2019.12.03(火)その他

【Challenge to TOKYO 2020 日本陸連強化委員会~東京五輪ゴールド・プラン~】第11回 「MGC」総括と東京五輪に向けて(2)

第11回 「MGC」総括と東京五輪に向けて(1)』から


設楽の飛び出しをどう評価するか


──設楽選手の、1km 3分を切るハイペースの飛び出しについては、どう評価されますか

瀬古 レース前に戦法を漏らす人はそういないので、彼が記者会見で最初から行くようなことを言った時は、ハッタリかなと思いましたね。

山下 記者会見では「10kmぐらいで」と言っていましたよね。そのあたりで(感覚が)いいと思ったら行くのかと思っていました。

河野 私が思ったのは気象条件の変化です。最初、我々が入手した予報では、スタート時が気温23度で、フィニッシュ時が25.5度。低めだったんです。でも、実際は気温がどんどん上がっていって、男子のフィニッシュ時で28.8度。設楽君に「暑かったか?」と聞いたら、「暑さも感じたけど、それより風がきつかった」と言っていました。そうやって外的要因を敏感に感じるということは、集中できていなかったのではないでしょうか。

坂口 それも緊張のなせる仕業でしょうね。狙っている選手ほど緊張します。

瀬古 ただ、練習ができて、本当に自信があったんだと思います。結果は14位でしたけど、ああいうレースをして盛り上げてくれたわけで、その健闘は称えたいと思います。29度じゃなくて25度なら、最後まで行っていたと思います。

河野 次、また同じようなレースをするかどうかわからないですが、設楽君にとってもこの経験が次につながればいいと思います。選考レースという1つの枠で、みんなが集まった。その時間の共有が人を育てるのかな、と。良かったら良かったで、悪かったら悪かったで、それぞれ成長するものだと思います。女子のレースも、いろんな緊張感と、「行きたい」という欲と、いろんなものがグチャグチャになってやっているから。最後2kmの鈴木さん(亜由子/日本郵政グループ)の走りはすごかった。

山下 「脚にきているなあ」と……。2位の鈴木さんを必死に追いかけてる小原さん(怜/天満屋)も本当にギリギリのところで走っていて、終わっている脚をともかく前へ運んでいました。4秒届きませんでしたけど。





 

女子優勝の前田は練習もレースも完璧


瀬古 女子は一山さんが最初に飛び出して、5km通過が16分31秒ですよね。前半が速かったから、最後あのようなかたちになったのかな。

山下 一山さんも設楽君も、自分で思っていたより速くなってしまったのでは? 一山さんは17分ペースでいいと思っていたのに、「速いな、速いな」と思いつつ、「もう止められなかった」と言っていました。緊張感なのか、下りだからか、想定より速くなってしまって、自分がきつくなったパターンではないでしょうか。

──そこに、男子は自重してついて行かなかったけど、女子はついて行ったということですね。

山下 一山さんが日本記録保持者とかメダリストであるなど明らかに抜きんでた選手だったらついて行かない選択もあったと思うんですけど、女子はあの中でダントツの選手がいなかったですからね。MGCはペースメーカーもいないし、けん制し合って、ずっとスローなままの展開になったらどうしようという恐怖はあったんです。速いペースで押していける一山さんや前田さん(穂南/天満屋)に積極的に行ってほしいのに、行かないというような。でも、杞憂に終わりました。

瀬古 東京オリンピックがそうさせたのだと思いますよ。

──夏のレースで、優勝した前田選手の2時間25分15秒は、相当速いタイムだと思います。

河野 すごいタイムです。あの激しい男子のレースで2時間11分も評価が高いけど、女子の2時間25分は本当にすごい。しかも、独走ですからね。2時間21分ぐらいの力はあると見ていいと思います。

──前田選手に4分近く離されましたけど、2位に鈴木選手が入り、女子の五輪代表はともに北海道マラソンの優勝者になりました。

山下 本当ですね。やっぱり暑さに強いという面はあるのかもしれないですね。

坂口 男子の2人も、中村君はMGCを決めたびわ湖毎日マラソン(2018年3月)が20度ぐらい。服部君も福岡国際(同年12月)で優勝した時、やはり20度近くあったのかな。暑さの中で結果を出しているんです。

河野 3人出たワコール勢は、福士(加代子)さんが直前になって一番調子を上げてきたようですね。私自身、ウォーミングアップを見ていて、上位は前田、鈴木、福士かなと思ったほど。天満屋は、監督の武冨(豊)さんが「前田は完璧に練習をこなした」と言っていたから、相当自信を持っていたと思います。「小原は最後の2週間、彼女の好きな練習ばかりやらせた」と。最後、小原さんが粘り切ってあそこまで来た時、武冨さんに脱帽ですよね。

