2019.09.27(金)その他

【記録と数字で楽しむドーハ世界選手権】女子マラソン/谷本観月、池満綾乃、中野円花

▶ドーハ世界選手権特設サイト


9月27日(金)から10月6日(日)の10日間、カタールの首都ドーハで「第17回世界選手権」が開催される。ここでは、日本人が出場する種目を中心に、「記録と数字で楽しむドーハ世界選手権」を紹介する。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種の競技会の記事で筆者が紹介したことがある同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに修正した。






★女子マラソン★

「MGC」ではなく、世界選手権を選んだ谷本観月(天満屋)、池満綾乃(鹿児島銀行)、中野円花(ノーリツ)の3人が出場。

男子と同じく日中は40℃にも達する高気温を避けるため、9月27日23時59分(日本時間28日、朝5時59分)スタートという「真夜中のレース」となった。


これまでの日本人選手の入賞者は下記の通り。

1991年 2位 山下佐知子(京セラ)
 〃  4位 有森 裕子(リクルート)
1993年 1位 浅利 純子(ダイハツ)
 〃  3位 安部 友恵(旭化成)
1997年 1位 鈴木 博美(リクルート)
 〃  4位 飛瀬 貴子(京セラ)
1999年 2位 市橋 有里(住友VISA)
 〃  8位 小幡佳代子(営団地下鉄)
2001年 2位 土佐 礼子(三井海上)
 〃  4位 渋井 陽子(三井海上)
2003年 2位 野口みずき(グローバリー)
 〃  3位 千葉 真子(豊田自動織機)
 〃  4位 坂本 直子(天満屋)
2005年 6位 原 裕美子(京セラ)
 〃  8位 弘山 晴美(資生堂)
2007年 3位 土佐 礼子(三井住友海上)
 〃  6位 嶋原 清子(セカンドウィンドAC)
2009年 2位 尾崎 好美(第一生命)
 〃  7位 加納 由理(セカンドウィンドAC)
2011年 5位 赤羽有紀子(ホクレン)
2013年 3位 福士加代子(ワコール)
 〃  4位 木崎 良子(ダイハツ)
2015年 7位 伊藤  舞(大塚製薬)

1983年、87年、95年、2017年は入賞を逃したが、残りの12大会では少なくともひとりは入賞し、金2、銀5、銅4の計11個のメダルを含め、のべ23人が入賞している。97年からは10大会連続入賞を継続したが、残念ながら2017年で連続入賞記録がストップした(17年は清田真央の16位が最高順位)。


参考までに「五輪(1984年から実施)」での入賞者は以下の通り。
1992年 2位 有森 裕子(リクルート)
 〃  4位 山下佐知子(京セラ)
1996年 3位 有森 裕子(リクルート)
2000年 1位 高橋 尚子(積水化学)
 〃  7位 山口 衛里(天満屋)
2004年 1位 野口みずき(グローバリー)
 〃  5位 土佐 礼子(三井住友海上)
 〃  7位 坂本 直子(天満屋)

世界選手権では上述の通り1997年から10大会連続入賞を継続したが、男子と同じく五輪ではこのところは「苦戦」で、2004年を最後に3大会連続で入賞から遠ざかっている。「2020年・東京こそ」である。

