『第13回五輪イヤーに花開く日本競歩界(2)』から
──ここからは、2人が代表に内定している東京五輪の話に移ります。ドーハから帰国後にマラソンと競歩の札幌開催の話が急浮上し、先日正式に決まりました。
鈴木 選手個人としては、東京でも札幌でも力を出し切る自信は持っています。場所がどこでも出された課題をクリアするだけ、と考えています。レースは強い選手が勝つと思うので、「強くなるため」に集中すればコースがどこだろうと気にする必要はなくて、決まったことに従って粛々と準備するだけです。
山西 本当におっしゃる通りです。だいたい僕たちのレースはベースとなる〝地力〟の部分で勝負の8割方は決まっていて、あと2割が調整や杉田先生を中心にやっていただいてる暑熱対策など、当日のコンディショニングだと思います。まず冬季にきちんとやれることをやって、〝ペースの8割〟の部分をいかにふくらませていくかです。与えられた場面で結果を出すのが、給料をいただきながら陸上競技をやっている我々選手としての使命だと思います。
──歩型などテクニカルの部分は、2人ともほぼ出来上がっていると見ていいのですか。
今村 それぞれ自分が目指したい歩きがあると思うので、現状に甘んじることなく、チューンナップしていけばいいのかなと思います。そのために体幹トレーニングやウエイトトレーニングを取り入れ、合宿でも個々にトレーニングをやっています。
──暑熱対策も最終段階ですね。
杉田 札幌になりましたけど、東京が暑いということで2014年から暑熱対策の取り組みをしてきて良かったですよ。もっと涼しい開催場所だったら、みんなで毎年集まってしなかった可能性があります。膨大なデータを取って、それが一人ひとりの体質や特徴に合わせて1回ごとの給水量などに落とし込まれていって、「あなたはこう」と言えるところまで来た。でも、それは「東京対策」です。今度は札幌の気象に合わせてアジャストするのが、我々の最後の仕事になりますね。
──ドーハ世界選手権を経て、ここは改善しようという点はあるのですか。
杉田 身体をどう冷やすかですけど、その工夫の仕方は詳しく言えません。
山西 さっき話に出ていた巾着袋とか、小物の類いだと思います。冷やし方とか冷やす部位はもう決まっているので、どれぐらい冷やすとか、優先順位をもってどこを冷やすとか、微調整だと思います。大して暑くないのに、あれこれ身につける必要はないと思います。
杉田 そうそう、〝冷やし過ぎ〟につながりますね。
山西 当日の天候次第ですから、判断はその日のチョイスですよね。選択肢を持っておく、ということです。
鈴木 どっちも期待しないことです。暑くなることも、涼しくなることも期待しない。「どっちでもいいよ」という状態を作っておく。そのための暑熱対策だと思います。
杉田 本当にそうなんです。暑さに対して準備しておくことで、涼しい環境でも対応できるようになるんです、科学的に見ても。そのあたりはみなさんに理解していただいています。直前にどこで暑熱馴化するのかが重要になってきますね。
──当日の気象条件に合わせて、これとこれを使おうという引き出しを増やしておくということですね。
杉田 そうです。それを普段の練習からやっておくことです。
山西 自分はどれが有効か、どれが使いやすいかを知っておいたうえで、これとこれとこれをチョイスします、というレベルです。
鈴木 巾着袋とかも練習で試しておくのが一番大事です。「冷やす」という行為も試合になると感覚が違ったりするので、普段から慣れておかないといけません。
今村 情報戦として、私は種目の配置がすごく重要だと思っています。ドーハでは50kmが最初の種目で、コース上のLED照明の暑さや、給水の温度設定とか、いろいろな情報が得られました。東京五輪は予定通りだと男子20kmが最初の種目ですから、どうやって対応していくか、これから考えていかないといけないと思っています。
──競歩はこの2人だけでなく、高畠の男子50kmで川野選手も内定を勝ち取って、すでに3人が東京五輪代表を決めています。50kmはあと1人という狭き門ですが、今後本番までの流れはどうなりますか。
