第101回日本選手権リレーは10月27~29日、日産スタジアム(横浜市)において行われました。この大会は、例年、ジュニアオリンピックと併催される形で実施されていますが、今回は、台風接近の影響もあり、天候に恵まれないなかでのレースとなりました。
◎4×100mR:男子は中央大が、女子は日本体育大がV!
男女4×100mRは、ともに初日に予選が、2日目に決勝が行われるタイムテーブルで行われました。男子4×100mR決勝は、4~6レーンに入った東洋大、早稲田大、中央大が上位争いする形でアンカーにバトンが渡りましたが、中央大がここで抜けだし、39秒30で優勝しました。3走に100m日本記録保持者の桐生祥秀選手を、アンカーにリオデジャネイロ五輪400m代表のウォルシュ・ジュリアン選手を配置していた東洋大は、ここでのバトンミスが影響し、39秒47で2位。3位には、ロンドン世界選手権100m代表の多田修平選手がアンカーとして怒濤の追い上げを見せた関西学院大が、フィニッシュ直前で早稲田大をかわして39秒58で食い込みました。
なお、すでにレポート(http://www.jaaf.or.jp/news/article/10955/ )した通り、初日の予選で39秒57の高校新記録を樹立していた洛南高は、第3走者を予選で脚を痛めた井本佳伸選手から伊藤大和選手に変更して出場。40秒04・7位でのフィニッシュとなりました。
女子4×100mR決勝は、前回覇者の大阪成蹊大と、日本体育大、東邦銀行が上位を争う形でバトンがアンカーにつながりましたが、日本体育大が大阪成蹊大を制して、大学別で学生歴代4位タイとなる45秒00の好記録で優勝。大阪成蹊大は45秒14で2位に、3位にはアンカーで東邦銀行をかわした立命館大が45秒46で続きました。
◎4×400mR:男子は東洋大、女子は東邦銀行が優勝
男女4×400mRは、2日目の夕方に行われた予選を通過した8チームが、最終日の決勝に挑みました。気温が上がらず、激しい雨が降るなかでのレースとなりましたが、男女ともに熱戦が繰り広げられました。
女子は、第2走でトップに立った日本体育大を、東邦銀行が追う展開に。3走で東邦銀行の新宮美歩選手が前に出る場面もありましたが、日本体育大の湯淺佳那子選手が抜き返し、両チームのバトンは第4走者へ。今季800mで学生記録を樹立している日本体育大の北村夢選手が逃げ、400mH・400mで第一人者として活躍する東邦銀行の青木沙弥佳選手が追う展開となりました。序盤を北村選手にぴたりとついた青木選手が、ホームストレートで逆転、東邦銀行が3分36秒00で優勝しました。2位の日本体育大学は学生歴代2位の3分36秒38をマーク、3位には東大阪大敬愛高が高校歴代5位となる3分38秒20でフィニッシュしました。また、1・2年生のメンバーで臨んだ相洋高が4位に食い込み、3分41秒00の好記録をマークしています。
男子は、5連覇中の早稲田大が2走でトップに立ち、リードを奪いましたが、3走で東洋大がリオデジャネイロ五輪400m代表のウォルシュ・ジュリアン選手を配して3番手から逆転し、そのリードを広げて、首位でアンカーの吉津拓歩選手へバトンパス。これを早稲田大のアンカーでリオデジャネイロ五輪4×400mRに出場した加藤修也選手が猛追し、ラスト100mを激しく競り合う展開となりました。両チームは、ほぼ同時にフィニッシュラインへ飛び込みましたが、東洋大が100分の1秒差となる3分07秒11で先着。早稲田大学の6連覇を阻むとともに、リレー種目での日本選手権初優勝を果たしました。2位の早稲田大は3分07秒12、3位には中京大と競り合いを制した福岡大が3分07秒41で続きました。
◎U18男女混合4×400mR:初の試みながら34チームが出場。福岡が優勝
