5月5~6日に太倉(中国)で開催される第28回世界競歩チーム選手権に出場する日本代表選手の練習が4月20日、東京都北区にある味の素ナショナルトレーニングセンターの陸上トレーニング場において、メディアに向けて公開されました。
公開練習に参加したのは、同大会に向けて2泊3日の代表合宿を組んだ男子20km競歩の代表選手(髙橋英輝選手=富士通、山西利和選手=愛知製鋼、松永大介選手=富士通、藤澤勇選手=ALSOK、池田向希選手=東洋大学)と、4月16~22日の日程で同センターにて個人合宿中の荒井広宙選手(自衛隊体育学校)、丸尾知司選手(愛知製鋼)の計7名。この日は、午前中にメインとなる強度の高い練習を実施していたこともあって、選手たちは、ストロール(ストロー、ストローリングとも呼ばれ、ゆっくりとしたペースで歩くことを指す。ランニングにおけるジョギングに相当する練習)でトラックを周回したり、両腕を回しながら歩くなどのドリルを行ったりと軽めの練習を1時間ほど実施しました。また、練習終了後、競歩の強化を担当する今村文男オリンピック強化コーチとともに一部の選手が囲み取材を受け、それぞれの現状や世界競歩チーム選手権に向けた抱負などを述べました。
【コメント(要旨)】
■今村文男オリンピック強化コーチ
男子20kmについては、今回から2泊3日の合宿を行い、過去のデータや金メダルを取った選手のレースパターンの分析などを示しながら選手たちとディスカッションして、自分たちに何が足りないのか、金メダルを取るためにはどうしたらいいのかを考える時間を設ける取り組みを始めた。自分たちが世界ランキング上位にいるにもかかわらず、(世界大会では)入賞すらできないレースが多いという状況のなか、さまざまなデータを見ながら、改めて自分たちのレースパターンを確立していく最初の年と捉えている。
世界競歩チーム選手権に向けては、選手たちの状態は、国内の選考会と同等くらいまでは来ているが、メダルを狙うとなると、最大スピードにおける動きの精度の高さが大事。「速く歩く」プラス「技術面」といったところがかかわってくる。他国のエントリー状況が把握できていない状況ではあるが、団体戦となると上位でまとまって入賞するようなカナダや中国、オーストラリアあたりが強国かなと考えている。団体戦は総合成績の上位3人の順位の和で競うことになるので、記録だけではなく勝負強さも求められることになると思うが、そういったところでも金メダルを期待したい。
また、団体戦の金メダルを目標にしながら、そこで出てくるであろう課題を、選手たちと考えて、東京オリンピックにつなげていく形をとっていきたい。せっかくアジアエリアで開催されるので、20km・50kmの団体で金メダルを獲得したなかで2020年を迎えられることが、選手にとってもプラスになるのではないかと思っている。
女子に関しては、東京オリンピック出場・入賞を目指すうえでは個人の競技力にまだ差があるので、まず全体強化ということで持久力やフィジカル面の向上を図りたい。個人としては、岡田久美子選手(ビックカメラ)がここ数年の主要大会に連続して出場しているので、ぜひ入賞までにつなげていければと思っている。そうした形でボトムアップしながら、団体戦で入賞レベルくらいまでにはもっていきたい。
■髙橋英輝選手(富士通、シニア20km競歩代表)
1月に生じた右大腿骨の故障の影響で、3月まではゆっくりと調整してきて、4月に入ってから練習に取り組んできた。現在は、痛みも引き、練習もしっかりとできているが、ケガが治ったあとの左右差が生じているので、そこを修正しながら試合に向かいたいと考えている。
世界競歩チーム選手権では、チームに貢献できる歩きをしたいということと、(代表に選ばれた)アジア大会のレースにつながる歩きがしたい。個人としては8位入賞が目標。チームとしては、メダルは取りたいと個人的には思っているし、みんなもそういう思いを持っているはずなので、刺激し合いながらやっていければいいなと思う。
今回、代表合宿を組んで、ディスカッション等を行っているが、世界大会における傾向などを共有しながら、メダルを獲得するために必要な課題は何かを自分で考える、非常にいいきっかけになっている。20km競歩が、(世界大会で)結果が出せていないことは本当に悔しいし、(「国内だけ」と言われないような)結果を残したいと思っている。まずは世界競歩チーム選手権で結果を残せるように、チームみんなで頑張っていきたい。
■荒井広宙選手(自衛隊体育学校、シニア50km競歩代表)
世界競歩チーム選手権に向けては、練習量のピークは過ぎて、今は徐々に量を減らし、疲れをとりながら調子を上げていく段階に入っている。練習も順調で、自分の思うようなペースでできている。20kmでの出場経験はあるが、50kmに出るのは今回が初めて。団体で戦うのは、個人とは違う緊張感があるけれど、やるべきことは普段と同じ。自分の身体と向き合い、まずは最高の状態でスタートラインに立てるようにしたい。
今回は50kmにも日本から5人が出場する。東京オリンピックの代表は、この5人のなかから決まる可能性が現段階では強い。そういう意味では、日本のチーム内でもしっかりと力を示し、ほかの選手に勝っていくことが、東京オリンピックにつながるのかなと思う。
ここまで練習の質を高めてやってきたので、純粋にその結果がどう出るかが楽しみ。中国は気温が高めと聞いているので、記録が出るかどうかはわからないが、力を出せたらいいなと思っている。あとは歩型というのはどんどん変わっていくものなので、この大会を通じて、国際審判員に対して通用するフォームであるかを確認しておきたい。
(他国のエントリーが発表されていないので、誰が出るかはわからないが)しっかり自分の力を出し切るレースができたらいいなと思っている。レース展開にもよるだろうし、ヨアン・ディニ選手(フランス)みたいに最初から1人でポーンと出ていくようなレースはちょっと怖くてできないけれど(笑)、30km以降とかで余力があれば自分で出るくらいのつもりで準備を進めていきたい。
■山西利和選手(愛知製鋼、シニア20km競歩代表)
世界競歩チーム選手権に向けては、日本選手権(20km)と違って、(1km)3分50秒台というようなハイペースをキープするといった練習は必要ないと思っているので、そこまでスピードを磨く練習はせずに、レースを作り直すような練習を中心にやってきた。現段階では状態はまだ60%くらい。あと2週間でしっかり仕上げていこうと考えている。
今季、最大の目標にしているのはアジア大会。ようやくシニアの代表に選んでいただき、チャンスが回ってきたというところで、ここからがスタートだと思っている。アジア大会では、出る以上は金メダルを狙いたい。世界競歩チーム選手権にはそこを目指すなかで臨むことになるわけだが、暑い気候の中でのレースになることが予想されているので、まずは、そのなかでしっかり戦いたい。団体ではメダル獲得を目標としているので、個人でもそこに貢献できるような順位を目指したい。
■池田向希選手(東洋大学、シニア20km競歩代表)
(今回が初めての代表入りだが)ほとんどの選手と面識はあったので、特別な緊張はなかった。この経験は絶対に次につながるし、ここで終わることではないと思うので、つかんだチャンスをしっかり今後に生かしたい。世界競歩チーム選手権に向けては、特別なことをするというよりは、いつも通りに自分がベストコンディションとなる練習を、ずっと続けてきた。ここまでケガなく順調に取り組めている。20km競歩として団体で金メダルを狙っているので、それに少しでも貢献できるよう、個人では入賞を目指して頑張りたい。
文:児玉育美/JAAFメディアチーム
写真提供:フォート・キシモト
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