今村 内定している選手に関しては、これから出る出場予定の試合を確認しながら、どこでどういった合宿を組むか。合宿地の環境などを考慮して、2019年までの取り組みを取捨選択しながらやっていこうと思っています。輪島の50kmが終わって代表が出そろったら、個人個人でやるのか、全体でやるのかも決めていかないといけません。今のところ、全体でやるのはどうかな思っています。
──以前は合同合宿が多かったけど、ドーハ世界選手権に向けては個々の流れを尊重したようですね。
今村 それは、東京五輪のシミュレーションとして世界選手権に出る選手もいる中で、暑熱馴化の時期や場所がそれぞれ異なりました。暑熱順化は、非常に重要な暑熱対策ですから、同じ時期に同じ場所で、代表全員を集めてやるのは止めたほうがいいという判断でした。
──2人はそれぞれ、現段階で決まっているスケジュールはありますか。
鈴木 まだあまり決めていません。
山西 2月の神戸(20km)は1つポイントにしていて、できれば出たいという気持ちでいます。
──鈴木選手も、ドーハでは「神戸で20kmの代表権も」という話をされてましたね。
鈴木 今は「東京五輪は50kmで」と考えています。
今村 神戸のレースは、ベストを尽くすとか、自己ベストを狙うというのはあるけど、結果としてどういう状況でも、東京五輪の50kmにつながる方向ではあると思います。
──5月の世界競歩チーム選手権(ベラルーシ・ミンスク)は、ベストメンバーで臨みますか。
今村 それもまだ何も決まっていません。代表に決まった選手たちがどう考えるかです。
──では、東京五輪の抱負をお聞かせください。
鈴木 目指すところは金メダルしかなくなっているので、現状はそこに向けて集中してやっていくだけですけど、私が大事にしているのはドーハの時と同じように、金メダルを目指していても金メダルに固執し過ぎない。東京五輪は一生に1回しかない特別な舞台ではありますが、あまり特別感を出さずに試合に臨めればいいかなと考えています。定期的に試合を設けて、その一つひとつを集中してこなしていくことにフォーカスしていきたいと思っています。その先にオリンピックの金メダルがあるかな、と。
山西 私も目標は金メダルなので、ぶれずに行きたいと思います。その先々を見据えた時、そこへの第一歩として東京五輪があると思いますし、ここから当面やっていくことはさっき言った8割のベースの部分を上げていくこと。そこに関しては、やるべきことが自分の中で明確にあります。また先輩方のお力を借りるべく修行に参りますので、よろしくお願いします(笑)。
鈴木 2019年で一番良かったのは、山西君と一緒に練習をやって、一緒に金メダルが取れたことです。今まで日本の競歩チームとして、50kmは国際大会で連続メダルだけど金に届かなかった。また、20kmはメダルが取れなかった。でも、ドーハで50kmも20kmも金メダルが取れて、メソッドができたのは非常に有意義なことだと思います。私たち2人に関して言えば、そのメソッドを東京五輪に向けてやれば、自ずと金メダルに近づくと思います。種目は違いますが、一緒に練習して、お互いに「この人に勝てれば金メダルを取れるな」という意識を持てたことが大きかったです。私はこれまで1人でやって、見えない相手と戦っていたのですが、隣に金メダルを取れるだろう世界ランキング1位の選手がいたのは、心強かったですね。今まではやり過ぎ傾向があったのを、コントロールできるようになりました。
──世界選手権で金メダルを取って、それぞれ地元に凱旋し、大歓迎されたようですが、オリンピックに向けてそれほどプレッシャーを感じずにやれそうですか。
鈴木 もちろん応援されるということはプレッシャーですけど、それはあるべきものと考えているので、あるべきものとして受け入れて、いかにコントロールするかだと思っていますね。
山西 プレッシャーなんですかね……。今のところ、重たいとは感じていません。人の評価は人の評価で、僕は僕ですから。僕は僕がやったことの積み上げでしかないので、良くも悪くもその範囲は出ないです。突然すごいことをしたわけでもなく、淡々と積み上げてきたもの。そこにはもちろん運とか巡り合わせとかがあっての結果ですけど、この先も積み上げていくだけなので、まだまだこれからだと思いますね。
──今や競歩が日本の陸上界を支えている、というような自負はないですか。
