第30回南部忠平記念陸上競技大会が7月9日、札幌市の厚別公園陸上競技場で開催されました。
8月に開催されるロンドン世界選手権の代表選手は、6月23~25日の日本選手権を経て、6月26日に第1次発表が行われていますが、この南部記念は、日本選手権後に追加代表の選考対象となる指定競技会の1つ。すでに世界選手権代表入りを果たした選手のほかに、追加選出を狙う有力選手が多数出場し、世界選手権参加標準記録(以下、標準記録)突破に挑みました。
■海老原選手と石田選手が標準記録を突破
最高気温が32℃まで上がり、痛く感じられるような強い日射しが照りつけるコンディションとなった厚別公園陸上競技場を大いに盛り上げたのは、正午から開始した女子やり投に出場した海老原有希選手(スズキ浜松AC)。この日、53m80でスタートした海老原選手は、3回目に60m35まで記録を伸ばすと、4回目に標準記録61m40を突破する61m95の大会新記録をマーク。最終投てきでも61m32を投げる安定ぶりで競技を終えました。
女子やり投終了直後のタイミングでのスタートとなったのが男子400mH。2組タイムレース決勝で行われ、有力選手が入った2組目は、ホームストレートで日本選手権3位の松下祐樹選手(ミズノ)と同2位の石田裕介選手(早稲田大学)が競り合う展開に。最終ハードルを越えた段階では松下選手がわずかに先行していましたが、石田選手がラストで逆転して先着しました。石田選手の記録は標準記録にぴったり並ぶ49秒35。日本選手権の予選でマークした自己記録49秒46を更新しての優勝です。2位の松下選手は49秒41、3位には、日本選手権の予選で49秒06(今季日本リスト3位)をマークしている前野景選手(ドーム、日本選手権6位)が49秒48で続く結果となりました。
今回の結果により、日本選手権で優勝を果たしている海老原選手と日本選手権で2位の成績を収めている石田選手は、追加代表選考において最優先される「日本選手権3位以内+参加標準記録突破」の条件を満たしたことになります。
また、海老原選手と石田選手は、この大会の男女最優秀選手にも選ばれました。
■福島選手、橋岡選手、澤野選手、新井選手は標準記録突破ならず
女子100mには日本記録保持者の福島千里選手(札幌陸協)が出場しました。向かい風1.6mのなか行われた予選を11秒53でトップ通過した福島選手は、決勝では1.3mの追い風にも恵まれ、今季日本最高記録となる11秒36で圧勝しましたが、標準記録(11秒26)の突破はならず。また、男子走幅跳では、日本選手権を8m05(+1.4)で初優勝しているダイヤモンドアスリートの橋岡優輝選手(日本大学)が、2回目に追い風参考(3.2m)ながら8m07の好記録をマーク。この記録のほかに7m90台を3回マークする安定感を見せましたが、目標としていた標準記録(8m15)には届きませんでした。
男子棒高跳は、標準記録(5m70)突破を目指すリオ五輪7位の澤野大地選手(富士通)のほか、この種目ですでに代表入りを果たしている山本聖途選手(トヨタ自動車)、十種競技で代表となっている右代啓祐選手(スズキ浜松AC)も出場する豪華な顔触れで行われました。しかし、強まったうえに安定しない風向きに苦しめられ、この種目にとっては非常に難しいコンディションに。5m50から試技を開始した澤野選手は、この記録をクリアすることができず記録なしに終わりました。優勝したのは5m60を成功した山本選手。右代選手は4m70で2位となりました。
男子棒高跳と同時刻に行われていた男子やり投では、2015年北京世界選手権、2016年リオ五輪ファイナリストの新井涼平選手(スズキ浜松AC)が出場しました。標準記録は83m00。日本選手権では87cmまで迫る82m13をマークしている新井選手ですが、この日は思うように記録を伸ばしていくことができず、最高記録(優勝)は3回目にマークした78m45にとどまりました。
■400mは金丸選手、200mは橋元選手が制す
個人種目の選考だけでなく、リレー(男子4×400mR)でも出場の可能性があるため、記録と上位争いが注目されていた男子400mは、2組タイムレース決勝で行われましたが、強まってしまった風に記録が阻まれる状況に。1組で1着の金丸祐三選手(大塚製薬)の優勝となりましたが、記録は46秒39にとどまりました。すでにリレーメンバーとして選出されている(※)木村和史選手(四電工)は2組1着で47秒16(5位)、佐藤拳太郎選手(富士通)は途中棄権しました。
男子200mには、日本選手権2位で、男子4×100mRメンバーとして選出されている(※)藤光謙司選手(ゼンリン)が、個人での出場を期して標準記録(20秒44)の突破に挑みましたが、やはり強風が災いし、20秒78(+3.1)で2着に終わりました。
なお、橋元晃志選手(富士通)が20秒61で優勝したこの種目には、今季で第一線を退くことを表明している髙平慎士選手(富士通)が、地元・北海道で走る最後のレースとして出場しました。髙平選手は、21秒25でフィニッシュ(4着)したのちに、スタンドに向かって歩み寄ると、「ありがとうございました」と挨拶して、深々と一礼。北海道での最後の勇姿を見るべく集まった4000人を超える観客から、惜しみない拍手が寄せられていました。
※6月26日の段階で、「リレー種目の派遣は、国際陸上競技連盟が参加有資格国を発表した後に決定する」の条件つきで発表済み。
(文:児玉育美/JAAFメディアチーム)
