2019.06.10(月)大会

【第103回日本選手権混成】右代選手、十種競技史上最多8回目のV!世界選手権代表に内定!

ドーハ世界選手権の代表選考会を兼ねて開催された第103回日本選手権混成競技の第2日が6月9日、長野市営陸上競技場において行われました。





■右代選手、十種競技史上最多8回目のV! 世界選手権代表に内定!

男子十種競技は、9種目めのやり投でトップに立った日本記録保持者(8308点)の右代啓祐選手(国士舘クラブ)が、最終種目で中村明彦選手(スズキ浜松AC)の猛追から逃げきって、十種競技史上最多となる8回目の優勝を達成。記録は7847点にとどまったものの、4月のアジア選手権でタイトル獲得している右代選手はこれに選考条件を満たし、秋のドーハ世界選手権の代表に内定しました。 

第2日最初の種目の110mHで、レース中にバランスを崩すミスがあり、15秒36(+1.8)でスタートした右代選手は、その失敗を「心的に」引きずってしまい、加点種目であるはずの円盤投が44m47に終わっていました。この段階で3位には浮上したものの、首位は、110mHで14秒19(+2.1)、円盤投は39m87をマークした丸山優真選手(日本大)が初日からのリードを依然としてキープ。また、2位の中村選手が、追い風参考(+2.1)ながら110mHで自己記録に並ぶ14秒06、不得意種目の円盤投も36m51を投げたことで、右代選手よりも優位に立つ展開となっていました。 

しかし、続く棒高跳を終えたところで流れが変わりました。単独種目では4m70のパーソナルベストを、また、十種競技内でも今季イタリアの大会で4m55をクリアしている丸山選手が、前日から不安があった背中の痛みの影響もあって4m30でこの種目を終了。中村選手も4m50にとどまったなか、4m70を3回目でクリアしていた右代選手が、続く4m80は1回で成功してみせたのです。4m90は跳ぶことはできませんでしたが、ここで849点を獲得し、丸山選手6494点、中村選手6420点、右代選手6404点と、点差は一気に縮まります。そして、ここで丸山選手が棒高跳を終えた時点で残り2種目を棄権。優勝争いが中村選手と右代選手の2人に絞られた形で行われた9種目めのやり投で、右代選手が64m28を投げて、50m96の中村選手を逆転し、最終種目の1500mは、183点差で中村選手が右代選手を追うという、2人が上位を占めた4月のアジア選手権とほぼ同じシチュエーションで迎えることとなりました。 

その1500mは、中村選手は4分21秒35、右代選手は4分46秒28でフィニッシュ。中村選手は802点を獲得したものの、合計は7825点で右代選手に22点届かず、右代選手の2年連続8回目の優勝となりました。 

3位には初日を4番手で終えていた川﨑和也選手(渡辺パイプ)が、110mHでいったん大きく順位を落としたなか、4m60をクリアした棒高跳で再浮上してくると、やり投、1500mで田上駿選手(順天堂大)と僅差の勝負を展開して7485点を獲得。10点差で田上選手を抑えました。 

また、同時開催されていたU20日本選手権十種競技は、初日でトップに立った駒井斗馬選手(東海大学)そのまま逃げ切って6805点で優勝を果たしています。
 

 

■女子七種競技は山﨑選手が2連覇

女子七種競技は、初日を3323点で(2位)で折り返していた前回覇者の山﨑有紀選手(スズキ浜松AC)が、第2日最初の走幅跳で5m84(+0.6)をマークして首位に立つと、やり投を42m19、800mは2分17秒09をマークして、後半3種目で2373点を獲得。100mH、200m、走幅跳の風が平均で2.0mを超えたため追い風参考記録となったものの5696点で、「平成」「令和」をまたいでの2連勝を達成しました。 

2位は、5649点(追い風参考)を獲得した宇都宮絵莉選手(長谷川体育施設)。走幅跳は5m89(+1.0)、やり投を42m85、800mでは2分12秒30をマークして第2日ではトップとなる2469点を挙げましたが、山﨑選手には47点届かず。1m58にとどまった初日の走高跳が悔やまれる結果に。しかし、勝利を意識しすぎて失敗に終わった前回よりは表情は明るく、「今回の悔しさは400mHに対しての気持ちにプラスになると思う。必ず400mHでは自己ベストで優勝できるように、しっかり準備したい」と、400mHの連覇をかけて挑むことになる2週間後の日本選手権に目を向けていました。 

