2019.07.26(金)その他

【Challenge to TOKYO 2020 日本陸連強化委員会~東京五輪ゴールド・プラン~】第8回 世界リレー横浜大会を振り返って(2)

第8回 世界リレー横浜大会を振り返って(1)』から

崖っぷちに立たされていた男子4×400m


──男子4×400mは初日の予選2組で3分02秒55をマークし、1着通過。ウォルシュ・ジュリアン(富士通)、井本佳伸(東海大)、佐藤拳太郎(富士通)、若林康太(駿河台大)のオーダーで決勝に駒を進め、今大会の最重要課題だった「ドーハ世界選手権の代表権獲得」という目標を達成しました。決勝は3分03秒24で4位入賞。井本選手に代わり、同じ東海大の北谷直輝選手を入れましたね。

土江 去年のジャカルタ・アジア大会が3分01秒94で3位でしたよね。あれで非常にいい流れが作れたこと。それにこの冬、山村貴彦コーチがマイルの責任者として選手を集め、強化をしてくれたことが大きいと思います。アジア大会とはメンバーが大きく替わって、替わらないのは1走のジュリアンだけですけど、今回は予選で井本君がすごくいい走りをしてくれました。

マイルメンバーには「きちんとスピードに対応する」ということをかねてから選手には伝えてました。最終的に帳尻合わせで45秒ちょっとのラップで走るというより、リレーの場合は前半の200mを20秒台で突っ込んでもきちんとレースが作れるという流れがないと戦えない。「そういうチームを作りたい」ということでやってきて、それにバッチリと合う選手4人でチームを組めました。

──ドーハ・アジア選手権でも、ウォルシュ、佐藤、伊東利来也(早大)、若林のオーダーで3分02秒94をマークし、金メダルでした。本当に流れは良かったですね。

土江 そうですね。その一連の流れが今回の世界リレーにつながりました。あのレース(アジア選手権、世界リレーとも1走から常に先行するレースだった)がやりたかったんですよ。

──2004年のアテネ五輪で4位に入っているマイルリレーも、ここのところ4継陣に押され気味で肩身が狭かったですからね。世界選手権で決勝に残れば東京五輪が決まるわけですから、ホッとしました。

土江 実は、マイルは「ここで失敗したらチーム解散」と言ってたんです。あとは個人で狙ってもらうしかない、と。

山崎 冬の頃からそういう話をしていました。4継もあるし、どこかで線引きしないとどっちつかずになってしまうので。

土江 飯塚君、小池君のように4継と兼ねる選手もいるわけですよ。本来は個人で狙っていってのリレーなので、こういう選手たちが「マイルの出場が決まらないからマイルに借り出される」という影響は避けなければいけない。タイムを上げるためにそんなことを考えるような状況になるのであれば、「ここでマイルの挑戦は終わり」と決めて、やっていました。

──世界リレーで10位以内に入らなかったら、という意味ですか。

土江 そうです。そこはスタッフも選手も共有していて、選手たちの必死さというか執念というか、走りに表れていたと思います。横浜では「今日が最後かもしれない」と言いましたから。

 



プロジェクトチームを立ち上げて臨んだ女子

──では、女子に話を移します。土井杏南(JAL)、山田美来(日体大)、壹岐いちこ(立命大)、三宅奈緖香(住友電工)とつないだ4×100mは予選で44秒24(1組4着)をマークしましたが、全体の13番目で世界選手権の出場権に届きませんでした。予選で3分31秒72の4×400mは、B決勝も青山聖佳(大阪成蹊大AC)、松本奈菜子(東邦銀行)、武石この実(同)、岩田優奈(中大)のオーダーで臨み、2位以内ならドーハ行きが決まりましたが、3分35秒12と記録を落として7位でした。
瀧谷 12月から5ヵ月間、プロジェクトチームを組んで今までにない取り組みをしてきたのですが、先ほど山崎ディレクターが話したように、世界とかけ離れているということも実感できていない状況からスタートしたわけで、厳しかったですね。これまで女子短距離を牽引してきた福島さん(千里、セイコー)と市川さん(華菜、ミズノ)の世界大会経験者2人が、それぞれの事情で走れなかった。本来ならいろんな経験をしてきた選手と、若い力が融合してチームが構築されていったら、おもしろい取り組みになったと思います。が、今のところは、そこがうまく流れてない。その中で5ヵ月やって、世界リレーに出場するという段になってしまいました。

