第3回さいたま国際マラソンは11月12日、埼玉県さいたま市のさいたまスーパーアリーナを発着点とする42.195kmのコースで開催されました。第101回日本選手権とジャカルタ2018アジア競技大会日本代表選考会を兼ねるほか、2020年東京オリンピック代表選考に向けた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ2017-2018」として実施された代表チャレンジャーの部は、ディフェンディングチャンピオンのチェイエチ・ダニエル選手(ケニア)が2時間28分39秒で連覇を達成。日本勢では5位の岩出玲亜選手(ドーム)が日本人トップとなりましたが、記録は2時間31分10秒にとどまり、この大会で2019年9月以降に開催が予定されているMGCへの出場資格を得ることはできませんでした。
代表チャレンジャーの部は、午前9時10分にスタート。快晴に恵まれたものの、やや風が気になるコンディション下でのレースとなりました。
スタート直後は、岩出選手とともに国内招待選手として出場した吉田香織選手(TEAM R×L)が飛び出しましたが、すぐにダニエル選手、岩出選手も含む7人の先頭集団が形成されました。ペースメーカーを置かずに行われた影響もあり、最初の5kmが17分50秒というスローペース。さらに6~7kmが3分42秒までペースが落ちてしまったこともあり、8kmを過ぎた辺りから岩出選手がペースメイクしていく形でレースを進める展開に。5~10kmが17分40秒、10~15kmが17分33秒に上がると、15kmを過ぎた辺りで、吉田選手、フィレス・オンゴリ選手(ケニア)、シャーロット・パデュー選手(イギリス)が遅れ、先頭は岩出選手、シタヤ・ハブテゲブレル選手(バーレーン)、大会直前に追加出場が決まったベケレシュ・ダバ選手(エチオピア)、そしてダニエル選手の4人となりました。
20kmは、この4選手が1時間10分44秒で通過。その直後には靴の調子を整えるために立ち止まったハブテゲブレル選手が大きく遅れて追いつく場面もありましたが、先頭を岩出選手が引っ張っていく状態は変わらないまま中間点を1時間14分34秒で通過。20~25kmのラップは17分21秒に上がり、25kmは1時間28分05秒で通過しました。
形勢が変わったのは、27km地点に向かう上り坂。ここでハブテゲブレル選手が前に出ると、岩出選手は集団の後方に下がり、28kmを過ぎたあたりからは徐々に3選手との差が開いてしまいました。岩出選手は、30kmは1時間45分54秒でカバーしてMGCファイナリスト(2時間29分00秒以内で日本人1~3位)への可能性を残して通過したものの、次の5kmで18分12秒にペースダウン。38km過ぎで後ろから追い上げてきたパデュー選手にかわされると、40kmは2時間22分53秒で通過。日本人トップの5位でフィニッシュしましたが、記録は2時間31分10秒で、MGCへの出場権獲得はなりませんでした。
一方、優勝争いは、30kmを1時間45分35秒で通過したハブテゲブレル選手が仕掛けてそのままリードを奪うかと思われましたが、給水に失敗してダバ選手とダニエル選手に追いつかれるミスもあり、行ききることができません。逆に、32km終盤からはダニエル選手が先頭に立つ場面も見られるように。36km手前でダバ選手が遅れると、以降はダニエル選手とハブテゲブレル選手のマッチレースとなりました。40kmをともに2時間21分03秒で通過。2人は抜きつ抜かれつを繰り返しながら競り合いましたが、残り200m地点での右折のタイミングでリードを奪ったダニエル選手がそのまま逃げ切り、2時間28分39秒で先着。3秒差でハブテゲブレル選手を制しての連覇達成となりました。
ダニエル選手は、レース後の記者会見で、「勝てるかもしれないと思ったのは40kmに向かう辺り」と、レース終盤になるまで勝利への確信が持てない状態であったことを明かし、「今回はスタートして5kmを走った時点で、自分の状態がベストではないと感じたので、気をつけて走らねばと思った。(マラソンで4位となったロンドン)世界選手権後に練習を開始して、準備期間が短かったために記録が伸びなかったのかなと思う。自分の体調・状態はパーフェクトではなかったが、それでも優勝できたことは嬉しく思う」と話しました。
日本人1位にはなったものの、MGC出場資格となる2時間29分00秒以内の条件を満たすことができなかった岩出選手の感想は、「悔しさよりも収穫のほうが大きい」というものでした。最初の5kmで海外選手が前半から行くつもりはないと見抜き、「それなら自分が押していこう」と決断。「25km地点まではすごく気持ちよく行けたのだが、思ったより脚を使っていた。心肺機能は余裕があったのに、そこから思うような動きができなかった」と終盤の失速を振り返りました。しかし、レース展開の選択に対しては「一切の後悔はない。欲を言えば、もう少し速く行きたかった。自分で引っ張りながらも、あまり脚を使わない走りを、これからもっと極めていきたい」とコメント。「想定外のこともたくさん起きたが、そのなかで、自分の気持ちを落ち着かせて、それを維持して、きついところで何回も自分に“攻める”と言い聞かせて走ることができた。タイムこそついてこなかったけれど、走りとしては復活してきたなという感じはある。次に生かしていきたいという思いが強い」と前向きな言葉を残しました。
瀬古利彦・日本陸連強化委員会マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、日本人1位の選手が2時間29分00秒を切ることができなかった今回の結果について、風の影響や後半に起伏の多いコースであったこと、また、(競り合えるレベルの)日本選手の出場が少なすぎたことも影響しているだろうとしつつも、「それでも世界に太刀打ちすることを考えると、独走でも2時間29分を切れるくらいであってほしかった」と評価しました。一方で、岩出選手の走りに対して、「彼女は今年の名古屋(ウィメンズマラソン)で途中棄権したが、今回が復活レースになったことは、記録以外の面からも見てとれたし、彼女自身もやれるという自信になったのではないか。それは明るい材料だと思う」と述べ、今後の挑戦に期待を寄せていました。
文:児玉育美/JAAFメディアチーム
写真提供:フォート・キシモト
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