8月に開催されるロンドン世界選手権の代表選手は、6月23~25日の日本選手権を経て、6月26日に第1次発表が行われていますが、この南部記念は、日本選手権後に追加代表の選考対象となる指定競技会の1つ。すでに世界選手権代表入りを果たした選手のほかに、追加選出を狙う有力選手が多数出場し、世界選手権参加標準記録(以下、標準記録)突破に挑みました。
■海老原選手と石田選手が標準記録を突破
最高気温が32℃まで上がり、痛く感じられるような強い日射しが照りつけるコンディションとなった厚別公園陸上競技場を大いに盛り上げたのは、正午から開始した女子やり投に出場した海老原有希選手(スズキ浜松AC)。この日、53m80でスタートした海老原選手は、3回目に60m35まで記録を伸ばすと、4回目に標準記録61m40を突破する61m95の大会新記録をマーク。最終投てきでも61m32を投げる安定ぶりで競技を終えました。
女子やり投終了直後のタイミングでのスタートとなったのが男子400mH。2組タイムレース決勝で行われ、有力選手が入った2組目は、ホームストレートで日本選手権3位の松下祐樹選手(ミズノ)と同2位の石田裕介選手(早稲田大学)が競り合う展開に。最終ハードルを越えた段階では松下選手がわずかに先行していましたが、石田選手がラストで逆転して先着しました。石田選手の記録は標準記録にぴったり並ぶ49秒35。日本選手権の予選でマークした自己記録49秒46を更新しての優勝です。2位の松下選手は49秒41、3位には、日本選手権の予選で49秒06(今季日本リスト3位)をマークしている前野景選手(ドーム、日本選手権6位)が49秒48で続く結果となりました。
今回の結果により、日本選手権で優勝を果たしている海老原選手と日本選手権で2位の成績を収めている石田選手は、追加代表選考において最優先される「日本選手権3位以内+参加標準記録突破」の条件を満たしたことになります。
また、海老原選手と石田選手は、この大会の男女最優秀選手にも選ばれました。
■福島選手、橋岡選手、澤野選手、新井選手は標準記録突破ならず
女子100mには日本記録保持者の福島千里選手(札幌陸協)が出場しました。向かい風1.6mのなか行われた予選を11秒53でトップ通過した福島選手は、決勝では1.3mの追い風にも恵まれ、今季日本最高記録となる11秒36で圧勝しましたが、標準記録(11秒26)の突破はならず。また、男子走幅跳では、日本選手権を8m05(+1.4)で初優勝しているダイヤモンドアスリートの橋岡優輝選手(日本大学)が、2回目に追い風参考(3.2m)ながら8m07の好記録をマーク。この記録のほかに7m90台を3回マークする安定感を見せましたが、目標としていた標準記録(8m15)には届きませんでした。
男子棒高跳は、標準記録(5m70)突破を目指すリオ五輪7位の澤野大地選手(富士通)のほか、この種目ですでに代表入りを果たしている山本聖途選手(トヨタ自動車)、十種競技で代表となっている右代啓祐選手(スズキ浜松AC)も出場する豪華な顔触れで行われました。しかし、強まったうえに安定しない風向きに苦しめられ、この種目にとっては非常に難しいコンディションに。5m50から試技を開始した澤野選手は、この記録をクリアすることができず記録なしに終わりました。優勝したのは5m60を成功した山本選手。右代選手は4m70で2位となりました。
男子棒高跳と同時刻に行われていた男子やり投では、2015年北京世界選手権、2016年リオ五輪ファイナリストの新井涼平選手(スズキ浜松AC)が出場しました。標準記録は83m00。日本選手権では87cmまで迫る82m13をマークしている新井選手ですが、この日は思うように記録を伸ばしていくことができず、最高記録(優勝)は3回目にマークした78m45にとどまりました。
■400mは金丸選手、200mは橋元選手が制す
個人種目の選考だけでなく、リレー(男子4×400mR)でも出場の可能性があるため、記録と上位争いが注目されていた男子400mは、2組タイムレース決勝で行われましたが、強まってしまった風に記録が阻まれる状況に。1組で1着の金丸祐三選手(大塚製薬)の優勝となりましたが、記録は46秒39にとどまりました。すでにリレーメンバーとして選出されている(※)木村和史選手(四電工)は2組1着で47秒16(5位)、佐藤拳太郎選手(富士通)は途中棄権しました。
男子200mには、日本選手権2位で、男子4×100mRメンバーとして選出されている(※)藤光謙司選手(ゼンリン)が、個人での出場を期して標準記録(20秒44)の突破に挑みましたが、やはり強風が災いし、20秒78(+3.1)で2着に終わりました。
なお、橋元晃志選手(富士通)が20秒61で優勝したこの種目には、今季で第一線を退くことを表明している髙平慎士選手(富士通)が、地元・北海道で走る最後のレースとして出場しました。髙平選手は、21秒25でフィニッシュ(4着)したのちに、スタンドに向かって歩み寄ると、「ありがとうございました」と挨拶して、深々と一礼。北海道での最後の勇姿を見るべく集まった4000人を超える観客から、惜しみない拍手が寄せられていました。
※6月26日の段階で、「リレー種目の派遣は、国際陸上競技連盟が参加有資格国を発表した後に決定する」の条件つきで発表済み。
(文:児玉育美/JAAFメディアチーム)
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