男子と同じく、「世界選手権」の各大会での1位に8点、2位7点 ~ 8位1点の点数を与えて国別の得点を集計すると次のようになる。

順)点 国名  1 2 3 4 5 6 7 8 = 入賞数
1)116 JPN 2 5 4 5 1 2 2 2 = 23 日 本
2)92 KEN 4 4 1 2 1 1 4 1 = 18 ケニア
3)47 ETH 1 ・ 1 3 2 2 1 2 = 12 エチオピア
4)42 POR 2 2 ・ 1 ・ 1 2 ・ = 8 ポルトガル
5)37 ROU 1 1 3 ・ 1 ・ 1 ・ = 7 ルーマニア
6)37 CHN 1 1 ・ 2 2 1 ・ 1 = 8 中 国
7)23 ITA ・ 1 1 ・ 1 2 ・ ・ = 5 イタリア
8)22 GER ・ ・ 1 ・ 1 3 1 1 = 7 ドイツ
9)21 URS ・ 1 1 ・ 1 1 ・ 1 = 5 ソ 連
10)18 USA ・ 1 1 ・ ・ ・ 2 1 = 5 アメリカ
11)17 BRN 1 ・ 1 ・ ・ 1 ・ ・ = 3 バーレーン
12)16 POL 1 ・ ・ 1 ・ 1 ・ ・ = 3 ポーランド
13)13 NOR 1 ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ = 2 ノルウェー
14)13 PRK 1 ・ ・ ・ 1 ・ ・ 1 = 3 北朝鮮
15)13 RUS ・ ・ 1 1 ・ ・ ・ 2 = 4 ロシア
16)10 FRA ・ ・ 1 ・ 1 ・ ・ ・ = 2 フランス
17)8 GBR 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ = 1 イギリス
18)7 ESP ・ ・ ・ ・ 1 1 ・ ・ = 2 スペイン
19)6 FIN ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ 2 = 3 フィンランド
20)4 BLR ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ = 1 ベラルーシ
20)4 CAN ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ = 1 カナダ
22)2 IRL ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 1 アイルランド
22)2 MEX ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 1 メキシコ
22)2 RSA ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 1 南アフリカ
22)2 SWE ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 1 スウェーデン
26)1 SCG ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 セルビア・モンテネグロ
26)1 SUI ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 スイス

男子と同様に、2017年大会終了時点の得点の上位国について、累計得点と順位の推移をまとめてみた。
 年  JPN  KEN  ETH  POR  ROU  CHN  他の上位国
1983年 未入賞  未入賞  未入賞  4)5  未入賞  未入賞  1)8 NOR
1987年 未入賞  未入賞  未入賞  2)13  未入賞  未入賞  1)20 URS
1991年 4)12  未入賞  未入賞  2)15  未入賞  未入賞  1)21 URS
1993年 1)26  未入賞  未入賞  2)22  未入賞  未入賞  3)21 URS
1995年 2)26  未入賞  未入賞  1)30  10)7  未入賞  3)21 URS
1997年 1)39  未入賞  未入賞  2)37  8)13  未入賞  3)21 URS
1999年 1)47  未入賞  11)9  2)39  4)19  未入賞  3)21 URS
2001年 1)59  17)3  11)11  2)39  3)27  未入賞  4)22 GER
2003年 1)77  13)11  7)14  2)39  3)27  未入賞  4)22 GER
2005年 1)85  6)22  7)19  2)39  3)33  17)4  4)22 GER
2007年 1)90  4)33  7)19  2)39  3)37  9)16  5)22 GER
2009年 1)99  4)33  6)25  2)42  3)37  5)33  7)22 GER
2011年 1)103  2)54  6)30  3)42  4)37  5)37  7)22 GER
2013年 1)114  2)68  6)30  3)42  4)37  5)37  7)23 ITA
2015年 1)116  2)78  4)42  3)42  5)37  6)37  7)23 ITA
2017年 1)116  2)92  3)47  4)42  5)37  6)37  7)23 ITA

1991年の地元・東京で2位・4位で初入賞。95年は入賞を逃したが、その後は2015年まで10大会連続入賞を継続し、トータルの入賞人数も累計の得点でもトップの座を守り続けている。

日本にとっては「あってほしくはない」が、今回のドーハで日本が「未入賞」で、ケニアが「1~3位独占」で21点を稼いでも歴代のトータル得点では、「日本・116点」、「ケニア・113点」となり「3点差」に肉薄されるが、日本の「歴代得点トップ」の位置は死守できる計算だ。そうならないように日本人トリオに頑張ってもらいたい。

初期の頃はソ連、ノルウェー、ポルトガルなどが得点を重ね、1995年からはルーマニアも台頭。1991年の東京大会からは日本が一気に勢いを増して、97年以降はトップの座を守っている。しかし、2001年に初入賞したケニアがこのところ日本を猛追し始めた。


