2019.10.30(水)大会

【川野将虎選手日本新にて優勝!東京オリンピック50km競歩日本代表に内定!】第58回全日本50㎞競歩高畠大会レポート&コメント




第58回全日本50km競歩高畠大会が10月27日、山形県高畠町の「高畠まほろば競歩コース」(日本陸連公認コース1周2km)で行われました。

来年に迫った東京オリンピックの日本代表選考レースとなっている男子50kmは、20kmと50kmの2種目で学生記録を保持している川野将虎選手(東洋大)が、今季世界最高記録となる3時間36分45秒の日本新記録をマーク。本年4月の日本選手権で鈴木雄介選手(富士通)が樹立した従来の日本記録(3時間39分07秒)を一気に2分22秒塗り替え、この種目で初の全国タイトルを獲得するとともに、日本陸連が定める条件を満たしたことにより、東京オリンピック代表に内定しました。また、2位で続いた丸尾知司選手(愛知製鋼)も自己記録(3時間40分04秒)を大幅に更新する3時間37分39秒でフィニッシュ。従来の日本記録を上回り、今季世界リスト2位へと躍進する好記録をマークしています。

 

◎川野と丸尾が今季世界1・2位の好記録。世界選手権金メダリスト・鈴木の日本記録を更新!

当日の高畠町は、未明からの雨が残る冷んやりとした朝を迎えました。午前7時を回るころには、空を厚く覆っていた雲が若干少なくなったようにも思われましたが、依然として雨がぱらつく状況下。そんななか、東京オリンピック代表選考レースとして行われた男子50km競歩は、午前8時00分、女子50kmと同時にスタートしました。午前8時の気象状況は、天候小雨、気温14.2℃、湿度80.6%。風はほぼない状況で、競歩にとっては、上々といえるコンディションです。

レースはスタートしてすぐに、この種目の学生記録で日本歴代2位となる3時間39分24秒の自己記録を持ち、7月に行われたナポリユニバーシアード20kmで銀メダルを獲得している川野将虎選手(東洋大)と2017年ロンドン世界選手権50km競歩銅メダリストの小林快選手(新潟アルビレックスRC)が横に並び、そのすぐ後ろに2018年世界競歩チーム選手権50km競歩銅メダリストで2017年ロンドン世界選手権同5位の丸尾知司選手(愛知製鋼)がぴたりとつく配置の先頭グループが形成され、少し遅れて藤澤勇選手(ALSOK)と伊藤佑樹選手(サーベイリサーチセンター)が2人で第2グループをつくって進む展開となりました。

先頭グループの3人は、周回を重ねるごとに後続との差を大きく広げ、5kmを21分50~51秒で通過。そこからは1km4分19~23秒のペースでラップを刻んで10kmを43分37~38秒で通過し、この段階で、本年4月の日本選手権50km競歩で鈴木雄介選手(富士通、ドーハ世界選手権50km金メダリスト)が樹立した日本記録(3時間39分07秒)をイーブンペースで歩いた場合の参考記録(43分49秒)を上回るペースに。その後、ややペースは落ちたものの隊列は変わらぬまま15kmを1時間05分37秒で通過していきました。





最初に動きがあったのは、15~16kmの1kmでした。ここで揺さぶりをかけることをレース前から決めていたという川野選手が、14~15km間の4分22秒から、一気に4分04秒へとペースアップ。丸尾選手はこれにつきましたが、小林選手はややペースを上げたものの2人からは離れ、16km地点で14秒の差がつくこととなりました。川野選手は、さらに16~17kmを4分00秒にペースアップ。ここで「このままで行くことはないはず」と判断した丸尾選手は4分06秒とほぼイーブンで進み、その後は4分10~15秒前後で歩を進めて行く形に。川野選手、丸尾選手、小林選手がそれぞれ単独で歩く形となりました。

先頭の川野選手は、15~20kmを20分27秒で歩いて20kmを1時間26分04秒で通過。これは日本記録をイーブンペースで歩いた場合の参考記録(1時間27分39秒)だけでなく、虞朝鴻選手(中国)が2005年に樹立したアジア記録(2時間36分06秒)をイーブンペースで歩いた場合の参考記録(1時間26分26秒)をも大きく上回るペースです。そして、2番手の丸尾選手も1時間26分26秒と、アジア記録と同じペースで通過していきました。

川野選手は、20~25kmはややペースを落ち着かせる形で、25kmを1時間47分25秒で通過。川野選手が25km以降を1km4分20秒台で進んだのに対し、25kmを1時間47分43秒で通過した丸尾選手が、その後も1km4分13~16秒を維持させたことで28kmを過ぎたところで川野選手に追いつき、再び2人のマッチレースとなりました。

