2025.03.14(金)
【東京マラソン】レポート:男子は市山が大幅自己新で東京世界陸上参加標準記録を突破!女子は安藤が日本人1位

「東京マラソン2025」が3月2日に開催され、今年も多くのランナーが、東京都庁前をスタートして水道橋、上野広小路、神田、日本橋、浅草雷門、両国、門前仲町、銀座、田町、日比谷を経て、東京駅前の行幸通りでフィニッシュする42.195kmのコースを駆け抜けました。
男女エリートの部は、日本陸連が実施しているジャパンマラソンチャンピオンシップ(JMC)シリーズⅣにおいて男子は最終戦(第9戦)、女子は第7戦(全8戦)としての開催。今回はともにG1(グレード1)指定大会としての実施で、本年9月に行われる東京世界選手権の日本代表選手選考会を兼ねて行われました。
世界最高峰と位置づけられる「アボット・ワールドマラソンメジャーズシリーズⅩⅦ(17)」の開幕戦として実施されたレースには、今年も海外から多くの有力選手が出場。男子は、39km手前で勝負を仕掛けた22歳のタデセ・タケレ選手(エチオピア)が2時間03分23秒で初優勝を果たしました。女子は、前回大会を2時間15分55秒の大会新記録(日本国内最高記録)で制したストゥメ・アセファ・ゲベデ選手(エチオピア)がスタート直後からハイペースで“独り旅”。暑さの影響もあり終盤にスピードダウンしましたが、2時間16分31秒でフィニッシュし、女子では初めてとなる連覇を達成しました。
ここでは、東京世界選手権代表の座を懸けて戦った日本人選手の模様を中心にレポートします。
※本文中における5kmごとの通過タイムとラップは公式発表のデータを、1kmごとのラップは、大会中の速報を採用している。
日本人トップは2時間06分00秒の市山
大幅自己新で参加標準記録を突破!

事前の週間予報の段階で、雨の心配はないものの、気温がかなり上昇すると見込まれていた今大会。当日の東京は、晴れ間が広がるなか夜明けを迎え、春本番を思わせる暖かな朝となりました。マラソンの部は、東京都庁前を午前9時10分にスタート。天候晴れ、気温14。0℃、湿度41%(主催者発表の情報による。風は未発表)と、例年よりも気温が高い条件下で開始されました。その後、気温は時間とともに上昇するとともに、終盤では日差しも強まる状況に。エリート男子優勝者がフィニッシュした段階で、20.3℃まで上がるなかでの戦いとなりました。
有力外国人選手が多数エントリーしたほか、JMCシリーズⅣ最終戦で、シリーズチャンピオンの確定とともに、結果によっては東京世界選手権日本代表の即時内定者が誕生する可能性があった男子は、設定タイムを4段階に分けてのペースメーカーが用意されました。第1グループは1km2分52~53秒(フィニッシュ予想タイム:2時間1分台、以下同じ)、第2グループは1km2分55~56秒(2時間3分台)、第3グループが1km2分57~58秒(2時間04分30秒)、そして第4グループは1km2分59秒(2時間06分台)という設定です。
自国開催の世界選手権代表入りを期してのレースとなった日本の男子は、今大会で即時内定を決めることができる日本記録(2時間04分56秒、鈴木健吾、2021年)を更新しての日本人トップの座、さらには、これまでのJMCシリーズⅣの結果から、2時間5分台前半のタイムを目指して、有力選手が複数エントリー。記録・勝負ともに激戦が予想されるなか、東京都庁前の出発ゲートを飛び出していきました。
日本人トップを巡っての戦いを制したのは、市山翼選手(サンベルクス)です。先頭集団が最初の5kmを14分25秒で入り、前半はその後も各5kmを14分30~40秒というハイペースを刻んでいったなか、市山選手は、山下一貴(三菱重工)、其田健也(JR東日本)、井上大仁(三菱重工)、中村匠吾(富士通)といった有力選手も顔を揃えた第3グループでレースをスタート。大集団の中~後方付近に位置し、5kmを14分50秒、10kmを29分42秒(この間の5kmは14分52秒、以下同じ)、15kmを44分32秒(14分50秒)、20kmを59分29秒(14分57秒)で走って中間点を1時間02分44秒で通過していきました。