鈴木 それはないですね。競歩がみんなで活躍できたのはうれしいですけど、私個人としては男子4×100mリレーでメダルを取ったのもうれしいですし、花形種目の短距離や跳躍種目が活躍するのもうれしい。「競歩が」とか、「マラソンが」とかではなくて、みんなで陸上界を盛り上げていければいいなと思っていて、競歩は競歩チームとして、ずっとメダルを取れるようにがんばっていきたいと思います。
今村 鈴木が言ったように、50kmは世界選手権で3大会連続メダル。そして、今回は金メダルです。でも、私は今後もチャレンジャーでやってほしい。金メダルを取っても、ハングリーであってほしい。貪欲にチャレンジすることが、自分の技術や目標を定めるうえで非常に重要かなと思っています。そういうチャレンジをする姿にみんなが感動して、応援したり、サポートしたりしてくれるのではないでしょうか。
杉田 まさに、金メダリスト2人をはじめレベルの高い選手たちががんばっているから、科学委員会もしっかりバックアップできるように、という思いが強いですよね。東京五輪だけでなく、その先にも役立つような情報提供や支援活動を展開して、チーム力の一端を担えればいいなと考えています。
今村 東京オリンピックに向けた強化の中で、競歩種目では、谷井君が2015年の北京世界選手権50kmで初めて銅メダルを取ってくれました。そして、今日では、メダル獲得有望種目に成長して来ました。その中心選手は、ユース、ジュニア期から地道にロールモデルを築いてきてくれた谷井世代以降です。この2人もユース、ジュニア期から世界の舞台で実績を積んでいる選手ですから、合同合宿や国際大会の経験を通して、脈々と受け継がれている想いとか強化方法が、ここに来て世代を超えて、縦にうまくつながっていると思います。2017年1月まで、宮崎県宮崎市でジュニアとシニアの合同合宿をやっていましたが、同じ練習はできなくても一緒にその場にいる、練習を見るというのが育成世代の成長につながるものです。きっと今こん日にちの競歩種目の躍進は、横断的な世代の強化だけでなく、ジュニア、U23、シニア世代の縦断的な強化をやってきた成果だと思っています。
──競歩界は東京五輪以降も楽しみですね。では、オリンピックでの活躍を期待しています。
〔11月22日、宮崎にて収録〕
東京五輪コースの札幌移転に伴う対応
──ここからは、2人が代表に内定している東京五輪の話に移ります。ドーハから帰国後にマラソンと競歩の札幌開催の話が急浮上し、先日正式に決まりました。
鈴木 選手個人としては、東京でも札幌でも力を出し切る自信は持っています。場所がどこでも出された課題をクリアするだけ、と考えています。レースは強い選手が勝つと思うので、「強くなるため」に集中すればコースがどこだろうと気にする必要はなくて、決まったことに従って粛々と準備するだけです。
山西 本当におっしゃる通りです。だいたい僕たちのレースはベースとなる〝地力〟の部分で勝負の8割方は決まっていて、あと2割が調整や杉田先生を中心にやっていただいてる暑熱対策など、当日のコンディショニングだと思います。まず冬季にきちんとやれることをやって、〝ペースの8割〟の部分をいかにふくらませていくかです。与えられた場面で結果を出すのが、給料をいただきながら陸上競技をやっている我々選手としての使命だと思います。
──歩型などテクニカルの部分は、2人ともほぼ出来上がっていると見ていいのですか。
今村 それぞれ自分が目指したい歩きがあると思うので、現状に甘んじることなく、チューンナップしていけばいいのかなと思います。そのために体幹トレーニングやウエイトトレーニングを取り入れ、合宿でも個々にトレーニングをやっています。
──暑熱対策も最終段階ですね。
杉田 札幌になりましたけど、東京が暑いということで2014年から暑熱対策の取り組みをしてきて良かったですよ。もっと涼しい開催場所だったら、みんなで毎年集まってしなかった可能性があります。膨大なデータを取って、それが一人ひとりの体質や特徴に合わせて1回ごとの給水量などに落とし込まれていって、「あなたはこう」と言えるところまで来た。でも、それは「東京対策」です。今度は札幌の気象に合わせてアジャストするのが、我々の最後の仕事になりますね。
──ドーハ世界選手権を経て、ここは改善しようという点はあるのですか。
杉田 身体をどう冷やすかですけど、その工夫の仕方は詳しく言えません。
