2019.09.09(月)大会

【ドーハ世界選手権】男子リレー合宿公開練習レポート&コメント




9月27日から開幕するドーハ世界選手権の男子リレー日本代表候補選手が9月7日、合宿先の山梨県富士吉田市の富士北麓陸上競技場において、メディアに向けて練習を公開しました。





男子リレー日本代表候補選手のうち14名が参加して行われた練習は、桐生祥秀選手(日本生命)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)、小池祐貴選手(住友電工)、白石黄良々選手(セレスポ)、多田修平 選手(住友電工)による4×100mRチームと、飯塚翔太選手(ミズノ)、伊東利来也選手(早稲田大学)、井本佳伸選手(東海大学)、ウォルシュ・ジュリアン選手(富士通)、河内光起選手(近畿大学)、佐藤拳太郎選手(富士通)、田村朋也選手(住友電工)、山下潤選手(筑波大学)、若林康太選手(駿河台大学)による 4×400mRチームの2つに分かれて行われました。4×100mRチームは、バトンパスをしながらの流しを行ったあと、小池選手と白石選手、桐生選手とケンブリッジ選手、多田選手と白石選手の組み合わせで1~2走あるいは3~4走を想定したバトンパス練習を、白石選手と桐生選手の組み合わせで2~3走を想定したバトンパス練習を、それぞれ1~2本程度実施。また、4×400mRチームは、全員で2組に分かれてバトンパス練習を行ったのちに、各自が個別のメニューを消化しました。




2時間ほど行われた練習のあとには、飯塚、桐生、小池の3選手が囲み取材に応じ、自身の状態やリレーについての思い、本番に向けての目標などを話しました。また、土江寛裕男子短距離オリンピック強化コーチ(4×100mR担当)および4×400mR担当の山村貴彦コーチが、それぞれ取材に応じ、この合宿の目的や本番に向けた展望などをコメント。さらに、土江コーチは、日本選手権以降、所属するフロリダ大に戻って調整を進めているサニブラウン・アブデルハキーム選手について、個人種目は200mには出場せず100mに絞ること、4×100mRはアンカーとして起用する計画であることを明らかにしました。土江・山村両コーチ、および飯塚選手、桐生選手、小池選手の各コメント(要旨)は下記の通りです。

 

 

【コーチコメント(要旨)】


土江寛裕(日本陸連強化委員会男子短距離オリンピック強化コーチ)
リレー代表も含めた第2次代表発表はまだの段階だが、4×100mR、4×400mRともに、ほぼ候補選手が固まってきている。(4×100mRは)今日は、その選手たちで初めてリレーの練習をやったが、非常にいい練習ができた。また、男子短距離全体としては、8月後半から参加標準記録を破る選手が出てきて、より多くの選手が個人種目に出場して、さらにリレーに挑めるような形が整ってきている。大会までにはまだ3週間あるが、いいムードで来ているように思う。

・サニブラウンは100mと4×100mRで世界選手権出場へ
 4×100mRについては、今日のバトン練習を見ていただいたことで、おおよその走順がおわかりかと思う。
当初は、7月のロンドンダイヤモンドリーグ(ロンドンDL)で、サニブラウンに来てもらって、実戦的なバトンのトレーニングとしてのレースを予定していたが、残念ながらそれを実現させることができなかった。そこで、できなかったサニブラウンとのバトン練習は、現在、世界選手権会場のドーハでやるということで調整している。
実は、ロンドンDLの前の時点で、(サニブラウンのパーソナルコーチである)フロリダ大学のマイク・ホロウェイコーチとスカイプでミーティングを行い、その後、私がフロリダにも行って直接話をする機会を持った。サニブラウンは、100mも200mも日本代表に内定しているが、まだ二十歳と若く、身体が成長の最中にある。このためホロウェイコーチから、身体の負担を考慮して、今回の個人種目は100mの1本に絞りたいという意向を受けた。200mを回避することによって、世界選手権では100mと4×100mRの間に5日間の空きができることになる。そこで、3走に桐生、4走にサニブラウンを固定し、その期間に現地でバトン練習を行い、レースに臨むという計画を立てている。
サニブラウンは、日本のリレーチームにとって欠かすことのできない存在だし、一方で個人種目でも十分に世界のメダルを狙える選手でもある。私としては、その両方でなんとかいい形で世界選手権を終えられたらと考えている。