4継からいくと、土井が1枚加わったことによって、チームの空気が変わりました。2~3走のバトンパスミスは、壹岐のスタートが1足半ほど早かった。それでも山田があきらめずに入り込んでいって、バトンがつながりました。「もし」という言葉はスポーツの世界で禁句ですが、もしあそこがスムーズに流れていたら、私は43秒台が出ていたと思います。このメンバーで43秒台が出ていたら、すごく価値のあることだったと思いますね。

東京五輪では42秒7が必要です。今、その数字は現実的ではないけど、彼女たちは今回、自分の肌で感じたことがあるはずです。東京五輪後も続く女子リレーの流れを変えていくという意味では、この5ヵ月は芽吹きの期間だったと思いますね。

──マイルリレーに関してはどうでしょうか。

瀧谷 マイルは吉田(真希子)コーチが「3分30秒台もあるかな」と話してましたけど、冷静に見て「(3分)32秒を切れば大したものかな」と。予選で3分31秒台が出ました。これは、青山と松本さんの復活が大きい。この2人が長いスランプから浮上してきた姿を周りの選手は間近で見てきたわけですから、大きな刺激を受けているはずです。すごく可能性が出てきています。

ただ、マイルは本当にスプリント不足。3分28秒91の日本記録を出した2015年の北京世界選手権の時はみんな、前半の200mの入りが速かった。1走の青山はたぶん24秒前半で入ってるし、2走の市川さんのラップは51秒台です。本当にスプリント能力のある選手に、マイルに挑戦してほしいなと思ってます。今回は、アジア選手権の400mで4位(53秒54)の広沢さん(真愛、日体大)抜きでこのタイムでしたから、広沢が入ればもっと伸びるのは確実です。

課題はいっぱいあり過ぎて、あっちもこっちもすべてに手を出すことはできないので、何かに絞ってやっていくしかないと思ってます。女子は高校生に勢いがある選手がいても、インターハイ路線があってなかなかチームに入ってもらうのが難しい、という面があります。でも私は、機会があればベストメンバーを組みたい。委員長やディレクターの意見をうかがいながら、そういう機会を探りたいと思っています。

──プロジェクトチームに入っていなかった土井選手の起用は、どういう経緯で決まったのですか。

瀧谷 出雲陸上が世界リレーの選考会になっていましたから、そこでいい走りをした土井さんと兒玉さん(芽生、福岡大)を4×200mの代表として入れました。土井さんは、そこからの起用です。

──まだ世界選手権への道が残されていますが、もう記録へのチャレンジはしないのですか。

麻場 一応、世界リレーとゴールデングランプリを目指してやってきたので、ここで総括して、今後どうするかということです。

瀧谷 その2つの大会が終わって、節目ですよね。ここでいったんチームは解散して、個人で日本選手権を目指す。この1ヵ月はリレーばっかりで来たから、ここから先の1ヵ月はきちんと自分のパフォーマンスを上げる期間にしてほしい。日本選手権の結果を見て、また新たなリレーチームとしてチャレンジしないといけなくなる可能性もあります。

麻場 例えば、日本選手権の100mで1位から4位までが11秒3~4台で来たら、「どこかでリレーを狙おうか」という話になりますよね。逆に11秒8~9台だとしたら、「挑戦する意味あるの?」という雰囲気になってしまいます。そこは、この1ヵ月の取り組みに期待したいと思います。

瀧谷 言いにくいことですけど、現実はなかなか厳しい。それでも「低迷している女子短距離を何とか東京五輪へ」というみなさんの気概でプロジェクトを立ち上げたわけですから、これをつないでいけるレベルにまで持っていかないといけない。そのレベルというのは、日本記録を必ず破ること。これが条件だと思います。


第8回 世界リレー横浜大会を振り返って(3)』に続く…

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