この大会では、「東京2020オリンピック特別対策種目」としてU18男女混合4×400mRが行われました。これは、国際オリンピック委員会が2020年東京オリンピックの正式種目に陸上競技男女混合4×400mRを採用したことを受けて、「東京オリンピックまでに戦術、経験および実績を集積し、それらの経験を基にした戦略を立てる」ことを目的に、9月末に行った日本陸連理事会において、急きょ、今大会で実施することが決まったもの。都道府県の代表チームのみの出場とし、当初は27チームのエントリーを上限としていましたが、急な決定にもかかわらず34チームから申し込みがあったため、4組でのタイムレース決勝で実施することになりました。
国際大会では、4月にバハマで開催されたワールドリレーズ(日本は不出場)や、9月にフランスで行われたデカネーションで実施(日本は、佐藤拳太郎選手=富士通、奥村ユリ選手=共愛学園高、武石この実選手=東邦銀行、木村和史選手=四電工の走順で3分27秒88をマークして2位)されていますが、日本国内の全国大会で行われるのは今回が初めて。レースに際してのルールは通常の4×400mRと同じですが、オーダーに関して「男女各2名で編成し、走順は自由」というのが特徴です。このため、第1走者から第4走者まで男女をどのように編成するかは、各チームによって異なる判断でオーダーが組まれました。
結果は、4組目で3分31秒70をマークして1着となった福岡が優勝。福岡のオーダーは、1走は男子の今泉堅貴選手(福岡大大濠高)が務め、2走・3走に女子の金普恩選手(修猷館高)と河北歩実選手(八幡南高)が入り、アンカーに花岡一摩選手(東福岡高、U18日本選手権400mH優勝者)を配するという陣容でした。2位は3組で1着となった山形で、福岡同様の男女配置となる近悠大選手(東海大山形高)、青野心音選手(山形中央高、U18日本選手権女子4×100mR優勝者)、青野朱季選手(山形中央高、山形インターハイ200m・U18日本選手権女子200m・同女子4×100mR優勝者)、柴崎駿希選手(米沢中央高)のオーダーで3分32秒49をマーク。これに続いたのは3分32秒64で4組2着となった北海道。吉田梨緒選手(立命館慶祥高)、本所蓮治選手(北海道栄高)、臼井文音選手(立命館慶祥高)、森周志選手(北海道栄高、山形インターハイ男子400m・U18日本選手権男子400m優勝者)と、女子を1・3走に配するオーダーで3位となりました。
【日本選手権リレー優勝チーム 各選手コメント】
◎男子4×100mR
優勝 中央大学(川上拓也、竹田一平、大久保公彦、染谷佳大)39秒30
・1走:川上拓也
「関東インカレ、日本インカレ(のリレー)では、ずっと“優勝、優勝”というのが頭の中にあったが、この大会では、1走として自分の務めを果たそうという気持ちが強かった。今回は、(メンバー)1人1人が自分の走りをしようという思いが強かったのかなと思う。優勝を目指したわけではないけれど、結果的にこうして優勝できたことは素直に嬉しい」
・2走:竹田一平
「(シーズン終わりの10月末という)時期が時期なので、全カレ(日本インカレ)のときほど優勝を渇望していたという状況ではなかった。ただ、昨シーズン、この試合は痛い目を見ていた(アンカーを務めて4位にとどまる)ので、そういった面では、自分としてはマイナス方向からのスタートだった。走り自体はそんなによくなかったが、そんなかで、やることをやって勝ち切れたことは純粋に嬉しい」
・3走:大久保公彦
「僕は中央大学の本メンバーではなくサブ。そのなかで、走る気持ちでここに来て、こうして走れて、日本一になれて、今は、人生で一番くらい嬉しい。走りについては、バトンの出(バトンパスでスタートを切るタイミング)は完全ではなかったが、自分のできるところは最大限にできたかなと満足している」
・4走:染谷佳大
「めちゃくちゃ楽しかった。走るのは1人1人だが、バトンをつないでチームみんなで戦っているというのが、すごく楽しかった。U20日本選手権からの連戦だったが、逆に、それで気持ちを切らさずに臨むことができた。バトンを受けたときは、3チームくらいが一緒だったが、並んだときに“行ける”と思った。自信を持って走ることができた」
◎女子4×100mR
優勝 日本体育大学(湯淺佳那子、広沢真愛、森美悠、福田真衣)45秒00
・1走:湯淺佳那子