・4×100mRは、小池・白石・桐生・サニブラウンが基本オーダー
4×100mRで中心となるのは、日本選手権100mで1~3位のサニブラウン、桐生、小池の3人になってくる。そして、プラス1名は、200mで代表入りすることになるであろう白石と、9月1日の富士北麓ワールドトライアル100m1~2位となった多田、ケンブリッジの3人をどう起用していくかということになる。
練習を見たのでわかってしまったと思うが、1走は小池を予定している。彼は100m・200mの両方に出場することになる。個人種目にしっかり注力してもらうためにもバトン練習を最小限で済むようにしたいと思いもあり1走(への起用を)を考えた。春先からスタートを工夫している最中だと聞いているが、この点も非常に安定してきているので十分にこなせると思っているし、(日本チームとしての)バリエーションをまた1つ増やせるということでも期待している。2走は、白石が務めることになる見込みで、これ(小池・白石・桐生・サニブラウンの走順)がメインのパターンとなる。一方で、多田も調子が上がってきているのでチャンスがあれば…とも思うし、それはケンブリッジも同様といえる。ほかにも(想定しているパターンは)いくつかある。

・個人で1人でも決勝進出を、リレーは失敗を恐れずアグレッシブに
ドーハ世界選手権は、まず個人種目でしっかりと、1人でも多くの選手がファイナルのラウンドに進むことを目指したい。また、4×100mRについては、ロンドンDLで37秒78というタイムで走ったことにより、東京五輪にはほぼ確実に出場できる記録が出せている。そうした背景もあり、アグレッシブに行ける状況である。世界選手権では、攻める勝負をすることで、東京(五輪)につながる“財産”をつくって、来年に備えたいと考えている。守りに入ることなく、積極的に“1番”を取りに行くようなレースをしたい。
我々は、東京五輪のときには、37秒4を切っていきたいと考えている。この間のロンドンDLの記録は、サニブラウン不在で、しかも1・2走でミスがあったなかでのタイム。すでにいつでも日本記録(37秒60)は更新できるところに来ているといえる。37秒台前半を目標にしても、決して無茶な数字ではないと思っている。

 

 

山村貴彦(日本陸連強化委員会男子短距離4×400mR担当コーチ)
マイル(4×400mR)チームの最終目標は、2020年(東京五輪)となってくるが、そこに向けて、昨年のアジア大会、4月のアジア選手権、5月の世界リレーと、少しずついい形でみんなが頑張っている。ドーハ世界選手権に関しては、まずは(五輪出場権を獲得できる)8位入賞が目標。記録的には日本記録(3分00秒76)を超えるところを、選手、スタッフ間で共有し、それにトライしていく流れできている。
4×400mRの場合は、比較的、足し算がしやすい種目。まずは個々の能力を上げることが求められる。そういう意味では、ウォルシュが参加標準記録の45秒30を突破する自己ベスト(45秒21)を出し、個人種目に出場できることになったのは、まず1つ大きな成長かなと思う。ひと昔前は(400mを)45秒中盤で走る選手がたくさんいたことを思うと、今後はそのレベルの選手を増やすことが必要だが、まだ少しそこは遠い状態。まずはチームで平均ラップ45秒5以内をクリアしたい。そうすれば3分02秒という記録が見えきて、世界選手権でも決勝進出の可能性が出てくる。ただ、あくまでも目標としているのは日本記録。その実現を目指して、(平均ラップ)45秒3以内をターゲットに取り組んでいる。
今回、飯塚がチームに加わってくれることとなった。現在のマイルチームは学生の多い、若いチーム。ここに、世界を経験している飯塚が入ることは、マイルチームにとっては非常に大きなピースが加わることになる。また、彼が走ることによって、44秒中盤~後半とういラップが期待できる。日本記録を出すために必要となる平均ラップ45秒3に近づいていくことが可能になる。
走順については、私の頭のなかではある程度固まっているが、このあと学生は日本インカレがあること、また、ミックスリレー(男女混合4×400mR)との配分もあることなどから、そういったところを総括して、ドーハに入ってから現地で最終的なオーダーを組むつもりでいる。ただし、消極的なレースでは絶対に世界では通用しない。積極的なレース展開をつくるためには、前半から勝負していくようなオーダーを組むことになる。

 

 

