2019.10.07(月)大会

【ドーハ世界選手権】大会総括





9月27日に開幕した第17回世界選手権ドーハ大会は、10日間の会期を終えて10月6日に閉幕しました。現地では、日本選手団監督の麻場一徳日本陸連強化委員長が、最終日、メディアの囲み取材に応じ、大会の総括を行いました。

 

【コメント(要旨)】

ドーハ世界選手権大会総括
◎麻場一徳監督(日本陸連強化委員会強化委員長)

日本チームは無事に10日間の競技を終えることができた。

日本チームの最終成績はメダル3つ(男子50km競歩1、男子20km競歩1、男子4×100mR1)と入賞5つ(女子マラソン1、男子走幅跳1、男子50km競歩1、女子20km競歩2)。日本記録は2つ(男女混合4×400mR、男子4×100mR)で、そのうち1つはアジア記録(男子4×100mR)というのが、数字としての成果ということになる。

メダルは、金が2つということで、世界大会ではメダルはそんなに取ることはできない。3つ獲得して、そのうち金メダルが2つということは、来年(の東京オリンピック)につながる成果といえる。以前から申し上げているように、我々は、男子4×100mR、男子競歩、男女マラソンを、メダルを目指す三本柱として、強化を進めてきた。そういう意味では一定の成果は出ているのではないかと思う。

 

以下、中間総括を行った以降の結果を中心に振り返る。

男子20km競歩で金メダルを獲得した山西利和は、戦略がしっかりしている。東京(オリンピック)までのビジョンもしっかりしていて、若いのに頼もしく思った。彼については、世界ユース選手権(2013年:10000m競歩で金メダルを獲得)のころから注目していたこともあり、そういう意味でも感慨深かった。

これから(50km競歩で優勝した)鈴木雄介も含めて、注目される存在となることが見込まれ、スポーツ報道を専門とするメディア以外からも注目を集めることになると推測している。そのこと自体は非常にありがたいことなのだが、ともすると自分の競技を見失ってしまうような局面が生じることも危惧されるので、そのあたりは今村文男競歩担当オリンピック強化コーチが中心となって、うまく東京オリンピックまでのプロセスを歩んでいけるようにしたい。そこは陸連の強化としても、全力で彼らをサポートしていきたい。

 

男子4×100mRについては、見ていただいての通り。今回、9秒台(の自己ベストを持つ選手)を3人揃えてのリレーが組めたことは、日本にとって非常に大きなことだった。しかし、中間総括のときにも申し上げたように小池祐貴が本来の調子ではなかったこともあり、決勝は多田修平を起用した。急なオーダー変更のなかでも、あのようなパフォーマンス(37秒43のアジア新記録で銅メダル獲得)が出せるというのは、底上げがきちんとできていることを示すもので、チームとして成熟期を迎えているといえるのではないかと思う。競歩と同様に、日本のリレーチームも、東京オリンピックに向けた明確な戦略・展望を持っているので、私の立場としては、それが実現できるように、しっかりサポートしていきたい。

 

マラソンについては、暑熱対策について、一定の成果は出ていると考えている。大会9日目(の男子マラソン)は、想定されていたコンディションよりも気象条件が良くなって、そういう意味では、暑熱環境下を前提とした準備をしっかりしてきていた川内優輝には、逆に気の毒だったなということを感じた。しかし、彼も「暑熱対策に関しては成果があった」と言っていた。これをどう東京オリンピックに生かすか。さらにマラソンの場合は、すでに男女4人の代表はもう決まっているので、個々の特性にどう適応させていくかが、これからの課題となる。そのあたりをしっかりやっていきたい。「パフォーマンスを上げる」「コンディションを上げる」というのは、所属のパーソナルコーチやスタッフにお願いする部分。我々としては、いかに環境を整えるか、サポートができるかというところに注力したい。

 