初日をトップで折り返した伊藤明子選手(筑波大)は、走幅跳(5m51、+1.8)で2位に、やり投(30m78)を終えた段階で4位に後退していましたが、最終種目の800mを種目別トップとなる2分10秒65でフィニッシュ。46m83をマークしたやり投で種目別優勝を果たし、3位に浮上していた大玉華鈴選手(日本体育大、5439点、4位)を再逆転し、5516点(追い風参考)・3位で競技を終えました。 

なお、併催されていたU20女子七種競技は、首位で前半を折り返した池田涼香選手(筑波大)が、伊藤桃子選手(中京中京高)、田中友梨選手(至学館高)ら、高校生の追い上げをかわしきり、5173点(追い風参考記録)で優勝を果たしています。

 


【優勝者コメント】

日本選手権男子十種競技
優勝 右代啓祐(国士舘クラブ) 7847点 

2日間を振り返ると、納得できた部分もあれば、ちょっと技術がうまくできなかったなという部分もある。しかし、総合的に勝てて史上最多となる8回目の優勝が果たせたこと、そして世界陸上の内定をもらえたことに関しては、素直に嬉しいと思いたい。

今回、課題として挙げるとしたら、1日目は走高跳で2m02の3回目を跳べなかったことと400mで大きな失敗をしたこと。また、2日目は、ハードル、円盤投と、身体はキレがあるなかで思うように記録が伸ばせなかったことを残念に思う。しかし、そこから気持ちを切り替えて、気持ちを切らさずに最後まで戦い抜くことができたのは、いいところかなと思う。

(棒高跳で流れが変わったが)今日の棒高跳は、風を読むのが難しい部分はあったが、普段よりも助走の前半部分が安定していて、2回失敗していても、何をすれば跳べるかというイメージが自分のなかにあったので、4m70の3回目は絶対に跳べる自信があったし、だから4m80も一発でクリアすることができた。ただ、4m70の段階で(中村)明彦、丸山(優真)が失敗して、あそこで得点を重ねることでプレッシャーを与えられる勝負所だったので、最低でも4m90は跳んでおきたかったなという思いはある。

最終種目の1500mは、実は、アジア選手権でも(中村選手に)180点の差でリードしていて、今回と全く同じシチュエーションだった。僕の場合は、明彦との(27秒差の)距離を意識するよりは、まず4分45秒を切るということを設定し、1周、2周、3周と回っていったことで、リズムがうまくつかめて落ち着いて走れたかなと思う。

最低限の優勝ということはかなえることはできたものの、目指していた8200、8300という得点に届かなかったことは悔しい。この点数は、世界陸上で目指したい。世界陸上で、その点数が取れれば入賞もできるし、オリンピックにもぐっと近づくと思う。東京オリンピックに出るための標準記録(8350点)は非常に高い記録なので、まずは日本記録更新というものを世界の舞台で実現させたい。「世界でメダルを」という目標は、もう何年も言い続けてきていることだが、(年齢を重ねて)いよいよもう何年も言える状況じゃなくなっている。今年中にでも納得のいく記録を出して、来年(の東京オリンピック)につなげたい。

 

 

日本選手権女子七種競技
優勝 山﨑有紀(スズキ浜松AC) 5696点 ※追い風参考記録 

優勝できたことは素直に嬉しいが、昨年、自己ベストが出て、今年は日本記録を狙える点数を、この大会で出したいと思っていたので、点数的には満足はしていない。この記録では世界で通用しないので、また来年、この大会でリベンジしたい。

1日目は緊張もあって硬かったので、2日目は、1日目のことを考えずに「3種目をしっかりやるぞ」という気持ちで臨んだ。結果的に記録にはつながらなかったが、最初の走幅跳から、自分らしく、楽しく跳躍することができた。また、(2位の宇都宮選手とタイムにして8秒差で臨むことになった)800mのレース前には、海老原コーチ(有希、女子やり投日本記録保持者)から、「ここで優勝するのとしないのでは全然違うよ」と言われていたので、負けるわけにはいかないと思った。速いペースだったがついていって、結果的には最後は疲れてしまったが、悔いのない走りができたと思う。ただ、やはりどの種目もあと1歩、あと2歩というところで、満足できる試技や記録というのが1個も出なかったなというのが、2日間を通しての正直な感想である。全体的なレベルアップが今後の課題。1種目1種目、まだ詰めが甘いところがあるので、そういった部分を基礎からしっかり見直していきたい。

