7種目の決勝(七種競技を含む)が行われた大会第4日は、日本は女子3000mSCと女子走幅跳の2種目の決勝に出場。このほか、男子4×100mRを含む6種目の予選と、2種目の準決勝に挑みました。午後のセッションでは、決勝種目がスタートするタイミングで、激しいにわか雨に見舞われました。強く降ったのは30~40分程度ながら、この影響で気温が下がり、肌寒さを感じるなかでの競技となりました。
女子3000mSCには、西山末奈美選手(松山大)が出場。レースは、序盤は大きな集団で推移しましたが、1000mを過ぎた辺りでアフリカ勢を中心とする5選手が先頭集団を形成、残り3周となったところで、前回覇者でU20世界記録保持者(8分58秒78)のCelliphine Chepteek Chespol(ケニア)、Peruth Chemutai(ウガンダ)、Winfred Mutile Yavi(ブルネイ)の3選手に絞られました。
しかし、その後、Chespol選手がペースを上げると、各選手の差はどんどん広がっていく展開に。Chespol選手は2000mを6分15秒04で通過すると、最後の1000mは. 2分57秒台でカバー。大会新記録となる9分12秒78で連覇を達成しました。
集団に巻き込まれないようスタートしてすぐに3番手に出た西山選手は、2周目以降を5~6番手に位置してレースを進めていきました。1000mを過ぎたところで7位となり、その後は徐々に順位を下げて、ラスト1周を11位で通過しましたが、バックストレートで1人抜くと、最後の水濠を越えてホームストレートに入る辺りで9位に浮上しました。前を行く8位の選手とは差があったため、さらなる逆転はかないませんでしたが、10分00秒49・9位でのフィニッシュとなりました。
強い雨がやや弱まり始めたタイミングでの競技開始となった女子走幅跳には、U20日本記録保持者(=高校記録)の高良彩花選手(園田学園高)がメダル獲得に挑みました。第3跳躍者としてピットに立った高良選手の1回目はファウル。しかし、2回目でセカンドベストとなる6m37(+1.2)をマークして、トップに躍り出ました。
その2回目の試技で、第11跳躍者のLea-Jasmin Riecke選手(ドイツ)が6m51(+0.4)を跳んで首位に立ち、高良選手は2位につけた状態で後半の試技に。高良選手は、4回目は6m19(+0.4)、5回目は6m24(+0.3)と6m台はマークしたものの、踏み切り位置がやや遠めとなっていたこともあり、記録を更新することができません。
最終跳躍で、今季、U20世界リスト1位となる6m71を跳んでいるTara Davis選手(アメリカ)が 大きな跳躍を見せましたが、6m36(±0)で逆転には至らず。この段階で高良選手の銀メダル以上が確定しました。高良選手は逆転をかけて最後の跳躍に臨みましたが、記録を伸ばすことはできず6m17(+0.3)で競技を終了。2000年の第8回大会(チリ・サンティアゴ)における池田久美子選手(福島大、銅メダル)以来で、この種目での過去最高成績となる銀メダルを獲得しました。
この日の最初のトラックレースとなった女子100mH予選では、6月のアジアジュニア選手権をU20日本歴代5位となる13秒45で制した吉田唯莉選手(筑波大)が出場。最終6組目に入った吉田選手は、1.1mの向かい風のなか、危なげのない走りで2着・13秒88でフィニッシュし、着順で、翌日の午後に行われる準決勝への進出を決めました。
また、女子1500m予選でも、アジアジュニア優勝者の廣中璃梨佳選手(長崎商高)が激しいラスト勝負となった2組目を8着・4分19秒03でフィニッシュ。全体では9位となる記録で、最終日に行われる決勝に駒を進めました。
午後のセッションで天候が悪化する前に行われた男子4×100mR予選では、日本は3組目に出場。福島聖選手(富山大)、宮本大輔選手(東洋大)、上山紘輝選手(近畿大)、安田圭吾選手(大東文化大)のオーダーで、危なげないレースを展開し、1着・39秒18でフィニッシュ。第2組で39秒13をマークしたドイツに続き、全体では2位での予選通過となりました。決勝は、7月14日の午後の最終種目として行われます。