「優勝しか狙っていなかったので嬉しい。昨日の予選では、スタートで浮いてしまい、失敗の走りになってしまった。先生からも指摘を受けて、自分が負けたらダメだなと思って決勝に臨んでいたので、その反省を生かして、自分の走りができたかなと思う」
・2走:広沢真愛
「日本一を取ることだけをずっと考えて、練習してきた。こうして本当にみんなで日本一を取ることができて、もう最高に嬉しい。1走の湯淺がすごくいい流れでバトンをもってきてくれたので、自分も森美悠先輩に1番でバトンを渡せるように全力を尽くした」
・3走:森美悠
「日本一を目指してみんなで練習してきたので、ここに出ていない人たちの気持ちもしっかり背負って臨んだ。優勝という形で表現できたのですごく嬉しい。走りは、自分としては、もう少し伸びが欲しかったのだが、湯淺と広沢の走りを見て、自分が行って4走の福田にしっかり渡したいと思った。その気持ちで走ることができたのでよかったと思う」
・4走:福田真衣
「まずはしっかり優勝することができて嬉しい。でも、みんな(100mベストは)11秒台で44秒台が出るチームなのに、それが出せなかったのは悔しく思う。このメンバーは来年もいるので、44秒台を出せるように、また一から頑張りたい。自分の走りは、予選はラスト30mくらいで落ちてしまっていたので、今日は後半の走りをまとめて1位でゴールしようと考えていた。後半伸びたのでよかったと思う」
◎男子4×400mR
優勝 東洋大学(齊藤旬亮、櫻井朴也、ウォルシュ・ジュリアン、吉津拓歩)3分07秒11
・1走:齊藤旬亮
「関東インカレも日本インカレも決勝を走れず悔しい思いをしていた。やっとこの日本選手権で予選も決勝も走ることができ、これまでのやりきれない思いを全部爆発させるつもりで走った。優勝できて本当に嬉しい。走りについては、監督にも自信を持って行けと言われていた。自分はついていくのが得意でラストは自信があるほうなので、外側の城西大についていって、2走の朴也さんにいい順位で渡したいという気持ちでしっかり走った」
・2走:櫻井朴也
「齊藤がたぶん真ん中より上の順位で来ていたと思うが、バトンパスが雨で滑って1回ミスってしまい、そこで3~4チームに前に出られてしまった。それらのチームを後半で全部かわすつもりだったが、早大に先行され、最終的にジュリアンに託す展開になってしまった点に自分の力不足を感じた。(優勝が確定するまでの時間は)正直怖かった。結果的に勝ったから、今こうやって笑えるけれど、0.01秒で勝負が決まる陸上競技の面白さを肌で感じることができたと思う。優勝して本当によかった」
・3走:ウォルシュ・ジュリアン
「昨日、4継(4×100mR)で(バトンパスの際に早出してしまい)ミスして優勝を逃していたので、ここで勝たないと東洋の陣地に帰れないと思っていた。けっこう責任を感じていたので、本当に吉津を信じて優勝を願っていた。3走を任されたが、バトンをもらったら、前にいる人を抜けばいいと思っていたので特に走順は関係なかった。昨日の4継で刺激が入って、けっこういい走りができたのではないか。今季はあまり調子がいいというわけではなかったが、今日の走りはたぶん今シーズンで一番よかったと思う」
・4走:吉津拓歩
「(フィニッシュで)“勝った”という感触がなかったので、(確信が持てず)怖くて、疲れを感じる間もないくらいだった。目が悪くて表示がよく見えないので、仲間の反応を見て勝ったとわかった。今、じわじわと喜びが来ている。ジュリさんが3走なので、確実に1秒から2秒は後ろを離して回ってきてくれると思っていた。自分は後半型。ジュリさんの貯金をいかに使うかという走りになった前半の200mはよかったと思うが、早稲田の(加藤)修也さんがピッチを上げたあとに反応するのではなく、自分が主導して切り替えていれば、もうちょっとひやひやしないですんだかもと反省している」
◎女子4×400mR
優勝 東邦銀行(青木りん、武石この実、新宮美歩、青木沙弥佳) 3分36秒00
・1走:青木りん