ここで「本当は、前に出たくなかった」とレース後、振り返った丸尾選手が「給水のところでタイミングが悪くて」、意思に反して川野選手の前に出てしまう形となりました。牽制してペースダウンすることで、3番手の小林選手と「3人(の戦いに)になるのもイヤだな」という思いから、ともに2時間09分17秒で通過した30km以降は、丸尾選手が前に出て、川野選手がぴたりとつく形でレースが進んでいくことになりました。

2選手による“並歩”は、その後、12kmにわたって続きます。そして、「何度か仕掛けはしたが、でも、(川野選手は)そのたびに対応してきた」という丸尾選手に対して、川野選手が「何回も細かいスパートをかけられて、(丸尾選手の)強さを感じたが、1回1回のスパートに、焦らず冷静につくことができた」と振り返ったことからもわかるように、ここで明暗が分かれることとなりました。2人はともに35kmを2時間30分45秒、40kmを2時間52分39秒と、依然としてアジア記録を上回るペースで歩きましたが、前でレースを進めていた丸尾選手は、「距離を重ねるにつれて、だんだんと自分の勝ちパターンが減っていってしまった」という状況に。その様子を「スパートの勢いが少しずつなくなっている」ということで察した川野選手が、42kmを通過してすぐとなる旧高畠駅舎前の折り返しのタイミングでペースアップ。丸尾選手を引き離しにかかります。42~43kmで開いた5秒差は、44km通過時には18秒に、45kmでは28秒差となりました。川野選手の45km通過は3時間14分23秒と、この段階でもまだアジア記録を6秒上回るペースでしたが、さすがにその後はペースダウンし、最後の5kmは22分22秒かかってしまいました。しかし、丸尾選手もペースを落としたため、最終的に54秒の差をつけて先着。ドーハ世界選手権の代表権争いでは、20kmでも、50kmでも“あと1歩”というわずかなところで出場を逃していた川野選手が、50kmレース3戦目にして、今季世界最高記録となる3時間36分45秒の“特大”日本新記録で初優勝を果たすとともに、この種目で2人目の東京オリンピック日本代表に内定する結果となりました(川野選手のコメントは、別記ご参照ください)。

残り8kmを切ったところで突き放された丸尾選手は、レース後、「(川野選手の)背中を見ながら「“僕の東京(オリンピック)が…”と、つらい思いにとらわれた」と振り返りました。フィニッシュタイムの3時間37分39秒は、従来の記録を大幅に更新する日本新記録で、2019年世界リストでも川野選手に続いて2位となる素晴らしい記録です。しかし、「今までにないくらい、ここ(高畠)に懸けてきた」と万全を期して臨んだにもかかわらず、わずかなところで狙っていた東京オリンピック代表の座を逃す結果となり、レース直後には、声を絞り出すようにして「勝ちたいです」と思いを吐露する場面も。ラストチャンスとなる4月12日の日本選手権50km競歩で、“最後の1枠”を目指すことになります(丸尾選手のコメントは、別記ご参照ください)。

3位は小林選手で、記録は3時間46分23秒。35km以降の落ち込みが惜しまれる結果となりました。4位の藤澤選手は、ご存じの通り、20kmではオリンピック、世界選手権で何度も代表に名を連ねてきたトップウォーカーですが、50kmは今回が2度目のレース。大会直前に体調を崩した影響もあって、序盤から先頭集団につかずに独自のペースでレースを進めていきました。徐々にペースを落としたものの大きく崩れることはなく3時間52分21秒でフィニッシュ。昨年のこの大会でマークした自己記録(3時間58秒49秒)を6分28秒更新しています。



 

◎女子50kmは吉住が大会新記録で優勝。男子20kmはユニバーシアード3位の古賀が制す

女子50km競歩では、吉住友希選手(船橋整形外科)が終盤まで1km5分30秒を切る安定したペースを刻む展開で、44kmの手前で首位に立つと、4時間27分51秒の大会新記録で優勝を果たしました。前回のこの大会で、4時間29分45秒の日本記録(当時)をマークして優勝している園田世玲奈選手(NTN)は、中盤までは4月の日本選手権で渕瀬真寿美選手(建装工業)が樹立した4時間19分56秒の更新も可能なペースでレースを進めていましたが、39km以降でペースを落とすと、40km以降は大きなペースダウンに見舞われる苦しい展開となりました。45~46kmの1kmは8分台まで落ち込み、完歩できるか心配されましたが、懸命に粘り、その後、やや持ち直して、4時間39分07秒・2位でのフィニッシュとなりました。