また、男子三段跳予選では、秋山裕樹選手(川崎市立橘高)が3回目に15m70(+0.1)をマーク。予選通過記録(15m80)を上回ることはできませんでしたが、A組で5位、全体では9位につけて、翌日の決勝に進んでいます。
このほか、男子やり投予選に出場した畦地将史選手(慶應義塾大)は、肘に痛みを抱えていることもあり60m56にとどまり、B組12位で競技を終了。女子200mに出場した青野朱李選手(山形中央高)は、午前に行われた予選で4着(23秒93、+0.7)となり、着順での準決勝進出を果たしましたが、午後に行われた準決勝は24秒60(-0.5)と記録を落として5着にとどまり、決勝進出はかないませんでした。
また、雨の影響で15分ほどスタートが遅れた男子400mH準決勝に臨んだ白尾悠祐選手(順天堂大)は、中盤まで上位争いするレースを展開していましたが、ホームストレートで他選手にかわされて5着(51秒21)で競技を終えています。
【選手コメント(決勝後)】
◎高良彩花(園田学園高3年・兵庫)
女子走幅跳 決勝 2位 6m37(+1.2)(目標としていた)自己ベストと優勝は達成できなかったが、初めての世界の舞台でセカンドベスト(6m37)が跳べて、銀メダルをとることができたので嬉しい。
今日は1本目で6m40以上の跳躍をして、有利な状態で試合を進めていこうと思っていた。そこで助走が勢いに乗りすぎてファウルしてしまったことは悔いが残るが、次の跳躍で修正できて、セカンドベストを跳ぶことができたので、その点に関してはすごくよかったと思う。
試合が始まるまでは、ごはんも食べられないほど緊張していた。しかし、競技場に入ると、会場がすごく盛り上がっていたので、自分のテンションも上がって、集中して試技に挑むことができた。試合直前に急な雨に見舞われたが、いきなり強く降り出したのはコールのときだったので、ウォーミングアップはちゃんと行うことができていた。また、こういう天気の試合でも勝てるよう、普段の練習で雨の中でやったりもしているので、戸惑うことはなく、いつも通りに跳ぶことができた。
(6m37でトップに立った2回目の試技で、そのすぐあとに)6m51を跳ばれて逆転されたが、そのときも「自分が、さらに跳んで逆転すればいいや」という気持ちで、動揺はなかった。3回目以降で逆転を狙ったが、助走がうまく合わせることができず、踏切板をちょっとしか踏まない跳躍になってしまったところは反省点。しかし、そこを修正していけば、(帰国してすぐに行われる)インターハイで高校新を出せると思う。
◎西山末奈美(松山大1年・愛媛)
女子3000mSC 決勝 9位 10分00秒49 =自己新記録今日は、途中でペースが上がっていったときに、自分がどこまで対応できるかということに挑戦する気持ちでレースに臨んだ。スタートしたときは、いい位置で走れるよう、最初のところでしっかり前につけて走ることを意識したが、2周目辺りから周りを囲まれるような形になってしまい、足が引っかかったりして、ちょっと走りづらかった。
最後の1周で11位から9位まで順位を上げときは、余裕はなかったけれど、いつもの練習でもラストスパートを意識して練習しているので、しっかりラストを走りきれば、順位を上げていけると思っていた。ただ、入賞まであと1人届かなかったことを思うと、それを完全に発揮することはできなかったなと思う。また、9分台を出すことが今回の課題だったので、それが達成できなかったことは自分の弱さ。トップレベルの試合に出させていただいて、まだまだ自分の力が足りないということがよくわかった。今回の経験を持ち帰って、それを糧にして、今後の練習につなげていけるようにしたい。
【選手コメント(予選・準決勝ラウンド後)】
◎吉田唯莉(筑波大1年・石川)