【選手コメント(要旨】

飯塚翔太(ミズノ)
個人種目がなく、マイル(4×400mR)だけで代表になるというのは、今回が初めての経験となる。自分の意識としては(4×100mR、4×400mRと分けて考えるのではなく)リレーチーム全体の一員として入っているイメージでいる。そのなかで東京五輪の(出場)権利獲得に貢献するということを期して起用されたので、そこは全力で行く。自分のできることを、しっかりやるだけだと思っている。
マイルチームのほうは、(5月の)世界リレー(※4月の虫垂炎出場からの復調過程にあり、レースには出場せず)から一緒にいさせてもらっているが、(東京五輪出場に向けて)常に崖っぷち。世界リレーでなんとか世界選手権の(出場)切符を取って、“首の皮1枚でつながっているような感じ”の状態が続いている。(世界選手権で)もう一度決勝に残って、上位を争っている姿を見てもらえたら、(日本を応援してくれている)お客さんは喜ぶんじゃないかと思うし、東京五輪で、4継(4×100mR)とマイルの両方が活躍すると、きっと盛り上がると思う。リレーチームとして1つになって、力を合わせていきたい。
これまで自分が(日本代表で)マイルを走ったのは、アジアレベルの大会ばかり。そのときに感じたのが「前半こんなに速いんだ」ということだった。世界選手権で走るのは初めてとなるが、世界になるともっと速いはず。バトンをもらった瞬間にスピードをしっかり上げるというような気持ちの準備をして臨みたい。
ドーハには、全日本実業団に出場してから入ることを予定している。そこで200mの東京五輪参加標準記録(20秒24)を突破して、いい弾みにしたい。

 

 

桐生祥秀(日本生命)
今日で(転戦先だった)ベルリンから帰国して4日目。3日間休んで、昨日から練習を始めた。(身体は)まだベストの状態ではないが、それでも今日は失敗することもなく、バトン練習ができた。
(今回の世界選手権では、バトンの受け渡しともに、初めての組み合わせとなる見込みだが)僕は、あまりそんなにバトンのことは考えていないので、いつも通りにやるという感じ。逆に考えすぎると細かくなってしまう。とりあえずもらって、渡せば役目は終了。いつも通り、そう(シンプルに)考えていきたい。今日は、初めて黄良々くん(白石)とバトン練習をやったが、ちょっと詰まったり、距離感がまだまだの部分があったりした。そこは毎回2人でどのくらいの距離感で渡ったかということを、動画を見ながら話をした。この合宿中に修正できると思う。
7月のロンドンDLの4×100mRで(先着された)イギリスとは僅差ではなかった。そこを勝負していかないと「金(メダル)」は遠い。アメリカやジャマイカもいるなかで、今年の世界選手権でどれくらい戦えるかを試したい。自分たちは(東京五輪で)金(メダル)を目指していくという目標でやっている。(その過程にある世界選手権で)銀を目指すとか銅を目指すとかいうのは変だと思うので、(世界選手権でも)しっかりと金を目指していきたい。
 また、100mのほうは、まだまだ物足りない部分がある状態。今年は10秒0台を5回以上出しているが、自分のなかで完璧というレースはまだない。スタートから全部が噛み合えばもっといける。今年の100mの試合はあと1試合(世界選手権)なので、そこでベストを出したい。

 

 

小池祐貴(住友電工)
(海外)転戦がひと区切りしてから、しっかりとトレーニングが積めている状態である。このままトレーニングが進んだら、(世界選手権は)かなりいい状態で迎えられるのではないかと思う。
(4×100mRで、1走を務めることになったが、その感想は)「あ、1走か」というくらい。もともと何走にやれと言われても走る準備はしているつもりだったし、一応、自分の本職は200mなので、コーナーのSD(スタートダッシュ)にも不安はない。また、去年のロンドンDLでも1走を務めているのでいので、特に抵抗はない。
1走をやる選手は、ほとんどスタート型(前半が強い)の選手が多いと思う。僕はスタート型ではないけれど、1走のスペシャリストといわれる選手たちと比べたら、バトン渡しのところのスピードはかなり速いはず。バトンを渡すところでかなりリードできるのかなと思っている。
世界選手権でターゲットになるのは、今年のロンドンDLで一緒に走ったイギリス。(ロンドンDLでは先着されたが)十分に射程圏内だと思う。“イギリスとの一騎打ち”くらいに持ち込めるように、バトン(パス)の精度も含めて、しっかりやっていければと思う。

 

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

JAAF Official Partner

  • アシックス

JAAF Official Sponsors

  • 大塚製薬
  • 日本航空株式会社
  • 株式会社ニシ・スポーツ
  • デンカ株式会社

JAAF Official Supporting companies

  • 株式会社シミズオクト
  • 株式会社セレスポ
  • 近畿日本ツーリスト株式会社
  • JTB
  • 東武トップツアーズ株式会社
  • 日東電工株式会社
  • 伊藤超短波株式会社

PR Partner

  • 株式会社 PR TIMES
  • ハイパフォーマンススポーツセンター
  • JAPAN SPORT COUNCIL 日本スポーツ振興センター
  • スポーツ応援サイトGROWING by スポーツくじ(toto・BIG)
  • 公益財団法人 日本体育協会
  • フェアプレイで日本を元気に|日本体育協会
  • 日本アンチ・ドーピング機構
  • JSCとの個人情報の共同利用について