入賞5については、やはりもう少し欲しかったなと思っている。プレイシングテーブルでは33点。これまでの世界選手権、オリンピック結果と比較すると良い結果ではあるのだが、来年の東京オリンピックにおける陸上競技の盛り上がりというのを考えると、もう少し…特に、トラック&フィールドの種目で入賞者が欲しかった。今回も、入賞5のうちの4はロード種目。トラック&フィールドの個人種目では最終的に橋岡優輝の走幅跳のみとなった。中間総括の際にも申し上げた通り、(今回、入賞を逃した選手も)惜しいところまで来ている。その惜しいところをどうやって、来年の8月までに引き上げ、コンディションを整えていられるか。そこを意識しながら、東京オリンピックまでの期間をしっかりやっていきたい。

 

また、男子4×400mRと男女混合4×400mRは、この大会で8位内に入れば東京オリンピック出場権を獲得できることになっていた。特に、(実現の可能性が高かった)男子4×400mRについては、出場権を獲得しておくかどうかで、この冬の過ごし方が全く違ってくるだけに、ここで取っておきたかったが、今回は9番目ということで、今後、(確定した8枠を含めた)ベスト16に入るチャレンジをしていかなければならなくなった。

今後の具体的な構想は、これから短距離・リレー担当の土江寛裕オリンピック強化コーチ、4×400mR担当の山村貴彦コーチと話をして、ベストの方法を採っていくつもりである。この男子4×400mRに関しては、スポーツ庁が策定してJSCが事業を進める「次世代ターゲットスポーツの育成支援」のターゲットスポーツに選んでいただいたので、そういう意味では、強化費をしっかりかけてやっていくことが可能になった。そのへんをしっかりと生かして強化を進めていきたい。施策としては、具体的な日程等は確定していないが、南カリフォルニア大学(USC)との提携…簡単に言えば、武者修行に行って、この冬、選手それぞれのパフォーマンスアップを図ること…を計画している。

また、同様にオリンピック出場権を獲得できなかった男女混合4×400mRについては、(今大会で日本新記録はマークしたものの)まだ記録水準自体を上げていく必要がある。この種目については、女子リレーの強化も絡んでくる。私は、東京オリンピックの陸上競技を盛り上げるために、女子リレーが出場できるかどうかは非常に大きな要因になると考えていて、それらの意味でも、女子のレベルアップ、女子リレーのレベルアップに取り組んでいきたい。

すでに、昨年から女子リレー特別強化プロジェクトが発足しているので、今後は、これをバージョンアップというか、スタイルを少し変えながら来年に向かっていくことになる。今年度にかけては、具体的なスタートが1月となったため、ちょっと出遅れてしまったが、今年は試合シーズンが終わると同時に、スタートしていけるように準備を進めていく。このあたりは、山崎一彦プロジェクトリーダーを中心に構想を練っているところなので、改めて発表させていただく。

 

このドーハ世界選手権を終えたところで、東京オリンピックに向けては、「選手の顔」がかなり見えてきたといえる。すでに(オリンピック)参加標準記録を突破している選手は、メダルや入賞を狙う層。それぞれの特性を把握して対応できるよう、担当のオリンピック強化コーチが当事者や専任コーチとしっかりコミュニケーションをとって、今後の方向性を確認して進めていきたい。また、(東京オリンピックに向けては)ワールドランキングのポイントを獲得するという選手たちの層もある。そうした層に対して、どんなサポートができるか。具体的には、今後開催が予定されている日本グランプリシリーズ(新潟、山口、北九州)もあるし、また、海外で行われる冬場の室内大会への派遣なども戦略的にできたらと考えている。

いずれにしても、それぞれの状況に合わせた形で、この秋から東京オリンピックまでの期間をどう過ごすかが大切になってくる。我々としては、こうした選手たちも含めて、しっかりとバックアップしていきたい。

東京オリンピックに向けては、こうした形で「ラストスパート」に入っていくことになる。ここからはもう、全開で強化に取り組んでいきたい。

 

文責:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト


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