集団が徐々に人数を減らしていくなか、1時間14分17秒で通過した25km(14分48秒)、1時間29分13秒で通過となった30km(14分56秒)まで14分台のペースを維持、ややペースダウンしたものの1時間44分24秒で通過した35kmの段階では丸山竜也選手(トヨタ自動車)、井上選手、中山顕選手(Honda)とともに、落ちてくる選手をかわしつつ前を行く選手を追い上げていく展開になりました。そこからの2kmで中山・丸山選手が後退、38km付近では井上選手も後れて、市山選手が単独で日本人3番手に浮上します。市山選手は、日本人首位争いから後退した赤﨑暁選手(九電工)をかわして日本人2位に浮上していた浦野雄平選手(富士通)に追いつき39km過ぎで抜き去ると、39.7kmで日本人最上位にいた池田耀平選手(Kao)を逆転し、この間の5kmを15分03秒に引き上げ40kmを1時間59分27秒で通過。最後の2.195kmを6分33秒でカバーし、東京世界選手権参加標準記録(2時間06分30秒)とともに、2021年に出した2時間07分41秒の自己記録を上回る2時間06分00秒(日本歴代9位)をマークして、日本人トップとなる10位でフィニッシュしました。
市山選手に続いて日本人2番手(12位)を占めたのは、ベテランの井上選手。4年ぶりに自己記録を更新する2時間06分14秒をマークしています。井上選手に9秒後れてフィニッシュした浦野選手は2時間06分23秒(13位)で、ここまでが世界選手権参加標準記録を突破。40km手前まで日本人トップに立っていた池田選手は2時間06分48秒で14位。また、その池田選手と中盤から終盤にかけて日本人首位争いを繰り広げた赤﨑選手は、2時間07分48秒・17位(日本人6位)でのフィニッシュとなりました。なお、初マラソンながら、スタート直後から日本選手で唯一、第1グループにつき、20kmまで先頭集団の前方でレースを進めた太田蒼生選手(青山学院大)は、中間点を1時間01分19秒で通過しましたが、22km過ぎで後退して、その後、大きくペースダウン。低体温と低血糖の症状が出たことで、36kmで途中棄権しています。

今大会の結果、JMCシリーズⅣの男子チャンピオンは、大阪マラソンを終了した段階でトップに浮上していた小山直城選手(Honda)に確定しました。小山選手のシリーズチャンピオン獲得は、前年のシリーズⅢに続いて2回目。なお、東京世界選手権の出場権については、参加標準記録を突破していないために、今後、参加資格有効期間内にワールドランキング対象競技会で参加標準記録を満たすか、基準ワールドランキングで資格を得ることが必要となります。
女子の日本人最上位は安藤
東京世界選手権代表入りに向けて前進
東京世界選手権代表入りを目指す日本勢では、安藤友香選手(しまむら)と細田あい選手(エディオン)の2人が国内招待選手としてエントリー。2人ともすでに女子マラソンの東京世界選手権参加標準記録(2時間23分30秒)は突破済み。3月9日に行われるシリーズ最終戦の名古屋ウィメンズマラソンでの結果を待つことになるものの、どちらも今大会においてJMCシリーズⅣ首位に立つ可能性があるなかで、レースに挑みました。
男子と 同様に4段階でペースメーカーが用意された女子の先頭は、2連覇を果たすことになるゲベデ選手が、スタート直後から一人で飛びだし、5kmを15分35秒というハイペースで突っ込んでいきました。1km3分20秒前後のペースで進んでいくことになった日本勢は、安藤選手と細田選手が、ジェシカ・ステンソン選手(オーストラリア)と3人で11位グループを形成。ペースメーカーのほかに一般ランナーが周囲をがっちりと取り囲み、30名を超えるような大きな固まりとなったなか、その前方付近に位置して5kmを16分42~43秒で通過していく入りとなりました。
2人は、10kmはステイソン選手と一緒に33分15秒(16分32秒)で通過しましたが、13kmを過ぎたあたりで細田選手が、この集団から後れ始めてしまいます。以降、単独日本人トップでレースを進めることになった安藤選手ですが、その後もステイソン選手と並走するような形で、15kmを49分48秒、20kmを1時間06分29秒、中間点を1時間10分08秒、25kmを1時間23分09秒で通過。しかし、そこからステイソン選手が大きくペースを落としたことで、安藤選手は30kmを1時間39分57秒・単独10位で通過していくことになりました。ペースメーカーの離脱や周囲のランナーの分散も重なって、その後は“独り旅”でレースを進めることに。しかし、その辺りから日差しが強まったなか気温が上昇した影響で、次の5kmは17分31秒にペースダウン。17分56秒まで落ち込んだ35~40kmでは、息を吹き返してきたステイソン選手に39km付近で抜かれてしまいます。
目標に掲げていた2時間20切りや、2時間21分18秒の自己記録更新は厳しくなったなか、最後の2.195kmは苦しみつつも8分13秒で粘り、2時間23分37秒でフィニッシュ。日本人最上位の11位でレースを終えました。この結果、安藤選手は、JMCシリーズのランキングで鈴木優花選手(第一生命グループ)を抜いて暫定トップに立つ見込み。名古屋ウィメンズマラソンの結果次第ではあるものの、2017年ロンドン大会以来となるマラソンでの世界選手権出場に向けて大きく踏み出す結果となりました。
細田選手は、終盤は18分台にペースが落ちる苦しい展開となりましたが、30~35kmで18分31秒まで落ち込んだペースを、40kまでの5kmでは18分18秒に引き上げる粘りを見せます。最後の2.195kmを7分49秒までカバーし、2時間27分43秒・13位でレースを終えました。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
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