2017年終了時点の上位6カ国の5大会ごとと2017年の得点は、以下の通り。

大会回数(西 暦 年)JPN KEN ETH POR ROU CHN
1~5回(1983~1995) 26   0   0   30   7   0
6~10回(1997~2005) 59   22   19   9   26   4
11~15回(2007~2015) 31   56   23   3   4   33
16回  (2017)    0   14   4   0   0   0
----------------------------------
合計得点        116   92   47   42   37   37

男子ではその年の世界100傑のうち9割以上をケニア、エチオピアを中心とする東アフリカ勢が占めているが、女子も「記録」では東アフリカ勢が優勢だ。2018年の世界100傑(100位2時間26分58秒)は、エチオピア49人、ケニア23人、日本7人、バーレーン6人、アメリカ5人、ポルトガルとオーストラリアが2人ずつ、1人がベラルーシ・モロッコ・韓国・フランス・チェコ・イスラエルの6カ国。バーレーンの6人のうち4人がエチオピアから2人がケニアからの国籍変更。イスラエルもケニアからの国籍変更で東アフリカ勢が計79人。男子同様に女子も日本勢が頑張っている。

夏場に行われる世界選手権と五輪の1983年以降の気温と湿度、1・3・8位の記録とトップの前後半タイム、完走率を下記の表にまとめた。
・気象状況は、原則として、手許にリザルト用紙が残っているものはそのデータ。
・リザルト用紙がないものは、国際陸連発行の資料(Statistics Handbook)に記載のデータ。
・それにもないものは、両陸上専門月刊誌に掲載された記事のデータ。

日本の競技会では、リザルト用紙に「スタート時」「5㎞地点」「10㎞地点」などの「天候」「気温」「湿度」「風向」「風速」が細かく記載されていることが多いが、海外では「天候」の記載もあまりなく、「スタート時と終了時」あるいは「スタート時」の「気温と湿度」のみだったりがほとんどだ。また「終了時」もトップ選手のフィニッシュ時点の場合であったり最終走者のフィニッシュ時点の場合であったりする。

「1位・3位・8位」の記録については、数年後に「ドーピング失格」などで繰り上がった場合の修正はきちんできていない場合があるかもしれないことをお断りしておく。

「完走率(完走者/出場者)」は、のちに「ドーピング違反」などで「失格」となった者のうち、フィニッシュラインを越えたことが確かな者については「完走」として扱った。


【表/1983年以降の世界選手権と五輪の気温と湿度、1・3・8位の記録とトップの前後半タイム、完走率】
・「前半」は、その時点でトップの選手の通過タイムで優勝者のものとは限らない。
・1995年(「*」印)は、スタート直後の周回ミスのため400m距離不足(41.795㎞)の記録。