一般男子20km競歩では、世界選手権20kmで6位に入賞した池田向希選手(東洋大)や、この大会で50kmの日本記録保持者となった川野選手とともに、ナポリで開催されたユニバーシアードに出場して銅メダルを獲得し、日本勢の上位独占を達成した古賀友太選手(明治大)が出場。3月の全日本20km競歩能美大会でマークした1時間20分24秒の自己記録、さらにはこの種目で日本陸連が定めている東京オリンピックの派遣設定記録1時間20分00秒の突破を狙いました。14km手前で単独首位に立ってからは一人旅となり、2位に25秒の差をつけて優勝を果たしましたが、序盤でロスオブコンタクトの警告を取られていたために、思うようにペースアップを図ることができず、記録は1時間21分59秒にとどまりました。

このほか、一般女子20km競歩は、河添香織選手(自衛隊体育学校)が1時間34分48秒で優勝。一般女子10kmは、根本侑実選手(SNE Athletes)が49分55秒で制しました。また、高校男子10km競歩は、高校2年生の村越優汰選手(横浜高・神奈川)が44分48秒で、高校女子5km競歩は磯部あゆ選手(十日町総合高・新潟)が24分14秒で、それぞれ優勝しています。中学男子3km競歩は地元・高畠中(山形)の大浦晟太郎選手が18分32秒で圧勝、中学女子3km競歩は、渡部莉奈選手(高畠中・山形)との1秒差の勝負を制した遊馬歩翔選手(城南中・埼玉)が16分40秒で優勝しました。

 

 


【新記録樹立者コメント】


◎男子50km競歩
優勝 3時間36分45秒 =日本新記録、学生新記録
川野将虎(東洋大学)

「東京オリンピック出場」は、高校で競歩を始めたときからずっと目標にしていた。また、自分が東洋(大学)に入学を決めた理由に、2012年ロンドンオリンピックと2016年リオオリンピックで西塔拓己さんと松永大介さんが学生として2大会連続で出場(どちらも20km競歩)していたことがあり、3大会連続で自分が東京オリンピックに出場したいと思っていた。それだけに、選考レースとなるこの高畠への思いはすごく強く、夏合宿のころから「絶対にここで内定してやる」という強い気持ちでやってきていた。内定を決めることができて、本当に嬉しい。

(今日の展開は)前半で揺さぶりをかけて、後ろの選手に自分は行けるんだぞというアピールするというか、怖い存在であると思わせたかったので、1回15kmからスパートするということは決めていた。(ペースアップは1km)4分15秒とか、上げて(4分)10秒くらいを想定していたのだが、スローペースで行くと思っていたスタート後からのペースが思っていたよりも速かったこともあり、想定よりも速いペースに上げてしまった。一度、手元(の時計)で3分59秒(16~17km:公式計時では4分00秒)というのがあったので、そのときは(さすがに)気持ちを抑えながら歩いた。

そのまま気持ちよく(一人旅で)行ければそれでもよかったが、(丸尾知司選手に)追いつかれることも想定していた。追いつかれてからは、何回も細かいスパートをかけられて(丸尾選手の)強さを感じたが、1回1回のスパートに、焦らず冷静につくことができ、そして、「最後は自分がラストスパートを決めてやるんだ」という気持ちで歩いた。

42km過ぎで自分がスパートしたのは、そこまでに何回もスパートをかけてきた丸尾さんの勢いが少しずつなくなってきていたから。「今なら行ける」と思って行った。このスパートは普段通りのイメージ。40km以降でどれだけスパート(できる力)を残しておくかということも想定していたし、今までだったら、後半でフォームが崩れてしまっていたが、今回は警告もとられず、フォームの崩れを抑えることができていた。歩型に不安を持つことなく、いわばノーストレスで最後にスパートできたことは本当によかった。

日本記録については、もちろん狙えるんだったら出したいとは思っていたが、正直なところタイムはそんなに考えていなくて、まず勝負に徹することを考えていた。なので、ここまでの記録が出るとは思っていなかったので驚いている。天候が涼しく、また、周りの(小林)快さんや丸尾さんも積極的に引っ張ってくださったので、こういうタイムが出たのかなと思う。