社会人1年目だった去年は、どちらかというと勢いだけで、目の前の大会をどんどんこなしていった。昨年の結果は自分が想像していた以上の結果だったので、その自分を超えるために、練習でも各種目で考えることを多くして取り組んできた。今季は、そこが空回りしていた面もあるが、がた落ちすることなく、こうやってきているので、今が踏ん張りどきだと思う。東京オリンピックに向けては、参加標準記録が6420点と、今の自分にはとても高い点数だが、無理だとは思わずに1歩1歩しっかりと頑張っていきたい。

このあとは、2週間後から海外で2試合を予定していて、海外のトップ選手と試合をすることになる。そこで上のレベルの選手と自分との差をしっかり把握し、また、いい刺激、いい経験にしてきたい。

 

 

U20日本選手権男子十種競技
優勝 駒井斗馬(東海大学) 6805点

このU20日本選手権は、高校を卒業する前から目標にしていた大会。そこにまず出場して、優勝できたことは、とてもいい経験になった。すごく嬉しい。

1日目は、100mと走幅跳が終わった段階では思うように身体が動かず、自己ベストに遠い記録になってしまったので、点数的に心配だったが、(6kgでやる)砲丸投でインターハイぶりにベストが出て、そこでモチベーションが上がった。(自己記録を大きく更新した)走高跳については、実はこの大会を迎えるまでの1カ月あたりで、右足首を捻挫したり、走幅跳でかかとを痛めたり、円盤を落として右足小指にひびが入ってしまったりするなどのケガが続いて、練習が全然積めていなかったのだが、(大会)1週間くらい前から練習を本格的に始めときに2m06が跳べたので、ベストは跳べる自信はあった。そのあとの400mをしっかり走ることができたので、満足はしていないが、まあまあうまくまとめられたかなと思う。

2日目については、今回、初めて十種競技をやったので、戦い方とか疲労度合いとかがわかっていなかったので、けっこうな疲労があって失敗だったが、110mHはジュニアハードルでの自己ベスト。練習ではゴムバーをかけての跳躍しかやっていなかった棒高跳は、3m40だったが、自分としてはいいほうだと思う。ただ、大会前にどれくらい得点がとれるか考えたときは7100点くらいの点数が出ていたので、7000点以上は取りたいと思っていた。結果として、(当初の想定より)マイナス300点となる6800点台という結果だったので、納得はしていない。まだまだ修正する点は多くあるなと思う。

最初のころは、大学では走高跳をメインにしていこうかとも思っていたが、今回、十種に挑戦して、楽しくできたし、課題も多く見つかったので、まだまだやりたいという気持ちになるとともに、まだまだやってやろうという気持ちも高まってきた。今回、走高跳で2m12を跳べたが、この種目の日本インカレのB標準は2m13とあと1cm。今後は、そこにも目標を置いていきたい。もちろん、十種競技でも秋の日本インカレ、来年の日本選手権を目指し、(走高跳と)2種目で取り組んでいけたらなと思う。

 

 


U20日本選手権女子七種競技

優勝 池田涼香(筑波大) 5173点 ※追い風参考記録(公認:5152点)

今回は、挑戦者の立場で臨めるシニア(の七種競技)に出たほうが気持ち的には楽なのかなとは思ったが、勝ち続けたいという気持ちを忘れないために、U20のほうに出ることを選んだ。「勝たなくちゃいけない」と思って臨んだものの、なかなかうまくいかないなかで、なんとかやりきれた。自己ベストが1つも出なくて、「こんなに苦しい試合は久しぶりだな」と思ったが、それでも高校生たちの勢いや同期の力をもらいながら頑張ることができた。本当に感謝している。

私の七種競技は、いろいろな方から「全部技術がない七種競技」と言われている。今回も走高跳は5歩の短助走、やり投もまだきちんとやったことがないので構えができていないという状態だが、「課題=伸びしろ」だと考えて、自分自身に期待している。点数は、本当はもうちょっと上を狙ってはいたが、調子の上がり方を考えても、今回はまず勝つことをだけを考えて臨んでいた。そんな感じでも5100点が取れたので、アベレージが上がっていることは感じることができた。

今後の目標は、秋の日本インカレなる。(筑波大は)強い先輩方が多いので、選手になるのも大変だが、しっかり調子が上がってくれば5300点台は出ると思う。苦手の投てき種目にしっかり取り組みたい。また、練習で、先輩型に置いていかれながらも一緒に走っていれば、走るほうもちょっとずつ伸びていくかなと思っている。 

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)


>>日本選手権混成ライブ配信アーカイブ映像
・1日目はこちら



第103回日本陸上競技選手権大会

いよいよ日本選手権! 6月27日(木)~30日(日)福岡市博多の森陸上競技場で4日間開催!(大会サイト)


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