山西 さっき話に出ていた巾着袋とか、小物の類いだと思います。冷やし方とか冷やす部位はもう決まっているので、どれぐらい冷やすとか、優先順位をもってどこを冷やすとか、微調整だと思います。大して暑くないのに、あれこれ身につける必要はないと思います。
杉田 そうそう、〝冷やし過ぎ〟につながりますね。
山西 当日の天候次第ですから、判断はその日のチョイスですよね。選択肢を持っておく、ということです。
鈴木 どっちも期待しないことです。暑くなることも、涼しくなることも期待しない。「どっちでもいいよ」という状態を作っておく。そのための暑熱対策だと思います。
杉田 本当にそうなんです。暑さに対して準備しておくことで、涼しい環境でも対応できるようになるんです、科学的に見ても。そのあたりはみなさんに理解していただいています。直前にどこで暑熱馴化するのかが重要になってきますね。
──当日の気象条件に合わせて、これとこれを使おうという引き出しを増やしておくということですね。
杉田 そうです。それを普段の練習からやっておくことです。
山西 自分はどれが有効か、どれが使いやすいかを知っておいたうえで、これとこれとこれをチョイスします、というレベルです。
鈴木 巾着袋とかも練習で試しておくのが一番大事です。「冷やす」という行為も試合になると感覚が違ったりするので、普段から慣れておかないといけません。
今村 情報戦として、私は種目の配置がすごく重要だと思っています。ドーハでは50kmが最初の種目で、コース上のLED照明の暑さや、給水の温度設定とか、いろいろな情報が得られました。東京五輪は予定通りだと男子20kmが最初の種目ですから、どうやって対応していくか、これから考えていかないといけないと思っています。
合同練習による相乗効果を2020年も
──競歩はこの2人だけでなく、高畠の男子50kmで川野選手も内定を勝ち取って、すでに3人が東京五輪代表を決めています。50kmはあと1人という狭き門ですが、今後本番までの流れはどうなりますか。
今村 内定している選手に関しては、これから出る出場予定の試合を確認しながら、どこでどういった合宿を組むか。合宿地の環境などを考慮して、2019年までの取り組みを取捨選択しながらやっていこうと思っています。輪島の50kmが終わって代表が出そろったら、個人個人でやるのか、全体でやるのかも決めていかないといけません。今のところ、全体でやるのはどうかな思っています。
──以前は合同合宿が多かったけど、ドーハ世界選手権に向けては個々の流れを尊重したようですね。
今村 それは、東京五輪のシミュレーションとして世界選手権に出る選手もいる中で、暑熱馴化の時期や場所がそれぞれ異なりました。暑熱順化は、非常に重要な暑熱対策ですから、同じ時期に同じ場所で、代表全員を集めてやるのは止めたほうがいいという判断でした。
──2人はそれぞれ、現段階で決まっているスケジュールはありますか。
鈴木 まだあまり決めていません。
山西 2月の神戸(20km)は1つポイントにしていて、できれば出たいという気持ちでいます。
──鈴木選手も、ドーハでは「神戸で20kmの代表権も」という話をされてましたね。
鈴木 今は「東京五輪は50kmで」と考えています。
今村 神戸のレースは、ベストを尽くすとか、自己ベストを狙うというのはあるけど、結果としてどういう状況でも、東京五輪の50kmにつながる方向ではあると思います。
──5月の世界競歩チーム選手権(ベラルーシ・ミンスク)は、ベストメンバーで臨みますか。
今村 それもまだ何も決まっていません。代表に決まった選手たちがどう考えるかです。
──では、東京五輪の抱負をお聞かせください。
鈴木 目指すところは金メダルしかなくなっているので、現状はそこに向けて集中してやっていくだけですけど、私が大事にしているのはドーハの時と同じように、金メダルを目指していても金メダルに固執し過ぎない。東京五輪は一生に1回しかない特別な舞台ではありますが、あまり特別感を出さずに試合に臨めればいいかなと考えています。定期的に試合を設けて、その一つひとつを集中してこなしていくことにフォーカスしていきたいと思っています。その先にオリンピックの金メダルがあるかな、と。