今日のレースは、もう100点を自分にあげていいかなと思っている。自分はタイトルをあまり取ったことがなく、いつも2番手だったり3番手だったりとラストスパートで負けてしまうことが多かったのだが、今回は(オリンピック代表の)選考レースでしっかりと勝ちきることができた。(酒井俊幸)監督や(監督夫人の瑞穂)コーチと相談したレース展開を守りながら、最後まで決めきることができたのでよかった。(自身3回目の50kmレースでのこの結果は)自分の力ではなく、周りの方々がここまで自分のためにたくさん支えてくださったことが本当に大きいと思っている。(同級生の)池田向希が世界陸上で20kmの代表になって、池田の指導に重点を置かなければいけないなか、監督やコーチは自分のことも平等に指導してくださった。そのことはとても大きいし、また、応援してくださる方々も支えもすごく励みになった。それらのおかげで、ここまで来られたのだと思う。

東京オリンピックでは、金メダルを第一の目標にして、そのなかで、応援してくださる方々が見て感動するようなレースができたらいいなと考えている。(東京オリンピックで対決することになる鈴木)雄介選手は、先日のドーハ世界陸上でも金メダルを取っている。そのレースはテレビで見たが、大会までの準備も含めて、ほかの選手よりも本当に1つ抜きん出ている存在。今はまだあるその差を、少しずつ残りの期間で埋めていければいいなと思っている。また、後半はどうしてもフォームが崩れてしまうし、ペースもどうしても落ちてしまうことが、まだまだ課題といえる。それも踏まえて、改めて監督やコーチと話し合って、次の目標に向かっていきたい。

 

 

◎男子50km競歩
2位 3時間37分39秒 =日本新記録
丸尾知司(愛知製鋼)

悔しいというよりは、力が足りなかったというのが率直な感想。また、気持ちも足りなかったなと感じている。

(川野選手が15~16kmで)最初にガッと(ペースを)上げたときはついていったが、(さらに16~17kmで)かなり上げたので、「このままでは行かないだろう。自分がペースを落とさなければいずれ追いつくだろう」と判断して、自分のペースで歩いた。そのときは脚を使うこともなく(28km付近で)自然と追いつくことができたが、ただ、追いついたところで前に出てしまう形になり、本当は自分がほうが(後ろで)力を溜めたかったのに、前で引っ張る展開となってしまったのがマイナスだった。

「(川野選手が)後ろで力を溜めている」と思いつつも、たぶん体力の部分では残り(の力)は同じくらいだという感じもあったので、何度か(自分が)仕掛けはしたのだが、それでも対応してきたので、本当のラスト勝負しかないかなという状況になってしまった。そこで「この展開は川野くんのほうが絶対に得意だろうな」ということを思ってしまう場面もあり、そういうところが気持ちの面でも弱かったのかなと思う。また、前に出されてしまったことで、いつも課題にしている(悪い)動きが出てしまった。自分でも気づいていたし、それが起こると脚に来ることはわかっていたので、修正しようと思いながら歩いてはいたのだが、うまく修正することができなかった。

 (川野選手に)前に出られたのは、42kmを通過して折り返したところ。折り返しのタイミングでペースが上がって、なんとか追いつこうとはしたのだが、すべて振り絞ってつこうとしても、つくことができなかった。そこまでにも細かい仕掛けが何回もあって自分がけっこう上げていたこともあったし、正直なところ、後ろにつかれているときに「脚がきついな」ということを思い始めていた。「(スパートが)来たらつくしかないけれど、どこまで行けるか」という感じで、距離を重ねるにつれて、だんだんと自分の勝ちパターンが減っていってしまった。自分としては、追いついてから32kmくらいで1回様子を見て、ラスト10kmからペースを上げようと思っていたのだが、うまくレースを進めさせてもらえなかった。(ラストの2周は川野選手もペースダウンしたので)なんとか追いつけないかとは思ったが、この仕掛けどころでの貯金で逃げきられてしまった。

(大幅に自己記録を更新しながらも3位に終わった4月の)輪島のときは、自分の力をすべて出しきることに100%フォーカスしていたが、今回は自分の力が出しきれることはわかっていたので、「力を出しきること50%、人に勝ちたいという思い50%」で臨んでいた。でも、今、レースが終わって思うことは、「人に勝ちたい」と思うことに100%フォーカスして臨まなければという気持ち。幸いにも(オリンピック代表の座は)まだ残り1枠がある。力は確実についていると思うので、(最後の選考レースとなる2020年4月の)輪島までに、テクニックの部分を磨きつつ、さらに練習のベースも上げていきたい。あとは心の部分。合宿の段階から「競い合う」というところにフォーカスしなければと思う。輪島では、「100%人に勝ちたい」という思いで歩きたい。

 

※本文中の1kmごとのラップタイム、周回(2km)および5kmごとのスプリットタイムは、公式発表の記録に基づく。

 
文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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