瀬古 鈴木さんは、まだ2回目ですよね。次はいけそうですね。マラソンはだいたい3~4回目がいいから。今回はラストがつらかったと思います。ああいう目に遭わないためには、練習をやらなければいけない。

河野 あのコースで苦しんだことが身体に染み込んだでしょうから、彼女なりに考えてくると思います。本番のコースに近い中で走れたのは収穫です。東京五輪は新国立競技場がゴールなので、最後の坂を上がらなくていいですし。

坂口 日本人にはMGCで走れたということが大きなアドバンテージですよ。

山下 やっぱりレースで走るのと、ジョギングで下見するのとでは、全然違いますからね。しかも、暑い中で走れたのは大きいです。

河野 本当のガチンコ勝負で得られた感覚は貴重です。





 

盛り上がりはファイナルチャレンジへ


瀬古 男女とも我々が想定している選手が上位に来てくれましたね。男子は「4強」が注目される中で、中村君の力は評価していました。

坂口 「暑くなったら、ひょっとして」という話もあったけど、それで何とかなるようなレースではなかったということです。落ちてくる選手を拾って自分が行けるとか、そんな甘いものではなかったですね。

河野 とにもかくにも、男子は31人エントリーして、棄権が1人ですから。

山下 もともと少ない女子のほうが、2人棄権しました。

坂口 みんな必死に準備して、必死に走ったんですよ。

瀬古 一世一代のレースだと、みんなきちんと調整してくるんですよ。

──中村、前田両選手は日本選手権チャンピオンです。

河野 これまでマラソンの日本選手権と言われてもピンと来なかったけど、今回は真のチャンピオンです。

山下 ペースメーカーがいなくてもこういうレースができるんだったら、他でやってもおもしろいと思います。

河野 選考レースということと、1回で決まるというシチュエーションがこうさせたわけで、それを毎回やったら消耗してしまうと思う。やっぱり記録を狙う試合があって、それを通して勝負を決する試合がある。そのシナリオがあっての盛り上がりだったんじゃないかな。MGCシリーズというのは序章だったわけですよね。

山下 当初、MGCに反対意見を持たれた国内大会の関係者から、レース後「本当にいい大会でした」というメッセージをいただいた時には、うれしかったですね。

──3人目を決めるこの冬の大会は、また盛り上がりそうですからね。

瀬古 だから、1枠残しておいて良かったと思いますよ。

山下 ファイナルチャレンジの大会関係者には「いいペースメーカーを用意してくださいね」と話しました。「任せてください」という返事でしたね。

河野 例えば、今回4位にとどまった松田さん(瑞生/ダイハツ)は、代表入りできる条件が自身の自己記録を1秒破ること(2時間22分22秒)ですから、そこを目指して当然チャレンジしてくるでしょう。そこの経験を積んでいくエネルギーを創出すること自体が、今までの選考会にはなかった現象なので、マラソンの経験値は確実に上がります。

──男子3位の大迫選手は、誰も自身の記録(2時間5分50秒)を突破できなければ代表になれるわけですが、待つのか、ファイナルチャレンジに出るのか、興味ありますね。

瀬古 1年に目一杯のレースを3本はきついので、個人的には出ない方がいいと思うけど、どうですかね。今回のレースで心身ともに相当ダメージが来ているかと思います。それに比べて設楽君や井上君は後半ジョギングのようになっているので、精神的にはともかく身体的なダメージは少ないと思います。

坂口 私もアテネ五輪(2004年)の時、前年の世界選手権5位の実績で油谷(繁/中国電力)が「待ち」の選択をしましたけど、待つ身も辛いですよ。結果的に出場できたから良かったですけど。

──MGCで明暗を分けた大きな要因は、やはりプレッシャーでしょうか。

河野 どこまでが平常心で、どこからが緊張感か、線引きは難しいけど、「4強」と言われて自分でも過剰な期待をかけた選手と、そうではなかった選手、というのはあるのかなと思います。

山下 選考レースだし、絶対に悔いのないレースをするために最善の準備を整えてあげよう、とスタッフとしては思いますよね。しかし、過保護になってはいけないし選手にとって何がベストかというのは、難しい。

瀬古 そういうのを全部洗い出して、次のオリンピックに生かさないといけないですね。大迫君は終始力んでいたけど、中村君と服部君はまったくブレがなく、いいフォームだった。

河野 この経験をどういうかたちで次のマラソンに生かしていくか。それこそ自信を確信に変えていけるように、北海道・千歳のキックオフ合宿(9月25日~ 28日)ではそういう話を深掘りしていけたらいいなと思ってます。


第11回 「MGC」総括と東京五輪に向けて(3)』に続く…

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