「チームとしては優勝を目標に、自分としては、何がなんでもいい位置で武石さんに渡すことを目標にしていた。あとで映像を見て確認したいが、自分のなかではいい走りができたように思う。久しぶりの1走だったので、バトンを渡し終えてからはずっとドキドキしながら見ていたが、その半面、先輩方なら絶対にやってくれるという信頼があった。自分の役目を終えてホッとしているし、チームで達成した優勝がすごく嬉しい」
・2走:武石この実
「4×100mRで悔しい思い(4位)をしたので、絶対に優勝したいという強い気持ちがあった。全日本実業団で総合優勝するなど、チームとしての総合力はついてきているな、勢いがあるなと自分たちでも感じていたし、みんな400mをやっているメンバーなので、そこは自信を持って、仲間を信じて走ることができた。1番で新宮に渡すことはできなかったが、自分の力はしっかり出せたかなと思う。」
・3走:新宮美歩
「3走を任されて、去年走れなかったことなどいろいろ思うことがあったが、落ち着いて、青木さんに渡すことだけに集中して走れた。それが1位という結果につながったので、とても嬉しい。これまで優勝しなきゃという思いが強すぎて空回りしていたが、今回は、自分の走りをすれば必ず行けるという自信を持って冷静に走れた。心と身体がつながって力が出せたかなと思うし、この走りができたことで自信にもなった。これからも頑張りたい」
・4走:青木沙弥佳
「長年、会社でチームを担当してくださった方が異動することになり、その方に優勝を捧げたかった。また、チームとしても、国内で優勝できないようでは世界を目指せないし、逆に、日本代表のレースと思って、個々が力を出せば必ず優勝できると信じていた。自分たちにとっても嬉しい勝利だったし、優勝をプレゼントすることができてよかった。去年(2位)は、走り急いで最後で抜かれてしまったので、今年はどんな展開になっても、絶対に前半は落ち着いて走り、最後で勝負しようと思っていた。みんながいい位置でバトンをつないできてくれたおかげで、思っていた通りのレースができた」
◎U18男女混合4×400mR(タイムレース決勝)
優勝 福岡(今泉堅貴、金普恩、河北歩実、花岡一摩)3分31秒70
・1走:今泉堅貴(男:福岡大大濠高1年)
「1週間くらい前に、走ることが決まった。今までなかった種目なので、レース展開など何もわからない状態で臨んでいた。9レーンだったので、自分の走りをすれば、あとの3人がなんとかしてくれると思って、自分の走りをすることを考えた。自分の走りはできたと思う」
・2走:金普恩(女:修猷館高1年)
「この大会が今シーズン最後の試合になるので、みんなで“とりあえず楽しく走ろう”と話して出場した。2走では予想通り男子が(スタートしてセパレートで走る最初の100mで)2人、先に行ったので、私は横にいた女子の選手と、“近くにいる人には負けたくない”と思って競り合った。後ろから男子も来そうで怖かったが、ひたすら先輩にうまくつなごうと、がむしゃらに走った」
・3走:河北歩実(女:八幡南高2年)
「実は、自分のチームで今シーズン最後のマイルリレーを、自分がダメにしてしまったので、そのぶんこれで頑張ろうと思って走った。走りやすかったし、みんなに支えてもらいながら走れたのでよかった。自分が走ったときは、女子が多かったので、そこまで男子と走ることになる不安はなかったが、取りあえず前の人を抜かそうと思って走った」
・4走:花岡一摩(男:東福岡高2年)
「今季ラストの試合。冬期の課題を見つけるために、前半から突っ込んで、自分がどこまで行けるかを知ろうと思っていた。ラスト50mがきつくてなかなか進まなかったが、そこがこの冬の課題になると思う。300mまではきつさはなかったが、そこからは後ろの北海道が気になった。(北海道との差は)モニター(会場内の大型スクリーン)で確認していて、ちょっと差があったので逃げ切れるなと思った。(福岡チームの構成は)1年生が2人で2年生が2人。最初は楽しくケガなくゴールできればと思っていたが、みんながいい走りをして優勝できたのでよかった。来年も連覇してほしい」
文:児玉育美/JAAFメディアチーム
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