女子100mH 予選6組2着 13秒88(-1.1) ※準決勝進出着順(3着以内)でしっかり準決勝に行くのを狙っていたので、それができたのはすごく良かったと思う。(予選最終組の)6組目だったので、(ウォーミング)アップもゆっくりできた。前の組を気にするというよりは、しっかり自分のアップができてよかったと思う。
向かい風(1.1m)だったが、レースのときはあまり感じなかった。そのなかでしっかり13秒台で走れたので、次はベスト(自己記録13秒45)を狙いたい。明日(の準決勝)は、午後からのスタート(13時55分)になるので、その時間に向けて、しっかりアップしていきたい。
いつも前半が遅れてしまいがちで、今日も遅れたなかで、後半なんとか上がってこられたレースだったので、スタートでは「しっかり音を聞いて出る」という確認と、あとは持ち味の後半でもっと刻めるようにいいイメージにしていきたい。
男子(110mH、泉谷駿介選手)も3位を取ってくれたので、自分のも自己ベストを出して、上の順位を狙えるように頑張りたい。
◎畦地将史(慶應義塾大1年・千葉)
男子やり投 予選B組12位 60m563投とも自分の思い通りにいかなかった。最後の局面でブロックができなかったという点と、その前段階の調整期間で肘の状態があまりよくなかったという点から、思うように投げることができなかった。肘は、現在も少し痛みがあり、そういった厳しい状況で今日を迎えていた。自分のなかでも悔しい思いの残る大会となってしまった。
また、現地に来てからも、気温や湿度が低いということで少し体調も崩してしまった。そういった意味で自分の調整力のなさが浮き彫りになってしまった大会だった。また、こうした大きな大会に出していただく機会があったら、今回の経験を生かしていきたいと思う。まずは秋以降のシーズンに向けて肘をしっかり治したい。
◎廣中璃梨佳(長崎商高3年・長崎)
女子1500m 予選2組8着 4分19秒03 ※決勝進出外国人選手は、最初の入りとラストのスパートがすごく速いと思っていたので、そこをいい流れで通過できたら…と思っていた。集団のなかで走る形になってしまったが、膨らんだりしたときに不利なので、直線で抜かすことができればいいと思っていたのだが、なかなかうまくいかなかった。
自己ベストが4分17秒62なので、今日は決勝1本を走るつもりで自己新を狙って走った。ラストの1周は、自分のなかでも思いきってスパートをかけた。バックストレートで3番になって、そのまま行けるかと思っていたのに、最後に一気に抜かれてしまった。世界大会に出てくる選手は、ラストのラストまで速いんだなと実感した。着順での通過を狙っていて、4着内でフィニッシュしたいなと思っていたので、そこは悔しく思う。
決勝では、もっと速いスピードになると思うが、そこでどこまで食らいついていけるか。この部分に挑戦して、自己ベストを目標に頑張りたい。
◎青野朱李(山形中央高3年・山形)
女子200m 予選5組4着 23秒93(+0.7) ※準決勝進出スタートから、いつもの決勝並みに突っ込んでいったが、後半で周りに人が見えて、少し硬くなってしまった。準決勝ではそのあたりを修正したい。
走り自体は、自分らしさがなかったわけではないのだが、少し緊張していて、普段通りの自分ではなかったように思う。準決勝では、もっと自分らしい走りをしようと思う。
(準決勝ではレベルが高くなるが)今、日本チームはけっこういい流れで来ているので、自分のその流れに乗れるよう決勝に残りたい。
◎日本(福島、宮本、上山、安田)
男子4×100mR 予選3組1着 39秒18・1走:福島 聖(富山大1年・富山)
いいスタートが切れて、自分が思った以上の走りができ、トップで2走の宮本にバトンを渡すことができたのでよかった。明日の決勝では、今日以上の走りができるように頑張りたいと思う。
・2走:宮本大輔(東洋大1年・埼玉)☆ダイヤモンドアスリート
楽しんで走れたし、気持ちよくバトンを3走に渡せたのでよかったかなと思う。バトンも悪くない感じで普通に渡すことができた。2組目でドイツも(日本と)同じようなタイム(2組1着、39秒13)を出していたし、決勝では今以上の走りをしなければ勝負にならないと思う。金(メダル)を取るのは難しいことなので、冷静に走りたい。