 年  スタート時→ 終了時  優勝記録(前 半+後 半) 3位記録 8位記録 完走率(完走者/出場者)
1983  ?℃・?%→?℃・?% 2.28.09.(??.??.+??.??.) 2.31.13. 2.34.14. 86.4%(51/59)
1984五 24℃・?%→27℃・?% 2.24.52.(??.??.+??.??.) 2.26.57. 2.29.09. 88.0%(44/50)
1987  27℃・63%→23℃・74% 2.25.17.(71.54.+73.23.) 2.32.53. 2.35.16. 80.5%(33/41)
1988五 16℃・50%→?℃・?% 2.25.40.(72.20.+73.20.) 2.26.21. 2.30.14. 91.4%(64/68)
1991  24℃・60%→27℃・49% 2.29.53.(74.49.+75.04.) 2.30.10. 2.33.00. 61.5%(24/39)
1992五 30℃・70%→?℃・?% 2.32.41.(??.??.+??.??.) 2.33.59. 2.38.46. 78.7%(37/47)
1993  23℃・68%→25℃・53% 2.30.03.(74.39.+75.24.) 2.31.01. 2.36.33. 71.9%(23/32)
1995  24℃・39%→?℃・?% *2.25.39.(*72.42+72.57.) *2.30.11. *2.32.17. 74.4%(32/43)
1996五 21℃・61%→?℃・?% 2.26.05.(72.31.+73.34.) 2.28.39. 2.31.16. 74.7%(65/87)
1997  30℃・48%→?℃・?% 2.29.48.(75.42.+74.06.) 2.31.55. 2.36.16. 72.0%(54/75)
1999  24℃・63%→32℃・?% 2.26.59.(74.30.+72.29.) 2.27.41. 2.29.11. 82.4%(42/51)
2000五 23℃・85%→?℃・?% 2.23.14.(71.45.+71.29.) 2.24.45. 2.27.07. 84.9%(45/53)
2001  25℃・44%→?℃・?% 2.26.01.(72.17.+73.44.) 2.26.18. 2.28.54. 89.7%(52/58)
2003  18℃・42%→?℃・?% 2.23.55.(72.46.+71.09.) 2.25.09. 2.26.49. 91.2%(62/68)
2004五 35℃・38%→?℃・?% 2.26.20.(74.02.+72.18.) 2.27.20. 2.31.56. 80.5%(66/82)
2005  16℃・94%→18℃・83% 2.20.57.(69.49.+71.08.) 2.23.19. 2.25.46. 89.5%(51/57)
2007  27℃・74%→32℃・55% 2.30.37.(76.35.+74.02.) 2.30.55. 2.32.22. 86.4%(57/66)
2008五 23℃・73%→24℃・69% 2.26.44.(75.11.+71.33.) 2.26.44. 2.27.51. 85.2%(69/81)
2009  19℃・64%→23℃・41% 2.25.15.(73.40.+71.35.) 2.25.32. 2.27.39. 87.5%(60/71)
2011  26℃・72%→28℃・62% 2.28.43.(76.46.+71.57.) 2.29.14. 2.30.25. 86.8%(46/53)
2012五 14℃・?%→17℃・?% 2.23.07.(73.13.+69.54.) 2.23.29. 2.25.27. 89.0%(105/118)
2013  27℃・66%→28℃・48% 2.25.44.(72.58.+72.46.) 2.27.45. 2.35.49. 65.7%(46/70)
2015  21℃・88%→?℃・?% 2.27.35.(75.17.+72.18.) 2.27.39. 2.30.54. 80.0%(52/65)
2016五 19℃・?%→?℃・?% 2.24.04.(72.56.+71.08.) 2.24.30. 2.27.36. 85.3%(133/156)
2017  19℃・56%→?℃・?% 2.27.11.(74.53.+72.18.) 2.27.18. 2.28.49. 85.7%(78/91)

以上、25大会中完走率80.0%以上は18大会(72.0%)。スタート時か終了時で25℃以上は11大会で完走率80.0%以上は7大会(63.7%)。男子と比べると、完走率が高いようだ。

完走率が65.7%と非常に低かった2013年を除けば、金メダルと銅メダルの差は4~31秒。トップと入賞ラインは2分~3分あまりの差だ。

上のデータの通り、五輪を含めて前後半の記録が判明している22大会で、前半よりも後半の方が速い「ネガティブ・スプリット」は、15大会。ほぼ3分の2の割合だ。2007年からの至近9大会はすべてが前半よりも後半の方が速い。前後半差が最も大きかったのは、2011年の4分49秒差。この時は、最初の5㎞が18分39秒と世界選手権史上最遅だったが、35㎞から40㎞は16分10秒で走った。

9月26日の時点でレース当日9月27日23:59(28日深夜0時)のドーハの天気は、「快晴」で「気温32℃」「湿度67%」「東の風1m」の予報で「体感温度35℃」とのこと。日本の真夏と同じく高温多湿の「むわっ」とした条件のもとでのレースになりそうだ。沿道にはミスト・シャワーも準備されるが、厳しい環境での戦いになることは間違いなく、スローペースの展開になる可能性が非常に高いだろう。

2011・13年を連覇しているエドナ・キプラガト(ケニア/15年5位、17年2位)が勝てば、この種目では最多優勝となる。また、1979年11月15日生まれで、レース当日で「39歳316日」。女子マラソンの「最年長金メダリスト」は、2007年のキャサリン・デレバ(ケニア)で「35歳43日」。「最年長メダリスト」は2017年・銀のキプラガト「37歳264日」なので、これらを更新する可能性もある。



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト

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