山西 私も目標は金メダルなので、ぶれずに行きたいと思います。その先々を見据えた時、そこへの第一歩として東京五輪があると思いますし、ここから当面やっていくことはさっき言った8割のベースの部分を上げていくこと。そこに関しては、やるべきことが自分の中で明確にあります。また先輩方のお力を借りるべく修行に参りますので、よろしくお願いします(笑)。
鈴木 2019年で一番良かったのは、山西君と一緒に練習をやって、一緒に金メダルが取れたことです。今まで日本の競歩チームとして、50kmは国際大会で連続メダルだけど金に届かなかった。また、20kmはメダルが取れなかった。でも、ドーハで50kmも20kmも金メダルが取れて、メソッドができたのは非常に有意義なことだと思います。私たち2人に関して言えば、そのメソッドを東京五輪に向けてやれば、自ずと金メダルに近づくと思います。種目は違いますが、一緒に練習して、お互いに「この人に勝てれば金メダルを取れるな」という意識を持てたことが大きかったです。私はこれまで1人でやって、見えない相手と戦っていたのですが、隣に金メダルを取れるだろう世界ランキング1位の選手がいたのは、心強かったですね。今まではやり過ぎ傾向があったのを、コントロールできるようになりました。
「金」を取ってもチャレンジャーで
──世界選手権で金メダルを取って、それぞれ地元に凱旋し、大歓迎されたようですが、オリンピックに向けてそれほどプレッシャーを感じずにやれそうですか。
鈴木 もちろん応援されるということはプレッシャーですけど、それはあるべきものと考えているので、あるべきものとして受け入れて、いかにコントロールするかだと思っていますね。
山西 プレッシャーなんですかね……。今のところ、重たいとは感じていません。人の評価は人の評価で、僕は僕ですから。僕は僕がやったことの積み上げでしかないので、良くも悪くもその範囲は出ないです。突然すごいことをしたわけでもなく、淡々と積み上げてきたもの。そこにはもちろん運とか巡り合わせとかがあっての結果ですけど、この先も積み上げていくだけなので、まだまだこれからだと思いますね。
──今や競歩が日本の陸上界を支えている、というような自負はないですか。
鈴木 それはないですね。競歩がみんなで活躍できたのはうれしいですけど、私個人としては男子4×100mリレーでメダルを取ったのもうれしいですし、花形種目の短距離や跳躍種目が活躍するのもうれしい。「競歩が」とか、「マラソンが」とかではなくて、みんなで陸上界を盛り上げていければいいなと思っていて、競歩は競歩チームとして、ずっとメダルを取れるようにがんばっていきたいと思います。
今村 鈴木が言ったように、50kmは世界選手権で3大会連続メダル。そして、今回は金メダルです。でも、私は今後もチャレンジャーでやってほしい。金メダルを取っても、ハングリーであってほしい。貪欲にチャレンジすることが、自分の技術や目標を定めるうえで非常に重要かなと思っています。そういうチャレンジをする姿にみんなが感動して、応援したり、サポートしたりしてくれるのではないでしょうか。
杉田 まさに、金メダリスト2人をはじめレベルの高い選手たちががんばっているから、科学委員会もしっかりバックアップできるように、という思いが強いですよね。東京五輪だけでなく、その先にも役立つような情報提供や支援活動を展開して、チーム力の一端を担えればいいなと考えています。
今村 東京オリンピックに向けた強化の中で、競歩種目では、谷井君が2015年の北京世界選手権50kmで初めて銅メダルを取ってくれました。そして、今日では、メダル獲得有望種目に成長して来ました。その中心選手は、ユース、ジュニア期から地道にロールモデルを築いてきてくれた谷井世代以降です。この2人もユース、ジュニア期から世界の舞台で実績を積んでいる選手ですから、合同合宿や国際大会の経験を通して、脈々と受け継がれている想いとか強化方法が、ここに来て世代を超えて、縦にうまくつながっていると思います。2017年1月まで、宮崎県宮崎市でジュニアとシニアの合同合宿をやっていましたが、同じ練習はできなくても一緒にその場にいる、練習を見るというのが育成世代の成長につながるものです。きっと今こん日にちの競歩種目の躍進は、横断的な世代の強化だけでなく、ジュニア、U23、シニア世代の縦断的な強化をやってきた成果だと思っています。
──競歩界は東京五輪以降も楽しみですね。では、オリンピックでの活躍を期待しています。
〔11月22日、宮崎にて収録〕