・3走:上山紘輝(近畿大1年・三重)
自分の位置でトップで渡せたら、いいレースができると思っていた。大輔(宮本)からもらって、いい感じで安田に渡せたのでよかったと思う。バトンパスも練習した通りにいけたと思う。決勝はもっと攻めの走りをしなければならないが、攻めの走りをしたなかでも自分の形は崩さず、トップで渡せたらと思う。
・4走:安田圭吾(大東文化大1年・東京)
後ろからアメリカ(2着、39秒49)などが追ってきていたが、1走・2走・3走がトップで持ってきてくれたので、あまり焦ることはなく、気持ちよく走ることができた。自分自身の走りも、昨日、200mがあったので、けっこうよく動いていたと思う。決勝では周りのレベルが上がると思うが、目標がU20日本新記録と金メダルであることに変りはない。焦らずに集中して走りたい。
◎秋山裕樹(川崎市立橘高3年・神奈川)
男子三段跳 予選A組5位 15m70(+0.1) ※決勝進出初めての世界大会だが、緊張はなくて、楽しんで臨むことができていたと思う。ただ、競技場に入って、練習跳躍の段階でピットがBからAに変わることになった。そのことで少し動揺があり、1本目はファウル。2本目もファウルが怖くて思いきっていけず14m台(14m74)の記録にとどまってしまった。3本目はもうやるしかないので、「もう、どうなってもいいや」という気持ちで思いきって行った。なんとか15m70を跳ぶことができたのでホッとしている。
決勝では恐れるものは何もないので、今日できた3回目の跳躍の助走を、決勝でもしっかりやって、ベスト8に残りたいと思う。記録は、まずは自己記録(15m74)を更新することを目標にしたい。そして、決勝でベストを更新していくなかで、16m台の記録に近づいていけたらいいなと思う。
◎白尾悠祐(順天堂大1年・群馬)
男子400mH 準決勝2組5着 51秒21足を痛めていたりして、万全でない面があったけれど、予選ではけっこう身体が動いていた。準決勝でシーズンベストの50秒半ばくらいの記録を出せば、決勝もいけると思っていてけっこう自信もあったが、(強い雨に伴う若干の遅延など)いきなりのアクシデントがあり、それにしっかり対応することができなかった。そのせいで後半身体が動かず、一気に4人くらいに抜かれてしまった。こういうハプニングは今まで経験したことがなく、準備自体もしていなかった。そういう点が不足していたから、戦えなかったのだなと思うし、世界と戦うためには、単に記録だけでなく、準備の面でもしっかりしておかなければならないことを実感した。
◎青野朱李(山形中央高3年・山形)
女子200m 準決勝1組5着 24秒60(-0.5)準決勝のほうがいい走りができたと思うのだが、タイムが全然ダメだったので、すごく悔しい。準決勝は、前半からすごく突っ込んだ。走っているときに内側の人が見えてこなかったので、「これは行ける」と思ったのだが、後半全然伸びなかった。
世界の舞台を経験したので、日本では絶対に誰にも負けないようにしたい。こういう機会はそうはない。この経験を大切にして、日本での試合もしっかり頑張っていきたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
▼第17回U20世界陸上競技選手権大会▼
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▶5日目:男子棒高跳・江島雅紀、5m55の今季ベストで銅メダル!
▶最終日:吉田選手が3000mSCで過去最高の5位入賞!日本は、金2、銀2、銅2、入賞11の成績
第17回U20世界陸上競技選手権大会
開催日:2018年7月10日(火)~15日(日)
会場:フィンランド・タンペレ
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