、実際には自分を取り囲む幾重の環境の影響を受けている。それを認識しておこう、
・「リーダーシップ」にはいろいろな定義があって正解はないが、私(為末さん)は、リーダーシップをとるのに必ずしも自分がリーダーである必要はなく、フォロワーになって支えるという形のリーダーシップもあると考えている。周りの人たちとコミュニケーションをとりながら、よりよい方向に導いていくマインドを持とう。「自分には何かを変える力がある」ことを知っておいてほしい、
・自分が取り組んでいることの価値を、言葉にして、表現してほしい。同じように価値を感じてくれる人が社会には必ずいる。陸上競技でいうなら、まずは陸上競技における価値を言葉にして、表現するということ。それに共感する人が出てきて、陸上競技にかかわるようになることで、全体がよく変わっていく、
などの、リーダーに求められる視点や考え方を紐解いていきました。
最後に、「コロナ禍の影響で、世の中にはストレスがたまっているが、一所懸命やっている人を応援したいのが人間の本質。社会がみんなを応援していることを忘れないでほしい」と受講者たちにエールを贈って、セッションを締めくくりました。
第2部では、日本オリンピック委員会(JOC)選手強化本部でインテグリティ教育ディレクターを務める上田大介さんを迎えて、「選手とソーシャルメディア(SNSリスクマネジメント)」をテーマとする講義が行われました。
上田さんは、まず選手たちに、DAに認定されたことによって、自分たちが周囲からより高い関心や注目を集める存在になっていて、金儲けのために利用される恐れもあることを改めて認識させた上で、
・注目される立場の人間に求められるリスクマネジメント
・ソーシャルメディアとは? ソーシャルメディアが与える影響
・現在、自分が置かれている状況
・将来の自分のためにできる対策
・これからのSNSの使い方
について、一つ一つ丁寧に、実例や具体的な方法を挙げながら、ソーシャルメディアとの向き合い方やSNSの有効な活用の仕方を紹介。DAたちは、ソーシャルメディアについての基本的なしくみや有益な側面と危険な側面を理解したうえで、SNSを使うことによって陥る可能性のあるリスク、将来のために今やっておくべき3つの見直し(過去の情報、現在のつながり方、パスワード)、トラブルを遠ざけるために身につけておきたい3つの習慣(危険な時間帯を意識する、送信直前に冷静になる、ファクトチェックを行う)などを学びました。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
■ダイヤモンドアスリート特設サイトはこちら
https://www.jaaf.or.jp/diamond/
■ダイヤモンドアスリート第7期認定アスリート紹介動画
https://www.jaaf.or.jp/gallery/article/14667/
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